イカの惑星   作:り け ん

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ノリと勢いで書いたものです。
それなのに原作要素は今回ほとんど出てきません。



むしろ何も知らないで見た人は何の二次小説か分かるのだろうか。



プロローグ
混乱 絶望


僕を育ててくれたお父さん、お母さん。

今までありがとう。

 

 

 

僕はこれから、宇宙人に人体実験されるようです。

多分、もう帰ることはなさそうです。

どうか、お元気で。

 

 

 

 

 

扉を開けて入ってきた明らかに人間ではない『何者か』を見つめ、彼は薄ぼんやりとそんなことを思った。

 

正直、これが「宇宙人による誘拐」ではなく「宇宙人によって誘拐された夢」だと思えたら、どれほどよかっただろう。

しかし残念ながら、この見知らぬ部屋で見知らぬ天井を見つめて起き上がってからの二分間で、

これが夢ではないことの証明を自分自身で何度も繰り返してしまったのだ。

 

しかし常人よりも少々楽観的な思考を持つ彼は、見知らぬ部屋で目覚めたこの状況が現実であると認識しても、無闇に混乱したり泣き喚くようなことはしなかった。

 

とにもかくにもまずは現状確認して、それからどうするかゆっくり…とかなんとか考えてた時に突然入って来た『人間でない生物』のご登場に、さしもの彼といえども思考が停止した。

 

『人間でない生物』とは言ったが、全体的な外見としては殆ど人間からは外れてはいない。

 

きちんと二本の足と二本の腕。腰もお腹も胸も首も顔も、そして顔の各パーツの数も人間となんら変わりない。

服装も実際に人間が来ているようなものだ。

 

ただ、違っていたのは髪。

というより、頭から女性の髪のように伸びているあれは、明らかに髪ではない。

見た感じ凄くプニプニしてそうな緑の色合いの「何か」が二房、頭上から両側に垂れている。

非常に人間の髪っぽいが、とにかくあれは髪ではない。

さらに言うならば耳の形も人間のそれではない。トゲの如く横に突っ張った耳は、

まるで頭を横から何かが貫通しているようにも見えるほどだ。

 

まあただ、この程度であればまだ

「何かのコスプレ」とギリ片付けられる範囲ではある。

(遠目から見た質感でも既に、作りものとはとても思えないリアルさが漂ってはいたが)

 

ただ決定的に人間と違っていたのは「頭身」

人間と言えば基本的に8頭身前後のバランスであると言われている。

が、目の前に現れたこの人間似の生物は、背がちっちゃく頭でっかち。

ざっと見積もった頭身は3〜3.5頭身。

どこかのマスコットキャラクターのような出で立ちである。

 

 

こんなん人間な訳ないやんけ。

 

 

いかにコスプレしようと人間にはそう簡単に頭身を伸び縮みする能力はない。

あったらいいなと思うコスプレイヤーは数知れずだろう。

億が一、ちっちゃい子供に作りものの頭部を被せる手段もなくはないが、

その場合現代の技術では到底不可能な程リアルで、顔のパーツまで動くような被り物を被っているこの子は宇宙人ではなく未来人ということになる。

 

 

 

どっちにしたって大して変わらんわボケ。

 

 

宇宙人に誘拐されようと未来人に誘拐されようと、色々な意味で絶望的な点は何一つ変わらない。

 

しかしまあ、恐らくこの生物は、宇宙人であろうと思う。

何故かというと、目の前の生物がこちらの姿を認めた瞬間、目を輝かせながら口元に笑みを浮かべ

(あくまで地球人の彼視点)て喋った言葉。

 

 

「∇“! \ > @ [ _ ” ?」

 

 

 

日 本 語 で お k

 

 

言語が違う。

彼は地球上の言語全てを把握している訳ではないが、先入観抜きで考えてみても、とても地球上の言語だとは思えない。

 

字面だと分かりにくいかも知れないが、とにかく「ふにゃほにゃにゃみにゅふにぇちにぃょ」的な語感であった。

こちらが無言でいる間に色々喋っている言葉がとにかくふにゃらかふにゃらかしている。

 

 

 

 

えっと、これはどうしたものかと彼は考える。

見た感じだけで言えば日本語なんぞ通じそうにない。いやしかしあれはきっと宇宙人。

そして宇宙人ならばきっと未知の言語である日本語も解読してくれるはず…!

 

 

そんな一途の望みをかけ、彼は思い切って言葉を口にする。

 

 

「あー…ゴホン。えーっと…

誠に申し訳ないのですが…日本語で話して頂けると…」

 

少し高めになってしまった声である程度喋った所で、

目の前の生物が無言でキョトンとしている顔を見て、彼は察した。

 

 

あ、これ言葉通じてねえや。

 

 

 

 

それから一分間。二人の間で言葉の応酬が行われたが、無駄な結果に終わっただけに留まった。

 

「〜? 〜〜〜?」

 

「あのう・・・どうかお願いですから日本語を…」

 

「〜! 〜〜~!?」

 

「う、うーん…と…Can you speak Japanese?」

 

「~~? 〜〜〜〜」

 

「…ああいや…もー結構です…」

 

彼は早々に諦めた。

それでも目の前の生物は、何やら必死に話しかけ続けていたが、

彼がただ首を振るだけのリアクションしかしないことを見て、ようやく諦めたらしい。

疲れたように肩を落とすと、少々大袈裟な身振り手振りで「ここで待ってて」的なジェスチャーをした。

 

あの生き物が去った後には、彼の混乱も多少落ち着いてきた。

何だか、思った以上に思った通りにならない。あの宇宙人に好き勝手人体実験させられるかと思ったら

何だか必死にコミュニケーション取ろうとしたり。

自分で地球人を攫っておきながら、地球の言葉を話そうとしないのは解せないことだ。

まるで自分に宇宙語が通じると思っているかのように……

 

 

自分に……宇宙語が……

 

 

と、ここで彼はちょっと嫌な気を覚えた。

先ほどまでの激動のお陰で全く気づかなかったが…

なんか…色々と変だ。 主に、頭が。

 

部屋には鏡らしきものはない。

彼は、震える右手で恐る恐る頭部に手を伸ばす。

 

そんな馬鹿なことが。

きっと気のせいだ。

この変な感覚も、きっと…

 

 

 

 

 

ぷに。

 

 

ぷにぷに。

 

 

ぷにぷにぷに。

 

 

 

「……」

 

本来なら、髪の毛がある場所。

その場所から手に返ってくる感触は、ぷにぷにとした反発力。

 

 

「……」

 

 

頭をすーっと辿っていくと、耳の後ろあたりで何かが頭からぶら下がっているのがわかる。

大体、分かっていた。分かりたくないものを分かっていた。

そこにあったのも、ぷにぷにという感触のする太い何か。

 

 

 

「……なんじゃこりゃー!?」

 

 

扉の向こうで、皿が割れるような音が響いた。

 

 

 

彼の人生でもベスト3に入るレベルの大声を出した後、何々これはどういうことと再び混乱を彼が支配した。

 

しかしその直後、先ほどの生き物が赤い汁のついた包丁を持って部屋に飛び込んできたのを見た彼は真っ青になり、一瞬で土下座の体勢に移行した。

その生き物はちょっと怒っているようでもあったが、見事な彼の土下座を見ると、苦笑いしながら戻ってった。

 

そしてまもなく、その生き物が持ってきたのは、湯気立つ赤いスープであった。

渡されても、正直怪しさ満点すぎて食べる気がしなかったが、正直ちょっと空腹でもあったし、

あの生き物がめっちゃずいずい押してくるので、仕方なくゆっくりとスプーンで一杯口に運ぶ。

 

 

普通に美味かった。トマトの味がした。

 

 

 

 

何だかめっちゃニコニコしている隣の謎生き物を横目にスープを少しずつ頂く。

それと同時に脳をフル回転させて考えを纏める。

 

とりあえず下した結論は「宇宙人に誘拐された俺氏は、

人体改造によって宇宙人と同じ体にされてしまった」という風に落ち着いた。

先程宇宙語で話し掛けてきたのも、宇宙人の体になれば宇宙語を理解できるかという実験と考えれば辻褄が合う。

 

しかしそんな実験にしては、物々しい設備も研究者らしい宇宙人もそんなに見受けられず、

このカジュアルな格好の女宇宙人(女性みたいな髪っぽいのと、膨らんだ胸部から判断)のみである。

いや、しかしひょっとしたらこの一般的っぽい部屋も監視機能つきの実験部屋で、

特殊な薬品を混ぜた料理を食べさせた過程と結果を観察している…。

幸運か不幸か、そんな嫌な妄想をした時には既にスープは全部腹のなかに収まっていた。

 

女宇宙人はニコニコしながら皿を受け取るとまたドアの向こう側に消えた。

そんな彼女とは対照的に、彼は普段の楽観的考えも何処へやら、

目の前の暗黒未来に頭を悩ませていた。

 

 

 

 

宇宙人が増えた。

スープを平らげてから大凡三十分後。

彼が絶望にウンウンと身を震わせていると、あの女宇宙人が新たな宇宙人をもう一人引き連れてやってきた。

彼の見立てでは、あの宇宙人は男。

あの女宇宙人より短い頭のぷにぷに…恐らく彼と同じくらいの長さの物を頭の後ろで纏めている。

色は女宇宙人とは違い、クリーム色である。ついでに肌が少し浅黒い。

 

そして、目が大分鋭い。

そんな目でじっと見つめられた彼の心臓は縮み上がった。

そのから低い男性気質な声で話しかけられた。(ただし、相変わらずのほにゃらか宇宙語である)

 

ワンチャン日本語が分かる宇宙人であることに賭けて真面目に話しかけて見るの、

やはり徒労に終わった。

 

男宇宙人は話しかけを早々に切り上げて、隣の女宇宙人との会話を開始する。

その様子を彼は黙って見ていたが、こうしてみると明るそうな女宇宙人はともかく、

クールそうな男宇宙人も身振り手振りがなかなかに激しい。

この宇宙人はみんなアメリカ人気質なのだろうか。

 

 

 

二人の宇宙人の表情も身振りもコロコロ変わるが、総合して悩ましい表情の方が多い。

チラチラこっちを見ているあたり、言葉は分からなくても

多分自分のことについて話していることは容易に想像がつく。

 

自分から誘拐しておいて、言葉が通じなくて困るとか

おっちょこちょいにも程があるだろ、マジでアメリカ人かお前らと思う彼。

まあ確かによくよく見ればアメリカ的なアニメキャラクターに見えなくもない。

今ここは現実の世界のはずなんだが。

 

 

やがて男宇宙人がポケットから何かを取り出したかと思えば、そのエルフ的長い耳に当てて話し始めた。あれは電話なのだろうか。確かにスマホのような見た目であった。

…何だか先端が矢印っぽい形をしていることを除けば。

 

 

そして通話を終えたらしい男宇宙人は女宇宙人に二言三言話すと、部屋から退出した。

後に残ったのは、彼と例の女宇宙人。

 

 

「…あーはい…あはは…」

 

 

相変わらず興味深そうな表情でこちらに話しかけてくる女宇宙人に、彼は曖昧な笑みで応対する。

内心はよく言葉の通じない自分に話しかけるもんだなと正直辟易気味であった。

 

 

 

 

 

そうした言葉と笑顔(上っ面のみ)のやり取りが続くこと十分後、再び部屋のドアが開いた。

 

彼はドアの方を向いた。まずあの男宇宙人の鋭い目と目が合った。

思わず下を向いた彼。その瞬間、彼はベッドに座ったまま器用にも飛び上がった。

 

 

新たな宇宙人がそこに4体ほどいた。しかし、今まで自分が出会ってきた宇宙人とは似ても似つかないNew宇宙人であった。

 

まずそもそも人間の形をしていない。形として彼が最初に思い浮かんだのは一般的な火星人イメージであるタコ型宇宙人。

それに一番近い風貌だ。

ただ、色が全く違う。火星を表すような赤色ではなく、ファンタジー世界のスライムを表すかのような水色であった。

饅頭のような形の大きい顔部分には某漫画のような二つ繋がった目しかない。

体部分には4体それぞれTシャツのようなものや白衣のようなものまで個性を表すかのように身に纏っている。腕部分には細く長い触手。そして下半身にはその触手の短いものが何本も生えており、それが足の用をなしているようだ。全体的な身長は男宇宙人の半分もないくらいであろうか。彼が最初に目に入らなかった理由の一つである。

 

 

とにかく、新種宇宙人の登場で混乱した彼の脳内に最悪な想像がよぎる。

 

 

(ま、まさか宇宙人間の実験材料受け渡し!? 言葉が通じない俺は用済み!? これから本格的人体実験に回される!?)

 

 

楽観的もクソもない考えが彼の脳内を占める中、ビチョピチョみたいな小さい足音を立てて近づく新宇宙人×4。こちらを見つめてくる目を見つけて固まったまま数秒経つと、近くの女宇宙人が指で肩をトントン叩いてきた。

彼はまた驚いて飛び上がった。

 

彼が驚いたことに驚いたのか、女宇宙人はピャッ! みたいな悲鳴をあげて飛び退る。

が、自分が驚かせてしまったことを認識したらしい彼女は、彼の前で手を合わせて謝るような動作をした。

 

その後、彼女は自らの口の前で手をパクパク動かすジェスチャーを彼に見せた。

 

 

「…? え、喋ろ…と? でも何を…」

 

 

そんな風にジェスチャーを解釈した彼が呟いたその瞬間、彼の視線の隅である新型宇宙人が大きく跳ねたのを見て、また彼はビックリしてしまった。

どうも今日で彼の心臓は過剰運動をしてしまっている様だ。

 

その白黒のTシャツを着た新型宇宙人はふにゃむにゃと何かを喋りながら、ベッドの上に飛び乗ってきた。

その後、あの男宇宙人が部屋にあった机を動かし、ベッドに横づけしてきた。

その上には、紙とペン──彼が見た限りは──が2セットそこに置いてあった。

 

一体何だ何だと訝しむ彼だが、その時そのうちのペンの一本に青い触手が巻きついた。

紙ペンセットに目をずっと向けていた彼はまたビックリする羽目になったが、

よく見れば先ほどの新型宇宙人がその長い腕を使い器用にペンを手に取っているのだ。

まるで胡散臭いマジシャンを見るような顔を前に、そのクラゲはペンを紙の上に走らせる。

 

 

 

『 こ ん に ち は 』

 

 

彼の思考は停止した。その停止した思考のまま、ほぼ脊髄的反射で

もう一個のペンを手に取って『こんにちは』という字を返した。

それを確認した新型宇宙人の目が輝いたように見えた。そしてその瞬間に彼の思考の束縛は解かれた。

 

 

…日本語だ。

……日本語だ!

言葉が…通じるんだ!

 

 

そこから彼は怒涛の想いを書き綴る。

 

 

『日本語! 日本語が通じるんですね! 書けるんですね! 通じるんですねっ!! ここはどこなんですか!? 見渡す限り宇宙人ばっかりでああもう人間はどこなんですか!? 俺の同族は!? 人類は!? いや同族というよりというかなんか俺人間じゃなくなってるんですですけど一体何がどう何され何々何なんですかっ!? もうほにゃらかばっかりのぷにぷにでもう頭がおかしくなってしまいそうで!というかもうなっちゃってますけど!これから俺はどうなるんですか!?まっまさか貴重な地球人サンプルとしてあんなことやこんなことをああもう世にも恐ろしいいっそくっ殺』

 

 

『 お ち つ い て ください』

 

 

彼はご丁寧にビックリマークまで書き出すほど狂乱ぶりだったが、

妙に達筆な新型宇宙人からの自制の文字を見て、ようやくペンを沈めた。

 

新型宇宙人は、彼が収まったのを見て、いそいそとメッセージを再開する。

 

 

『たくさん かくにん ひつようです。 あなたが どうして こだいのげんごを つかえるのか。

どうして はなせるのか。 なぞです。わたしたち みんな しりたいです』

 

 

その新型宇宙人が書いた言葉を四、五回反復しているうちに彼の脳が段々静まると同時に、

恐ろしい予想が冷や水のように彼の体内を駆け巡った。

 

 

震える手で、彼はペンを取った。

あの相手が平仮名で書いているのに配慮して、こちらも平仮名で。

 

 

『…あの、まずしつもんしてもいいですか?』

 

『 ど う ぞ 』

 

『こだいのげんごって、なんのことですか?』

 

『あなた と わたし が いま かいている この げんご の こと です』

 

『…どうしてこれが、こだいのげんごなのですか?』

 

 

 

 

 

 

 

『それは おおよそ12000ねんまえ に このげんごをつかう ぶんめいが

そんざいしていた ことが あきらかになっているからです』

 

 

 

 

 

 

 

その衝撃たるや。

彼はよろよろとベッドに再び倒れこんだ。

 

 

嘘だ。

そんな。

そんな馬鹿な。

 

 

呼吸が上がる。

胸が締め付けられる。

目が滲んでくる。

 

 

震える手で、彼は気を失う前にと最後の質問を書き記した。

 

 

 

 

 

『この、ほしの、なまえは』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてことだ

 

 

 

 

 

『このげんごで あらわす ならば』

 

 

 

 

 

ここは

 

 

 

 

 

『ちきゅう』

 

 

 

 

 

だったのか

 

 

 

 

 

 

*

*

*

*

*

*

*

*

*

*

*

*

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕を育ててくれたお父さん、お母さん。

死に目にも会えない、親不孝者で本当にごめんなさい。

 

 

自己満足かもしれないけど、一万二千年も遅れちゃったけど

いつかお墓だけでも、たてたいと思います。

 

 

そして、こんな体になっちゃったけど

自分が人間だという意志だけは、ずっと心に秘めて

この世界を生きていこうと思います。




前半は色々と『リアル』を目標として書いてはいるのですが
難しいですね。
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