「本当に……ごめんなさい!」
豊姫「貴女が謝ることではないでしょ……それに、私はもう気にしていませんし」
「あら……そう」
私は、紫のしたこと、ここで起こったことを全て聞いた。
それを聞いて、私はもうどうすればいいのか分からなくなってしまった。
申し訳ないやら、何やら……
まぁでも、起きてしまったことをグチグチ言っても仕方ないから良しとする。
豊姫「紫とやらに言っておいてくれるかしら?荒らさないなら月に来ても良いわよって」
「あら、そうなの?それじゃあ伝えておくけど……」
珍しいな。
月に戦争を仕掛けた張本人を自ら招くだなんて。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかしらね?元々の目的が貴女たちの顔を見ることだったから……」
依姫「えぇ〜!もう帰っちゃうんですか?」
「また近い内に来るわよ。それまで待ってて頂戴ね」
依姫「……分かりました」
めちゃくちゃ残念そうな依姫の顔を見て、苦笑いをする。
寿命が無い私たちには、別れなんてほぼ無縁のようなものじゃない。いつでも会えるわ。
「それじゃ!」
私に手を振る依姫と豊姫に暫しの別れの挨拶を済ませると、私は、少し生まれていた寂しさを振り切って、スキマの中に飛び込んだ。
「はぁ〜、全く、紫ったら……」
トンッと境内に綺麗な着地音を弾ませると、息を思いっきり吸った。
あぁ〜、地球の空気は美味しいわぁ。
私は呼吸をしなくても生きていけるけれど、やっぱり大昔の地球の空気は格別。
これから汚染されていくと思うと……
「さて、何から始めようかしら……」
紫に説教するかどうか迷っている。
と、いうのも、紫は考えも無しに無闇な行動をする子じゃない。
それに何より、紫を厳しく叱るというのは可哀想だもの。
……決めた。
「このことに関して私は口出ししない!これで平和な解決かしらね?」
ほら、こんな広い青空を見てると、そんな悩みすらちっぽけに思えるでしょ?
……って、私は何を言ってるんだか。
「あっ、でも豊姫から紫に伝言を預かってるんだっけ……どうしよ……」
紫「あ!師匠!」
紫が私の元へ駆け寄ってくる。
はぁ、やっぱり伝えておくのが正解かしら?
「月に行ってきたんだけどね」
紫「えっ」
紫が、私が話し始めた瞬間に見事なまでに分かりやすい反応をする。
そんなに固まらなくても……。
「私としてはノーコメントよ。ただ、豊姫……お嬢様みたいな帽子を被った女の子がね、荒らさないなら月に来ても良いって言ってたわよ」
紫「分かりました……ごめんなさい、師匠」
「良いのよ。でも、次は気をつけないとね?」
紫「……はい!」
ぱあっと紫が笑顔になる。
全く、これだから弟子に甘い師匠はダメね……
さて、これからどうしようかしら。
「じゃあ、ご飯……作ってくれる?お風呂入ってる間に」
紫「ふふ、分かりました……」
私は、台所へ消えていった紫に手を振った。
さてと、私もそろそろお風呂入ろうかしら……
「……とっても空が綺麗だわ」
西の方角を見ると、既に太陽が半分位隠れていた。
それに伴い、夕焼けになって、空が鮮やかなオレンジ色に染め上げられている。
皆も見たことがないだろうか?オレンジ色に染まった夕焼けに、夜の暗い色が混ざった紫色に近い空を。
……絶景ではないだろうか。
「やっぱり地球って最高ね!」
私は、着替えの服を取りに神社の中へ入っていった。
❁❀✿✾
「う、んんっ……」
皆との夕食が終わり、チロルも紫も香織も皆寝静まった頃。
私は、珍しくこんな時間帯に起きてしまった。
「……寝れる気がしないわね、少し風に当たろうかしら」
目を瞑っても眠気が来ない。
一応コントロールは出来るけど、無理に力を使う必要は無いので、とりあえずそのままにしておく。
いつものブーツではなく、この時代にはないがとても履きやすいサンダルを履いて外に出る。
「凄く大きな心配事があるけど、それ以外には悩みなんて無いものね……」
まぁ……
「そんな時に限って、とんでもない爆弾を持ってくる奴がいたりするんだけど……」
?「ある意味正解だな」
「ッ!」
反応する間もなく手首を掴まれていた。
どこからか聞こえてきた忌々しいその声は、もう二度と聞きたくなかった声でもあった。
私は、抵抗なんて出来るわけも無く、あっという間に床へ押し倒されてしまった。
「牛、鬼……」
牛鬼「はは、そんなに俺のことを覚えていてくれていただなんて、嬉しい限りだぜ?ははははっ!」
忘れる訳ないだろう。
お前のせいでどれだけ悩んでいたか……!!!
牛鬼「流石龍神、奴らへの配慮は万全なんだな、クックック……!!!」
私の視界に、美しくも酷く恐ろしい妖怪の笑顔が写る。
血の色に染まった目、メラニンが欠乏している白い肌、漆黒に塗り潰された髪……
美しすぎて誰も寄ってこなそうな顔である。
「……当たり前だ。今、ここで、私とお前が全力で戦ったとしよう。そうすれば、ここにいる皆どころか、地球上の生命は死に絶えるだろうな」
まだ、死ぬのには早い。
私はここにいる皆の命を背負っていると言っても過言ではない……
牛鬼「……へぇ」
牛鬼は、私の左手に注目すると、口を三日月形に歪めて笑った。
片方の手が、私の頬へと上がってくる。
つぅ、と指先で頬をなぞると、嬉しそうな声を発した。
牛鬼「もう
「元々、私は主様……基龍神王様のモノだ。何を今更」
牛鬼「そういうことじゃない。龍神王は、もうお前のことを抱いたのかと聞いている」
「はっ、はぁ……!?」
……あぁ、そういうことか。
なるほど。今まで全く気にもしてなかったけど、"そういうこと"が有り得てもおかしくないものね。
「肉体関係になったことは一切無い」
牛鬼「成程。では、龍神王は傍にいる女も手に入れられない負け犬ということだな?」
「ちがっ……!」
否定しようとすると、牛鬼の指が口の中に入れられてこれ以上は反論を許されなかった。
美しい顔に反して、体は案外大柄であり、3本の指で私の口が塞がってしまう程。
牛鬼「ふん、最高神が2匹共々弱々しいとはな……このまま続けてしまっても面白そうだが、もっと面白いことを見つけた」
悪戯に笑う牛鬼を見て、無念で仕方がなかった。
こんなにも近くにいるのに、滅殺できないとは……!
この妖怪の言う通り、私は弱くて力無いのかもしれない。
いや、力無いだろう……悔しいが。
牛鬼「龍神王ではなく、俺に着いてくる気は無いか?そうすればお前を俺の妃に召し上げてやる」
「うぅうっ……!!!」
戯言を!
そう叫びたかったが、指を口いっぱいに入れられているのでそれは叶わなかった。
……反吐が出そうだ。
牛鬼「冗談だ」
「むぐ……ぷ、はぁっ……はぁ、はぁ」
牛鬼は、私の口の中に入れていた指を抜いた。
私は、思わず息を吸い込んでしまってむせる。
牛鬼「近々、面白いことになるかもしれないなぁ……」
「は?」
牛鬼「まぁお前次第だが、ゆっくりのんびり待っていると良い。また、会いに来てやるから」
それだけ言い残すと、牛鬼は私の上から飛び起きて一瞬にしてその姿を消した。
消えた所には、牛鬼のその濃縮された妖力が僅かに残っているだけだったが、本当に反吐が出そうな時間だった。
流石に、もう二度とあんなことはされたくない……あぁ、ゾッとするわ。
「気持ち悪い……はぁ、もう。安らかな時間になるはずだったのに、何でこうも邪魔が入るのかしら?」
安眠を妨げられることがこんなにも苦痛なのか。
いや、相手が相手だったからか?まぁ、もうどうでもいいわ。
あぁ、早く眠りについて良い夢を……見られればいいけど。
私は、足早にその場を後にした。
牛鬼の特徴
艶のある黒髪(長髪ではないが襟足が長く、肩より少し下くらいまで伸びてる)
赤くて切れ長の目
夜刀神 神琉と同じくらいか少し高いくらいの身長
妖怪の恐ろしさと強さ、そして悪の要素を濃縮したようなキャラ
豪華な和服みたいなやつ?(説明が難しい……)を着てる
ワンチャン闇ちゃんのことを手に入れようとしている?