Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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第八話~これからの…~

 IS学園。

 そこは既存の兵器を凌駕するパワードスーツ『IS(インフィニット・ストラトス)』を学び、生徒達が夢を語り合う場所。

 しかし、それは昨日までの話。華々しい夢もありふれた日常もなく、誰かの血で染められた地面や瓦礫の山が視界一面に広がっているだけの場所。今のIS学園は廃墟と化していた。

 

鈴「夢であって欲しかったな…」

 

千冬「そうだな…」

 

 千冬を乗せた車いすを押しながら鈴は再度夢ではなく現実に起きている事を理解する。焼け落ちた学び舎を見る度に心にぽっかりと穴が開いた気持ちになる。

 物語やゲームで登場するワイバーンやゴーレム達に蹂躙されたと言っても誰も信じやしない。自分達も逆の立場ならそれは悪い夢を見たのだろうと笑っていたのだろう。しかし、これが現実だと言う事を知っているからこそ無情な思いでいっぱいだ。

 

千冬「一応、生徒全員には帰国するよう指示を出してある。お前も中国に帰っても良かったんだぞ」

 

 被害の規模が大きかったため生徒全員を本国に帰国させるように指示を出したが鈴だけは中国に帰らず、千冬の傍にいた。

 

鈴「帰国してもやることが無いし…それに千冬さんを放っておけませんよ」

 

千冬「…そうか」

 

 いつも織斑先生と呼べと一喝されるのだが今の千冬に叱る気力も叩く利き腕も無かった。一夏が行方不明になった時は酷く落ち込んでいたが鈴やラウラの励ましで何とか気丈に振る舞っていた。しかし、今度は学園もISも自分が積み上げてきた全てを無くした。鈴はISが破壊され、世界最強(ブリュンヒルデ)が完膚なきまで叩きのされた事を今でも信じられない。

 いや、信じたくなかったのだ。自分の自信や矜持をさも嘲笑うかのように打ち砕かれる存在がいることを。

 

鈴「これから…どうなるのですか?」

 

千冬「それは分からん。だが、今回の事件は少なくとも今までの社会に亀裂が生じたのは確かだ」

 

 学園に配備されたISはコアが砕けて全滅、各国の専用機もかろうじてコアが無事な程度。さらに追い打ちをかけるように教師や代表候補生には心身共に大打撃を受けて戦闘はおろかまともに生活を送る事ができない人が大勢いる。

 千冬もその中の一人だ。両足の骨が砕け、利き腕を失い、内臓も幾らかやられてとてもじゃないが戦闘を行える体じゃなかった。

 

鈴「(これは罰なのかな?今まで女性が男の人を虐げられてきたことへの)」

 

 グレモリーがやった行いは皮肉にもこれまで最強だと言われていたISに敗北の二文字を与え、女尊男卑の風潮に風穴を開けたのだ。

 もし、神様がいるのなら自分達がしてきた事は滑稽に見えたのだろう。彼の視点か見れば自分達はお山の大将を気取っていた愉快な道化でしかない。政府やIS委員会は情報を操作して事実を曖昧にして隠そうとするが果たしてそう上手くいくかどうか怪しい。

 鈴は一寸先の闇に不安と恐怖で一杯の顔で空を仰いだ。

 

 

 

*****

 

 

 

 一方、カルデアに飛ばされたシャルロットは頭を抱える。別にカルデアの雰囲気が悪いわけじゃない。寧ろ、自分達の世界よりカルデアの方が居心地が良い。

 何故頭を抱えているのかと言うと目の前に広げている書物の内容に理解が追い付いていないからだ。

 

シャルロット「魔術や英霊達の歴史とか…覚えることがたくさんあって大変だよ~」

 

???「そう愚痴るな。貴様が要領良かったおかげでこちらの負担が減って助かっている。しかし――――」

 

 そんな魔術の基礎を知らない彼女の先生役を任されている疑似サーヴァントの『ロード・エルメロイⅡ世』が溜息を吐いている。一夏が契約しているキャスタークラスのサーヴァントの一人だ。キャスタークラスは一部を除いて身体能力は低いと聞いたが一夏曰く『サーヴァントの優劣は戦闘の技量や身体能力の高さだけでは決まらない』と意味有り気な笑みを浮かべていた。

 

エルメロイⅡ世「マスターと言い、お前と言い、どうして魔術回路が多いうえに異様なのだ」

 

 両者とも魔術回路の本数は名門の魔術師と言われても差し付けないくらい多い。しかし、彼女達の属性があまりにも異常だった。一夏(マスター)は地・水・火・風・空の五大元素でもなければ、虚・無と言った架空元素でもなく。剣と言う異質な属性を持ち、この少女は地・水・火・風・空の五重属性(アベレージ・ワン)を持っている。まるでお宝を見つけたトレジャーハンターのような気分だ。

 元々神秘が薄れていたのにISと言う存在が神秘をさらに薄めてしまった結果、一夏(マスター)達のような存在が化石のように埋もれてしまったのだと推測する。どちらにしろ、この世界の住人であったならば彼らは時計塔でホルマリン漬けにされているか一生幽閉されていただろう。

 

シャルロット「あの…一夏は?」

 

エルメロイⅡ世「マスターはダ・ヴィンチと今話し合っている。大事な話があると言っていたな」

 

 カルデアの運営を任されているのはサーヴァントとして召喚された彼女がやっている。此処に所属している一夏と話し合うのは当然である。

 

エルメロイⅡ世「気になるのか?」

 

シャルロット「気にならないと言えば嘘になりますけど、大丈夫なのかなって心配になります」

 

 相手は人類を滅ぼうとした魔神で自分の想像を絶する強さを持っているはずだ。今のシャルロットには不安で仕方が無かった。

 

エルメロイⅡ世「気持ちは分からんでもないがそれでも足掻き続けるマスターを少しは見習ったらどうだ」

 

 どれだけ危機的状況でも彼は喰らいついてきた。そんな彼の頑なさがサーヴァント達の支えになった。

 

エルメロイⅡ世「既に賽は投げられている。自分が思う最上の結果が欲しければ足掻くことだな」

 

シャルロット「分かりました」

 

 未来はどう転ぶか分からない。自分が理想としている結末にしたければ諦めない事が大事なのだ。シャルロットは気持ちを切り替えて再度魔術の勉学に励む。

 

 

 

******

 

 

 

 一夏はダ・ヴィンチの工房である実験の手伝いをしていた。彼女の他にもサーヴァントの何騎かが部屋にいる。

 

ダ・ヴィンチちゃん「いやぁ~これを作った人は本当にすごいね。完成するまで結構時間がかかっちゃったよ」

 

一夏「俺としてはアンタ等の技術力の高さに驚きだよ。まさか本当にできるとは思わなかった」

 

???1「ISなど我々にかかれば造作もない。しかし、未完成のまま放り投げるとはこの交流馬鹿より杜撰な者だ」

 

???2「大いに癪だが貴様の言う通りだ」

 

 彼女の他にも白いライオンの頭部の男性サーヴァントは『トーマス・エジソン』。蓄音機や白熱電球等、現代にまで受け継がれている様々な発明を行い、その功績を称え発明王の異名で知られている人物である。そんな発明王と名高いエジソンと並ぶのがこの長髪の男性サーヴァント『ニコラ・テスラ』である。現在存在する発電所や送電システム、テスラコイルは彼の発明である。何故エジソンの頭部がライオンなのかとかテスラがキャスターではなく何故アーチャーなのかをツッコむ気力は残念ながら一夏には無かった。

 束について水と油のような二人が同意見の事を述べるのは、同じ科学者としての責務を果たしていない行動が我慢できないのだろう。本人が聞けば怒って攻撃してきそうだが返り討ちに遭うのが関の山だ。

 今彼が身に纏っているのはカルデア候補生の制服ではなく、白と黒のボディースーツだ。ただ、そのボディースーツは体の至る所が金属で覆われている。

 そう、彼はISを纏っているがISとしては幾分か小さい。操縦すると言うより装着していると言った方が正しい。

 

一夏「コンパクトになった分、こっちの方が動きやすいな。前のは無駄に大きかったからな」

 

 屈伸したり空に浮いたりして具合を確かめる一夏。

 

一夏「欲を言えばある程度の武器が万々歳かな」

 

???「その心配はない」

 

 一夏の要望に全身鋼鉄の鎧のサーヴァント『チャールズ・バベッジ』が答えた。

 チャールズ・バベッジはキャスタークラスのサーヴァントで世界で初めてプログラム可能な計算機「階差機関」と「解析機関」を考案し、現代では『コンピュータの父』と呼ばれた人物だ。一見ロボットのような姿は本人曰く『自分の夢が形を持った』とのこと。

 

バベッジ「基本は剣だが、両腕に電磁波を放つことができる機甲を付け、拡張領域には穂先がドリルの馬上槍(ランス)を装備している」

 

一夏「ドリルって男のロマン溢れる物を装備したな…好きだけど」

 

 白式は雪片弐型一本だけだったがこれは色々な武器が備わっていて助かる。しかも、一夏は剣だけしか能がなかった頃とは違い、多彩な武器を操れるようになった。

 

一夏「感触としては申し分無し。これならISがやって来ても問題なさそうだ」

 

 白式の改修は前々からダ・ヴィンチちゃんがやろうと言っていたがサーヴァント達にはあまり効果が薄いため先延ばしにしていた。しかし、これから魔神やサーヴァントと戦う事もあるがその前にISとの戦闘も視野に入れなければならないので今回の話に乗った。

 

ダ・ヴィンチちゃん「それで…身に纏っているISの名前は何にする?」

 

一夏「もう白式だなんて呼べないな…」

 

 (創設者)が思い描いていたものとは全く別の姿となったので白式と呼べる事はできない。

 

一夏「――ション。ホワイト・リンカーネーションってどうかな?」

 

ダ・ヴィンチちゃん「なるほど、そうきたか。いい名前だ」

 

 実に一夏らしい名づけ方だとダ・ヴィンチちゃんは思っている。英語で転生を意味する『Reincarnation』と愛機のWhite()を合わせたのだろう。

 

ダ・ヴィンチちゃん「これから夕食だけど美味しい物を頼むよ」

 

一夏「いいぜ。シャルの歓迎を祝う宴をやろうと思っていたから腕によりをかけて作るよ」

 

 歓迎会をやればアルトリア勢は何時もの倍ぐらい食欲が増す。備蓄した食料がなくならないようにレイシフトで魔猪やらドラゴンやらバイコーンをサーヴァント達と一緒に狩ってきたのだ。

 

一夏「四人ともありがとう」

 

ダ・ヴィンチちゃん「どういたしまして」

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