私の転生物語 ~龍神として生きる~   作:夜刀神 闇

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挿絵を本当なら投稿していたのですけど、サイバー攻撃の関係で出せないんだとか。
もう少しお待ちください


第69話 邂逅

香織side

 

 

「何故です!?何故会いに行ってはならぬのですか!?」

神琉「……今の闇は、普通の人間だ。神力すら、あの頃の闇のように上手く扱えないお前に、今の闇と会って怖がらせない保証はあるのか?」

「……」

 

 

言葉が出なかった。龍神王様の仰ることは、ご(もっと)もだったから……ましてや、記憶を無くしてしまわれているのに……

反論すら、出来なかった。分け与えて頂いた神力すら、まだ上手く扱えないのだ。私は実に1億年以上を生きる天人ではあるが、神になってたった1000年程度……

150億年以上を生きた夜刀神 闇(我が主)になど、私の一生をかけても、きっと、届かない。

 

 

「龍神王様は、御先祖様を愛していらっしゃるのですね……」

神琉「…………愛、だと?」

 

 

龍神王様は、私を怪訝そうな顔で見た。

私から見ても、お2人は主従の関係でありながら、仲睦まじい男女に見えた。

それに何より、御先祖様は左薬指に指輪を付けていた。

人間の間では、それは、将来を約束した仲の男女が付け合うものだと聞いた。だから、その…………お二方は。

 

 

神琉「確かに、闇は俺の従者であり、唯一無二の存在だ。しかし、お前が言う愛とは人間の欲望の塊のようなものではないか?俺は人間じゃないし、その気持ちも全く分からない」

「…………愛とは、広いものです。私もまた、御先祖様を愛しています。幻想郷の賢者も、妖怪の山に住む鬼子母神も、三貴神も……ですが、龍神王様が御先祖様にお渡ししていた指輪は、"それ"に当たらないと思ったのです」

 

 

"それ"とは、広い愛のこと。

そんなもので収まるほど、御先祖様に向けられていた感情は、浅くは見えなかったのだ。

 

 

神琉「なるほどな……確かに、それとは違うな」

「……そうでしたか」

神琉「……しかし、お前が言う愛とやらで片付けるには……」

 

 

 

 

 

 

 

"余りにも、軽すぎるのだよ……"

 

 

 

 

 

 

 

 

龍神王様こそ、御先祖様の運命の相手なのかも ̄ ̄ ̄ ̄

私は、少しそう思ってしまった。私でさえ、最期を看取らせて頂いたとはいえ、しかし……(まこと)に心を許して下さっていたとは言えないのか…………と。

私は、頭に生えた(つの)の重みを感じながら、独りで呟いた。

 

 

「……………………お慕い申し上げております…………御先祖様」

 

 

 

 

……あぁ、この角の重みが理解出来るまでは、まだ途方もない時間がかかりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心七side

 

 

藍「本当に、お供無しで宜しいので?」

「えぇ、大丈夫よ。何かあったら呼ぶから」

 

 

私は、散歩がてら、人里に行くことにした。

雪が降っている為に、危ないからと藍に止められはしたが、大丈夫だと言って断った。

まだ明るい時間帯で妖怪も出ない時間だし、人里まで時間がかかるとはいえ、大丈夫だろうと思ったから。

 

 

「ふぅ、ふぅ…………あぁも言ったけれど……雪道は膝に来るわね」

 

 

今だけは、脆い人間の体であることを恨んだ。

カレンダーも無いから何月かは分からないけど、幻想郷は雪がかなり積もるのね。紫が冬眠するのも頷けるわ。

それにしても……藍を式にするまで、冬の間どうやって動いてたんだろう?と、思った。

 

 

「…………運動してこなかった過去の私でも恨めばいいかしら?」

 

 

ザクッ、ザクッという心地良い音を聞きながら、今日何度目か分からない溜め息をつく。

 

 

「……はぁ〜あ、あれだけ住人集めるのに奔走したっていうのに、まさか夢叶える前に死んじゃうなんて。情けないったらありゃしない!」

 

 

私は、いつの日か作ろうと計画していた"夢源郷"を作れなかったことを嘆いた。

鴉の姉妹の彼女たちは仲間を連れてきてくれると言っていたのに……

 

 

「もしあの時……死ぬなと言われていたら……」

 

 

私は、ifの想像を何回も繰り返してしまう。

そんなことをしたとしても、過去は変わらないと言うのに……

そう思い、顔をぶるぶると震わせて気を整えた。そして、また前を向いて、勾配はキツくないが兎に角距離が長い道のりを歩き始める。

 

 

「あの頃の様に、霊力を体に纏わせて飛ぶことが出来ないか……と思ったんだけど、どうやらこの体にはそれをするだけの霊力量が無いみたいね」

 

 

あの頃は妖力を使っていた。1番使いやすい力だった。

妖怪と関わることが多かったし、それなら妖力の方が都合が良かったから。それに、霊力を一々使ってたら、雑魚妖怪が私のことを人間と勘違いして、襲ってきかねなかったから。

…………めんどくさいでしょ、一々対応するのは。

 

 

「感覚で使おうとしたら直ぐに底をついたもの。つくづく思うのだけど……貧弱ね、人間てのは」

 

 

今、妖怪が出てきたら死ぬ自信しかないでござる(´▽`)

てか思ったら、紫に貰ったあの傘、昔私が使ってたものだったのね……いま思い出したわ。返却したつもりだったのかしら。持ってくればよかった。

あー……でも、持ってきたとしても力を込められないからどの道死ぬかな?

 

 

「能力使えない、霊力使えない、カスみたいな身体能力…………私って役たたずでは?」

 

 

まさにその通り。と心の中で自分に同意したが、自分に同意してどうする、と自分にツッコミを入れた。

 

 

 

そして、歩くこと一刻ほど…………(ようや)く、人里の門前まで着いた。

 

 

「はぁ、はぁ………………ふぅ……っおぉ……これが人里かぁ…………って、ん?」

 

 

私は、人里の大きさに驚きつつ、それよりも壁の高さに圧倒されてしまった。こんなに大きかったのか、と思った。

いや、それよりも私は気になることがあった。

 

 

「(あれ……妖怪だよね……)」

 

 

私は、見たことないはずなのに、何故か見覚えのあるような気がする姿を目にした。

黄緑色の髪の毛、チェックの服、日傘をさしている女性。

私の記憶で知る限りは、現実にはこんな人はいなかった。……そう、現実ではね。

そう思っていると、人里の門をくぐり抜けようとしたその人が、私の方をチラっと見て、少し驚いていた。

 

 

?「あら、貴女は……」

 

 

その人は、私の方へと近づいてきて、少し屈むと、顔をジロジロと見てきたのだ……まぁ、美女に見つめられるというのも悪くはない。

 

 

「……風見幽香?」

幽香「あら、分かるのね?そうよ。記憶が戻ったのかしら?…………なら、1戦交えない?」

 

 

目の前にいるのが私であると分かった瞬間、目を細め、極めて危険な笑顔を見せ、日傘を振り抜く仕草をした。

元の私であったなら受けていただろうけど、今の私が幽香と戦ったら、肉塊になること必至。手加減どころの話じゃないし、それをしてくれるほど幽香は優しくないだろう。

 

 

「……お生憎様、力がないのよ。ほら」

幽香「あら…………残念ね。貴女が死んだと聞かされた時も残念だったけれど、今も凄く残念な気分よ」

 

 

私が全霊力を放出すると、幽香はあからさまに不満そうな顔をした。

どんだけ戦いが好きなのだろうか。それに、幽香が提案してきた1戦、単純に弾幕ごっこのお誘いとは思えないんだけど……

 

 

幽香「あ!それより、貴女。私と同じ名前の妖怪がいると聞いたけど、覚えてる?」

「……逆に貴女が覚えているのね。それはそれでびっくりだけど。鬼神 結花(おにがみ ゆうか)のこと?」

 

 

幽香に話していて、思い出した。あの子と出会ってから、もう数億年経つのか……なぜだかしんみり。

さて、1000年以上経っても覚えている幽香の記憶力に驚きつつ、"結花"のことだ。

 

 

幽香「そう、そう!前に貴女から聞いた鬼子母神の結花よ。今どこにいるの?」

 

 

幽香が興味津々で聞いてきた。一緒に旅をしていた頃は楽しかったし、諏訪大戦後に別れ、遠くの山で暮らしていた時も時々(何年か毎に)会っていた。

……だけど、今結花がどこにいるか分からない。

 

 

「ごめんなさい。今回の人生で、結花と再会はしていないわ……」

幽香「そう……残念ね」

 

 

幽香の何回目かになる不満そうな顔に申し訳なさを感じつつも、何となく想像はつく。

結花は幻想郷にはいない。何故なら、戦い好きのお互い。両者とも放ってはおかない……いや、おけないだろうから。しかも、1000年もの間。

 

 

「それよりも、ここにいるってことは人里に何か用事があるんじゃないの?」

幽香「……あぁ、そうだったわ。私、人里で花売りをしているのよ。ほら」

 

 

指差したとこを見てみると、向日葵が幾つか入った鞄が。

 

 

「普通よりも大きいのね」

幽香「能力のお陰で、花たちの健康管理はバッチリなの♪」

 

 

花弁の艶は良く、茎はしゃんとしていて、葉の欠けも無い。冬なのに何故向日葵なのかと思ったけど。

私は、門番に挨拶をし、簡単な問答の後に幽香と共に人里に入れてもらった。

 

 

幽香「……そういえば、貴女は人里に何をしに来たの?」

 

 

あぁ、幽香のことで忘れていた。

特に理由もなく散歩しに行こうと思ったんだよね。人里は何かといっぱいあったりするし。

 

 

「特に無いわ。散歩よ」

幽香「なるほど……じゃあ、また会った時はよろしくね。気をつけて行ってらっしゃい♪つまらない小妖怪に殺されてはダメよ?」

「分かってるわよ……」

 

 

私は苦笑いをしながら、幽香に手を振った。幽香も返してくれ、そこで私たちは別れた。

 

 

 

 

 

…………さて、久々の人里だ。何をするか。

 

 

「お金はこっちでも使えるらしいし……あ、でも、こっちに来た時、博麗神社にほとんど寄付しちゃったんだった……」

 

 

実は、貯金がそれなりにあった私。まさかこっちでも使えると思ってなかったから、紫から聞いた時はほんのちょっとだけ嬉しかった。寄付するって言った時の霊夢のあの喜びようと言ったら……

 

 

?「おや?もしや君は……」

 

 

私は、後ろから声をかけられたので、振り返ると、またまたどこかで見たような気がする人がいた。そう、さっきも言ったけど現実での話ね。

青みがかった銀髪に、小さな帽子。それに、青と白のワンピース。

そう、彼女は。

 

 

「……確か、上白沢 慧音(かみしらさわ けいね)だったかしら?」

慧音「君のことは紫から聞いているよ。幻想郷はどうだい?気分良く過ごせているかな?」

「ご挨拶が遅れてごめんなさい。私は皆星 心七(かいせい みな)。人里へは散歩にきたの…………幻想郷は凄く快適よ。これも、皆が私に気を遣ってくれてるからかしらね」

 

 

私は、目を細め、いつもお世話になっていた皆の顔を思い出していた。

迷惑かけたことも沢山あるけど、大変だったこともそりゃ勿論あるけど、それなりに人生を謳歌してきたつもり。

 

 

慧音「ほう…………あぁそうだ。今、寺子屋が人手不足でね。先生をしてくれないか?」

 

 

君、頭良さそうだしと言われたけど、わざわざ頭良くないです……とも返せなくて、慧音に着いていく形となった。

 

 

「でも、授業なんてしたことないわよ?」

慧音「子供たちと遊んでくれるだけで構わないよ……あぁ、あそこが寺子屋だからね」

 

 

そういえば、人里って言ってもここら辺まで来たことはないなぁなんてことを思っていると、他より少し大きめの建物があった。あれが寺子屋か。

 

幻想郷に来てから挨拶回りはしたけど、まだまだ回れてない所もあるし。しかも、挨拶って言っても人間相手ではなく、妖怪相手ばかりだったりする。

私の顔を覚えて貰って、襲わないようにする為だそうで……

 

まぁ、そんなこんなで寺子屋の中へと案内され、教室の前まで来た私。

なんか、物凄く古い小学校って印象の建物ね……大昔の記憶か、現代の記憶かしか無い私にとって、少し不思議な感覚である。

 

 

慧音「今日は新しい先生を紹介するぞ〜」

 

『えーーー!!!』

 

 

ガラガラっと音を立てて扉を開けると、そこには6歳〜10歳ほどの子供たちがいた。

慧音が入ってきた瞬間、子供たちが途端に騒がしくなった。それだけ好かれているんだろうなと思ったわね。

そして、皆ワクワクした様子で私の方を見てくる。

 

 

「こんにちは〜!」

『こんにちは〜!!!』

 

 

うん、元気のいい子たちだ。慧音も笑ってるし。

 

 

慧音「今日はこの先生に勉強教えて貰うんだぞ〜」

 

 

慧音が呼びかけると、子供たちはとてもいい返事をした。

私に色々教えた後、慧音は用事があると言って教室を出ていった。

子供の相手は、したこと……無いわけじゃないけど、果たして私で良いんだろうか。

 

 

「私の名前は、皆星 心七!うーん……ちょっと呼びにくいし、みぃって呼んでね!」

 

 

とりあえず授業する前に自己紹介だけしておく。

それが終わったら、慧音が言っていたように「自習」をしてもらうことにした。

子供たちは、各々のやりたい勉強をする。そこで、分からない所があれば私が教える。

 

 

?「みぃ先生、ここ分からないんだけど」

 

 

1人の男の子が私に話しかけてきた。

……おや?比較的年齢幅が広いな、と感じた子供たちだが、この子だけ少し成長してる気がする。だいたい14歳くらいじゃないかしら?

 

 

「あぁ、ここは上のyと下のyを消すのがコツでね……………………おぉ、凄いじゃん」

 

 

まさかここで連立方程式を教えることになるとは思いもしなかった。

解けたことに喜んでいるこの子の顔を見ると、不思議と私も嬉しくなってしまったわ。

 

 

「また分からないとこあったら言ってね……貴方の名前は?」

潤「俺?俺は(じゅん)だよ。ありがと、みぃ先生」

 

 

潤と名乗る少年はそう言って笑った。

同年代の異性を見るのは幻想郷に来て初めてかもしれない。

いや、幻想郷の人里に住む人たちは、意外と見た目より歳いってたりするから分からないけど。

 

他の子たちからも分からないところを聞かれ、その都度教えていたら結構時間が経っていた。

そうこうしている内に、慧音が教室に入ってきた。

 

 

慧音「おっ、良い感じだな」

「そうよ、皆良い子ね。もう終わりかしら?」

慧音「いや、次は外で運動しに行こうと思ってな。どうだ?君も参加するかい?」

 

 

幸いにも、今の服装がパンツスタイルで動きやすいものだったので、二つ返事でOKした。

運動場に出て、運動することを伝えたら子供たちも大喜びである。

私は、慧音と共に子供たちを連れて外に出た。

 

 

「これだけ雪が積もっていれば雪合戦も出来そうね」

慧音「おぉ、良い提案だ!……皆!雪合戦で遊ぶぞ!!!」

 

 

慧音が雪を丸めて向こう側へ投げると同時に、子供たちは、こぞって雪を集めだした。

年齢幅は広いけど、それだけ楽しめる雪ってまるで魔法だよね。

 

 

「私も……それっ!」

 

 

私が投げた雪玉は、子供たちに当たることはなく、少し離れた木にぶつかって離散した。

子供たちの雪玉を全身に浴び、自分は、ただひたすらに子供たちに当てないよう手加減しながら、動き回って楽しんでいた。

 

時間が経ち、カラスの鳴き声が聞こえ始めた辺りで雪合戦は解散となった。

もう帰る時間らしい……私も、もう帰らないと。

子供たちも、各々の準備をして、慧音や私に挨拶をし、帰って行った。

 

 

「ふーっ!今日は久しぶりに運動したわ……」

慧音「そうだな、人里まで来るのがそもそも大変だったんじゃないか?」

「えぇ、そうよ……普段の運動不足が祟ったのね」

 

 

慧音は、そうかと言って笑った。

今日は本当に楽しかった。子供たちと交流する機会なんてそれほどないから、新鮮で素晴らしい体験だったもの。

 

 

慧音「……それと、今日は本当にありがとうな。先生をやってくれて」

「いえ、言われるほどのことはしていないわ」

慧音「そうか…………私が少し気にしていたことがあってな」

 

 

茜色に染まり始めた空を見上げながら、慧音は言った。

 

 

慧音「子供たちの中に、比較的年齢が高かった少年がいただろ?」

 

 

私は、少し考えながらも、あぁ(じゅん)君のことかと思った。

あの子は大体14歳くらいの子だったはず。バラツキはあるものの、他の子は大体同じくらいの年齢層だったから。

 

 

慧音「……あの子は数年前に幻想入りしてきた外来人なんだよ」

「え……?」

 

 

私の気の抜けた声など気にせず慧音は続ける。

 

 

慧音「普通の外来人であれば送り返していたんだけどね、人間にしては力が強すぎたんだ」

「……それは、能力のこと?」

慧音「そうだ。しかし、能力が強かろうが精神的にまだ未熟だった彼は、私が人里で引き取ることになったんだ。寺子屋で常識も全て叩き込んでやってくれ、と八雲 紫に頼み込まれてな」

 

 

驚いた。紫がそんなことを頼むとは。

確かにそんな状況で幻想入りしたとなっては大変だろう。しかしそれを、紫が直々に頼み込むなんて…………

実際の紫の性格と、原作の紫の性格にズレが生じていると感じる。それも、私が東方の世界に潜り込んでしまったせいなんだろうけどね……

 

 

慧音「…………それはそうと、今から帰れるのか?もうこんな時間だが」

「……あっ」

 

 

私が一応持っていたスマホで時間を確認すると、なんともう16時を過ぎていた。

夏の間なら平気かもしれないが、今は冬だ。暗くなるのが早い。早く帰らなければ、あっという間に真っ暗だ。

 

 

「仕方ない、急いで帰るよ!」

慧音「家まで送っていこうか?」

「いえ、走ったら間に合うと思うし大丈夫よ!じゃあね!」

慧音「…………本当に大丈夫だろうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、慧音に別れを告げると、振り返ることも無く走り出した。

門番に人里から出ることを伝え、門番の返事を待たずに、そりゃあもう全速力で走った。

妖怪に喰われるのだけは勘弁して欲しい。噛まれたら痛いじゃないか……と思いながら。

 

 

「それにしても……はぁっ、持久力の無い私……っ、はぁ……」

 

 

 

 

 

………………だが、10分も走らない内に体力が切れ、その場に膝を着いてしまった。

しかし、ここで時間を潰してたらあっという間にお陀仏なワケで、再び走り出す私。

暗くなり始めた空を見上げ、やっぱり送って貰えば良かったかな……なんて思い始めていた。

 

 

「…………今度からは絶対送って貰いましょう」

 

 

そう強く思った時、分かれ道の奥から泣き声が聞こえてきた。

もう時間は無いのだけど、こんな遅くに泣き声?しかも、小さい女の子の……

…………いや、考えてる暇は無い。一緒に人里に戻れば良い話だ。それで、慧音にやっぱり送って欲しいって言おう。

 

 

「誰かいるの!?大丈夫!?」

 

 

私は、泣き声が聞こえる方に走った。声の主に呼びかけながら。

そうすると、泣き声の主が見えてきた。着物を着た小さな女の子だ。

私は、一緒に帰ろうと手を伸ばし、肩を叩こうとしたが…………

 

 

 

 

 

 

『グギャギャァギャギャギャ……』

 

 

 

 

 

 

私は、女の子の姿が消えると同時に、おぞましい程の"鳴き声"が聞こえ、思わずバックステップの要領で避けた。

……するとそこには、地面が抉れ、私を捕まえられなかったことに怒り狂う表情の巨大な生物がいた。

 

 

「ま、まずい!?」

 

 

思わず腰を抜かしてしまい、立ち上がって再び走ろうとしたが、貧弱な私の体は言うことを聞かず、地面に伏してしまい、私はただ単に地面の土の味に嫌な感触を覚えるだけであった。

 

 

「私何回死にそうになってんの…………?」

 

 

この小説を見ている全視聴者が思っているであろうメタいことを呟いた。

今度こそ終わった、と目をつぶり、衝撃を待ったが何も来ない。

しかし、ぴちゃぴちゃと水の音がしたかと思えば、私のふくらはぎから太ももにかけて、嫌な粘着感を覚えた。

そして次の瞬間…………

 

 

「っ……!!?」

 

 

内蔵が浮く感覚がして、目を開けると、私の体は宙に投げ出されていた。

そこで初めて、その生物の舌で脚を絡め取られ、放り出されたことを知った。

知ったところでって話だけど……

 

霊力はまだある。これでなんとか対抗出来ないか?

と考えていると、後ろから声が響いた。それと同時に、私の体は柔らかいものに包まれていた。

夕焼けの空に似合う、とても透き通った声だった。

 

 

 

 

 

幽香「元祖『マスタースパーク』」

紫「みぃs…………師匠!!!」

 

 

極太のレーザーが放たれ、それはそれは巨大な妖怪を飲み込んでいった。

殺傷能力の高い技。しかし、とても綺麗なものだった。

 

 

「幽香!それに、紫まで……もう起きたの?」

幽香「私がわざわざ起こしに行ったのよ。寝坊助さんだこと」

紫「……仕方ないじゃない!」

 

 

紫が少し涙目で言い返すが、その涙目は欠伸によるものなのか、悔しさからくるものなのか分からない。

だけど、2人が助かって良かった………………あれ?じゃあ私を抱えている人は誰だ?

そう思って、上を見てみると……昔懐かしい顔があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの日か、天界で運命の出会いを果たしたこと。

神社で共に生活を送っていたこと。

スタイルが良すぎて、いつも扉に頭をぶつけていたこと。

……そんなことまで思い出してしまうほど、色んなことが一瞬で頭の中を巡ってしまうほど、長い時間を過ごした。

 

 

「……久しぶり」

香織「……お久しゅうございます、御先祖様」

 

 

私たちは、運命の再会を果たした。

記憶にある香織とほとんど変わっておらず、ただ、まぁ……髪の色が銀色になっているのが気になるけど…………

しかし、元気そうでよかった。

 

 

香織「この神宮寺 香織(じんぐうじ かおり)、龍神王様のお許しにより、漸く御先祖様へのお目通りが叶うこととなりました」

 

 

香織は、私を抱いたまま、地面に降り立ち、とても嬉しそうな顔で言った。

幽香と紫がこちらを見て微笑ましそうな顔でニコニコしている。少し恥ずかしいものね……///

 

 

幽香「……私、その子に死なれちゃ困るからね。それじゃあ、力取り戻したら私のところに来なさい。手合わせしましょ」

 

 

幽香はそう言うと、夕焼けの空に消えていった。

それを見送ると、紫も自分の家に帰ると言ってスキマを出現させて消えた。

 

 

香織「……それでは、ご自宅までお送りします」

「……ありがとう」

 

 

私は、香織に抱えられたまま、フワッとした浮遊感を体で受けた。

妖怪に脚を絡め取られた時の浮遊感とは全然違う、心地良い感じだ。

 

 

「今の龍神は貴女なのに……私に敬語なんて使わなくて良いのよ?」

香織「何を仰いますか……私は生涯を御先祖様に捧げると誓った身であります」

 

 

毅然とした態度を崩さない香織。

チャイナドレスは変わっていないものの……耳と角に関しては立派な龍神である。

 

結花に見られたら、見た目だけなら龍神がどっちかわかんねえなぁ、なんて言われそうねっ、ふふ。

私は、香織に抱えられている心地良さに身を任せ、目を閉じた。

 

 

 

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