今日は、前日にあった適性試験を受けた者の内の合格者が集まる日。
まぁ、現代風に言うと、入学前登校みたいなもんかしら?
?「あの、すみません!」
「……?」
前日に集まるように言われていた場所へ向かっていると、突然肩を叩かれた。
何やら聞き覚えのある声だ、と振り向くと、試験の時に知り合った人物がいた。
依姫「貴女も受かったのですね!良かった♪これも何かの縁ですし、一緒に行きませんか?」
前日と変わらない装いの、依姫がいた。
依姫もまた、軍の適性試験に受かったのだろう。嬉しそうに私の方へ近づいてくる。
「勿論、受かったわ……貴女も受かっていたのね。総当たり戦の時は会えなかったけれど……納得のいく結果が出たようで、安心だわ」
私は、依姫の提案を快く受け入れると、人混みの中を一緒に歩いていった。
……それにしても、凄い人の数ね。まぁでも、試験の時よりかは少ないくらいか。幾らか試験で振り落とされたのだろう。
「そういえば、依姫はどうして軍に入ろうと思ったの?」
依姫「んー……私の実力を試したい、というのもありますし、単純に都市の役目に立てたら嬉しいというのもありますね」
なんて良い子なんだろう。
暇つぶしに入った、だなんて私の理由が急に恥ずかしくなってくるわ。
「素敵な理由ね。お互い頑張りましょう」
依姫「ふふ♪貴女のような素敵な方と一緒に働けるのが楽しみです!」
やだ、そんな褒めても何も出ないわよ。
……そんなやりとりを続け、やってきたのは現役の軍人が出入りするところだった。
そこで、軍隊員の人間が訓練しているのが見受けられる。
「ねぇ、依姫」
依姫「何ですか?」
「……あの隊員達、どう思う?」
依姫は、少しうーん……と手を顎に当てて考えた後、こう言った。
依姫「……正直な所、拍子抜けといった所です。自分の力を過信する訳ではありませんが、少なくとも、私たちの足元にも届かないでしょうね」
「……やっぱり、貴女もそう思う?」
……私が思っていたことを、全部言ってくれた。
まぁ、それを表に出すようなことはしないけれどもね。
軍は以外と広く、普通のオフィスのようなところだった。
自分たちの部屋の番号が貼られてあるのを見てみると……
「あら、私たち同じ所みたいよ?」
依姫「えっ?……あら、本当。これも何かの縁なのですかね」
私たちは、あまりの偶然に笑いながら、エレベーターに乗り、指定の階に着いた。
「ここね」
私達は、とある部屋の前で歩を止める。
依姫「私たちは……Aクラスですか、1番上のクラスですね。試験の結果からして、妥当といったところでしょうか?」
「そうね」
決して自慢している訳では無い。
軍の適性試験の結果、私たちはAグループになった。
結果の段階は、下からE、D、C、B、A、の順番。
永琳に聞いてみたが、Aグループは毎年殆ど数人程度しか出ないらしいのだ。滅多に出ないのだとか。
明らかに少なすぎる。なので、まだ人数のあるBグループと一緒の教室にされるのだとか。それでも、Bでも少ない位だ。
「少ないとは言ったけど……まさか、Aグループが私達だけだなんて」
依姫「えぇ……そうですね。軍の人間の実力はどうなっているんです?」
もう1度言うけれども、決して自慢している訳では無い。
私は、前のホワイトボードに書かれた自分の席へと向かう。
室内の構造は、2人用の白い長机が前から3つずつ並んでいる感じである。
教室の収容人数は、20人……位だろうか?
私は、依姫とすぐ側の席だ。
依姫「皆さん……やはり、男性しかいませんね」
「そうね……やはり、女性で軍に応募する人間は少ないのかしらね?」
依姫「例年、女性で応募する方はほぼいないそうです。悔しいですが、身体的構造で見ても、女性は男性と比べて力では敵いませんから……」
「同じくらい鍛えた者同士であれば、どうしても差がついてしまうものね」
悔しいが現実だ。筋肉の付き方が違うから。
だけど、それを覆すのが訓練というもの。
何ていう会話をしていると、部屋の扉がガラッと開いた。
それだけで、騒がしかった空気が一変し、静かになる。
なんだか怖そうな教官が部屋に入ってきたのだ。
教官「皆の者、先日の試験に受かったこと、本当におめでとう。私からも祝わせて頂こう……さて、私は、このクラスを担当させて頂く教官だ。これからよろしく頼むぞ」
それだけ言うと、教官は手元の紙を整理し始めた。
男性「これから、訓練や任務に当たる時の為、自分のことを書いてもらう」
そうやって、列の1番前の人に紙を後ろへ回すように指示した。
私の番が来て、後ろ……依姫に紙を渡し、紙を見る。
私は、前世でお気に入りとして使っていたシャープペンシルの模様を型どった物を使い、基本情報を書いていく。
プロフィールの紙は、大体B4位の大きさだろうか。
「名前、年齢……年齢か。私って何歳だっけ…………あっ、確か軍入隊試験の時に提出した情報は、14歳だったよね」
とりあえず、前世での年齢を書いておく……ん、私の本当の年齢?さあ、私でも分からないわ。
名前や年齢の他にも、性別、戦い方、使う武器……などがある。
使う武器か。私は普段、日傘使ってるけど……ここは依姫とかに合わせて刀でいいか。
その他にも色々あったが、さっさと書き、シャープペンシルを置く。
周りの人達も終わったのか、ペンを置き、暇そうにしている。
男性「……皆終わったようだな。それでは、今度は前に立って、1人ずつ自己紹介をして貰おう」
……誰からかな?前の列の人からかな?
あっ、ちなみに、私の席は窓側の席ね。
男性「それでは、そこのお前!」
……え?私?
まさか当てられると思ってなかったので、思いっきりキョドってしまった。
男性「ほら、早くしないか」
えぇ……
私は、仕方なく教壇に向かう。
チラッと依姫の方を見てみると……
依姫「(頑張って~!)」
私のことを応援するような感じで私を見ていた。
そして、皆の前に立つ。
何故か勘違いされることが多い気もするが、私は元々コミュ障だし、それは今でも健在のようであり。
すーはーすーはー、よし。
「え、えぇっと……わ、私は夜刀神 闇……です。得意な戦い方は……剣術です。えぇっと……これから、宜しくお願いします……」
いや、凄いたどたどしいなぁオイ!
……今まで静かだった教室が、突然火薬を入れたように爆発的な歓声に包まれた。
その中から、様々な声が聞こえてくる。
 ̄ ̄よろしく!
 ̄ ̄銀髪だ!珍しいし、すっげぇ可愛いな!
……な、何もそこまで。そこまで言わなくても……
私は、恥ずかしさの余り急ぐように自分の席へ戻った。
全員が全員そうじゃないっぽいけどねー……まぁそんなもんよね。
次の人もその次の人も自己紹介をしていって、その時間は終わった。依姫も、私と同じような反応を受けていた。次の時間は、役割決めをするらしい。
私含む隊員は、正式に軍の制服を貰った。
制服を着て、永琳と写真を撮った……これも、何かの思い出になるだろう。
依姫も、嬉しそうに写真を見せてくれた。依姫の隣に、まさかの人物……いや、家族写真だし当たり前なんだけど、
「へぇ、これが都市の剣……なるほどね。銃剣もあるのか。まぁ、こんなものなくても別にいいけど、この都市に住むって決めたからには合わせたいしねー」
私は、これから使っていく自分の武器を見定めていた。
1人1個ってわけじゃあないんだけれども、まぁ面白そうだし。
ビームを出せる銃……ボタン押して振るだけで剣先が出てくる銃剣……おっ、弓矢もあるんだ。へぇ、拳銃も。
銃よりも永琳が放つ矢の方が怖い気がするけど、まぁ、そこは、ね?
永琳「明日まででしょう?申請期限」
「えぇ、そうなの……うーん……」
新入隊員は、渡されたリストの中から武器を選ぶ。
ぶっちぎりで不人気なのが弓矢らしい。使いにくいんだってよ。人を選ぶ……みたいな?ハチロク的な?
よし、剣にしよう。
……え?弓矢にしろって?やだ、永琳みたいに上手く使いこなせないわよ。
永琳が、軍で使う剣を持ってきてくれた。特別に貸してくれるんだってさ。
私は、柄をしっかり握り、重みを確かめていた。
「確かに、新入隊員みたく、まだ未熟な者にとっては使いやすいのかもね」
永琳「そうね…………それで、闇。ここだけの話なんだけど」
私は、永琳の話を聞いて、驚いた。
なんと、試験のランクが高かった者は、特別な武器を与えて貰えるらしい。
それで、永琳が直々に掛け合ってくれて、私の方にその武器とやらが回ってきたのだと言う。
「へぇ、これが」
永琳「弓矢を使いたくないってことだからね、特別にね。弓矢と同じく使う者は選ぶ武器だけど、貴女になら使いこなせるでしょ?」
……刀か。
確かに、試験の時に使っている人はほとんどいなかった。
しかも、刀を振るって戦っているのなんて、私くらいしか居なくて驚いたりもしたっけ。
「うん、分かった。これを使うことにするわ、ありがと、永琳」
永琳「ふふ、貴女ならそう言ってくれると信じてたわ」
私は早速、鞘から刀を抜き、軽く振りかぶった。
「おぉ……これは期待できるわね」
意識していなかったのだけれど、まさか庭の草まで刈り取られる程の衝撃が出るとは思わなかった。
永琳「凄いわね……まさかこれほどとは。だけど、闇?貴女の実力は認めるけど、髪の毛は縛るか切るかした方が良いわね」
「あー……そういえば、そうね。確かに邪魔か」
私はなんとなく顔の横の髪の毛をいじった。
今は肩より長く、肩甲骨あたりまで伸びている。
試験の時も、少し邪魔だった気がする。
「縛ってみるわ。ありがと、永琳」
永琳「こちらこそよ」
……何日か過ぎた後。
晴れて私は軍隊員としての歩みを進めていた。
まさか、人間の世界に身を落とし、軍に入るだなんて、この都市に来た時は考えもしなかったけれどね。
依姫「闇さん、これから初めての任務ですけど……緊張します?」
「いいえ、別に。そこまでかしらね」
いざとなれば、目の前の妖怪1匹消すくらいどうってことないし。って言いかけた。アブナイアブナイ……
そういえば、依姫は私と同じ刀を選択した。依姫ほどの実力者であれば、扱えるだろうな、とも思った。
…………そして、今から向かう場所は、都市の外。私がこの都市に来て、初めて出ることになる。
大きな壁に囲まれて過ごす毎日はそこまで窮屈ではなかった。そもそも、体感で1億年以上はこの都市以上に窮屈な場所で過ごしていたのだから。
「……行くか」
定期的に、都市の外に現れる穢れ……妖怪を退治するのが私の仕事だ。そう、初任務である。
私は腰に下げた刀の柄に手をかけ、都市の外へと1歩を踏み出した。