Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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第十九話~例え他の誰が…~

 シャルロットは一夏達と合流しようと急ぎ足で向かった。しかし、ホムンクルスの軍勢によって行く手を阻まれてしまった。早く向かいたいのに

 

シャルロット「邪魔を……するな!」

 

 ルーンで呼び出した炎で周囲を焼き払いながら突き進んでいく。その後ろでサーヴァント達が残りを片付ける。

 

イリヤ「す、すごい迫力…」

 

ジャンヌ「ええ、まるでオルタを見ている様です」

 

 威力や規模は英霊に及ばないが今の彼女の気迫は英霊に通じる物を感じた。仲間を盾にして炎の壁からホムンクルスが飛び出てきた。シャルロットは急いで別のルーンを書こうとした。

 しかし、彼女がルーンを書き上げる間もなく敵は倒された。まるでシャルロットを護るかのように空中から刀剣が降り注ぎ、敵を串刺しにしたのだ。この世界でこのような芸当ができるのは一人しかいない。

 その人物とはシャルロットが会いたかった人物だったからだ。

 

一夏「お待たせ」

 

シャルロット「一夏!」

 

 一夏が無事であった事に安堵したがすぐに彼の異変に気付いた。何故なら、一夏が発する空気からは怒りが滲み出ていたからだ。

 

一夏「ちょっくら八つ当たりに付き合えよ。俺さ、今すげぇ機嫌が悪いから!」

 

 空中で投影させた剣で次々と敵を刺殺し、残った敵は干将・莫耶で切り捨てる。彼の後からランスロット(セイバー)坂田金時(ライダー)ヘラクレス(バーサーカー)が加勢してホムンクルスの軍勢は駆逐された。

 

 

 

****************

 

 

 

 束は自分の研究施設で治療を受けていた。瀕死ではあったものの一命だけはなんとか取り留めることができた。

 そんな彼女をある人物が回収して治療を施し、今は深い眠りについている。

 

???「束様…」

 

 達磨のようになった体で横たわっている束を見て銀髪の少女は殺意を抱いていた。彼女はとある研究施設で束の気まぐれで拾われた。

 束は巌の巨人に入れられた一撃によって重傷となり、いっくんと呼ばれた少年からは空中に展開した剣で四肢を貫かれ、刀剣の爆発で手足は吹き飛ばされた。

 敵のISの能力と最初は思ったが武器の形状からIS専用の武装ではない事に気付いた。

 一体彼が何者で何処にいようが関係なかった。恩人である束を傷つけた。それだけで万死に値する。

 

???「待っていろ、私はお前を許さない」

 

束「―――――止めた方が良いよ、くーちゃん」

 

 その決意を挫くように束が目を覚ました。

 

 

 

****************

 

 

 

一夏「――――――ってことだ」

 

 一端、拠点に戻り、一夏は束から聞きだした自分の出生、織斑計画等をイリヤ以外のサーヴァント達に包み隠さず話した。彼等は一夏の秘密を知っていたので驚くことはなかったが沈鬱な表情をしていた。

 

ランスロット「そうでしたか…」

 

一夏「その計画はどっかの腐れ兎が生まれたおかげでおじゃんになったらしいけどな」

 

キリツグ「まさかホムンクルスを生成する技術が使われていたとはね……」

 

一夏「それでもアインツベルンの魔術に比べたら稚拙なものさ。魔術師から見れば俺は人並みの寿命と健康な体を持って生まれたホムンクルスモドキだぜ」

 

 ホムンクルスというのは基本的には短命だ。しかし、足りない物をどこかで調達するのが魔術師である。短命のホムンクルスの延命処置として科学の力を借りたと考えるべきだろう。

 確証はないがそう考えた方が納得できる部分が多いため一夏の推論はあながち間違っていないかもしれない。

 

一夏「今は特異点の解決に力を注ごう。ちんたらしているとIS委員会やら女性権利団体やらが出しゃばって遅くなる一方だ」

 

 今回だって楯無と束が横槍を入れてきたためなかなか進まなかった。今後もこのような事が続くと思い、キリツグは周辺の様子を見に行ってくると言って気配遮断スキルを使用して周囲を見て回り、他のサーヴァントは警備に回った。

 一人になった一夏は死角となっている柱の方向を見てある人を呼んだ。

 

一夏「出てきて良いぞ。いるんだろ、シャル?」

 

 物陰から出てきたのは別の部屋で休んでいたシャルロットだった。苦しそうな顔をしているのは何があったのかと訊こうとした時に偶然にも一夏の出生の話を聞いてしまったからだ。

 

シャルロット「今の話って……本当なの?一夏がその……人工的に作られたって話は……」

 

一夏「あぁ、本当だ」

 

 なるべく彼を傷つけないように言葉を選ぼうとしたが中々出てこない。苦悶に満ちている彼女の問いに一夏は淡々と答える。

 

一夏「全く、魔術に関わると碌な事がないな。尤も、錬金術がまだこの時代に残っていた事には驚いたけど」

 

 自分が人工的に作られた人間であることはドクター達に告げられていたし、目的に関してもそれなりの覚悟はしていたが、矢張り精神的に来るものがあった。IS学園で過ごしていた昔の自分のままだったら絶望の海で溺死していた事だろう。今でもシャルロットに秘密を知られてしまって溺れそうになっている。

 自虐的な笑みを浮かべて話す一夏の顔があまりにも痛ましかった。

 

シャルロット「一夏は……その、怖くなかったの?」

 

 知ってしまったら元の日常には戻れない内容に一夏は恐怖を覚えなかったのかと思わず訊いてしまった。一夏は一瞬だけ、目を丸くすると困ったような顔となった。

 

一夏「怖かったよ。でも、それがなけりゃ俺が生まれなかった。こればかりはどうしようもない事実だ」

 

 家族に関する質問をした時の千冬の言動が可笑しいとすぐに気付くべきだった。でも、知りたいと思っていても自分にはその覚悟がなかった。体を調べて貰った際に否応なしに突きつけられた事実は一夏の心に深い傷を作った。

 しかし、それでも一夏は立ち上がった。

 

一夏「出生の事実は変わらないけどドクターにダ・ヴィンチちゃん、マシュやエミヤ、他のサーヴァント達がいたおかげで大事な事を教わった。だからかな?飲み込めることができた」

 

 どうしたって自分の過去を選ぶ事も否定する事もできない。けど、大事なのは迷い、悩んだ果てに自分なりの結論に至ることではないのか。

 華々しい活躍をした英雄達も時には悩み、迷い、葛藤し、その苦しみの果てに自分なりの結論に至った。

 それが自分には必要な物だと教えられた。

 

一夏「でもさ………できれば、嘘であって欲しかったな」

 

 最初の時は周囲の支えがあったからこそどうにか出生の事実を飲み込む事に成功した。しかし、改めて事実を突きつけられるとあらゆる感情が渦巻いて整理がつかない。

 空を見上げ、夕焼けを映しているようで何も映していない一夏の目を見たシャルロットは苦しさで一杯になった。

 もし、神様がいるのならどうして彼にこんな重たい運命を背負わせようとするのかと問い質していただろう。

 

シャルロット「……苦しいなら苦しいって言っても良いんだよ」

 

 不意に出てきた言葉に一夏は再び目を丸くする。シャルロットも何故そんな言葉が出て来たのか自分でも驚いている。

けれど、言った言葉に納得している自分がいる事に気付く。

 

一夏「俺は別にそんな風に思ってない」

 

シャルロット「そうかな?僕にはどこか苦しそうに見えたんだ」

 

 今回の事も臨海学校の時もどんなに理不尽な目に遭っても一夏は苦しいと一言も言わなかった。本当は苦しいと叫びたいはずなのに一言も口に出していない。まるでそうしなければ生きている意味がないと脅迫観念に近い思いが駆り立てているように時折そう見えてしまう行動が多々あった。

 今にして思えば、彼が鈍感なのは生きていくのに精一杯で恋情を抱く余裕なんて存在しなかったのだと。

 

シャルロット「僕はね、一夏は光だと思っているんだ。いつも誰かに寄り添ってはその苦しみを一緒に向き合って、助けてくれた」

 

 親が病死して孤独と言う闇の中を歩いていた自分がまた光を手にできたのは目の前にいる人物のおかげだと今でも思っている。

 

シャルロット「だから、今度は僕―――いや、私が貴方を助けてみせる。他の誰が貴方を疑っても、否定しても私は信じる」

 

一夏「シャル…」

 

 溢れてくる泣きそうになる気持ちを必死に抑えるがシャルロットは手に取るように分かる。

 

シャルロット「大丈夫、我慢する必要なんてないよ。自分の気持ちを吐き出してもいいんだよ」

 

 まるで母親が我が子を愛しむように一夏を抱きしめる。暖かさと鼓動が伝わってくるとその後に水が頬を伝う感覚が来た。

一夏はこの時、自分が泣いている事に気付いた。涙を流したのは何時以来だろうか?そもそも人目を憚らずに泣いた記憶なんて無かった気がする。自分が覚えている限りではとある王に聖剣を返還し、肉体が滅んだが決して目立たず、強くもなく、情が深く、むしろ臆病ですらあった騎士の忠誠を見た時、最終決戦で共に戦ってきたマシュの霊基が消滅した時、兄のような存在であったDr.ロマンの最期を看取った時ぐらいだろう。

 一夏はシャルロットの体を抱き返した。抱擁にしては些か力が強過ぎるそれを彼女は嫌な顔を一つせずに受け入れた。

 

一夏「ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう……」

 

 その声はあまりにも小さく意識して聞かないと聞こえないものだが今まで溜めこんできた自分の気持ちを吐きだせることができた。

 

 

 

おまけ――――――――

 

 

 

ジャンヌ「良かったですね、マスター」

 

ランスロット「あぁ、そのようだな」

 

 一夏とシャルロットには絶対にバレない位置でランスロットとジャンヌが様子を伺っていた。シャルロットが一夏の心の拠り所になった事に嬉しそうに笑うジャンヌに対してランスロットは複雑な顔をしている。

 

ジャンヌ「ランスロット、浮かない顔をしていますがどうかしましたか?」

 

ランスロット「いえ、マスターが自分の気持ちを吐露してくれたのは嬉しい。しかし、これをマーリンが見ているとなると頭が痛くて…」

 

 グランドクラスであるあの魔術師なら千里眼と言うスキルの無駄使いで覗き見ることは可能だろう。

 

ジャンヌ「あの時は大変な目に遭いましたからね」

 

 王の話と称してアルトリア・ペンドラゴン(騎士王)と生前のエミヤシロウの情交を聞く羽目になった一夏は真っ赤な顔で星の聖剣を抜こうとする騎士王と狂乱しているモードレッドやガウェインを令呪で縛ったり、マーリンにコブラツイストを仕掛けるなど事態の収拾に尽力した。

 そのおかげで食堂が無くなると言うカルデアにとって最大の危機を防いだ。

 

ジャンヌ「そう言えば、一夏君の話を聞く限りでは彼の雛形になった人物ってエミヤさんですよね?」

 

ランスロット「彼の属性や起源を鑑みればおそらくそうでしょう。この事は内密にした方が良いでしょうね」

 

ジャンヌ「そう…ですね」

 

 騎士王の別の側面や天の女主人の他に平安の神秘殺し辺りがどう反応し行動するのか想像しただけで頭を抱えたくなるジャンヌであった。

 

 

 




マーリンが話した王の話とはFate/stay nightのセイバールートのR指定のあれです。
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