私の転生物語 ~龍神として生きる~   作:夜刀神 闇

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今まで閲覧して下さった皆様、ありがとうございました。
区切りが着いてしまいますが、これから投稿されていく本編にもご注目下さいませ(*´艸`)


では、後編です!!!


第50話 もしもこの世界に星が降り注ぐなら。 ~後編~

エマside

 

 

どうして、こんなことになったの。

 

 

 

アビス「これは非常に悪しき問題です!」

 

 

 

……どうして。

 

 

 

アビス「私は、この問題を踏まえて……事件を引き起こした宇宙界神である「夜刀神 闇」を」

 

 

 

あなたはどこにいるの?

 

 

 

 

 

 

アビス「この神界から排除すべきだと考えます!!!」

 

 

 

 

 

 

闇……!!!

 

「なっ!?」

アビス「連れ去られてしまった今が好都合です。神格を抹消し、神界へ出入りする権利を剥奪するのです……龍神王様、いかがお考えですか」

 

アビスが、龍神王様に向き直って意見を仰いだ。

私はというと、怖くて龍神王様の顔を見ることが出来なかった。

闇を大層気に入られているというのに、そんなことを言って大丈夫なのか……

 

神琉「……」

アビス「……龍神王様?」

神琉「……………………れ」

「……!」

 

私は、恐る恐る龍神王様の方を向いた……

そして、恐怖した。気づいてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……龍神王様が、この上なく恐ろしい表情をしていることに。

 

 

神琉「……黙れアビス

アビス「ひっ……ぃ……!!!」

 

アビスは、龍神王様の覇気と表情に圧倒され、腰を抜かしてしまった。

手に持っていた書類がバラバラと床にばら撒かれる。

 

神琉「今、この会議で主導権を握っているのは"俺"だ。今度勝手な真似をしたら……消す」

アビス「も、申し訳ございませんでした!!!」

 

涙目になったアビスが、土下座をして龍神王様に謝罪した。

それを見た龍神王様は、まるで興味が無いといった表情で、ぷいと顔を逸らしてしまった。

他の神々はというと、ガタガタと震えて俯く者が殆ど。

元々、そんなことを言うようなお方ではなかったし、他の者に興味を示すこともなかった。

私は、この時初めて龍神王様が本気で怒る所を見た気がする。

 

 

神琉「……この会議は終了だ。進展があったら報告するのでそのつもりで」

 

先程の威圧はどこへやらといった表情で皆に伝えた。

龍神王様のあんな顔はもう見たくない……。

アビスもアビスだけど。

私は、"自分の仕事"を終える為に会議室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

闇side

 

牛鬼「おや?泣いているのか?」

 

牛鬼は、わざとらしく笑って、私の後から後から溢れてくる涙を優しく拭った。

私らしくもない感情。泣くなんて……

神になってから涙を流したことなんてほとんどなかったのに。

 

牛鬼「最高の最後だな……宇宙界最高神と共に滅ぶ……ふっ」

 

気味の悪い笑顔……といっても牛鬼は腐っても美しいが……

ぶつぶつと独り言を呟く牛鬼。

ゴゴゴゴゴ…………と地面が震えている。

そもそもここはどこだろう……神社の近くなら皆が危ないんだけど。

 

牛鬼「ほら、もうすぐ終わるんだ。そんな悲しい顔するなよ?笑顔で終わらせるべきだろう」

 

牛鬼がそう言った瞬間、床がパキパキと割れ始めた。

そこから黒い何かが溢れ出し、周りのものを全て飲み込んでいく。

 

 

牛鬼「俺たちを消せるものなんてこの世のどこにも無い……が、"ブラックホール"だけは別だろ?」

「……そうね。確かにそうだわ」

 

 

確かにそうだ。

今まで生きてきた中で、私を存在ごと消せるものなんて全く無かった。

……いや、西行妖があったか。

 

私を消せるものなんて存在しないが……

光すらも飲み込んでいくブラックホールならば……或いは可能なのかもしれない。

 

この……長きに渡った神生(戦い)に決着をつける時が来たのね。

もう皆に会えないのはとても悲しい……けど、でも、私の後任はもういるもの。

それに、牛鬼に殺されて散ったなんて聞いたら笑われちゃう……そんなの嫌だわ。

 

 

 

 

 

そう、もう、これで良いの。

私はもう十分生きたもの。後は貴女たちで紡いでいくのよ。

 

サララ……と私を抱える牛鬼が足から粒子となって吸い込まれていく。

無論、私も例外ではない。

消えてゆく、全てが。

 

 

「アマテラスたちは」

牛鬼「あいつらは無事だ。もうこことは遠く離れた所にいるからな」

「……そう」

 

 

そう言っている内に、刻々と終わりの時間が迫り来る。

あっ……紫にご飯作ってくれてありがとうって言えなかったわね。

……仕方ない、かしら。

香織にもっと色んなことを教えたかった。でももう大丈夫。

 

 

「新たな生を授けて頂いたのに、ありがとうと伝えることも恩返しも出来なかったわ」

牛鬼「……そうだな、あいつは間違いなく悲しむだろうな。良いのか?」

「えぇ、もうここまで来てしまっては私も何も出来ないもの……今の私に出来るのは、運命に身を任せることよ」

 

 

牛鬼は、少し考えた後、私の髪を撫でて言った。

 

 

牛鬼「お前との死闘は楽しかったぞ」

「……あらそう。私にとっては本当に死闘だったんだけどね」

牛鬼「俺は何度も殺しかけたが、本当に殺してしまうとあいつが黙ってないだろう。丁度いい所でいつも止めてたんだよ」

「はぁ、どうせ楽しんでた癖に」

 

 

私は、柄にもなく牛鬼との会話を楽しんでいた気がした。

そんな訳ないだろうけど、迫り来る最期がそうさせているのかとしれないわね。

 

 

「ねぇ、そうでしょう……」

 

 

私がそう問いかけても、返ってくる答えは無かった。

先に行って、嘲笑ってやる。とでも言いたかったのか?

何にせよ、最後まで意味が分からない奴。

もう粒子すら感じ取ることは叶わなかった。

皆にとっては最高の結末だろう。元凶がいなくなったんだもの。

 

 

私が、牛鬼消滅の為の鍵になるなんて思いもしなかったでしょうけど。

 

 

「さ、運命に身を任せようかしら……」

 

 

私は、宙に手を翳して消えてゆく自分の体を眺める。

漫画とかでよくある消え方だけど。

こういう感覚……だったのね、割と意識はハッキリしているわ。

瞬きをして、次に見た時には私の手はもう無かった。

 

 

 

「でも、ちょっと、怖、い…………か……も………………」

 

 

 

私は、最後に残っていた掠れた声を出した。

あら、怖いだなんて。私らしく……ない。

 

 

 

前世と違って、死ぬってことを意識する死に方ね。ふふ……

 

 

 

長きに渡った私の命に、終止符がつく音がした。

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、神社の方では……

 

 

アマテラス「お姉様!お姉様ぁぁぁ!!!」

ツクヨミ「アマテラス姉様……あのお方ですから、大丈夫ですよ。今まで何度も生還なさっているんですかr」

アマテラス「どういう根拠でそれを言ってるのっ!!?牛鬼に攫われたのよっ!」

ツクヨミ「ぐっ……ご、ごめんなさい……」

 

 

取り乱すアマテラス、それをなだめるツクヨミに掴みかかるアマテラス、別室で寝込むスサノオ……神社の奥で震えながらひとしきり泣いているチロル。

皆がいる神社は、少々大変なことになっていた。

いつも冷静なはずのアマテラスが、これだけ取り乱すなんてとても珍しいことだった。

 

夜刀神 闇奪還作戦は見事に失敗し、ボロボロになって神社に帰ってきた三貴神だった。

まぁ、それを目の当たりにした香織にとってはどうすることも出来なかっただろう。

 

 

アマテラス「ねぇ、香織……!貴女従者でしょう。主の居場所くらい…………って、え?」

 

 

さっきまで後ろにいた香織に、何か策は無いのかと聞こうとしたアマテラスだったが……。

 

 

アマテラス「大丈夫!?香織!」

ツクヨミ「香織さん……!?」

 

 

そこにいたのは、苦しそうにうずくまる香織だった。

それだけなら良かったが……いや、良くはないけど……

香織には、とある変化が起きていた。

 

 

アマテラス「髪の色が変わってるわよ!?」

ツクヨミ「本当です……!どうして……」

香織「うっ……どういう、ことです……?」

 

 

香織は、元々濃いめのエメラルドグリーンに輝くとても美しい髪を持っていた。

ただ、本人にとっては闇にはとても敵わないとのことらしいが……

そのエメラルドグリーンの髪が、2割程になり、残りの8割はなんと、闇と同じ色……銀色に輝いていた。

それを見た香織は、驚くでは足りないくらいとても驚いていた。

 

 

アマテラス「お姉様と同じ髪色……?」

香織「えっ!?……えぇ、その、ようです……でもどうして……」

 

 

所々緑の部分はあるが、やっぱり大部分は銀色にすっかり変わってしまっている。

綺麗に2分されているのではなく、所々混じってる、みたいな感じだ。

 

 

香織「っ!これは……」

 

 

香織は、自身の主に貰ったイヤリングに触れる。

紫色に淡く光るアメジストだったのだが、石はほとんど割れてしまっていた。

せっかく貰った大切なものなのに、と残念がる香織だったけれど……

一方の闇は、そんなことよりももっと大変なことになっていることなんて、この時の香織は気づきもしなかった。

闇の神力が徐々に薄れゆくことにも気づかなかったのだ。

 

 

アマテラス「それは、お姉様に貰ったものでしょう?」

香織「えぇ、そうです。後で謝らないと……」

 

 

胸の真ん中でギュッと手を握り、自身の主の安全を祈る。

何も出来ないことに腹立ちながらも、ずっとずっと祈っていた。

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

闇side

 

薄く曇ってハッキリ見えない視界。

自身の体を抱え、高速で動く誰か……

風を切り、阻む草木を散らす音。

暖かく、ふんわりした匂い。

 

 

 

 

……なぜ、自分は生きているのか?

どうして、五感が残っているのか?

不思議に思っても、なかなか声は出ないし完全に視界が晴れない。

 

 

千奈「もうちょっとだから……もうちょっとだからね……きっと、君は……」

 

 

あら、千奈の声がする。

私を抱えていたのは千奈だったのか……

私を救ってくれたのも千奈なのかしら?

牛鬼に襲われ…………って、あいつは消滅したんだっけ。

 

 

千奈「……っと、着いた!皆ーーー!!!闇を見つけてきたよーーーっ!!!」

 

 

私を抱えながら、神社の方に向かって叫んだ。

何よ……うるさいわね……と思っても、声は出ないから仕方ない。

と思っていると、中からドタドタと床を踏む音が聞こえてきた。

 

 

アマテラス「お姉様!!!」

ツクヨミ「お姉様!?髪が……」

香織「御先祖様……!!!」

 

 

多分、皆して私を覗き込んでいるのだろう。皆の顔が薄らと見える気がする……

あぁ、この匂い。皆の匂いだわ。

ツクヨミが気になることを言ってた気がするわね。傷んでいるとかそういうことだと思うけど。

 

 

千奈「とりあえず、中に運ぶよ!」

 

 

千奈は、私を抱えたまま、神社の奥…………また、あの部屋。

私が5年間眠っていた部屋に、私を運んだ。

何故か布団が既に出されており、千奈はそこにそのまま寝かせた。

 

 

アマテラス「とてもお姉様には見えない……けど、きっとお姉様なんだわ。絶対に……また、私と笑いあってくれる……はずよね?」

ツクヨミ「アマテラス姉様、それは私も同じです。早く目を覚まして欲しいのですが……」

 

 

アマテラスとツクヨミと香織が後ろでそっと見守る中、千奈は私のすぐ側について、瞳孔の確認、脈拍等の確認をしていた。

この確認方法は現代人しか分からないはず……本当に現代人なのね、貴女……。

 

 

千奈「限りなく危ない状態だと思う……でも、それは人間としての話だからきっと大丈夫」

 

 

多分、アマテラスとツクヨミに言ったんだろう。

アマテラスとツクヨミの良かった、と安堵する表情が見える気がするわね。

皆と話したいことがいっぱいあるのに……なんで声が出ないのかしら。

試しに……

 

 

「ゔぅっ……」

千奈「……え?闇?」

 

 

千奈がそう言うと、視線が一斉に私に向かう。

やっと声が出たと思ったら、あんな声が……まぁ、仕方ない。

 

 

「う……みん、な……」

千奈「起きたの!?」

アマテラス「良かったぁ……(><)」

ツクヨミ「お姉様……」

香織「御先祖様……ご無事で……」

 

 

限りなく掠れて小さな声ではあるけど、やっと声を出せた。

視界は全然戻ってくれないけど、声帯は復活してきたみたい。

皆の顔が見れないなんてね……生き返った意味がない気が。

というか、そもそも生き返ったと言っていいのかしら?

 

 

「こえ、が、でない、の」

アマテラス「生きていてくれただけで良いんです……!」

香織「お力になれず、申し訳ございません……」

ツクヨミ「本当に、本当に良かった……!!!」

 

 

私を取り囲み、皆が涙する様子が簡単に想像出来た。

声帯は回復した。でも、相変わらず視界は晴れないけど……

こんなに自分が愛されてるだなんて、簡単に命を投げ出すものじゃないわね。

私は、開いた瞳をまた閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

私が見事生還してから1ヶ月が経った。

体はいくらか動くようになったけど、まだ歩くのは少しだけ億劫ね。

気づいたことなのだけれど、あの戦いというか……消えそうになった時に、私はほとんどの神力を失ってしまったらしく、今は存在を保つ為だけの神力しか保持していないらしい。

 

……後、視界は相変わらず晴れていない。

だから、皆の顔を見ることが未だ叶わない。

自分の今の姿も……見られていない。

どうしてかはわからないけれど。

 

 

香織「御先祖様、お加減はいかがですか?」

 

 

ノックの音が聞こえ、聞きなれた声が響く。

私が入室の許可を出すと、香織が部屋に入ってくる音が聞こえた。

香織の声。香織は、私が生還してからずっと、私のお世話をしてくれている。

上手く歩けない私を気遣い、目の見えない私の目になってくれている。

時々、私を抱えて散歩にも連れて行ってくれる。

これを、24時間体制で。

 

 

「ふふ、いつもありがとう。この位本当は自分でしたいんだけどね……」

香織「私は御先祖様の手足であり目でもありますから……」

「本当にありがとう……」

 

 

いただきます。と言い、香織が持ってきてくれた料理を自分で口に運ぶ…………ことは出来ないので、香織に料理を食べさせてもらう。

 

 

「うん、美味しいわ……貴女って本当に料理上手よね。これで、私がいなくなっても平気かしら……」

 

 

私は、つい思ったことを口に出してしまう。

…………私には自分がいつ本当に死ぬのか見当がついてしまっている。

後から聞いた話だけど、牛鬼は本当に、完全に消滅したらしい。

だけど、そのせいで私の生命力が9割以上削られてしまったんだとか。

生きて、動けるだけで奇跡なんだって……

 

 

香織「何を仰いますか。貴女様は永遠に、私の尊敬する主なのです。だから、生きる希望を、可能性をお捨てにならないで下さいませ……」

「……そうね、最後まで諦めないでおくわ」

 

 

そうは言ったけど、死にそうなのは本当。

最後まで足掻くけど、それもいつまで持つか。

……それと、実は主様から伝えられていることがある。

 

 

 

『俺の力で、闇を元通りにすることも出来る』

 

 

 

と。

でも、私はそれを、二つ返事で断った。

自然に任せると決めたから……ね。

主様は、そうか……とだけ言い残し、それから訪ねてきていない。

見放されたんだって、思いたくはないけど……

 

 

「……美味しかったわ、ありがとうね。貴女はもう仕事に戻って頂戴」

香織「かしこまりました。ではまた何かあれば遠慮なくお呼び下さい」

「えぇ、いつもありがとう」

 

 

香織は、静かにこの部屋を去った。

襖を閉める音が鳴ると、途端に部屋の中が静かになった。

虚無感が凄いわね……本当は香織にずっといて欲しかったけど、何も出来ない私に変わって、私がやっていたことをあの娘が全て代わりにやってくれているのだから、仕方が無い。

 

 

千奈「闇、最近どう?」

 

 

千奈がノックをしてから襖を開け、部屋に入ってきた。

この娘は、定期的に私の所にお見舞いに来てくれる。

輝夜や永琳、妹紅も定期的に来てくれる人たちの1人。

住んでいる所が遠いから、会える期間は開くけど結花も……後は、海神の導も。

 

 

「本当に皆に愛されてるのねぇ……」

千奈「君が残したものは、未来永劫語り継がれる程のものだよ。きっと永遠に忘れられないさ」

「そう…………所で、私の髪は……どうなってる?」

 

 

千奈が来る度に、私は髪の毛のことを聞いている。

どうやら、色々と変わってしまっているみたいで。

その度に事実を聞いては……肩を落としている。

聞いているのはこっちなのにね……(′・ω・`)

 

 

千奈「……正直に言うよ?」

「えぇ」

千奈「日に日に……"黒く"なってる。前髪に銀髪が残ってくれてるから良いけど、それも探し辛くなってる。もしかしたら、"近い"のかもしれない……」

「……ありがとうね。貴女にも世話になったわ」

千奈「……大丈夫。何かあったら呼んでね?」

 

 

 

少しの会話を交わした後、千奈は部屋から出ていった。

"近い"……か。

もう、私の髪の毛はほぼほぼ真っ黒になってしまっている……のね。

まるで、転生した時と同じ感じかしら?でも、前世の私の髪色焦げ茶色だったからなぁ……

 

私は、千奈と少し言葉を交わすと、部屋を出ていく千奈を見送った。

こうやって千奈と話せるのももう少ししか無いのかもしれないわね。

 

ちなみに、千奈は人里でどんな仕事をしているのか気になったんだけど……

どうやら、人里の子供たちに無償で読み書き等を教えているらしい。

この時代には、読み書きが出来る人がほとんどいなかったらしく、大人ですら読み書きが出来る人は本当に貴重だったのだとか。

 

千奈自身はお金は要らないと言っているらしいが、子供たちの親がチップと称して食べ物等を渡してくれるらしい。

そのおかげで、暮らしには全く困っていないんだって……

 

 

「私がいなくても世界は回る、でしょうね」

 

 

創ったのは私なんだけど……別に、世界を誰が治めようがどうだっていいもの。

トップに立つのが主様で、その次に来るのが……恐らく香織じゃないかしら。

私の神力……全部渡すつもりだから。

だから…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、ぐっ」

 

 

独りで考え事をしていると、急に喉の奥が熱くなった。

思わず咳をすると、後から後から溢れてくるものが。

ドロっとした様な……液体が。

 

 

「何、これ」

 

 

喋ろうとすると、また痰のからんだ咳が出る。

その度に……溢れてくる。

 

 

「がっ……!ぁ、は、ごほっ」

 

 

私が何度か咳を繰り返していると、部屋の向こうからドタドタと足音が聞こえてくる。

足音だけで、誰が来たのか分かってしまうなんて……病的かしら?

うっ、苦しい…………!

 

 

 

 

紫「師匠!大丈………………き、きゃあぁぁっ!!?」

 

 

紫がノックも無しに襖を開けると同時に、悲鳴をあげた。

目は相変わらず見えないから何が起こっているのか全然分からない。

紫が何に吃驚しているのかすら分かってあげられない。

 

 

香織「どうした、紫……って、御先祖様!!!」

 

 

香織が、私の方に急いで駆け寄ってくる音が聞こえる。

何よ、そんなに急いじゃって。私は無事よ?

……って言いたい所だけど、今の私は喉の奥が熱くて痛くて仕方ない……の。

 

 

香織「っ……!!!紫!早く、清潔な布と水を!」

紫「は、はい!」

 

 

紫がこの部屋から出ていく音がする。物凄く急いで……

なんて思っていると、思わず顔を顰めてしまった。

物凄い鉄の匂いがする。まるで手術室に入ってしまったみたいな……

 

 

香織「御先祖様!分かりますか?香織です!しっかり……!!!」

 

 

香織が耳元で叫ぶ。

意識が朦朧として、その声すら、聞き取り辛くなってきた。

元々晴れていない視界が、更に濁っていく。

頭が痛い……

あぁ、皆の顔が滅茶苦茶頭の中に浮かんでくる……

これが、"走馬灯"ってやつ?なら、私はもうすぐ死ぬ?

本当に……?

 

 

香織「ーーー!!!」

 

 

香織、何を言っているのか分からない……もう少しはっきり言ってよ……

そう言おうとした私の言葉は血と共に喉の奥に飲み込まれ、消え去った。

運命よ、私には最後に言葉を伝える権利すら与えて貰えないの……?

ねぇ、ねぇ、ねぇ!!!

 

 

?「(その機会は今だけじゃないでしょ?次があるじゃんっ!)」

 

 

頭の中に何者かの声が響き、私の意識は完全に暗転した。

あら…………息も、心臓も、止まってる……

誰なの……と尋ねる暇もなく、多分、これが死ぬってことなんだと思う…………

 

 

 

 

……最高に下らなくて最高に最高の神生だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香織side

 

 ̄ ̄ドクン!!!

 

 

血を吐いて意識を失われた御先祖様の傍で手当にならない手当をしていると、私の心臓が大きく激しく鼓動した。

それと同時に……

 

 

パンッ

 

 

何らかの音がしたので、音がした方を見ると、御先祖様の指にはめられていた指輪が、粉々に砕け散っていた。

確か、この指輪は龍神王様から頂いたものだと……

 

 

「……えっ?」

 

 

私は、御先祖様の髪の毛に異変が起こっているのに気がついた。

異変というか……

生還なされた日、驚く程に黒くくすんでしまっていた髪の毛だけれど、銀色の部分は確かにまだあった。

だけど、日に日に銀色の部分が少なくなっていって。

銀色は黒地に目立つ……今、改めて見てみると……

 

 

「無い、無い……」

 

 

銀色の部分が見当たらない!

前髪で唯一輝いていた銀色の部分が、全く煌めきを放たなくなっていた。

それどころか、何故かお顔に生気が感じられない。

私は、最悪の事態を想像してしまって、震えた。

 

 

 

 

まさか……

 

 

 

 

小刻みに震える手を抑えながら、そっと御先祖様の手に触れる。

……体温が伝わってこない。

いつもならもっと、暖かかった。

体温が変化しやすい種族といえど、一応、一定に保てるようにしていたはずだ。

 

何かの間違いだ。

間違いであってくれ。

 

そう思って私は、震えが大きくなっていく手を抑え、恐る恐る御先祖様の首に…………触れた。

 

 

 

 

「……あぁぁ」

 

 

 

 

冷たい……

本来、沢山の血液が流れる所であるはずの首元……

そこが、体温を発しなくなっている。

それによって、導かれる答えなんて、1()()()()()()

 

 

 

 

「うあぁぁぁっ!!!」

 

 

目を背けたくなるような事実に気づいてしまった。

声に出そうとすればする程、涙と嗚咽が邪魔して上手く言葉が出ない。

今、私の顔はめちゃくちゃになっているだろう。

こんな顔、誰にも見せられない。

 

 

紫「香織!持ってき……たわ……」

 

 

襖を開けっ放しにしていた部屋の外から紫の声がした。

思わず振り向いたが、紫はそんな私を見て唖然としている。

普段涙など見せない私がこんなに惨めな姿を見せているのだから、当然か。

 

 

「……紫」

紫「……はい」

 

 

それでも、私は紫にこの出来事を伝えないといけない。

黙っている訳にはいかない……。

私は、嗚咽しながら、伝えたくもない事実を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

「……御先祖様が、亡くなられた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千奈side

 

闇が亡くなった。

初めに聞いた時は、何かの間違いだと思う位、衝撃的なことだった。

神力を失くしても、闇は闇だから……

 

……しかも、僕が最後に闇に会った直後に、だそう。

 

僕は何をしたかったんだろう。

事実を伝えるだけ伝えて、放ったらかしにしてしまった。

もう少し、闇の傍にいてあげたら死期が伸びていたかも……

 

 

神琉「そこまで思い詰めなくても、闇はお前のことを責めたりしないだろう」

「うん……」

 

 

僕は、人里にある自分の家でぼうっとしていた。

たまに、この龍神王……神琉が来てくれるから暇すぎることはないんだけど。

不思議なのが、龍神王が意外に淡々としていて、悲しんでいる風には見えなかったこと。

いつもなら、仮面を被ったような表情だが、闇への愛は本物のように感じていた。

僕は龍神王じゃないから、いつも闇へどんな風に接しているのか分からないから、本当のところは知らないけど。

 

 

「……ねぇ、これからどうなるの」

神琉「闇がいなくなって、龍神の座に穴が空いている。だから、闇が望んでいた通り……香織を正式に龍神として認める」

「やっぱり、そうなるんだね」

 

 

龍神の座に1番近いひとだったもんね……と呟く。

香織が龍神の座についたとして、困ることは何もないだろうけど……

心はどうなるんだろう、とふと思った。

突然、敬愛していた、1番よく理解してくれる主を亡くした香織の心は?

……香織じゃないから知らない、と言ったらそれまでだけど。

 

 

「もう会えないなんて」

神琉「寂しいか?」

「勿論」

神琉「……俺もだ」

 

 

まさか、と思って龍神王の顔を見ると、いつもの顔に寂しげな表情が。

一瞬吃驚したけど、まぁ、一時的なものだろうとすぐに目を逸らした。

闇がしようとしていたこと、誰かがやり遂げてあげないと……

僕はそう思いながら、明日からの日々を考えていた。

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