Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結) 作:ursus
呂布奉先。儒教道徳の重んじられる中国では信じられないくらい幾度となく裏切りを繰り返し、三国志演義で反覆・裏切りの将と呼ばれた名高い武人である。
自分を重用した
呂布「■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――!」
シャルロット「何て言っているのですか?」
ジャンヌ「すみません。彼は狂化の影響で言葉を発することができないのです」
サーヴァントについてロード・エルメロイ二世から聞いたことがある。バーサーカークラスのサーヴァントには狂化と言う固有スキルがあり、理性を削ることによって幸運以外のステータスを上げると言うスキルだ。ランクが低ければ意思疎通は困難ではあるもののできるが高ければあのサーヴァントのように言葉を持たない者もいる。しかし、中にはEXなのに普通に喋れるサーヴァントもいるが生前から狂っている者に限る。
シャルロット「ねぇ……こっちを見てませんか?」
ジャンヌ「恐らく私達を敵だと認識しているようですね」
得物である方天戟を構えて臨戦態勢でこちらを伺っている。ジャンヌも旗槍を構えて応戦しようとした。
しかし、乱入者によってお互いの動きが止まった。
???「厄介なサーヴァントを召喚されたもんだ」
上からビルの上から落ちる様に現れたのは赤いコートを着た少年。顔はフードで隠れているので分からないが、目が鈴を捕えると驚いたような悲しい複雑な顔をしている。
鈴「だ、誰!?」
鈴の返答に少年は答えずに袖から新たな短剣を出現させ、それを投げた。身長が2m以上あり、その巨体を鎧で固めた呂布からすれば短剣の殺傷能力などたかが知れている。案の定、方天戟でいともたやすく弾かれた。
しかし、それは布石だった。
少年「
静かに呪文を唱えた途端、地面に転がった短剣が一斉に爆発して激しい閃光が覆った。爆発によって土煙が舞い、視界がさらに悪くなった。しかし、襲ってくるはずの衝撃が来なかった。
目を開けると呂布が鈴とその後ろにいる簪を護るために立っていた。
鈴「私達を護ってくれたの?」
鈴の言葉に
簪「最初から戦わずに逃げるつもりでいたみたい」
鈴「何なのよ……本当に」
そう言って尻もちをついた。
今日は色々あり過ぎて頭が可笑しくなりそうだ。しかし、今生きている事を実感せずにはいられなかった。
********
鈴と簪、そして
一夏「シャルに続いてまさか鈴までマスターに選ばれるなんてな……」
シャルロット「うん、僕もびっくりした」
頭が痛くなりそうな事態に溜め息を吐く一夏。
何となくではあったが予想していた。しかし、召喚させるサーヴァントはランダムだ。場合によってはサーヴァントに殺される事も有り得る。
一夏「(鈴にとってそれが幸か不幸か分からないけどな……)」
シャルロット「(一夏……何か悩んでいるようだけど何かあったのかな?)」
いつも通りに見えるが何処か空元気に見えた。何かあったと思って運転しているランスロットと視線が合うと御察しの通りですと目配せで答えた。
一夏「とりあえず、アジトに向かってくれ」
起きてしまった事をあれこれ考えても結果が覆るわけでもない。一夏はアジトに向かう事にした。
*********
バンが着いたのは寂れた病院だった。
シャルロット「此処って……病院?」
一夏「おう、霊脈が通って人が住みやすい場所を絞って探していたらここを見つけた」
シャルロットは衛生的に大丈夫なのかと思ったが中を見るとちゃんと綺麗にしてあったので問題は無かった。
???「よぉ、大将。お疲れさん」
一夏「
金髪をオールバックにして黒と金を基調としたレザージャケットを着た男性。一般人かと思ったが魔力からして彼がサーヴァントで会ったことが分かった。
一夏「紹介するよ。金ちゃんこと坂田金時、クラスはライダー」
金時「オレのことはゴールデンと呼んでくれ」
中々親しみやすい性格のサーヴァントだがシャルロット自体、日本の英霊にはあまり馴染みがないため曖昧な返事をするしかなかった。
すると、彼女のお腹から可愛らしい音が聞こえた。
シャルロット「そ、そういえば、お昼から何も食べていなかった…」
一夏「俺も腹が減ったし飯にしようぜ」
顔を赤くしているシャルロットに一夏は失笑して食事の支度に取り掛かった。
テーブルの上に出されたのはパンと塩・胡椒で味付けした焼肉と野菜のスープだった。金時は米を所望したが手持ちになかったためパンで我慢するしかなかった。
シャルロット「このお肉、かなり美味しいよ。何のお肉なの?」
一夏「シャルと合流する前に戦ったワイバーン。本当なら唐揚げやカツにするけど、今回は手抜きでチキンステーキ風にした」
ワイバーンと聞こえた瞬間、危うく喉を詰まらせそうになった。
シャルロット「ワイバーンって食べられるの!?」
一夏「あまり知られていないけど爬虫類って肉質は鶏肉に近いぞ」
シャルロット「何処でそんなサバイバル術を学んだの?」
少なくともこのような知識があるのはラウラのような軍人か冒険家くらいなものだ。その両者でもなく、アウトドアが趣味でもない一夏が何故知っているのか。
一夏「一言で言えば慣れだな。カルデアは局地に建てられているし魔術師が活動する事を前提しているため世間から秘匿されているが故に流通機能は低い。それに加えて健啖家のサーヴァントが大勢いるため軽い食糧難に陥った」
ジト目で睨む一夏に
一夏「それを解消するには自給自足を行うしかなかった。野菜は菜園があったから困りはしなかったけど残りの肉と魚は特異点先で狩るのが日課となった」
シャルロット「わ、ワイルドだね…」
一夏「俵藤太が召喚されて安定している今でも続いている。あいつがいなければ
彼の脳裏に浮かぶのは満漢全席と呼ぶに相応しい量の料理を平然と食い尽くす騎士王とその別側面達。
本当にあのサーヴァントには頭が上がらない。
シャルロット「そうなんだ。そういえば、セイバーは生前の料理はどうだったの?円卓の騎士は少し華やかなのかな?」
ランスロット「………雑でした」
顔を俯かせ、地を這いずるような声で喋る
ランスロット「生前、ガウェインは『大量のポテト&ビネガー&ブレッド、エールがあれば良い』と言っていました。しかし、どれも雑でマスターやエミヤ殿が出す料理を食べる度にそれは間違いだと常々思います」
イギリスの料理は世界で一番不味いと言うのはこの時代からなのだろうかと思ったが、それを否定したのは意外にも一夏だった。
一夏「俺もこの話を聞いた時は泣きそうになったよ。一応弁明すると、イギリス料理が不味いと言う印象を持つようになったのは産業革命時代に入ってから『食べられればいい』という食生活になったのが主な原因であって、それ以前ならちゃんとした奴もあったからな?」
シャルロットはこの時、何故イギリス料理が世界で一番不味いと呼ばれているその根源を見たような気がした。
ジャンヌ「私も同じ感想ですね。生前にジルが『戦場で
金時「オレっちも大将やエミヤから焼き芋を渡された時、これがあれば飢えで苦しむ奴を救えたかもしれないって思ったぜ」
食事に関しての意見は古今東西同じらしい。シャルロットは短い時間ではあるが食事中の和気藹々とした雰囲気を楽しむのであった。
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腹を満たし、今後の活動について話し合った後は次の日まで休むことになった。サーヴァント達が交代で見張りを行っている。その中で一夏は休憩室と化している病室で干将・莫耶を投影し、振っていた。
常にイメージするのは最強の自分。それを再現するためにより速く、より強く、より鋭く、イメージし続ける。
シャルロット「一夏……ちょっといい?」
一夏「起きていたのか…」
没頭していた一夏に声をかけたのはシャルロットだった。てっきり寝ている物だと思っていたので意外そうな顔をしていた。
シャルロット「うん。ちょっと寝れなくて気を紛らわすために一夏と話そうと思っていたら、一夏が剣を振るっていたからびっくりしたよ」
一夏「日課みたいなもんだよ」
少しでも精度を上げるために投影魔術の訓練を毎日行っている。だが、今回は日課の意味だけではなく別の意味も含まれている。
シャルロット「一夏、今日は少し無理していない?」
一夏「そ、そうか?」
シャルロット「そうだよ。一夏は隠しているつもりだけど顔に出ていた」
自分では隠していたつもりでも彼女にはバレていたのだ。今更嘘をついても見透かされるのがオチなので仕方がないと割り切る事にした。
先の事を考えるとこの話はシャルロットにも言っておいた方がいい。
一夏「シャル達と合流する前に弾……親友に会ったんだ」
一夏が行方不明になって悲しんだのは血の繋がった家族や自分のように彼に恋い焦がれた娘達だけではなく同性の友人もいたのだ。
一夏「あいつに会った時、すごく嬉しかった。嬉しかったけど次にあいつは今まで何をしていたのだと訊きにくる」
それはそうだ、自分が友人の立場なら『散々心配かけたのだから今まで何をしていたのだ?』と深く訊く。
それが人には絶対に言えない内容だとしても。
一夏「そう、俺はその行動が怖いんだ。この際だから言うけど、あの事件がなかったら俺は魔術や
魔術を扱う者として暗黙の了解を破る訳にもいかず、何も知らない一般人が首を突っ込んで良い世界ではないのはこの世界で一夏が一番知っている。知っているからこそ話せないでいるのだ。
一夏「もっとマシな方法だってあったはずなのに暗示で俺に会った記憶を消す事しかできなかった。……これじゃ強くなったのか弱くなったのか分からねぇな」
技術や洞察力等の戦闘時に限れば確かに彼は強くなった。しかし、その一方で魔術使いとしての重責や葛藤、後悔を背負っているのだ。
自分の行動に呆れて嘲笑する一夏にシャルロットは胸を痛めた。
シャルロット「そっか……大変なんだね」
一夏「あぁ……大変だよ」
秘密を守るのは並大抵のことではない。ましてや、内容が身内にも友人にも言えない物なら尚更だ。一夏は関係が壊れる事を承知で黙っておくつもりだったのだ。
気が付くとシャルロットは一夏を抱きしめていた。
一夏「シャル?」
シャルロット「辛くなったら僕を頼ってもいいんだよ?」
一夏「えっ?」
自分もその苦しみを今後背負う事にもなるし重圧に耐えかねて折れるだってあるかもしれない。けど、それは理解できる人間がいなければの話だ。
まだまだ駆け出しだが自分も一夏と同じ魔術を扱う人間だし今の彼と同じことをしてきた。
シャルロット「一夏は覚えているかな?僕が女の子だった事を知って此処にいろって言ってくれた時、その後に俺に甘えたらどうだって言ったでしょ」
一夏「確かに…言っていたな」
シャルロットが言っているのは男装している事がバレた時の事だ。覚えてはいるが随分と昔のように感じる。
シャルロット「誰にも頼らず、一人で抱え込むと何時か本当に壊れちゃう。甘えてもいいんだよなんて今は言えないけど、少しだけでもいいから僕に背負わせて」
一夏「……ありがとう」
迷いが無くなったかと言えば嘘になる。今も、そしてこれからも宛もなく
けど、彼女のおかげで少しだけ体が軽くなった気がする。