4人目の奉仕部員   作:リアクト

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 ゆきのんの罵倒は書いててちょっと嫌な気分になったので、あまり入れてません。
 いいよね、自分の好きな感じで書いて。

 一応シリーズにしてますが、続きは未定です。


第1話。

〈1〉

 

 6月、職場見学も間近なある日、おれは、というか結果的におれ達奉仕部は、おれの妹である小町からの依頼を受けることになった。

 小町のオトモダチ、川崎大志の姉、総武高校2-Fの川崎沙希(黒レース)の朝帰りをやめさせる。

 

 依頼はひとまず解消し、あとは川崎次第といったところだ。

 週が明け、職場見学、更に定期テストを控えている俺は、部室で早めの試験勉強をしていた。忙しい部活に入っていないメリットの一つだ。運動部はもちろん、活動に力を入れている文化部も、部活動が停止される試験1週間前までは中々思うように時間を取ることが出来ない。進学校ゆえ、それでも自宅に戻れば予習復習くらいはしているのだろうが、この学校の試験はそれだけやっていればいいわけでもない。それだけやっていても7割程度は取れるのだが、そこは流石に進学校、応用問題や発展問題も抑えておかないとそれ以上の成績は望めない。

 ていうか由比ヶ浜さん、あなたやたらと余裕そうだけど大丈夫なのかしら?普段の言動を見るに、軽い復習すらしていないようなのだけれど。…と雪ノ下口調で考えていると本人から軽く睨まれた。心読まないで下さい。

 

 俺が教科書を開いて少し経ったあたりだろうか。滅多に鳴らないドアがノックされた。

 

「…どうぞ」

 

 いやそんなに訝しむこともないと思うんだが。ドアの向こうは不審者確定してるわけじゃ…あ、材木座を疑ってるのか。じゃあしょうがないな。

 

「…失礼します」

 

 だが、入って来たのは、予想とは大幅に違う、ロングポニーテールのよく似合う、スタイルが抜群に良い美少女だった」

 

「びっ…びしょっ……な、何いってんの、ばかじゃないの…」

 

 あ。また声に出てたのか。

 俺はいそいそと帰り支度をし始めた。

 

「え、ちょっとヒッキー?何帰ろうとしてんの!?てゆか今のは何!?」

「うるさい、俺はすぐに帰って枕に顔埋めて足バタバタするので忙しいんだじゃあな」

「待ちなさい誑し谷くん、貴方が恥ずかしがるのは勝手だけれど、川崎さんの話を聞いてからになさい。備品なのだから」

「備品なのかよ。…で、川、川…さんは今日はどうした、今度は弟が朝帰りか?」

「数秒前に聞いた名前を忘れんじゃないよ。か・わ・さ・き。今度忘れたらあんたの顔を真っ赤に染めるよ。血で」

 

 こええよ、あとこわい。やりかねない感じがプンプンするよ。

 

「まあそこの備品はおいといて。今日はどうしたのかしら、川崎さん」

「あ、ああ。…あのさ、その前に聞きたいんだけど、比企谷の扱いはいつもこんななの?」

「ええ、そうよ。物言う備品として日々役に…それほど立っていないけれど、大体そこに座ってるわ、備品として」

「そ、そう…。あのさ、今日ここに来たのは、こないだの件のお礼を言いたかったんだ」

「えーそんな、気にしなくていいのに」

 

 あれおかしいな、このアホの子が何をしたんだろう。

 

「あのあと家で両親と話し合ったんだ。まぁ細かいところは省くけど、丸く収まったよ。もしスカラシップが取れなくても、学費のことは気にしなくていいって言ってくれた。…雪ノ下、その、こないだは…ごめん」

「川崎さん…。この間のことは私も謝らないといけないわ。その気はなかったにせよ、結果的には家庭の事情に土足で足を踏み入れて感情的になってしまった。ごめんなさい」

「ゆきのん…」

「由比ヶ浜、あんたも心配してくれたんでしょ、ありがとうね」

「う、ううん、いいの!あたしは何にも出来なかったし!あときれいなドレスも着れたし!」

「着られたし、な。…用はそれだけか、なら俺は帰って枕に「比企谷」…なんだよ」

「う…その…あ、あんたのおかげで助かったよ、あ、ありがと…」

「…俺は何もしてねえ。そもそもあの予備校のスカラシップは俺も狙ってんだ。ライバル増やしてどうすんだって後悔してるまである」

「あ、ご、ごめ「あやまんな」…え」

「だから何もしてねえつってんだろ。取れるかどうかはお前次第だしな」

「もうヒッキーは…」

「捻くれてるというより、捻り上がってるわね、この男は」

 

 まあ、解決したならそれでいい。これであの虫も小町に近づく理由もないだろう。あの野郎今度並んで歩いてやがったらただじゃすまさねぇ。

 

「で、昨日資料を取りに進路指導室に行ったんだけどね。そうしたら廊下で独神…平塚先生に会ったんだよ」

 

 あ、なんかもう想像出来た。

 

「なんか涙目でこっち見てくるからさ。なんですかって聞いたらガン付けられてね」

 

 大人げねえな先生。

 

「…大人げないわね」

 

 珍しく意見が合うな雪ノ下。

 そこまで聞いた時、噂の名前を言ってはいけない大人げない人が現れた。

 

「お邪魔するよ。…ああ、もうこっちにいたのか川崎」

「先生、ノックを」

「まあ細かいことは気にするな。…みんないるな。比企谷はどうした、荷物なんか持って」

「あ、いやそのこれは」

「まあいい、とりあえず連絡事項だ。…新部員が増えるぞ」

「え!?誰々!?」

「今お前の眼の前にいるだろう由比ヶ浜。バイトなり家の手伝いなりがあるそうだから毎日というわけでもないが、川崎が今日から入部することになった」

「…よろしく」

 

 

 

〈2〉

 

「川崎さんが入部?どういうことですか?」

「ん、なんだ雪ノ下、川崎が入るのは不満か?」

「そういうことではありません。入ること自体は問題ありませんが、そこのひき、が、える?くんのように強制入部ということですか?」

「え、あんた強制入部だったの?っていうか強制って…」

「ぼっちで目が腐ってるから入ったんだよね、ヒッキー」

「…入れさせられたんだよ、腹殴られてな。あと目は濁ってるだけだ、腐ってねえ」

「先生…」

「い、いや、川崎は違うぞ。確かに誘いはしたが、あくまでも自分の意志でだ。川崎も余り他人とのコミュニケーションが得意ではないようだし、丁度いいかと思ってな」

 

 部員4人中3人がぼっちってどうなの?それぼっちなの?ぼっちだよ?とりあえず由比ヶ浜がすごく疲れることになるんじゃないかと思うんだけどそれは気にしないの?まあいいけど。

 

「でも、バイトはともかく家事の手伝いとかあるから、毎日来られるわけでもないけどね。妹を保育園に迎えに行かないといけないし」

「え、サッキー妹さんいるんだ!」

「…さっきー?」

「うん、川崎沙希だからサッキー。あ、でもヒッキーと被っちゃうな…」

 

 俺と被ったからなんだってんだ、雪ノ下が早くも顔真っ赤にして笑い堪えてるじゃねえか。ていうかまずヒッキーを止めろ。それで解決だ。

 

「ゆ、由比ヶ浜さん、それはさすがにあんまりじゃないかしら。比企谷くんと被るなんて、屈辱以外の何物でもないわ」

「いいじゃねえかサッキー、そんで俺と被るのが屈辱なら俺の方を止めろ。そもそも俺はヒッキーを認めたわけじゃねえ」

「えーダメだよ、ヒッキーはヒッキーだもん」

 

 違うっつんだよアホの子が。おい川なんとかさん、俺をちょっと憐れむ感じの目で見るんじゃねえ。

 

「はあ…。まあなんでもいいけど、とりあえずそういうわけだから。妹迎えにいくのは大志と交替で行くから、あたしは週3日くらいかな。それで良ければお世話になるよ」

「…そう、構わないわ。ようこそ奉仕部へ、歓迎するわ川崎さん」

 

 微妙なタイミングで、奉仕部の部員が一人増えることになった。

 …なんだこれ。

 

 

〈3〉

 

「チェーンメール?」

「そう。もうやんなるよね、こういうの」

 

 由比ヶ浜が苦い顔をする。

 平塚先生が職員室も戻った後、しばらくは川崎を質問攻めにしていた由比ヶ浜だったが、困り果てた川崎がテスト勉強を始めると、いつもの様にポチポチとスマホを弄り始めていたのだった。

 

「チェーンメール…人として最低の行為ね」

 

 いや、割ともっとありそうだが。

 

「ねえ、ヒッキー…はないか、サッキーは届いてない?」

 

 ねえ、なんで俺除いたの?いや来てないけど。ていうかメアド教える相手がいないけど。そもそも分かってんなら最初から俺の名前を出すんじゃねえよ。無駄に傷つくだろ。

 

「ないよ。あたしのメアド知ってる奴なんていないしね」

「え、あ、そうなんだ…」

 

 思えば川崎は孤高なのだろう。結果的には俺と変わらないが、恐らく身の置き所が違う。さっきの話や弟とのやり取りからして、家族とはちゃんとコミュニケーションを取るが、それ以外には必要最低限の会話しかしてこなかったのだと思う。知らない人間から急に話しかけられるとしどろもどろになるのは、暗がりからいきなり人が出てきてビックリ、みたいなことと大差ない。会話することさえ判っていれば、普通の会話は当たり前に出来る。会話が成立する前に煙に巻こうとする俺とは何かが違う。きっとそれが、孤独と孤高の違いなのだろう。多分。しらんけど。

 

 会話が途切れ、また静かな時間が戻ってきていた。雪ノ下のページをめくる音、由比ヶ浜のスマホを落とす音、おいおい気をつけろよ。そして、俺と川崎のシャーペンを走らせる音だけがこの場を支配していた。

 

 そろそろ下校時刻になろうかという頃合いである。区切りもいいし、あとは家でやるかと筆記用具をしまおうと顔をあげると、同じように筆箱を手にした川崎と目があった。あら、気が合いますね川崎さん。いやだからちょっとびっくりした顔でこっち見ないで。あと顔が少し赤くなってますけど俺の顔はわいせつ物ではないですよ?」

 

「…いや、あんた…目が…」

「この目は濁ってるだけだ。腐ってはいない。断じて」

「いや、逆」

「は?」

「目が濁ってない」

「…そういえばそうね。なにかしら、ドライアイ?」

「乾くと濁りが取れるのかよ…」

 

 ふいにとんとんとん、とドアが3回ノックされ、答える間もなく先日の金髪イケメンが現れた。

 

「失礼するよ。こんな時間に申し訳ない、部活で手が離せなくて…」

「能書きはいいわ。何か用かしら、葉山くん」

 

 なんか当たりが強いな。まぁ戸塚の件で思う所があるとかなんだろう。

 

「ごめん雪乃ちゃん、ちょっと相談があるんだ。って、川崎さん?」

「名前で呼ばないでもらえるかしら?率直に言って不愉快だわ。相談があるのは分かっています。その上で何用かを聞いているのだけれど。あと、川崎さんは今日からうちの部員よ」

 

 …雪乃ちゃん?こいつら知り合いかなんかか?…そういえばテニスコートでもそう呼んでた気がするな。

 

「そうなんだ、ちょっと意外だな。部活には入らないタイプだと思っていたけど」

「…いちゃ悪いってんならあたしは帰るよ。勝手にタイプがどうとか言われるのも嫌だしね」

「ちょっと待って川崎さん。葉山くん、いい加減に話してもらえるかしら。まだ引き伸ばすなら私達はもう帰るけれど。あとは由比ヶ浜さんなり、そこの備品なりに明日でも話してみたらいいんじゃないかしら」

「す、すまない。…これを見てほしいんだ」

「あ、これ…」

 

 葉山が出したスマホにはメール受信画面が出ていた。

 

「これだよ、あたしの所にも来たやつ」

「戸部、大和、大岡…あんたらが教室でつるんでる奴らじゃん」

「へえ。戸部が不良で大和がタラシ、大岡がダーティプレイヤー…これがどうかしたか?」

「あいつらはこんなやつらじゃない。このメールを止めたいんだ」

「無理でしょ」

「え?」

「いや、止めるも何も、もう出回ってるんでしょこれ。もう結構見てる人いるんじゃないの?じゃあ止めたってしょうがないでしょ」

 

 確かに。

 

「でも、これが出回ってからクラスの雰囲気が悪くてね。友達を悪く言われるのも嫌だし…なんとかしたいんだ」

「うーん…たしかにあんまり良くないよね…」

「そうなのか?川崎」

「あたしに聞かないでよ。知ってるわけないでしょ」

「二人とも…」

 

 雪ノ下に呆れられた。なぜだ。

 

「それで、これを回した犯人を見つけたいということかしら?」

「いや、犯人を見つけたい訳じゃないんだ。むしろ出来るだけ穏便に済ませたい」

「もう出回ってる時点で穏便も何もないだろ。川崎もさっき言ってたじゃねえか」

「でもさ、なんでこんなの出回ったのかな?最近急にだよ?」

「ああ。俺もそれが気になってるんだ」

 

 最近か。しかも葉山のグループの男。

 …グループ。

 

「雪ノ下、職場見学のグループ、何人で作るんだっけか?」

「…なるほどね」

「え、ゆきのん分かったの?」

「…確か3人だったね」

「そうね。葉山くんのグループの男子は全部で4人。1人あぶれることになるわね」

「…まさか」

「そう。犯人はこの3人の中にいる可能性が非常に高い」

「え、でもさ、みんな悪口書かれてるよ?違う人なんじゃない?」

「…そう思うように書いたんだろ。俺なら敢えて自分以外の悪口を書かずにそいつを排除する」

「…えげつないね…わかるけど…」

 

 わかっちゃいますか川崎さん。

 

「待ってくれ!この中に犯人がいるなんて、俺はそんな風に思いたくない!」

「お前が思いたくなかろうが、そんなことは関係ない。どうしても思いたくないなら勝手にすればいい。だが悪いが、俺はその線が一番濃厚だと思うぞ」

「そうね、同じ意見なのは誠に遺憾なのだけれど、私も比企谷くんの意見に賛成するわ。遺憾なのだけれど」

 

 どんだけ遺憾なんだよ。

 

「…ねえ、ちょっと思ったんだけど」

「どうしたのかしら、川崎さん」

「この3人で組むようにすればいいんじゃないの?犯人探したくないんならさ」

 

 …確かに。

 犯人を確定させたくはないが、どう考えても身内3人の犯行であるとするならば、被疑者をひとまとめにしてしまうのが一番楽な方法だ。だが、それを自然に仕向けることは果たして可能なのだろうか。

 川崎のこの提案に、雪ノ下は少し驚いた顔に、葉山はかなり驚いた顔に、由比ヶ浜は頭から湯気が出ていた。オーバーヒートしてんじゃねえよ。

 

「川崎さんの意見は一理あるわね。ただ、私はやはり、犯人を特定するべきだと思うわ。この手のメールは、今は収まったとしても糾弾されることがなければまたいつか同じことが起こる。こういう卑怯な手を使う輩は、自分に被害が及ばなければ何度でも繰り返すわ。ソースは私」

「ヒッキーはどう思う?あたしは丸く収まるならその方がいいかも、ってちょっと思う、けど…」

「俺は…」

 

 4人の目が俺に向く。やめて、注目集めたくない。

 

「正直、川崎の意見に賛同する。が、雪ノ下の主張も間違ってはいない。だが、犯人を探すとなると、この部の方針とちょっと話が違ってくるんじゃねえか?やり方を教えたところで、葉山がそうするとは思えねえしな。…まぁ仮に職場見学のグループが本当に原因になってるんだとしたら、ほっといてもいいんじゃねえかって気はするがな」

「どういうことかしら?」

「目がこええよ…。いや、職場見学は今週末だろ?それが終わりゃメールも勝手になくなるんじゃねえか?多分川崎の意見が一番傷が浅そうだが、その後あのグループのやつらがどうなろうと俺には関係ないしな。由比ヶ浜には悪いが」

「ヒッキー…」

「…てことで、方法は提示した。あとは葉山、お前がどうしたいかだけだ」

「…俺?」

「当たり前だ。魚の獲り方を教えるのがこの部の方針らしいんでな。実行に当たっての調査とかなら手伝うのもいいだろうが、方針を決めるのも、結論を出すのも葉山、お前がやらないといけないことだ。だろ?雪ノ下」

「はぁ…。そうね、確かに言う通りだわ。取り敢えずの解消案としては川崎さんの意見。根絶をご希望なら改めて案を出します。楽をするなら比企谷くんの意見ね」

 

 待て待て、俺の意見は別に楽をさせる為に言ったわけじゃねえぞ。結果俺達が楽をするために言ったんだ。そもそも葉山は穏便にとかぬるいこと言ってんだから、根絶する気はないと思うぞ。

 

「…考えるよ。ありがとう雪ノ下さん、川崎さん、ヒキタニくん。結衣もありがとうな」

「いいよいいよ、頑張ってね葉山くん!」

「…さて、あたしは帰るよ。もういいよね?」

「そうね、お疲れ様。私達も帰りましょう」

「あ、その前に。…葉山、だっけ」

「…なんだい川崎さん?」

「あのさ、ヒキタニくんって誰?」

「え、…あ、その」

「もしさ、もし比企谷のことなんだとしたらだけど。知らなかったんならしょうがないけど、こいつはヒキガヤだから。親しくもない人間の名前を間違えるのは、忘れるより失礼なんじゃないの」

「川崎さん…」

「サッキー…」

「サッキーいうなってば…」

 

 会話が続く中、俺は少し驚いていた。

 俺の名前をわざと間違えるなんて些細な話だ。今更どうこう言うつもりもない。由比ヶ浜の付けるあだ名にちょっとからかいが入っただけの話だ。だが、川崎はそれを良しとはしなかった。恐らく川崎は、すごく真面目な人間なのだろう。実際バイトの件も、真面目で家族を想うが故の行動だった。ただ、それがひどく不器用で、一般的には理解されづらいだけなのだ。

 俺のような、ちょっと知り合っただけの、ただ部活が一緒だというだけの人間のことも気にかける。

 

 あっぶねえ、俺が中学の頃なら一発で惚れて告白してKO(物理)されるところだった。

 

「じゃ、あたしは帰るから」

「お疲れ様、サッキー!」

「川崎さんお疲れ様、遅くなっちゃってごめんなさいね」

「あぁ、葉山」

「な、なんだい、ヒキタニくん」

「…別に今更呼び名をどうとかは構わねえ。けど、人から受けた忠告は、最低その場だけでも守ったほうがいいと思うぞ」

「あ、ああ、気をつけるよ…みんな、今日はありがとう」

 

 その後、チェーンメールはパタリと止んだ。結局川崎の案を採用したようだ。俺は戸塚と川崎で組んだのだが、直後に葉山が入れてくれと言ってきた。3人いるのでと断ったが、葉山があぶれているという状況は他のグループに知られることとなり、取り合いになりかけたが、丁度2人のグループがあり、そこに入れてもらったようだ。

 だが、なんだかんだと色々あったこの騒動は、実に意外な展開を見せることになった。

 俺達以外のグループの希望先が、みんな葉山と被ったのだ。というより、葉山の行く所にみんな行きたがった、ということになるのだろうか。

 

 結果、チェーンメールも意味がなくなり、俺達はとんだ無駄骨を折ったことになる。

 そして、俺達は。

 

「えっと、えっと、こっちのおにーちゃんがはーちゃんで、こっちのおにーちゃん?がさーかちゃん!」

「は、はーちゃん…」

「あはは、よろしくね、けーちゃん!」

「な、なんかごめんね…」

 

 川崎のたっての希望により、川崎の妹、けーちゃんのいる保育園に行くことになり、そこでそれぞれが新しくあだ名を付けていただくことになったのだった。

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