Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結) 作:ursus
活動報告で設けているアンケートの期間を伸ばそうかな?
篠ノ之束を見た瞬間、一夏は尋常ではない怒りを覚えた。その理由は悪い意味で全く変わっていなかったからだ。
かつては狡猾な羊と称していたが大人になりきれない子供と言った方が正しかった。己がいなくなった衝撃で多少はまともになっているのかと思ったが全然変わっていなかった。
一夏「奴を殺せ、バーサーカー」
命令された
しかし、今回ばかりは相手が悪かったとしか言いようがない。
ヘラクレス「■■■■!」
束「嘘っ!?」
幾ら束が細胞レベルでオーバースペックであっても所詮は人間の範囲内での話。半神半人である
束の脚を掴むとお返しと言わんばかりに今度は
束「げほっ、ごはっ!」
なるべく最小限に抑えてもヘラクレスの膂力が桁外れだったため動く事もままならない。どうにかして体制を立て直さないとこっちがやられると判断したのか束は逃げの一手を考えたが現実はそう上手くは行かない。
一夏「
一夏は這い蹲っている束の四肢目掛けて投影した剣を突き刺して地面に縫い付けた。抜け出そうと力を入れるが全く体中にめぐっている傷を修復してくれるナノマシンが全く機能してない。
それもそのはず。一夏が投影した剣には『治癒阻害』の概念が込められているため破壊するかしないと傷を癒す事が出来ないのだ。
剣の拘束から抜け出そうともがく束の頭を一夏は踏みつけて抑え込む。
一夏「……アンタは知っているんだろ。俺が普通の人間じゃないことを」
どうして傷の治りが早いのかとこの世界だったら対して気にはしてなかったが人理修復中で疑問に思うようになったためドクター・ロマニやダ・ヴィンチに調べて貰った結果、人工的に作られた存在である事が分かった。その目的は不明だが普通の人間とは違うだけは本当だった。
束をすぐに殺さなかったのはその目的の部分を聞きたかったからだ。
束「……そうだよ。いっくんはプロジェクト・モザイガ…通称、織斑計画の第二成功例の人工受精卵だよ」
息を切らした状態で束は一夏の問いに答える。
究極の人類を創造する計画であったが産まれながらにして究極であった束が生まれたため破綻した事、その計画の成功例が千冬と“もう一人の子供”、そして自分である事、苗字の織斑とはそのプロジェクト名から頂いたものだろう。自分が究極の人類をより多く、より広く、より長く繁栄させるために産まれた事、そして千冬が弟である自分のためにその凡てを投げ出した事。
何故自分の体に魔術回路が宿っているのかだが一夏は生まれる過程でホムンクルスの技術が使われたのだろうと推測した。そしてその雛形になったであろう人物も大方察しが付いている。
一夏「(なるほど、道理で幼少の記憶がないわけだ。千冬姉はそれを知っていて今まで黙っていたのか…)」
色々と腑に落ちることがある。アルバムを見ても両親の写真が一枚もなかったのは始めからいなかったからだ。姉が家族の事をはぐらかしてきたのはこの事実を知られたくなかったからだ。
誰だってお前は人間じゃない事実を突きつけられたら動揺する。動揺しないのは感情を持たない機械ぐらいなものだろう。
束「失望した?そりゃそうだよね、いっくんは本来なら化け物と呼ばれても可笑しくない存在なのだから」
一夏「訳の分からん計画だったとしても無かったら俺が生まれてねぇよ。そんなもんに今更絶望する気はさらさらねぇよ。問題はどのようにして生まれたかじゃなくてどうやって生きていくかなんだ」
引き攣った笑みを浮かべている束の言葉を一夏は莫迦莫迦しいと一蹴する。
確かに自分が普通ではないと知った時、酷く絶望した。しかし、どのように否定しても狂った計画で産まれたとしてもこの世に生を受けた事には変わりはない。
それに出生だけで全てが決まる訳ではない。かつて騎士王に叛旗を翻し、未来永劫消えない二つ名を刻まれても自分なりに納得のいく結論に至った円卓の騎士のように、自分の結末を呪い続けようとも答えを得た
一夏「俺は俺なりに自由に生きるさ。けど、アンタと違って途中で責任を放り投げるようなド三流にはなるつもりはねぇ」
如何なる行動を取ろうとも常に責任が問われるのは当然だ。一夏も強制ではあったが人理を護ると言う責任を果たした。
しかし、束はどうだろうか。自分がやったことに対して素知らぬ顔で解決しようともしなかった。エジソンやテスラが杜撰と言い、英雄王と言った多くの英雄たちが俗物と扱われている。前者は科学者としての努力を怠った事への不満であり、怒り。後者は束の思想や言動があまりにも幼い上に短絡的だったため、それに対する侮蔑だ。
魔神柱やサーヴァント達が暴れているおかげでISの天下が終わり、男女平等の世の中になる日が来るだろう。そのためにも目の前の人物に好き勝手されては困るのだ。
一夏は
一夏「……ちっ、喋り過ぎたか」
さっさと殺しておけば良かったと悔いはあるがこの場に残るのは得策でもない。
一夏「二度とくだらねぇ真似すんな、糞兎」
そう言い残して踵を返して姿を消そうとする一夏にほっとする束であったが一夏は
一夏「
束が縫い付けられた場所では耳を塞ぎたくなるような爆音が鳴り響き、大きな火柱が上がった。
***************
一夏が起こした爆発はシャルロットがいた場所でも確認することができた。
シャルロット「今の爆発の方角って…一夏が調査に向かっている…」
ジャンヌ「恐らく一夏君が
シャルロット「急いで行かないと危険だよ」
幾ら贋作の宝具とはいえ、真名解放以上の力を発揮する技能を使ったのだからそれ相応の敵に違いない。ならば、すぐにでも向かった方が良い。この辺りの地図は全て頭に叩き込んであるので何処へどう進めば最短で辿り着けるか考えるシャルロットは、どうも今朝から胸騒ぎがして落ち着かない。
不安を抱えながらシャルロットは急いで一夏の元へ駆ける。
***************
その一方で
ランスロット「マスター、ご無事で…ってお前はヘラクレス!?」
一夏「大丈夫。今回は味方だよ」
金時「で、何があったんだよ?」
一夏「今後面倒になりそうなIS操縦者を倒した後、ド腐れ兎に焼を入れてきた」
意味有り気に笑う一夏に金時はヘラクレスを見たが敢て聞かなかった。清々しいまでには行かないが一夏の表情が晴れているように見えた。
一夏「(究極の人類を創造する織斑計画か…シャルにはまだ話さない方が良いよな)」
機会を見計らって話した方がいいだろう。シャルロットの顔を思い出した途端、胸が苦しくなるのを感じた。
一夏「(あれ?何で俺、こんなに胸が苦しいんだ?)」
戦闘の時とは違う今まで感じた事のない苦しみに一夏は首を傾げている。彼が苦しみの意味が分かるのは先の話である。
.