私の転生物語 ~龍神として生きる~   作:夜刀神 闇

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第60話 進展と反応

ここは、現代の日本の、とあるマンションの一室。

 

 

バシャ、バシャ、バシャ…………

 

 

水が何度も何度も跳ねる音がして、遂には止んでしまった。

しかし、止んだその数秒後に、一際大きな水音がし、ドゴッ、という、何かが放り出されたような音が響いた。

 

 

?「うーーー…………!」

 

 

放り出されたのと同時に体のどこかを打ってしまったのか、抑えて痛がるような素振りを見せる。

外の風でカーテンが揺れ、外の光が漏れてきた。

それと同時に、放り出された少女は手で眩しそうにする。

 

光のおかげで、部屋の様子がだいぶ分かるようになった。

少女は、カーテンを全開にし、部屋の様子を確認する。

そして、自身の状態を確認出来る鏡を見つけ、鏡の前に移動し、そして、絶叫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チロル「服、着てないッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫side

 

 

「へぇ、それでそんなことが」

心七「そうなんですよー、あれがこうで……」

 

 

私は、師匠と一緒に師匠の家に向かっていた。

というより、もう着いてるんだけど……

そう、今日、決行する…………というか、一応話を聞いてもらうだけなんだけど。

 

 

心七「……あ!」

「どうかしましたか?」

心七「すみません、ちょっと忘れ物しちゃいました!」

「えっ、あ……みぃさん!」

 

 

私が呼び止めるのも虚しく、その鍵で入っといてくれと言わんばかりに鍵を渡され、師匠は走っていってしまった。

もしかして、ポストかなんかに入っている郵便物を取り忘れたとかかしら?

それなら、私が取りに行くのに……と思いながら、玄関のドアを開け、お家にお邪魔した。

リビングまで廊下が続いている為、その廊下の先にあるリビングのドアに手をかけ、1歩リビングに足を踏み入れると、ひとつの影がゆらゆらと動いていた。

 

 

?「……」

 

 

外が真っ暗で何も見えなかったので、壁に付いている電気のスイッチを押した。

そして、部屋の中がパッと明るくなったと同時に、長いこと一緒に暮らしてきた姿が目に入った。

 

 

「あら、チロルちゃん?貴女も来てたの」

チロル「そうなの!しかも、あの邪神、人の姿で送ってくれなかったんだよ!?この時代に生きているはずだった私の元々のカメの体に魂を憑依させられるっていう……本当にひどいよね!!!」

 

 

緑色の髪を揺らし、プンスカと頬を膨らます妖怪の少女は、私に不満の感情をぶつけた。

師匠の周りの人物が来ることは分かってたんだけど、まさかチロルちゃんが!と、思った。

というより、チロルちゃんを見た時に重大なミスに気づいてしまった。

 

 

「ち、チロルちゃん。いつから"その"姿で……?」

チロル「今日の昼くらいかな?服すら送ってくれないなんて、ホント酷いんだからー!」

「困ったわね……」

 

 

生憎、今の私は他の服を持っていない。

身長は私より数cm低いくらいなので、実質私と同じ服でも間に合うんだけど……

それよりも、師匠が今のチロルちゃんを見て、不審者、侵入者、としか思えないだろう。

だから、何とかしないと……と必死に思考を張り巡らせた。

 

 

「チロルちゃん、カメの姿に戻れる?師匠がもう戻ってきてしまうわ」

チロル「そ、そうだね…………っと!」

 

 

ボン!とチロルちゃんの体から煙が出て、姿が消えたかと思うと、目の前の床には1匹のカメがいた。

そういえば、カメの姿のチロルちゃん、あんまり見たことないかも……

 

 

「話が纏まったら、また声をかけるわ」

 

 

そう言って、私はチロルちゃんを水槽の中に戻した。

水はフィルターと師匠の日々の努力によって、とっても綺麗に保たれている。

というか、そういえばの話なんだけど……もう1匹のカメの正体ってなんなのかしら?

師匠と一緒に過ごしていた時にはいなかったわよね……?

チロルちゃんの番かしら?それにしては、チロルちゃんから何も聞いていなかったような。

 

 

心七「紫さーん!すみません、お待たせしましたぁ!」

 

 

考え事をしていると、どうやら師匠が戻ってきたようだった。

そう、話を聞いてもらわなきゃいけない。

 

 

「みぃさん、お茶を入れておきますから、カメちゃんたちの世話、してあげてください♪」

心七「えっ!あっ……分かりました、ありがとうございます!」

 

 

師匠は、買ってきた器具をガチャガチャと取り出し、それを棚へ置き、整理し始めた。

ちなみに、師匠にとっては違いがわかるのだろうけど、私には、器具の違いなんてさっぱり分からない。

 

そういえば、なんだけど……

チロルちゃんとは長年家族として過ごしてきたけど、チロルちゃんって師匠に元々飼われてたカメなのよね。

チロルちゃん的には複雑じゃないのかしら?

 

 

「みぃさん、お茶を淹れたので、ここに置いておきますね」

心七「あ、ありがとうございます!」

 

 

師匠は、器具の整理が終わったのか、テーブルへとトコトコ歩いてきて、座った。

よし、心の整理は出来た。今から話すのよ。

 

 

心七「それで、紫さんの聞いて欲しいお話ってどんなのですか?」

「あぁ、それがですね……実は……」

 

 

私は、師匠の目の前で一瞬の内にコインを出して見せた。

師匠は多少驚いた様子だったけれど、前見たやつですよねーって言って大した反応ではなかった。

まぁ、それが手札ではないんだけど。

 

 

「こういうことも出来るんですよ」

 

 

私が、両手をパンって叩き、両手を下に向けると、手のひらからコインがジャラッと音を立てて大量に落ちてきた。

流石に、師匠はめちゃくちゃ驚いていた。

 

仕組みはこう。

私の手のひらにスキマを出現させ、事前に入れておいたコインを出すだけである。

 

 

心七「えっ、えぇーっ!?流石にヤバすぎですよ!どうやったんですか!?」

 

 

師匠は、私の手の上や下、私の腕の所らへんまで隅々まで見ていた。

あ、ちょっとそんなに見られたら恥ずかしい……(/// ^///)

……なんて思っても顔に出すのを必死に我慢して、師匠に仕組みを説明した。

 

 

「実は、コレ……」

心七「え?何これ……」

 

 

私は、手のひらを師匠の方に向けて、スキマを出現させた。

師匠は私の手に触れ、スキマにも少し触れていた。

自分の指が私の手をを貫通するのに驚き、慌てて指を離した。

 

 

心七「これ、紫さんが前言ってたマジックですか?タネはどこに……」

「……………………タネは、ありませんわ」

心七「え?」

 

 

私が意を決してタネは無く、自分の力だけでこうやっているのだと話した。

流石にコインのくだりだけでは信じて貰えなかったので、私がいつも使っているスキマを出し、その中に入った。

スキマが消えると、師匠は振り向いたりして動揺して、背後から私が肩を叩くと、目を見開いて腰を抜かしていた。

 

 

心七「紫さんは、な、何者なんですか……?」

「私は、人間ではありません。妖怪なんですよ」

心七「え、妖怪!?アニメとかに出てくる!?」

「はい」

 

 

私は、スキマを出し、覗いて見て下さいと言って、師匠にスキマの中を覗いてもらった。

スキマの先は、市内の上空。

師匠は、驚いたような、怖がっているような顔で私を見てきた。

 

 

心七「紫さんは、どういった目的で私に近づいたのですか?」

「あ……私は、ただ……」

心七「妖怪は人間を襲うと聞いたことがあります。紫さんもそうなんですか?」

「ち、違います!確かに妖怪の多くは人間を襲いますが……私は……」

 

 

私は、その言葉の先を言おうとして、思わず口を噤んでしまった。

確率の話だ。妖怪である以上、人間を襲う確率が1%でもあるのに、"絶対に人間を食べない"と言ってもいいのだろうか?

そう思っていると、師匠が恐ろしそうに口を開いた。

 

 

心七「すみません……紫さん」

「……はい」

心七「今は、紫さんと冷静に話せそうに話せそうにありません」

「……」

心七「このままだと、紫さんに酷いことを言って、後悔してしまいそうなんです…………だから、ちょっと、頭冷やしてきますね」

 

 

師匠はそう言うと、静かに家を出ていってしまった。

追いかけるべきなんだろうが、何故か足が動かない。

本来なら、妖怪だと知って恐ろしいだろうし、罵声も浴びせたくなるだろうに。

それでも、最後まで私のことを傷つけないことを、考えていた。

……なんて出来た人間なんだろうか。

 

 

「うっ……うぅ…………」

 

 

師匠に拒絶されてしまった悲しさと、私の不甲斐なさに涙が出てくる。

声を出して泣いたことなんて、師匠が亡くなった時以外無いが、溢れ出てくるものは仕方ないでしょう?

霊夢にこんなところを見られたら「妖怪の賢者も泣くのね〜」くらい言われそうだわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「なぁーに泣いてんのよ、紫!」

「ふぇ?」

 

 

上から聞きなれた声がしたので見上げてみたら、まさかの霊夢がいた。

今考えてたことが現実になるとは、誰が思っただろうか。

霊夢に見られるなんて……なんという偶然かしら?

 

 

「ぐすっ…………霊夢?何故貴女がここに?」

霊夢「龍神王に言われたのよ。様子を見てきてやれってね……そしたら、まさか貴女が泣いてるなんて思わないでしょ?それに、玄関開いたのにすら気付かなかったの?相当落ち込んでるのねぇ」

 

 

霊夢は、溢れ出てくる涙に声も出ない私の背中を、さすってくれた。

霊夢がちっちゃい頃は私が世話してたのに、これじゃ、あべこべだわ……

 

 

霊夢「そ・れ・に!みぃさんは、別に貴女を拒絶した訳じゃないと思うわよ?」

「え?で、でも……」

霊夢「でもじゃない!みぃさんは、拒絶するようなことを、一言でも言ったの?」

「……言ってない」

 

 

確かに師匠は、私のことを受け入れ難いような発言はしていなかった。

ただ、戸惑ったような、今は何も考えられないような顔をしながら、家を出ていった。

 

 

霊夢「前に話させて貰ったけど、みぃさんは良い人よ。あの人なら、話せば理解して(わかって)くれると思うわ?」

「でも、もう1回、話を聞いて貰えるかしら?」

霊夢「それは貴女次第でしょう?いつもの胡散臭い態度はどうしたってのよ?」

 

 

胡散臭いは余計よ、と言って霊夢の額にデコピンをした。

霊夢は、いったーい!と言って私のことを睨んでくる。

だけど、霊夢のおかげでもう1度話をする覚悟が固まった。

 

 

「うふふ、ありがとう。霊夢」

霊夢「普段通りに戻ったわね……別に、お礼なんか要らないわよ」

 

 

もう、ツンデレなんだから〜と言って霊夢の頭をわしゃわしゃと撫でる。

霊夢は凄く鬱陶しそうにしていたけど、でも、本当に感謝している。

私は、霊夢から離れ、スキマの中にあった普段着ている服を取り出し、急いで着替えた。

 

 

霊夢「あら、もういいの?」

「だって、私は師匠に私のことを知って貰わないといけないんですもの。もう隠しごとをしている場合ではないわ」

霊夢「そうね、一応私も着いていってあげるわ」

「あら、優しいのね霊夢ちゃん♪」

 

 

私が再び霊夢のことを撫でようとすると、即座に霊夢の手によって阻止されてしまった。

少し残念だったけれど……棚の上にあった鍵を取り、私たちは家から出た。

 

 

霊夢「私も、隠しごとしてるようなものだから……」

 

 

霊夢はそう言うと、いつも持っている大幣(おおぬさ)を握り締めた。

静寂が劈く(つんざく)夜に、2人だけの足音が響く。

 

 

霊夢「ていうか、貴女のことだし、スキマの中にでも無理やり連れ込んでさ。『幻想郷に来て』って迫れば済む話じゃない?」

「……貴女、結構エッグいこと考えるのね?」

霊夢「妖怪に言われたかないわよ!」

 

 

そんなに単純な考えではいかないのよ、と言ってスタスタ歩いていく。

どこにいるかなんて分からないけど、とりあえず急がなくては。

また、さっきみたいな男どもに襲われてしまっては大変だわ。

 

 

霊夢「ねぇ、スキマ使ったら気配を辿るより一瞬じゃないかしら?」

「あー……えー……そうね、そうしましょう」

霊夢「……忘れてたでしょ?」

 

 

色々と考えることが多すぎて、自分の能力の存在を忘れていたとは……

都合の悪いことは聞こえませんとばかりに、スキマを開き、躊躇無く足を踏み入れた。

後ろに、霊夢も続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には、公園のベンチに座り、足元を見つめる師匠の姿があった。

師匠は、私たちの存在に気づくと、はっとして此方を見た。

 

 

心七「ゆ、紫さん……?と、霊夢……?」

 

 

師匠の顔を見ると、目の下に涙の跡があり、少し腫れぼったくなっていた。

あぁ、私ったら師匠を泣かせるなんて……

悲しませずに連れてくる計画が台無しだわ、と思っていると、霊夢が口を開いた。

 

 

霊夢「みぃさん、あんなことがあった後で、今の紫を怖がってしまうのもすっごく分かる。でも、同じ人間として、紫の話を聞いてあげて欲しいの」

心七「……同じ人間として?」

 

 

霊夢は頷き、ベンチに腰掛けると、私の方を見て隣をポンポンと叩いた。

こっちに座れという意味だと捉えて、素直に隣に座った。

 

 

霊夢「紫は確かに妖怪で、すっごく強い能力を持っているわ。だけど、ね。紫はそれを振りかざして自慢することもなければ、妖怪のクセに人間の味方をするヤツなのよ。変わってるでしょ?」

心七「……その、なんで私に関わってくれるのかが分からない。人間なんて、数え切れない程いるというのに」

 

 

私がまだ人間だった時、師匠は、妖怪に追いかけられてた私を助けてくれた。

そして、皆のところに連れて行ってくれて、面倒を見てくれて、いっぱい幸せを与えてくれた。

ただの人間だった私を何故助けてくれたのか、そういえば聞いたことがなかったわね。

 

 

霊夢「それは、紫にとってみぃさんが特別な存在だから……………………みぃさんの前世で、特別な存在だったからよ」

心七「前世……!?」

 

 

師匠は、霊夢の言葉にめちゃくちゃ驚いていた。

正直、私も霊夢が師匠にこのことを話すとは思っていなかったので、少し驚いたけど。

 

 

心七「その、前世って、どういうこと……?」

霊夢「あぁ、それはね……」

 

 

霊夢は、そこまで言いかけて、私の方を向いた。

ここから先は自分で話せと言うのだろうか?

確かに、こういうことは自分で話した方が良いと思う。

折角の場面を霊夢に頼ってちゃあ、大妖怪の名が廃るもの。

 

 

「みぃさん、さっきはごめんなさい。驚かせてしまいましたね……」

心七「あ、あの。紫さん……」

 

 

師匠は、おもむろに立ち上がったと思うと、私の前まで来て頭を下げた。

 

 

心七「ごめんなさい!」

「あっ、え?みぃさん!?」

 

 

何故謝るのか全く分からなかったけど、とりあえず師匠に頭を上げるよう促した。

師匠に頭を下げられるなんて慣れてないし、謝られるようなことをされた覚えもないから。

師匠の反応は正常だと思っている。むしろ優しすぎる方だって……

 

 

心七「猫カフェで会って、不思議で素敵な人だなって思ったんです。しかし、それと同時に、どうして私のことをこんなにも気にかけてくれるんだろうって、ずーーーっと思ってたんです。そして、今日、紫さんが実は妖怪だったって知らされて……その一瞬の内に、紫さんが実は私のことを食べようとしてるんじゃないかって思っちゃったんです」

 

 

私は、その言葉を聞いて心が傷んだ。

確かに、幻想郷には、人食い妖怪が沢山いる。例えば、宵闇妖怪のルーミアや鳥の妖怪のミスティア・ローレライなんかが良い例ね。

というか、そもそも妖怪は人間を襲ってその肉を喰うもの。

たまに言われるわ。妖怪らしくない妖怪だって。

 

 

心七「でも、今まで紫さんが私にしてくれたこととかを考えたら……そんな考え、無くなっちゃいました。私を食べる為に私の信頼を得ようだなんて、そんな回りくどいこと、紫さんがする訳ないなって」

 

 

まさか、そこまで見透かされているなんて、と少し笑いが込み上げてしまった。

これも、龍神だった頃の名残だろうか……と思いを馳せる。

 

 

心七「それに、命の恩人である紫さんにそんな失礼な考えは出来ません」

 

 

師匠は、少し俯きがちにそう言った。

命の恩人であるのは私も同じだと思ったし、何より、私が助けたいと思ったから。

師匠の"元龍神"という肩書きを見ていたのではなく、"師匠"を見ていた。

 

 

「ありがとうございます、みぃさん……本当に……」

心七「あっ!?え!?紫さん、なんで泣いて……霊夢、紫さんが!」

 

 

またしても、勝手に涙が出てきた。

そんな私を見て物凄く慌てて、隣にいる霊夢に助けを求めている。

私は、流れてくる涙を必死に止めようとするが、全然止まらない。

しかも、霊夢はそんな私を見て少し吹き出している。

…………あーっ!恥ずかしい(//////)

 

 

霊夢「……とまぁ、紫の正体が分かったところで、本題に移りたいんだけども。なんか、紫が話せそうな状態じゃないから私が話すわね」

 

 

霊夢が、痺れを切らしたのか、私に変わって話し始めた。

まさか、こんなに泣いてる姿を皆に見られるなんて、とてもじゃないけど幻想郷じゃ出来ないわね……^^;

 

 

霊夢「まず、紫は"幻想郷"っていう、こことは隔離された土地の支配者。そして、私はその土地にある神社の巫女よ。ここまでは良いかしら?」

心七「……もう、何を言われても驚きませんよ」

 

 

幻想郷は、私が作った2つの大きな結界によって隔離されている世界。

幻想郷は全てを受け入れる…………それはそれは残酷な話よね。

 

 

霊夢「貴女は前世で紫と知り合い、そして長い期間家族として暮らしてきたの。まぁ、私はその時生まれてないから言い伝えでしかないんだけどね」

「えぇ、霊夢の言う通り。みぃさんと私は、家族だったんですよ」

 

 

私がそう言うと、師匠は少し驚いた後、前世での話をしてきた。

 

 

心七「前世でも、私は人間として生きていたんですか?」

 

 

私は一瞬、どうやって伝えようかと思ったけれど、ストレートに伝えることにした。

だって、伝わりにくい遠回しな言い方だったら、あんまり知って貰えないと思うしね。

私は、師匠が前世で龍神だったこと、この宇宙全てを支配する神だったこと、そして、神社にいた皆のことも話した。

 

とても愛されていた……今も愛されている人物なのだと、私は一生懸命伝えようとした。

だけど、思い出していくと、懐かしい思い出が邪魔をして、涙がまた溢れてきてあんまり話にならなかった。

だけど、師匠は、私の手を包み込んで、優しく静かに最後まで聞いてくれた。

 

 

「だから、電車に轢かれそうになった時、また身近な人を亡くさなければならないのか……と、とっても不安になりましたし、目を覚ましたと知った時は本当に嬉しかったんですよ」

心七「そ、その節はご迷惑を……」

 

 

師匠がまた謝ろうとしたので、私は慌てて止めた。

だって、師匠は何も悪いことをしてないんですものね。

……本当、お人好しなんだから。

 

 

「私はわがままだから、また一緒に暮らしたいなって思っちゃったんです。だから、みぃさん……幻想郷に来てくれませんか?」

 

 

私は、ずっと言いたかったことを師匠に話した。

どんな反応が返ってくるのか凄く不安だったし、少し躊躇われもした。

だけど、言わなきゃ始まらないので覚悟を決めることにした。

 

 

心七「紫さん、1つ聞きたいのですが……宜しいですか?」

「えぇ、勿論。何でも聞いて下さい」

心七「……幻想郷は、楽しいところですか?」

 

 

私は、幻想郷の皆のことを思い浮かべた。

異変が起きて、人間たち……主に霊夢がそれを解決して、神社でどんちゃん騒ぎをする日々……

 

 

「……とっても、楽しいところです!」

 

 

それを聞くと、師匠は私の気持ちを感じ取ってくれたのか、凄く楽しそうな顔をした。

楽しいところだけど、師匠が来たら、皆がその存在を祝福し、もっともっと楽しくなるだろう。

師匠は、私の目を真っ直ぐ見て、口を開いた。

 

 

心七「私も、そこに行って良いですか?」

「!?も、勿論です!嬉しい……!」

 

 

私は、思わず師匠を抱き締めてしまった……あ、勿論力の加減はするけど。

こんなに嬉しい出来事があるだろうか。

 

 

霊夢「さぁーてと。みぃさん、それじゃー幻想郷に行くまでの準備をしちゃいましょうか♪」

心七「あの、幻想郷に行くって言いましたけど……私の相棒たち……カメなんですけど、連れて行っていいですか?」

霊夢「?勿論よ?ウチの庭に池があるのでそこを使って頂戴♪」

 

 

チロルちゃんたちのことね、と思った。

そもそも、チロルちゃんは人間の姿を保つことが出来ているので、その時点で問題は無いけど……

もう一方のカメが妖怪化する可能性も吟味しといた方が良いかしらね。

 

 

「さて、お話も済んだことですし……1回みぃさんのお家に戻りましょ♪」

心七「はい!こんなに夜も遅いですし……ちょっと眠くなってきた気がしますしね」

霊夢「こりゃー、みぃさんが幻想郷に来たら一気に人気者になっちゃうわね♪」

 

 

私たちは、私が出したスキマに、次々に入っていった。

そう、もう1人、師匠が幻想郷に来る前に話をするべき人物がいる。

もう、さっき話したばかりだから簡単に思い浮かべることが出来た。

私が妖怪だと知った後だから、そんなにショックは受けないと思うけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう……

 

 

チロル「遅いよー、私待ちくたびれちゃったよ」

 

 

実は、チロルちゃんも妖怪だということも伝えなければならない。

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