私の転生物語 ~龍神として生きる~   作:夜刀神 闇

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第47話 願わくば彼女らに幸せを。

「はぁっ、はぁっ……!」

 

私は、今何者かに追われている気がする。

普通に学校に行って、普通に期末テストを受けてただけだったのに。

真昼間で、真っ青だったはずの空が異様な程真っ黒になっており、バケツをひっくり返した様な豪雨が降っている。

制服が肌に張り付いて気持ち悪い……

 

ドシャァ!!

「ッ!」

 

雨で滑りやすくなっていた道路に、私は躓いて転んでしまった。

何故か痛みを感じないことにも気づかないまま、立ち上がり、また走り出した。

もう少しで自宅があるのに、もう見えているのに……何故かいつまで経っても届かない。辿り着けない。手が……届かない。

 

「あ、あれ……私」

 

"何やってたんだっけ……"

 

今の今まで感じていた焦燥感が嘘のように消えていた。

それも、何の脈絡も無く突然に。分からない。

しかも……

 

「……冷たっ!何でびっしょびしょに濡れてんの!?うぅ、気持ち悪っ!」

 

今着てるのはセーラー服。つまり。

 

「なかなか乾かない……」

 

明日からの学校どうすんの!?

 

「明日も期末テストだよ……まだ課題終わってないよ……」

 

早く終わらせないとまた先生にドヤされる……

そう思って再び歩きだした時、後ろから私の肩を誰かが叩いた。

 

?「ねぇ、あなた……」

 

金髪の綺麗なお姉さんだった。

すらりと伸びた長い脚が綺麗って見惚れてる場合じゃ……!

 

「……何ですか?」

?「あぁ、やっぱりそうなのね……」

 

私を見て、少し考えた後、自分の中で何かが解決したのか、うんうんと頷いていた。

いや、だから……

 

?「ほら、早く起きなさい!」

 

お姉さんが、私と同じ目線に合わせてしゃがんだかと思うと、私の頬を両手でぺちっと叩いた。

"起きなさい"……?

 

「どういう…こ……と…………???」

 

視界の端が、ピッケルで壊されていく、氷の様にパキパキとヒビが入っていく。

意識を保とうとすればする程、視界が崩壊していく。

 

?「あなたの居場所はもうここじゃないでしょう!だから早く起きなさい!」

 

不思議な金髪のお姉さんの声を最後に、私の最後の視界の一欠片が剥がれた。

あのお姉さん、綺麗だったなーなんて思いながら、意識を暗闇に落とした。

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

……明るい。朝みたい。

私は、布団から上体を起こし、眠い目を擦った。

 

「変な夢を見たわね……ふわぁ。それにしても、どうして夢の中に"エマ"が出てきたのかしら?」

 

夢の中に出てきた金髪は、紛れもなく情報の管理者、エマだった。

不思議に思いながらも特に気にすることも無かった。まぁそういうこともたまにはあるでしょうし。

欠伸をし、立ち上がり、就寝着から部屋着へと着替える。

髪の毛のブラッシングが終わってサラサラになったことを確認すると、私は皆がいるであろう居間に行った。

 

ガラッ

「皆、おはよう」

紫「あっ!師匠、おはようございます!」

チロル「闇ちゃん、おはよー!」

 

いつものこの光景が好きなのよ。

皆が笑って私を出迎えてくれる。

私のことを受け入れてくれる。

 

「香織は外?」

紫「いつも通り、境内の掃除をしていますよ」

「ありがと」

 

私は、香織がいるであろう境内に向かった。

……予想通り。

竹箒を持って落ち葉を集めている香織がいた。

 

「おはよう」

香織「おはようございます」

 

香織は、私に向き直って挨拶をした。

いつも真面目で助かるわね……たまには褒美をあげないとかしら?

 

「ねぇ、こんな変なこと聞くのも変しれないけど……」

香織「何でしょう?」

 

私は、皆を愛している。

それ故に、急に怖くなってしまう時があるの。

さっきの夢から覚めた時だって本当は怖かった。

私は何て欲深い存在になってしまったのかしら?

 

「もし……もしね……私が死んだらどうする?」

香織「なっ!?」

 

香織は、私のあまりにも突然の言葉に驚いてしまったらしく、目を見開き、開いた口が塞がらなくなっている。

そりゃあそうでしょうねぇ。だって、香織にとって、私は不滅の存在そのものだから。

でも、現実はそう甘くないのよ。自分が作ったものに滅される可能性もあるのがこの世の理なんだもの。

西行妖の時みたいに。

 

香織「私は……信じていますので」

「私が死ぬことはない、と?」

香織「そうです!未来永劫、これからも私の主は貴女様だけです!"夜刀神 闇様"!」

 

香織が、目に涙を滲ませて上目に訴えかけてきた。

いつもは凛としていて、表情もあまり変わることはないというのに、こんなことで……

 

「ふふ、ありがとう。それなら私も、貴女に何かしてあげなくちゃ」

香織「いいえ。何も望みません……強いて言うなら、"ここに存在し()てくれること"が望みです」

 

香織は、ニコッと笑った。

嬉しいこと言ってくれるわね、この子含めここに住んでいる子たちは。

私は本当に恵まれているわね。

だって、ある日突然生まれ変わらせられたかと思えば、こんな素敵な仲間たちに出会えたんだから。

 

「ずっと一緒よ?」ギュッ

香織「勿論、です……!」

 

私たちは、暫しお互いの体温を確かめ合っていた。

身長差(40cm)があるせいで私が香織の胸元に顔を埋めるみたいな形にはなったけど。

 

「ふふ、私が使い物にならなくなったら次の龍神は貴女で決まり、ね?」

香織「……恐ろしいことを言わないで頂きたい」

「冗談よ?」

 

一瞬、香織が恐ろしいものでも見るかのような目で私を見てきた。

もう、冗談に本気にならないで欲しいわね……。

でも、冗談抜きで、私の次に宇宙を治めることが出来るのは香織と言っても過言ではない気がする。

まぁ神力を持つ天人なんて滅多にいないから……しかも、龍の血を引く"龍天人"一族だなんてね。

龍の血を引く天人は多いけど、その中でも最高峰の家系なのだもの。

 

「じゃあ、これからもよろしくね?」

香織「何を今更。勿論でございます」

「これから何をするつもり?」

香織「そうですね……いつも通りに家事、でしょうか?」

「何それ、つまんないの……たまには休んだら?」

香織「私にとっては御先祖様のお側(ここ)に在ることが出来るだけで休暇のようなものですので……」

「ふぅん……」

 

忠誠心が高いのは結構なことだけど、でも時々心配になるわよね。

でも、そんなことよりも楽しい毎日を過ごしたいわ。

この子たちと共に、ね。

 

「……幸せ、ね」

 

私は、ビュウッと吹いた風に溶け込んでしまう位の小さな声で呟いた。




幸せを願おう、先にある未来がどれだけ悲しくても。
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