Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結) 作:ursus
第十話~降り立った特異点~
警報が鳴り響く廊下を駆け抜け、二人は管制室に到着した。管制室ではダ・ヴィンチちゃんを筆頭にカルデアのスタッフたちが忙しなく動いている。
一夏「織斑一夏、到着しました」
シャルロット「シャルロット・デュノア、到着しました」
ダ・ヴィンチちゃん「二人とも良くて来てくれた。特異点が再び現れた」
その一言だけで一夏とシャルロットが渋面を作るには十分な内容だった。
一夏「グレモリーの仕業なのか?」
ダ・ヴィンチちゃん「現時点ではまだ分からないけど、君達の世界で起きているのは間違いないよ。そして今回はシャルロットちゃんにも参加してもらう」
シャルロット「ぼ、僕もですか?」
ダ・ヴィンチちゃん「特異点の危機感を本当の意味で理解しているのは一夏君だけだ。けど、今回は勝手があまりにも違うから君達二人で解決してもらう」
その意見に一夏は特異点がこの世界ならシャルロットが出る機会はあまりないが別の世界ともなれば話が変わってくる。
一夏「ほぼ強制だが………心の用意は十分か?」
何度も経験している一夏はともかく、シャルロットはこれが初めてのレイシフトなので不安にならないわけがない。
一夏は彼女に発破をかけて戦う覚悟を促した。それが功を奏したのかシャルロットの顔に覚悟の火が灯った。
シャルロット「分かっている。僕も十分だよ」
どっちにしろ行かなければならないのなら、自分ができることを精一杯やるだけだ。
覚悟を決めたシャルロットを見てダ・ヴィンチちゃんは微笑みながらレイシフトの準備に取り掛かった。
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本当に今日はなんて日だろう。
千冬の快気祝いに料理を振る舞うために買い物に出かけた瞬間、竜牙兵の軍勢に襲われているのだ。
鈴「最悪…」
愛機である甲龍はオーバーホール中で手元にないうえにISの武装がほとんど効かない事を知っている鈴には逃げる事しか手が残されていなかった。
走るのは得意で竜牙兵から距離を離す事はできる。そして狭い路地裏に入れたのは今までコンプレックスであった小柄な体型のおかげだった。
鈴「(私って本当馬鹿よね…)」
無力な自分を自嘲して苛立ちそうなくらい青い空を眺める。
しかし、彼女の運命が動き出したのは誰も予想すらしていなかった。
****
レイシフトで飛ばされた一夏とシャルロットが目を開けるとビルの上に立っていた。交差点を行きかう人々を見て目立った異変はないようだ。他に怪しい物が無いか探しているとある建物を見た瞬間、二人は目を丸くした。
シャルロット「一夏、あれって…」
一夏「皆まで言わなくても分かっている。あれはレゾナンスだ」
最後にあの場所を訪れたのは臨海学校の水着を購入するために隣にいるシャルロットと一緒に来た時だ。一年くらいしか経っていないはずなのにとても懐かしく感じる。
マシュ『先輩、シャル先輩、聞こえますか?』
シャルロット「聞こえるよ」
一夏「どうやら魔力が安定しているから通信が可能のようだ」
物思いに耽っているとマシュからの通信が届いた。前回のような通信が繋がらない事態にはなっていない事に一先ず安心する。
シャルロット「こっちは今の所異常はないよ」
マシュ『そうですか。ところで……トレーニングルームでクー・フーリンさんが針鼠のような状態で倒れているんですがその理由を知りませんか?』
一夏「簡単に言えばスカサハに対して口と言う災いの門を開けてしまったから」
マシュ『……なるほど』
シャルロット「(あっ、何度もやっちゃったんだ)」
この一言で理由が分かってしまったマシュを見てクー・フーリンのあれは一度や二度じゃないことを悟ったシャルロット。
何時の時代も女性に対して年齢に関する言葉は禁句である。
一夏「マシュ、近くにサーヴァントの反応はあるか?」
マシュ『あります。すぐに霊基の波長を解析して――――――』
???「私です、マスター」
一夏の前に現れたのは紫色の鎧を纏い、鎧と同じ紫色の短い髪の男性のサーヴァント。
一夏「今回はランスロ――――セイバーか」
一夏はセイバーの真名を言いそうになった。このサーヴァントの真名はランスロットと言い、湖の騎士や裏切りの騎士と言われており、良くも悪くも円卓の騎士の中で最も知名度が高い人物である。
マシュ『やはり貴方でしたか穀潰し』
穀潰しと言われて心に傷を負う
生前、彼女―――正確には彼女と融合しているサーヴァントとは仲よくできなかったため
余談ではあるが彼と似たような悩みのサーヴァント達が存在し、彼らの延々と続く愚痴をマスターである一夏か彼が契約したサーヴァントで最古参(マシュを除く)であるエミヤシロウが聞く羽目になっている。
一夏「とりあえず……よろしく」
ランスロット「………はい」
ともあれ、情けない親父のような一面を持っている彼だが戦闘に関する剣術の技量やステータスを見ても高い部類なので一夏としても大変ありがたい。
シャルロット「僕は…」
???「私ですよ、マスター」
旗槍を携え、金髪を長い三つ編みにしているサーヴァント―――――オルレアンの乙女と呼ばれた英雄、ジャンヌ・ダルクである。
シャルロットはカルデアの食堂でジャンヌと会っているので知っているがまさか自分のサーヴァントが自国で有名な彼女だとは予想すらしていなかった。
シャルロット「じゃ、ジャンヌ様!?」
ジャンヌ「ジャンヌで良いですよ。今は貴方が私のマスターですから」
シャルロット「そ、それは流石に…」
一夏「なら、クラス名で呼べばいいんじゃないか?その方が呼びやすいだろうし真名が露見する心配もないし」
本人は良くてもシャルロットにとってはかなり恐れ多い。渋る彼女に対して一夏は助け舟を出す。
サーヴァントよっては真名によって弱点が露見してしまう事がある。そうならないように真名ではなくクラスで呼ぶのが常識である。
シャルロット「よろしくお願いします、
ジャンヌ「こちらこそ、よろしくお願いします」
一夏「さて…とりあえずは必要な道具を探すか。この格好で町の中をぶらついていたら目立って補導される可能性があるからな」
一夏とシャルロットの格好は制服に見えなくもないが鎧姿のサーヴァントを連れ出したら警察に目を付けられる。
しかも、ジャンヌは長時間の霊体化はできないのでどこかで衣類を調達しなければいけない。
シャルロット「とりあえず、僕達はルーラーの服を探しに行ってくるけど一夏は?」
一夏「俺とセイバーは使えそうな場所があるかその辺を見て回る。俺が言えた義理じゃないが、なるべく面倒事は起こさないようにしてくれよ。こっちじゃ俺等みたいな魔術師は存在しないからな」
サーヴァントはおろか、魔術師の存在を知らない人達にとって魔術の存在は異質な存在だ。それに魔術は公表されると劣化してしまうので秘匿しなければいけない。IS学園の時は魔神柱が騒ぎを起こしてくれたおかげでプラスに働いたが今回はどう転ぶか分からない。
魔術師と聞いてシャルロットはある事を思い出した。
シャルロット「そういえば、イギリスは魔術師と呼ばれる職業があるんだよね」
一夏「まぁ、イギリスは超心理学の分野が認められている国だからな。魔術や超能力みたいな常識では考えられない力を受け入れられる余裕があるんだ」
イギリスの他にも中国やヴァチカンでも表社会には出ないがその力を利用して活動する国家機関は実在している。
しかし、日本は違う。
一夏「(日本の政治文化なんて太平洋戦争敗戦以降、あまり進んじゃいないからな。不思議を受け入れられる余裕はない)」
尤も、魔術師の大半は魔術を至高としているため近代文化を受け入れられない。
ヨーロッパや中国は何千年と練ってきた成熟した文化があって、アメリカは進んだ文化があるのに対して日本はどちらでもない。今はいないカルデアの所長からこの話を聞かされたとき、日本の視野が如何に狭い事を知って落胆した。
一夏「談笑はここまでにして行動開始」
集合場所は今自分達のいるビルにして二人は別々に行動した。
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シャルロットと別れた一夏は拠点として使えそうな住処を探している。それと同時に擦れ違う人達に異常がないか調べている。
ランスロット[サーヴァントの気配も敵の気配もない。今は概ね平和と言った感じですね]
一夏「いや、そうでもなさそうだぜ」
捨てられている新聞を拾い、
一夏「(やはり、注目されているか)」
良くも悪くもIS学園は世間の注目の的であるが故にこのように騒がれるのも無理はない。実を言うと自分達が消えた後、IS学園がどうなるのか気にはなっていた。
新聞の内容を見る限りでは死傷者は一般生徒からは出なかったものの教師や代表候補生達からは十人以上出た。一部の評論家はやはりISは最強の兵器ではないと口にしている。この評論家の意見には一夏も賛成である。
それに対してIS委員会や女性権利団体は否定しているが自分達の立場が危うくなると思ったからだろう。別に彼女達が死のうが絶望のどん底に墜ちようが一夏の知った事ではない。
新聞をゴミ箱に入れて次は何処へ行こうかと考えているとある店を発見した。
一夏「あの店に行ってみるか」
視線の先にあったのは釣具屋だった。一夏は何の迷いもなく釣具屋に足を延ばしていく。
ランスロット[マスター、何故釣具屋に行こうと思ったのですか?]
一夏「ちょっと負かしたい相手がいてな。そのためには色々と欲しい物がある」
一夏の脳裏には近代の技術で固めている赤い外套の
普通に買えば何十万と掛かるがそこは魔術師、解析して投影品を作るため金銭的な問題は無い。
ランスロット[程々してくださいね]
釣りが趣味であるクランの猛犬が泣く姿を想像してしまうのでやんわりと釘を刺す。
一夏「それは……保証できそうにないな」
しかし、一夏の目が本気だったため