どんな結末を迎えても、暖かい目で見守って下さい……
第50話 もしもこの世界に星が降り注ぐなら。 ~前編~
とある夜……夢を見た。
とっても不思議な夢だった。
私が転生する前の世界で、暮らしていた時のこと。
ただ、違う所があって……それは、私の傍に千奈がいたこと。
人間だった頃は友達なんていなかったし、ほぼほぼクラスの誰とも喋らない。そんな寂しい人生を送っていた。
なのに、どうして。こんなに違和感が無いのかしら?
まるで、今の今までずっと千奈と共に過ごしてきたかのように。
「んん……」
朝だ。
どうやら、いつの間にか眠っていたらしい。
視界を開けると、目の前には主様の顔がドアップで写っていた。
「わっ……」
神琉「起きたか、闇」
主様は、私が起きたことに気づくとそっと頬に手を添えてきた。
むにっ、むにっ。
「あの……これは?」
神琉「あ、悪い。柔らかくてすべすべだなぁって」
「は、はぁ……」
私は、どうやって返答していいのか分からず、空返事をする。
そういえば、今日は何もすることがない……
まぁ、神なんてそんなもんだけど。
……いや、来るその時に備えておくべきよね。
神琉「そういえば、今日は何をするか決まっているのか?」
「来る"その時"に備えて、修行をするつもりですわ。ほとんど意味をなさないと思いますが、気休めの為に……」
神琉「そう、か」
主様は、少し残念そうな顔をしている。
私が力不足だから、残念がっているのだろうか。
だとしたら、申し訳ない……
「牛鬼の襲撃にどれだけ立ち向かえるか……」
神琉「……何かあったら絶対に言うんだぞ」
絶対にだ、と念を押す主様。
何度も何度も聞いたお言葉ね。
だけど、それだけ心配して下さっているのが分かる気がする。
神琉「俺は1度神界に戻る。恐らく、近い内にまたここに来るだろう」
「そうですか。では、お待ちしておりますね?」
あぁ、と嬉しげに答えると、主様は一瞬にして消えてしまった。
さっきまでここにいたのに、もういらっしゃらないなんて……少し寂しい気もするけど、でもそんなこと言ってられないわ。
「まだ、温もりが残ってる……変温動物に値する種族のはずなのに、変ねぇ」
ふふ、と私は独り言を漏らす。
やっぱり主様は主様だわ。
生き物を超越した存在なのに、こんなに温かいんだもの。
まぁ、私もなんだけど。
「さて、そろそろ起きなくちゃね」
私は、2つの布団を押し入れに片付けると、いつもの服装に着替えた。
修行と言っても何をするのかほとんど決まってないに等しいけど……そろそろ、香織に私と同じ仕事を覚えてもらおうかしら?
「香織、いる?」
香織「はい、どうされましたか?」
「あら、朝早いのね?じゃあ、頼みたいことがあるんだけど」
私の能力を使って、私の記憶を直接香織に伝える。
本当だったら、長い時間をかけて覚えてもらうのが1番良い方法なんだけど……
まぁ、良いでしょう。1番楽で手っ取り早いわ。
「今から、私の記憶を香織の脳内に送るわ。そろそろ私と同じ仕事もして欲しいと思ってね」
香織「そんな……光栄です」
何でこんなことをしようとしたか。
私が使い物にならなくなった時、私の後釜的存在が必要。
その時、この宇宙界を治めるのは誰か?
香織が1番適任だと思ったから。
満足に能力を使える内に、伝えておかなきゃって思ったのよ。
牛鬼のこともあるし、ね。
「じゃあ、流すわよ……」
私は、自分の額を香織の額につけ、自分の奥底に流れる、神としての記憶を流し始める。
案外、難しい。
神力の使い方も、神界への扉を開く方法も……全て覚えて貰わないと。
「はい、おしまい」
香織「……これが、神としての記憶ですね。然と受け止めました」
心做しか、いつもより香織が輝いて見える。
私の神力を分けてあげたからかしら?
元よりだいぶ強くなったはずだわ。
「これで、私とほぼ同じ仕事が出来るわ。仕事といっても、ほぼ地球上のことだけなんだけど」
香織「いえ、御先祖様のお手伝いが少しでも出来ることが私にとってのこれ以上ない栄誉なことなのです」
あらあら、そんなに尊敬されちゃ手を抜けなくなるわね、と笑う。
これで、記憶自体は香織に渡せた。
後は、完全に馴染むように毎日の訓練が必要ね。
「じゃあ、後はこれを……」
私は、スキマを開いて、とあるものを取り出す。
それは……
香織「!こ、こんなもの頂けません……!」
「良いのよ、私からの贈り物なんだから」
"イヤリング"。
アメジストで出来た、私が作った香織への贈り物。
いつか必要になる日まで、作っておいたのだ。
私の神力を、香織に馴染ませる為に……
「ほら、じっとしてなさい」
私は、2つのイヤリングを香織の耳に直接付けてあげた。
紫色の小さなアメジストが付いた、私が1番好きな石。
「ふふっ、今の香織……いつもより何倍も綺麗よ?」
香織「ありがとうございます……御先祖様から直々に贈り物をして頂けるなんて、これ以上ない光栄」
「貴女は私の従者なのだから、変な虫が付かないようにしないと……ね?」
私は今、恐ろしい顔をしているかもしれない。
自分で笑っているのは分かるが、何となく歪んでる気が……
でも、自分のものを他人に盗られることが本当に嫌だから、自分が傍にいることの印を付けておきたいの。
「あぁ、ごめんなさい……我儘で」
私は、あまりにも自分勝手な行動を反省した。
まぁ、香織に変な虫が付かないようにするっていう意味もあるけど、本当はもう1つ意味があるんだけどね。
香織「そんな寂しそうな顔なさらないで……私は、いつだって御先祖様のものですから……」
「香織……貴女はどこまで私に優しいの」
こんな私の我儘を受け入れてくれるだなんて、この世で香織位じゃないかしら?
「ふふ、じゃあいつまでも一緒にいてくれるのかしら」
香織「命ある限りは、お供します」
「私がいる限りは貴女が死ぬことはないのよ」
私がそう言うと、私たちはしばらく2人で笑っていた。
こんな日がずっと続いていけばいいのにって思ってる。
最高神に与えられたこの命と体と力さえあれば、何だって叶えられる。
……この時の私は、完全に思い上がっていた。
❁❀✿✾
チロル「……それで、その時紫がー」
「あら、そうなの」
紫「ちょっ!その話は言わない約束でしょう!」
天気の良いとある日、私たちは縁側で団欒していた。
こんなに天気も良いんだから、皆でお茶を飲もうって誘ったのよ。
チロル「そういえば、闇ちゃんから誘ってくるのは珍しいよねー」
紫「そういえば、そうね」
「急に皆とお茶が飲みたくなったのよ」
チロル「香織も来たら良かったのにねぇ」
香織は今、晩御飯に向けての買い物に出ている。
本当、こんな時にすら真面目さを発揮するんだから。
チロル「闇ちゃんは、龍神王様のことどう思ってるの?」
「どう、思ってるって?」
チロル「闇ちゃんと龍神王様が主従関係にあるのは知ってるよ。それ以前に、男と女としてどう思ってるのってこと!」
「そんなの、決まってるじゃない……答えは、"何も無い"わ」
何も無いっていうのは、どうも思ってないということ。
牛鬼が言及してきたように抱かれてもないし恋仲ですらない。
神の世界には、そんなものは必要ないのだ。
チロル「え?そんなことないと思ってたんだけどな〜」
「はいはい、チロルはそんなこと考えなくてもその内イイヒトが見つかるわよ」
チロル「もー!子供扱いしないでよね!」
ひどい、と怒るチロルをなだめる私。
そして、それを見て微笑む紫。
一家団欒って感じがするわね。
「ん……」
……今、何かが。
私の後ろを横切った……?
紫「どうかされたのですか、師匠?」
「いいえ、何でもないわ……ちょっと席を外すわね」
私は、皆の声を聞く間も無く拝殿の方に向かった。
急に、拝殿の方にある木に寄りかかりたくなった。
本当に何も無いが、何故かそう思ってしまった。
んん、考えててもしょうがない!
「ふぅー……どうしちゃったのかしら……っ」
私が木にもたれかかった瞬間、私の首が何かによって締まった。
締まった……見えない糸みたいな物で。
取ろうとしても、中々掴めなかった。
?「お騒がせしたねぇ、ふふっ」
「うっ……ぁ……」
……何てことだ。
"牛鬼"が、まさかここまで来るなんて……!
しかも、こんなに早く……!?
牛鬼「大丈夫だよ、手は出さないからさ……あいつらには」
酷く美しい顔を歪ませ、恐ろしい笑みを浮かべる牛鬼。
何が、したいんだ……!こいつはっ!
牛鬼「俺はねぇ、お前さえよければ消えてやりたいんだけどなぁー」
「かっは……」
牛鬼「あぁ、無理無理。喋らない方が良いと思うぞ。余計に苦しくなる」
声が出なかった。
無理矢理抵抗したら首がちぎれ飛びそうだった。
ていうか、"お前さえよければ消えてやる"だと?
願ってもない好機だ。
声さえ出れば……いいのに!
牛鬼「お前が考えてることは大体分かるが、面白そうだからまた後でにしようか^^*今はまず、お休み」
「ぐっ……ぁ、え?」
牛鬼がパチンと指を鳴らすと、私を縛っていた糸の感覚が無くなり、楽になった。
しかし、視点が……空に。
ゴトッという何かが落ちる音と同時に、私の上に何かが倒れてくるのが見えた。
……私の、頭の無くした胴体が、倒れてきていた。
❁❀✿✾
「ゔっ……」
私は、ゆっくりと目を開けた。
そこは見たことも無いような部屋で、誰かが普段から使ってそうな部屋……あれ?扉が無い……
って、違う!さっきまで私は何を……
……あぁ、首を切られたのか。
というより、何かしら、この違和感は。
牛鬼「起きたか?」
「っ!?」
背中が反り返るような、恐ろしく艶のある声がして、私は思わず目の前のものを引っぱたく動作に入った。
しかし、その手はいとも簡単に阻まれてしまった。
牛鬼「ほぅ、流石は龍神。首を切り落とされても生きながらえるのか」
感心したような顔で見つめる牛鬼は、そう言いながら私の首筋を指先ですぅーっと撫でた。
それだけでも悪寒がするが、目の前に災いの元がいるのに滅せないのが兎に角悔しい。
牛鬼「おいお前、何か言ってみろ」
悔しいか、と言いたげな顔の牛鬼は、やはり背筋が凍るほどの美しさを持っている。
見惚れてしまいそうだが、私に限ってそんなことはない。
主様以上に美しいものなど……
「……何が目的なんだ」
牛鬼「なるほど。お前を拉致した目的が知りたいと?」
嫌な笑みを浮かべる牛鬼は、皮肉にも私の目線を誘った。
正直、牛鬼が何を考えているのかが全く分からないが。
牛鬼「簡単だ、お前を観賞用として置いておくだけだぞ」
「観賞用……?」
私を観賞用のとして置いておく?
熱帯魚でもあるまいし……どうするのか。
牛鬼「……脱げ」
「は?」
牛鬼「ほら、早く」
牛鬼は、私の首にはめられた首輪に繋がれている鎖を引っ張った。
ガシャ、という音と共に私の体がバタッと倒れる。
今の私には、何の力も残っていないみたいだ。
何も……使えない。本当に約立たずになってしまったのか。
牛鬼「俺も鬼じゃ……いや、この場合はどうなるんだろう……」
1人で何かを考える牛鬼。
そもそも、この状況はなんなんだ!
牛鬼「……あぁ、そうか。脱げないのか」
牛鬼が人差し指を私の方へ向けて横に振り抜いた。
その瞬間、私の服の袖が切れ、粉々になって無くなってしまった。
牛鬼「俺に脱がせて欲しいなら脱がせてやるぞ?」
ニヤニヤと笑う牛鬼。
本当に……憎らしい奴だ。
「そもそも、何故脱がせる!」
牛鬼「そんなの、決まってるだろう。観賞用なのに、脱がせなくてどうするんだ?」
……鬼だ。
いや、そもそも最初から鬼だったか……
と思っていると、牛鬼が私の方へ近づいてきていた。
私の服に手をかけて……そこから先へは進まなかった。
牛鬼「ふん、随分と早いご到着か……………………ほぉ、まさか貴様等が来るとは流石の俺も想定外だったな」
やれやれ、とため息をつく牛鬼。
私は、誰か来たのかと気になって後ろを見ると……
ドガァァァァァン!!!!!
と言う音が鳴り、壁が粉々になった。
その砂埃が舞う中にいたのは……
アマテラス「……お姉様っ!」
涙を浮かべて私に向かって叫ぶアマテラス。
スサノオ「姉上!!!」
私に触れようとした牛鬼を物凄い形相で睨みつけるスサノオ。
ツクヨミ「お、お姉様!」
物凄く不安そうな顔で見つめるツクヨミ。
私としても、この子たち……三貴神が来てくれるのは想定外だった。
もしかしたら、誰も来てくれずにこのまま朽ち果てる運命にあるんじゃないかって一瞬思ったけど。
……それと同時に、心のどこかで主様が救い出しに来て下さるのではないかと淡い期待を抱いたりもしたけど。
牛鬼「……あーあつまんねぇ。仕方ない、引き上げるか」
アマテラス「させないっ」
ダメよ、いけない、牛鬼に手を出しては、ダメ……!!!
私が声をあげるより先にアマテラスが動いていた。
……あぁ、遅かった。
アマテラス「っ!ぐぁぁぁ……」
牛鬼「だ、か、ら、ここら辺で撤収してやるって慈悲を与えてやったのに……残念だ」
ツクヨミ「や、やめて……!」
スサノオ「やめるんだっ!!!」
牛鬼が、先に行動を起こしたアマテラスの動きをいとも簡単に封じてしまった。
そして、私にしかけた攻撃と同じものを……あの、見えない糸の。
「やめなさい……っ」
私は、力を振り絞って牛鬼の服の裾を掴んで、動きを止めようとした。
もう、今の私には人間程しか力が残っていないんじゃないか……そう言われてもおかしくない位弱っていた。
私に気づいた牛鬼は、私の方を見ると、またあの嫌な笑みを浮かべた。
アマテラス「ぐっ!はぁ、はぁ……」
牛鬼「……まぁ、その勇気だけは認めてやる」
つまんなそうな顔をした後、牛鬼はアマテラスを解放した。
首を抑えて苦しがるアマテラスに寄り添うツクヨミとスサノオを気にも留めず、私の方へ向き直った。
何か嫌な予感がするけど……この子たちが無事ならそれで良いわ。
牛鬼「さて、ここまで来て貰ってなんだが、どうやらその苦労は水の泡になりそうだ」
牛鬼は、私を抱えて三貴神に言い放った後、スキマと似たようなものを出現させた。
そして、煙幕で視界を遮ったと思うと、どこか暗い場所に降り立っていた。
❁❀✿✾
牛鬼「お前……弱ったなぁ」
「お前のせいだろう!何故私に……」
私が言おうとしたその先を、牛鬼は自分の手でそれを封じてしまった。
牛鬼に連れ去られ、力も奪われた今……最早お前に出来ることなど何も無い、とでも言いたいのか。
牛鬼「そういえば、お前に言ってなかったことがあるな」
牛鬼は、少し考えてから……はっとしたような顔になって、私の目をじっと見つめた。
何を考えているのか分からない……そんな顔だ。
牛鬼「お前は……転生者だな」
はっ……!?
牛鬼「であるが故、俺とお前は一心同体と言っても過言ではない」
「えっ……?」
うん、転生者だってことを見破られたのにも驚いたけど。
一心同体ってどういうこと?
私は私で……牛鬼は牛鬼だもの。
牛鬼「転生する前に持っていた"闇"を捨て忘れていたんだろうなぁ、あいつは」
「どういうことよ」
ふむふむ、といった表情をする牛鬼。
牛鬼が今言った、闇は私の名前を意味する言葉じゃないってこと位しか理解できなかったけど……
じゃあ、どういう意味なのかしら……
牛鬼「……あいつも可哀想だなぁ、気付いて貰えなくて」
「だから、どういうこと……!」
牛鬼「こんなものまでくれてやったのになぁ」
牛鬼は、私の左手を取ってニヤリと笑った。
そこには、金に光る美しい指輪が。
牛鬼「忌々しい……あいつの神力が有り得ない位詰め込まれている」
ニヤリと笑う笑顔は崩さないものの、その顔からは確実に良いことじゃないであろう感情が読み取れる。
……嫉妬?
牛鬼「ま、いい。そろそろ始めるか」
「何を……」
決まっているだろう?とでも言いたげな顔をしながら、私の方へ向き直った。
その目は、今までとは少し違ったような……一言で言うならばギラついてる?
とでも言えば良いだろうか。
牛鬼「俺と、お前をこの世から消す為の儀式だ」
……牛鬼がそう言った途端、大地が大きな音を立てて震え出した。
後編は近いうちに出すかも……
ここまで、色々と私の趣味に付き合って下さった方々、ありがとうございました。
後編が投稿されて、区切りが付いたとしても、この小説はどんどん続いていきます!!!
いつの日か終わる時が来るまで、どうか暖かい目で見守って下さいね(*・ω・)*_ _)
せっかくの節目ですので、誤字や脱字はしっかりと直させて下さい!!!
気づいたことがあれば、コメント等で教えて欲しいです(*´艸`)