私の転生物語 ~龍神として生きる~   作:夜刀神 闇

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東方妖々夢 〜 Perfect Cherry Blossom.
第70話 春雪異変のはじまり


幽香side

 

 

人里で、とても可愛らしい人間を見つけた。

1度しか会っていないのに、よく覚えていた。

何故なら、私が1番興味を持つ人間だから…………いや、正確には中身の方に興味がある。

 

 

「ふふ、まさか再会出来るなんてね……」

 

 

夜刀神 闇(あなた)に。

 

 

「力を取り戻した暁には、私と初めに……ふふ♪」

 

 

私は、人里の中で、向日葵に向かって独り言を呟いた。

冬に向日葵とは……と疑問に思うかもしれないけど、私は向日葵が1番好きなのだ。

しかも、短い期間とはいえ、向日葵が冬に見られるのは人間にとって物珍しいのか、まぁ〜売れる売れる。

今日も向日葵の売れ行きが良い。

 

 

「……おっと、もう向日葵が」

 

 

鞄の中がカラになったのを確認すると、私は人里に設置されているベンチから腰をゆっくりと上げた。

ふと空を見上げると、カラスが数羽飛んでおり、もう良い時間であることが分かった。

 

 

「…………って、おや?」

 

 

人里の向こうで、何やら植物たちが騒がしくなってきている。

…………あら、あら。

 

 

「もう、しょうがないわぁ……」

 

 

起こしに行きますか、あのお寝坊さんを。

全くもって私の仕事ではないのだけれどね〜……可愛らしい人間のあの子に死なれても困るし、ね。

 

 

「さぁてと、紫ったらいつまで寝てるのかしらねー」

 

 

私は、人里の門をくぐって外に出ると同時に飛び立ち、スキマ妖怪の住処……マヨヒガに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心七side

 

 

「うう、ぐちょぐちょ……」

 

 

私は、香織と幽香と紫に妖怪から救って貰い、たった今家に帰ってきた。

ただ、生還したのは大変喜ばしいことなのだけど、足に付いた妖怪の唾液が、とんでもなく不快なのが難点。

 

 

「これ服もう使えないわね……」

 

 

森近霖之助のところで服を繕ってくれるらしいし、また今度行ってみようかしらね。

原作設定か二次創作か忘れたけど、そういう設定があったような気がする。多分。

…………違ったらどうしよ?

 

 

「…………ふぅ〜……生き返る」チャプ…

 

 

私は、家の風呂にお湯を張り、体を洗うと湯船に浸かった。

ちなみに服は捨てた。唾液の(にお)いが、とてつもなく臭かったから。

 

 

「このまま人間として死ぬのかしらね……」

 

 

人間として生まれ変わらせてくださったのはとても嬉しいけど……

でも、龍神として生きていた頃も楽しかったな、と少し昔懐かしい感覚を覚えた。

 

 

「………………………………ふぅ、そろそろ上がろうかしらね」

 

 

私は湯船から出て、脱衣所で体を拭いていると、静かに音を立てて動く洗濯機の上に、見覚えのある服があった。

忘れるはずもない、私の服。150億年、お世話になった私の服だ……

 

 

「これは、香織が?」

 

 

私は、洗面所のすぐ側にいる香織に話しかけた。

お気に入りの服だったからまた見れるのは嬉しい。

 

 

香織「……御先祖様の物は、お返しするべきかと思いまして」

「ありがとう、気が利くわね」

 

 

所々フリルで飾られているけれど、それでいて毳毳しくなく、上品に見えるドレス。

私は、袖を通し、腰上のリボン、袖上のリボンをしっかりと結び、首元のボタンを留め、香織の前に姿を現した。

香織は、少し驚いた顔をすると、元の穏やかな笑顔に戻った。

 

 

香織「黒髪の御先祖様も、本当に素敵でございますね……」

「ふふ、嬉しいこと言ってくれるわね」

 

 

そんな言葉、どこで覚えたのだか。

私は、余りにも自然に出た香織の言葉に、少し照れてしまった。

 

 

香織「……御先祖様から頂いたイヤリングなのですが」

 

 

香織は、少し申し訳なさそうな顔をして、おずおずと手を差し出してきた。

そこには、いつの日かプレゼントしたイヤリングが。しかし、それは既に壊れてしまっているようだった。

そういえば、私の神力を込めてあげたような気がする。私の体から魂が抜けたことで、能力が解除され、割れてしまったのだろうか。

 

 

香織「せっかく頂いた物ですのに……申し訳ございません」

「いえ、貴女は悪くないわ。死を選んだ私が悪いのよ…………私の最期を、看取ってくれてありがとう」

 

 

最後まで残っていた嗅覚で感じたのは、気分が悪くなるほどの血の匂いと、僅かに残る暖かい良い匂いだった。

私はそれを思い出して、香織の胸元に顔を埋めると……とても良い匂いで、変わっていなかった。

 

 

「私がいなくても、ここまでこの世界を安定させ、治めてくれた……本当にありがとう」

 

 

背中に手を回したまま抱き締めると、香織は私を抱き締め返してくれた。

 

 

今度"も"、良い人生になりそうだ……

 

 

私は、家に帰ってから更に激しくなった雪を見ながら、そんなことを思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇◆◆◆◆◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の記憶が戻ってから、数ヶ月が経った頃、雪は振り続けていた。

私の家の窓からは、未だに雪景色が見れる。冬ってこんなに長かったかな……と思いつつ、開けていた窓を閉め、振り返った。

 

 

「で、貴女はいつまでいるのよ?」

霊夢「……別に良いじゃない。減るもんじゃないでしょ」

「うちのミカンの在庫は減るわよ……」

 

 

やれやれ、と呆れたように首を振った。

博麗の巫女が、神社ほっぽっていても良いのか……と思うけど。

もはや、冬ミカンどころか春ミカンである。

 

 

霊夢「うちの神社、神様いないから良いのよ」

「博麗神社って、そういえば神様いないわね。神社の意味あるの、それ」

霊夢「あるわよ……だって、その神様がみぃさんだもの」

「へぇ、って、え!?私!?」

 

 

ここに来て初耳である。

 

 

霊夢「ただ、みぃさんの住んでいるところ、神社じゃなくてココでしょ?しかも、今は人里に神様としてのみぃさんが認知されていないし……残念だけど、信仰を受けているのは"龍神(夜刀神 闇)"であって、皆星 心七じゃない…………もっと言うなら、実質的に信仰の恩恵を受けているのは香織の方ね」

 

 

今は龍神としての役目を退(しりぞ)いたし、何も文句は無いし不思議なことではなかった。

むしろ、それだけ信仰を集められる香織は、とても頑張っているんだな……とも感じていた。

 

 

霊夢「あら、そこまで残念そうじゃないわね?」

「だって、私と一緒にいた子が私よりも信仰を集めているだなんて、こんなに嬉しいことは無いわよ?成長がほんと凄いというか……」

 

 

龍神であった頃の私なんて越してしまったんじゃないかと思うくらいである。

まぁ、強くなっておくことは良いことだし感心なんだけど、そのことで精神を病まないようにしておいてほしいわね。

 

 

 

 

ま、そのことは置いておいて。私は少々気になることがあった。それは、この降り続ける雪について、だ。

もう4月に入っているというのに、この雪の降り方。明らかにおかしい。これは異変ではないのか?と思った。

 

 

「ね、この雪何とかしてきてよ。異変でしょ、どうせ」

霊夢「……ヤダ、寒い」

 

 

霊夢は、一言私に告げるとそっぽを向いて炬燵に潜ってしまった。

…………はぁ、仕方ない。この方法は霊夢にとって少々可哀想だけど、やるしかないか。

 

 

「…………あ〜あ、ずっと降ってる雪のせいで、炬燵ずっと付けとかなきゃいけないなぁ〜。でも、電気ないから、霊力で動かさないといけないんだよね……」

霊夢「……な、なによ」

「は〜、疲れた。使う霊力量も半端じゃないのよねー。誰かさんもこの雪を止めてくれないし、霊力ももう無いし、これは炬燵無しで過ごすしかないかなぁ〜」

霊夢「だ、ダメっ!!!」

 

 

私は、炬燵のスイッチをオフにしようとすると、霊夢が飛び起きてきた。……その元気あるならさっさと異変解決に行ってきなさいよ。

 

 

霊夢「わ、分かった、行ってくるから炬燵だけは止めちゃダメよぉ……!」

「……異変解決したら雪も止まって春が来て、炬燵も必要なくなるでしょ?」

 

 

霊夢は、ぶつぶつと文句を言いながら、床にほったらかしにしていた大幣を手に取り、窓をガラガラっと開け、靴を履いて外へ出た。

最初からそうしておけば寒さも無くなってたのに、という言葉を飲み込み、霊夢に激励の言葉を送った。

 

 

「多分、今回の異変はそこまで深刻じゃないと思うから、気楽にいきなさい」

霊夢「……?まるで今回の異変のことを知ってる風に言うのね?まぁ、いいわ。さっさとこの異変を終わらせて、春を取り戻す!待ってなさい!春のぬくもり!!!」

 

 

意気揚々と飛び立っていった霊夢を見送り、今回の異変の予想をした。

異変の主は、恐らく、冥界の主……西行寺(さいぎょうじ) 幽々子(ゆゆこ)

ただ、原作の幽々子と今の幽々子だと、少し違う歴史を歩んでいるはず。なぜなら、西行妖を封印したのは私だからである。

まぁ、どっちにしろ、霊夢は上手くやるでしょう。だって、彼女は……

 

 

「楽園の素敵な巫女、だものね」

 

 

私の呟いた言葉は、誰にも聞かれることもなく、降りしきる雪とともに消え去るのだった。

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