心七side
しまった。まさかこんな時間になるなんて……
紫さんと遊んだ次の日、私は少し離れた場所にあるペットショップまで足を運んでいた。
昨日確認したところ、カメたちのご飯が少し減っていた。
あと、フィルターのメンテナンスをした時に、汚れが落ちにくくなっていたので、替え時だな……と思っていた。
「いやぁ、あそこの店員さん器具のこととか色々教えてくれるからなぁ……思わず話し込んじゃった」
見たことない器具が入荷されていたりすると、これはこうで……って詳しく教えてくれるのだ。
後は、最近カメちゃんたちどうですか?って様子を聞いてくれたりする。
でも、まさか、こんな時間になるまで話し込んでしまうとは思わなかった……>_<;
「それにしても……こんな時間だからか、流石に誰もいないや」
そこそこの大きさの道だし街灯もあるけど……いつもの時間なら開いてるお店も閉まってるし、道行く人々も全然だ。
車通りも無いに等しい。
「は〜、もうちょっとで家だなぁ、アポロ〜、チロル〜、待っててねー!」
家に帰ったら、まずは新しく買った器具を設置してみよう……なんて思っていた。
そして、後ろから声をかけられたので振り返ると、男性が3人いた。
なんで私を呼び止めたんだろう……?と思っていると、その内の1人が私に話しかけてきた。
男1「君、1人?」
「まぁ、そうですけど……」
男1「じゃあさ、俺らと遊ばない?良いとこ連れてってあげるからさぁ」
「えっ……」
良いとこ!?何それ!行きたーい!
……なんてことを言う程私はバカじゃないので、丁重にお断りすることにする。
だって、めちゃくちゃ怪しいんだもん。
こんな夜遅くに、しかも私に話しかけるなんて、何か企んでるに違いない!
そう思って、私は、怪しみながらも丁寧に言葉を選んで断った。
「ごめんなさい、今から帰らないと」
男性1「いやいや、そんなこと言わないでよ〜。ちょっとでいいからさー!」
男性2「うわっ、コイツ、自分がナンパされてると思ってんじゃね〜〜の?ぎゃはは!!!」
男性3「自惚れも程々にしときなよ〜?w」
「は、はぁ……」
なんなんだ、じゃあなんで私に話しかけたんだ……とてもめんどくさいことになった……と心底思った。
本当に、こういうことを言う人の心理がよく分からない。
例えるなら……綺麗だねって話しかけておいて、断られたら、ブスの癖に!というような人のことね。
「あの、もう帰っていいすか……」
男性2「いやいや、返すわけねーじゃん」
「うっ……きゃ!?」
私が、もうこんなめんどくさい奴らに関わるのはよそう、と思い、半ば無理やり帰ろうとした。
そしたら、その中の1人が私の腕を掴んで引っ張った。
「あ、あの!やめてください!」
男性3「コイツ、自分に拒否権あると思ってるみてーだぞ?」
男性1「あるわけねーのにな〜!w」
男性2「とりま、そこの路地裏にでも引き込もーぜ」
無理やり引っ張ってくる為、力を入れづらい。
あー!こんな時、護身術とか学んでたら……!なんて思っても、もう遅かった。
大人の男性3人の力に、力の弱い女性1人が勝てるわけない。
そう思っていると、後ろから聞きなれた声がした。
不思議と、物凄く安心する声で、物凄く迫力のある声だった。
?「もし……そこの男性方、そちらの女性はお知り合いですか?」
男性1「あぁ?……あー、そーそー!知り合い知り合い!」
男性2「何?お姉さんもこの子と知り合いなん?」
男性3「うわっ、お姉さん美人ー!」
振り返ってみると、驚きと同時に、何故か全身の力が抜けるほど安心してしまった。
何故あの人がここにいるのかは分からないけど、これで助けを呼んでもらえる……!
そう思った私は、その人に声をかけた。
「"紫さん"!すみません、助けてくれませんか!!?」
紫「言われなくても分かっておりますわ……だって、貴方がたが、嫌がっているみぃさんを無理やり連れ込もうとしてた所、ぜーんぶ撮っておりますもの♡」
うふふ、と笑った紫さんは、少しばかり怖かったが、でも、物凄く頼りになりそうな雰囲気だった。
てかなんで、紫さん、夜なのに日傘さしてんの?
そこはまぁどうでもいいけど……
男性1「チッ、コイツ……っ!」
男性3人のうちの1人が、私の腕を離し、紫さんの携帯を奪おうと掴みかかった。
危ない!!!って叫ぼうとしたけど、その前に紫さんはその男性の腕を、さっきまで日傘をさしていた逆の手で掴んでいた。
男性1「は!?」
いつの間にか日傘が無くなっていること、自分が避けられると思っていなかったのか、男性はめちゃくちゃ驚いた顔をする。
私もだいぶ驚いてる……けど、この道でたまたま出会ったのが紫さんで良かったと、謎の安心感がある自分がいる。
男性1「テメェ……っ!!?」
紫「さて、選ばせてあげます。醜く生きるか?美しく死ぬか?」
私がポケーと眺めていると、突然男性が苦しみだした。
よくよく見てみると、紫さんが男性の腕に力を込めているような気がする。
てか、ミシミシ言ってるから、確実だろ……どんな握力してんの、紫さん……
紫「はぁ、もう貴方は引っ込んでてください」
男性1「ぎゃ!!?」
紫さんは、掴んでいた男性の腕を体ごとそのまま放り投げ、電柱に激突させた。
なんて腕力なんだ……なんて思う暇も無く。
流石の男性も頭を打ってしまっては太刀打ち出来なかったようで、そのままぐったりしている。
男性2「おい!俺らの邪魔すんなよ!!!」
この状況を見て、紫さんに掴みかかれる度胸がすげぇなとも思ったが、やっぱりバカなんだな……と瞬時に理解した。
だって、圧倒的力の前に、無謀に向かっていくのは愚か者のすることだ。
あ、ほら、紫さんに足払いかけられて転んで、伸びてるよ……
紫「そうですか……降参しませんか……」
紫さんは、1度深呼吸をしたかと思うと、残りの男性に向かって言った。
なんか怒ってそうだけど……どうだろう?
でも、私なんかの為にこんなに色々してくれて、本当に嬉しい……
そもそも、私に色々構ってくれるっていう点から謎だけど。
男性3「おい!こっち向けよ!!!殺ってやる!!!」
残りの男性がポケットに手を入れ、出したものは刃渡り10何cmのナイフ。
私はそれを見た瞬間、流石にギョッとした。
そこまでするのか、と。
それに、いくらなんでも紫さんが危なすぎる。
「紫さん!刺されちゃう!!!」
紫「……あらら」
私は必死で叫んだが、紫さんは手を口に当てて少し驚いただけのようだった。
何をそんなに悠長に……流石に命が危ない!
……と思っていたのだが、それは杞憂のようだった。
男性3「ゴフッ」
さらりとナイフをいなし、一瞬で男性の鳩尾に一発お見舞いしていたのだ!
てゆーか、もうこうなってくると男性の方を心配してしまいそうになる。
死んでないよね……って。めちゃくちゃ鈍い音してたし……
そして、そのまま男性は地面に崩れ落ち、ナイフも転がって落ちた。
紫「美しく残酷にこの大地から去ね…………それと、みぃさん!お怪我はありませんか?」
「あ、はい。大丈夫ですけど……死んでませんよね?」
紫「良かった。さっき、腕を掴まれたりしていたので心配だったので……そうですね、死なない程度に殺しておきました」
ふふ、と笑顔で語りかけてくる紫さんは怖かったけど頼りになりそうだった。
つまり気絶させただけか、と勝手に解釈したけど合ってる?
まぁ、どうでもいいや……と思っていると、紫さんが散らばってしまっていた私の荷物をかき集めて、渡してくれた。
紫「とってもカメが好きなんですね?お家にお邪魔した時もカメがいましたもんね」
「えぇ、大好きですよ♪」
服の汚れてそうな部分を払い、紫さんと共に歩き出した。
もうこんな時間に1人で歩かねぇ……と思っていると、紫さんが思い詰めたように話しかけてきた。
紫「みぃさん、これから、お家にお邪魔して、お話聞いて頂いてもよろしいですか?」
「え?今からだったら遅くなっちゃいますけど……大丈夫ですか?」
紫「えぇ、勿論。何時でも構いませんよ」
「それなら良いんですが」
持ちますよ、と言われて、ありがとうございます、と荷物を持ってもらうことにした。
結構重かったから助かった……ε-(´∀`;)ホッ
それにしても、紫さんがこんなに思い詰めて話すの、見たことなかったなぁ。
何かあったのかな?話を聞いて欲しいってんなら何でもドンと来い!だよねぇ。
「紫さんにはいつもお世話になってますし、さっきも助けて貰っちゃったので、何かお返しさせてください♪お話くらいならいつでも聞きますので!」
紫「本当ですか!嬉しい……」
ふと紫さんの顔を見ると、さっきまで思い詰めたような悩んでいるような顔だったのに、ぱぁっと笑顔に変わっていた。
私なんかで役に立てるなら、なんでも言うこと聞いちゃう!
紫「ふふ、しかし……このような時間の女性の1人歩きは危ないので気を付けて下さいね」
「あーっ!スミマセン……ご迷惑を」
紫「良いのですよ、分かって頂けたら」
そう言って、紫さんは私の頭を撫で撫でしてくれた。
あ、そこ、めっちゃ気持ちいい……っていうのは置いといて。
確かに、もうこんな時間に歩き回るっていうのはしないだろうね。
痛い目見たっていうのもあるし、紫さんに迷惑かけちゃったし……
紫「さてさて、お家に帰りましょうか♪」
「はい!」
何故か、居心地良く感じる紫さんの隣で、帰路についていた。
今日は凄い偶然が重なって助けられちゃったな……
だって、偶然紫さんが通りかからなかったら、私はあのまま乱暴されたりしてたかもしれない。
私は、なるべく紫さんに迷惑をかけないように努力しよう……と思うのであった。