永琳と会ってから、数週間が経った頃。
私は、都市で過ごす日々に刺激が欲しいと考えていた。
それを永琳に相談したら、
永琳「軍に入れば嫌でも刺激が手に入るわよ?」
……とのことなので、私は軍に入隊することにした。
ただ、私は都市外から来た故に、都市のことは何も知らない。
筆記試験もあるって聞いた。実技は何も問題はないが、筆記が問題だと思っている。
ただ、永琳が言うに、試験は筆記より実技の方が重要視されるのだとか。
実技で高得点をとると、軍のトップからも優遇して貰えたり、色々と好都合らしい。
永琳「そうそう、闇。貴方なら大丈夫だと思うけど……実技では、負けないようにね。有名な家名の者達が出て来るらしいわよ?」
「そう……まぁ、都市外育ちの私には分からない家名ばっかりだろうけど……まぁ、頑張るわ」
永琳「……頑張ってね」
「そうね、負けるワケないじゃない。私は、こんな見た目だけれど、普通の人間よりも強いわ?」
そう言い、私は明日行われる適性試験に向けての準備をしていた。準備と言っても武器の手入れ、筆記テストの勉強だけであるけど。
私は、長い間ずーっと都市の外……異空間の間で暮らしていたので、都市のことなんかまるっきり分からない。
「都市の中では能力使わないって決めてるから……自分で取り入れていかないと……」
そう、基本的に何でも叶うこの能力は、奇しくも生きることの面白さを奪っていく。
まだ、まだ、人間としての感性を失いたくはないのだ。
永琳「明日試験よね?」
「えぇ、そうよ」
永琳「……熱心ね」
「私は人間が好きだから」
永琳は、貴女らしいわね、と言って部屋を出た。
私は、そんな永琳を見送り、寝る準備をした。
睡眠なんて要らないんだけど、3大欲求が無いと私としては気持ち悪いから……
羽毛の心地いい布団に身を包まれ、明日の試験に心を弾ませながら、目を閉じた。
❁❀✿✾
試験当日
「えーーっと……試験会場はここかしら?」
前日に届いていた、試験会場の案内が書かれている地図を持って訪れた場所は、大勢の人でごった返す大きな会場だった。
この人たちが全員軍に応募するのか。どんだけ人気職なんだよ?と少し驚いた。しかも倍率メチャクチャ高いんでしょ?……マジか。
「しかし……広すぎるわね」
私は、人ごみの中に紛れ、ほぼ男しかいないことに辟易しながら、試験を受けるための部屋に向かった。
「(あんまりジロジロ見ないでよ……)」
私は、周りから刺さる視線が気になって仕方なかった。
まぁ、それも、仕方がないか……と少し納得出来る自分もいる。
何故なら、永琳や周りの人に聞いたところ、軍に応募するのは、ほとんどが男らしいから。
まぁ、それは別に良い。力のある者が軍に入って、都市を護るのは良いことだ。
だ、け、ど!!!
「(舐め回すような目で見ないで……!)」
私の席から、2席隣に座っている男が、私のことを有り得ないくらいジロジロ見てくるのだ。
頭のてっぺんからつま先まで、舐め回すように。
他の人はチラチラ見てくるぐらいでずっと見つめたりはしない。
しかも、そこにいる男はニヤニヤ笑っており、鼻息も荒い。どうしたの?って言いたくなるくらい。
……と悩んでいると、私とその男の間に割って座る人がいた。
?「私の名は
助けてくれたことに感謝しつつ、その名前に驚愕した……。原作キャラだ。久しぶりの原作キャラである。やはり、後に最強格と謳われるほどの雰囲気は持っているんだな。
「私は夜刀神 闇。私も適性試験を受けに来たのよ……助けてくれてありがとう」
依姫「いえ、先程の視線は周りから見ても明らかにおかしかったので。私がやりたいことをしただけです」
依姫は、隣の男を少し睨み、私に笑いかけてきた。
薄紫の髪が凄く綺麗だ……と少し見とれてしまった。
試験監督「それでは、始めッ!!!」
おっと、試験が始まったようだ……これからの、刺激に期待するとしますか。
これから皆が何を見せてくれるのか……楽しみね。
❁❀✿✾
 ̄ ̄外会場
外の会場に出てみると、日差しが差し込み、とても気持ちよかった。
ただ、さっきも見たけどやっぱり男ばかりで女性が居ない……
試験監督「これより、試験の内容を説明する!聞き逃しの無いように!」
試験監督の声が聞こえ、私はその方を向いた。
試験監督「試験の内容は、グループに分けて行う総当たり戦!試合に勝つ条件は、相手を戦闘不能状態にさせる又は相手が降参した場合のみ!以上だ!」
試験監督が、立ち去っていく。それに従って、周りの人たちも指定されたグループにバラつき始めている。
私も、指定されたグループの場所に向かうことにした。
❁❀✿✾
……私の番が来るまで、他の人の試合を見ていたけど……正直、誰も私の相手にならない。
この時代の人間は、こんなに弱いの?私が人間と過ごしたことが無いせいで、感覚がズレているのか?
試験監督「これより、
私の最初の相手はどうやら、白神 白狐という人間らしい。
見た目は、別にマッチョでもないし痩せているわけでもなさそう。まぁ、所謂中肉中背ってやつね。
白狐「……宜しくな、嬢ちゃん」
「……あまり舐めてかかると、痛い目みるわよ?」
白狐「期待しておくよ」
あぁ、やっぱりこれ舐められてる。手加減しないと。
試験監督「それでは、開始する!!!」
白狐「なるべく早く終わらせてやる」
白狐が、直線で切りかかってきた。
「甘いわ」
私は、それをひらりとした身のこなしで躱す。
白狐「なっ!……子供の癖に、俺の攻撃を避けるだと!?」
こ、子供って!
こいつはなんて失礼なんだ……なんて思いつつ、次の攻撃をどうしようか悩んでいた。
「早く終わらせたいな……」
白狐「何ぼーっとしてんだ?」
「別に、ぼーっとはしてないわ?」
私は、斬りかかってくる白狐の攻撃をヒラリと躱し、決して白狐に背を向けることなく、正面を向きながらバックステップの要領で避ける。
白狐「クソっ!なんで当たらない!?」
「……ふぅ。単に、貴方の攻撃速度よりも私の回避速度のほうが
白狐「ぐっ!」
どれだけ攻撃しても当たらないという絶望を与え、この男の心を折る。私にはどうやっても敵わないということを分かって欲しい。
……力加減を間違えて殺したくは無いので、自分から降参して欲しいのだけど。まぁ、でも、力加減が出来ないということは、単に私の適応能力が低いということでもあるか。これからは力加減も覚えなきゃ……
「さて、この戦いを長く続けるつもりも無いわ」
私は、少し前傾姿勢になり、地面を踏み込んで走り出した。
それを見た白狐は、ついに私がやる気になったと思ったのか、木刀を構え、私から目線を離さない。
私が踏み込んだ所に、小規模のクレーターができていた。
白狐は、そのことに目を見開き、私から少し目を離した……が、それを見逃す私ではない。
「ふっ!」
白狐「かはッ!?」
私は、走り込んだ前傾姿勢のまま、拳を握り締め、白狐の腹へと叩き込んだ。
すると、その瞬間、木刀はカランという音を立てて地面へと落ちた。それと同時に、白狐の体も地面に倒れ伏した。
試験監督「白神 白狐、戦闘不能!勝者、夜刀神 闇!」
試験監督が、声を張り上げる。……勝ったか。
負ける気はなかったものの、力加減は間違えなくて済んだようね。
次の試合も、この調子でいけるか。
……グループでの総当たり戦が終わり、私達は中へと移動を始めていた。……試合結果?そんなの言う必要ある?
次は、霊力診断があるそう。
霊力診断というのは、その人個人個人の霊力を診断し、その診断結果によってそれからの試験結果に繋がるそうで。
……私の場合、どうなるのかな?霊力なんて、半端内程あるんだけど。霊力調べる機械、壊れたりしないよね?
ちなみに、今はその霊力診断を受けるために列に並んでいる。
前の人達は、難なくクリアしていっている。
霊力が限りなく低い者であったり、とてつもなく高い……?であったり。はたまた、どちらにも偏っていない、平均的な者であったり。
試験監督「次の者!」
私の番が来た為、水晶の前に来た。
霊力か……どのくらいに抑えておけば無難かしら?
試験結果に繋がるならば、抑えすぎてもダメだろうし……うぅん、難しい。
結果、水晶は割れず。それは、良かったんだけども。
私の霊力が表示された時の試験監督の声が、これまた驚愕したものだった。当たり前よね、私の霊力がさっきまでの人たちのものより、それを遥かに超えたものだったんだから。
軍の適性試験を受けている人の霊力の平均が300だとしたら、私は5000とかだった。
抑えすぎても馬鹿にされるし、かといって抑えなかったら水晶が壊れるしでかなり抑えるのは苦労した感じだ。
まぁでも、それからの様々な試験を難なく受けていった。
多分、合格しているはず……である。
帰ってその事を永琳にメチャクチャ褒められた。
そして、翌日。
私がいつも通り起きて、リビングに向かおうとすると、私の方に向かおうとしてくる永琳とぶつかった。
……なんか、むにゅって柔らかい感触がしたけど。
永琳「闇ッ!これ、見て!!」
永琳はそう言って、腕時計のような機械からホログラムを見せてきた。
永琳「ねぇ、これ!貴女、合格してるわよ!」
『軍の適性試験:結果 首席合格』
私は、心の底から喜んだ。でも、何故か当人の私よりも永琳のほうが喜んでくれている気がするのは何故だろうか?
……何はともあれ、無事に合格出来てよかった。まぁ、不合格になるつもりなんて無かったけど。
永琳「これでやっと、闇からも定期収入が得られるわぁー!」
「そこっ!?」
永琳「ふふ、嘘よ」
その冗談笑えませんぜ、永琳さん。
その日の夜は、永琳が合格祝いにディナーを作ってくれた。
どうやら永琳、私の為に今夜の晩御飯は豪華にしようと結構奮発してくれたのだ。ありがたい、ありがたい。
永琳「ねぇ、闇……」
私が、食べ終えた食器を片付けていると永琳が話しかけてきた。
「ん?何かしら」
永琳「……私達、ずっと一緒よね?」
「どうしてそんなこと聞くのよ?当たり前でしょ?」
永琳「そう、それが聞けて良かったわ」
「……?」
永琳は、意味深な笑みを浮かべ、食器を片付け始めた。
……何だったんだろう?
その日、私達は共に眠り、夜を過ごしたのだった。