……時代は1000年以上前に遡る。
それは、西行寺幽々子が亡霊になり、冥界の管理者になって間もない頃の話。
…………そして、龍神が現世で力を失い、命を落として間もない頃の話。
幽々子「…………貴女が何故ここに?」
『…………』
龍神は、答えなかった。
……否、龍神と言える存在なのかも定かではない。
美しい銀色だったはずの髪は黒く、長かった髪は背中まで短くなっていたから。
しかし、幽々子は変わり果てた
何故なら、それの肉体は無く、魂だけの状態……幽霊のような存在になっていたから。
幽々子「私、亡霊になったから貴女が誰だか分かるの。人間であった頃なら分からなかったでしょうね。でも、今ならわかるのよ。何故なら…………貴女は、もう死んでいるから」
幽々子は、背中に手を伸ばし、触れようとした。
……しかし、予想した通り、すり抜けてしまい、触れられなかったのである。
幽々子「貴女は今、実体の無い幽霊になっているわ…………何故?力のある貴女は負けるはずが無いと思っていたのに。何故、貴女が幽霊になっているの?」
『……私は』
龍神……いや、その幽霊は口を開いた。
『私は、力を失いすぎた。死ぬと分かっていたのに、主様に全力回復させて頂くことも出来たのに…………私は拒否した』
幽々子「……それは、どうして」
『生きろと命令されなかったから。命令されていたら生きていたわ。でも、でも……あのお方は………………』
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄"お願い"をしてきたのよ……。
◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇
「…………はっ!!!??」
私は、ベッドからガバッと起き上がった。
今はもう冬だというのに、とんでもない量の汗が滲んでおり、とても不快な気分だ。嫌な夢を見ていた気分だ。内容が思い出せない。額から吹き出す汗を拭い、洗面所に向かった。
「……ひどい顔ね」
目の下にクマが出来ており、睡眠を取れているとはとてもじゃないが言い難いだろう。私はいつも8時間は寝る。コンディションが悪くなるから……
と言いつつ、私は少し違和感を感じていた。起きた時から感じていた、あの違和感だ。いつもと違う。何が違うか聞かれたら分からないが、とにかく違和感なんだ。
「これじゃあ人前に出られないじゃない………………あら?私ってこんな口調だった……?」
余りにも自然に出た女性的な口調に、自分で驚いていた。
いつもなら霊夢とかと話す時は普通の口調なのに、どうして……
そんなことを考えていると、頭の中にとんでもない量の情報が入りこみ、激痛が走った。
「ぐっ!?…………」
声も出せないほどの激痛だった。
私は思わず床に突っ伏してしまい、床と激突した時の痛みなど気にならないほど、のたうち回った。
意識を失ってしまいそうな位の激痛だったが、長くは続かず、1分ほどで収まった。しかし、私には何時間も続いた感覚だった…………
………………私は、何かを思い出したかのように目を見開き、寝起きと同じように突然起き上がり、鏡を見た。
「……そうだ、私は!」
どうして忘れていたんだろう。
私の名前は、私の正体は、私は……………………
「
私の前々世の名前も皆星 心七だ。何故思い出せなかったのか。そう、生まれ変わる前に記憶を消されていた。消されたはずの記憶が何故か戻ってきている。
「私の、私の前世の…………
私の手が、信じられないほど震える。これは嬉しさか、戸惑いか、悲しさか、恐ろしさか………………様々な感情が入り交じり、片方の手で抑えようとするも、どうしても収まらないのだ。
「私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は………………ふふっ…………あっはははははははははははははは!!!!!!!」
幻想郷に、失われたはずの高貴な存在が舞い降りる音がした。
……いや、そんな綺麗な言葉で表せるものではない。なぜなら、"それ"は今、突然戻った自らの情報を受け付けられないでいるからだ。傍から見れば、"狂っている"と思われても仕方がないくらいに……
おもむろに立ち上がると、リビングまでドタドタと走り抜け、窓を全開にすると、ベランダの縁に飛び乗った。体が軽い。冬の寒さなんて感じない。私は、この宇宙を纏める ̄ ̄ ̄ ̄龍神なのだ。
「何も怖く…………な……い」
私の体は宙に浮いており、以前のように空を駆けようとした……しかし。今の私は人間である。
記憶を戻すより先に、能力の方を戻すべきだった。
ハッとするより前に、私の体は地面に吸い込まれるように落ちていった。
「ッ……」
私は、為す術もなく空中を掴むが何も変わらない。
落ちる ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
……と思っていたのだけど、衝撃は来なかった。代わりに、とても良い香りがする。なんだこれは。
?「……大丈夫ですか、心七様!?それに、この髪は……!」
「え……?」
目の前に、見覚えのある顔が現れる。
白い帽子に白と青の導師服、そして9本の尻尾……間違いない。
「……藍?」
藍「そ、そうでございますが……なぜ飛び降りたのです!?」
まだ、心臓がバクバクと鳴り続けている。
先程まで自分を抑えられなかったのだけど、少し落ち着いたか。
宴会などで会ったことがある。紫の後ろをいつもついて回ってる九尾だ。
……いや、戻ってきた記憶に入っているから、思い出せたんだろう。
東方Projectの、記憶が。
「藍、貴女の主の師匠として、お願いがあるの」
藍「……はい」
「紫が起きたら…………記憶が戻ったと、伝えてくれる?」
藍「!!?」
お寝坊さんの賢者に、教えてあげなくちゃね。
どんな顔するかしら?喜ぶ?怒る?
私は、藍の腕から降り、地面の冷たさに身を震わせた。そうだ、冬なの忘れてたわ。
「何はともあれ……助けてくれてありがとう。このまま落ちていたら、大怪我だったわね」
藍「偶然私がいて良かったです、本当に……しかし、いつ記憶が戻られたのです?」
「ついさっきよ。頭に激痛が走ったと思ったら、記憶が戻っていたの」
藍は、驚いて私の心配をしてくるが、大丈夫だと言って宥めた。だってもう痛くないものね。
「だけど、さっきも見た通り……能力は戻っていないから、生活は変わりないかもね」
藍「私が、下にいて本当に良かったです。紫様がお目覚めになられましたら、直ぐにお伝えしますね」
「えぇ、よろしく頼むわ」
紫のことだし、雪が溶けるまで起きないんだろなぁ。
そう思うと、少し笑えてしまった。……そう、また皆で笑いあえたら、きっと楽しい。
私を待っている人が沢山いる。
幻想郷の賢者、大親友の鬼子母神……それに……
「……香織、私の代わりはきちんと出来たかしら?」
再会出来たら、そんなことを聞こうと、胸に留めおいておくのだった。
ちなみに、私が好きなピソはアーモンド味です。
記憶はちょっとずつ戻すか迷ったのですが、一気に戻しました。
情報量大杉て目眩することありますよね?それが究極に酷くなった感じです。想像したくもありませんね。
リアルでクーラーデビューしましたぁ!暑すぎィ!!!最高気温32℃とかどうかしてるで!?