Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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蒼雫嵐夜
第二十六話~変化~


度重なる異変で謎の死を遂げた多くの女性権利団体や国際IS委員会に属するIS操縦者。そのせいで各国の政府はISの研究を打ち切ろうとしている。

 それはそうだろう。常識を逸脱した存在に無残にも敗れ、既存の兵器を凌駕する最強の兵器と言う称号が塵と消えたのだ。

 そもそも政府(男性を中心に)はISに対してあまりいい思いをしていないのだ。防衛する戦力になれるかもしれないがコアに限りがあり、女性しか乗れないという兵器として欠点だらけの物を置きたくないし維持や研究にも国家予算の半分近くお金が掛かる。今回の異変はISから手を引く口実として使えるのだ。しかし、政府の思惑に対してよしとしない組織があった。

 国際IS委員会と女性権利団体だ。ISと言う絶対的な存在のおかげで今まで甘い汁をすすることができた。それがなくなると言う事は今までの贅沢な暮らしができなくなるという他ならない。それだけは絶対に阻止すべく彼女たちは動き始めた。

 破滅への引き金を自ら引いたことすらも気付かずに―――――――

 

 

 

 日本の国際空港で鈴はとある人物と待ち合わせていた。傍らにサーヴァントの呂布を待機させているが霊体化しているので普通の人には見えない。

 時計が十一時を回った頃、その人物は現れた。

 

鈴「久しぶりね、セシリア」

 

セシリア「えぇ…本当にお久しぶりですわ」

 

 同じ想い人を巡って競い合った仲であり、友人である人物が無事であったことを知って思わず笑みが零れる。

 長旅で疲れたであろうセシリアに喫茶店で紅茶を奢り、来た理由を訊いてみた。

 

鈴「アンタも呼ばれたクチ?」

 

セシリア「えぇ、異変の原因とそれに関わっている人物の捕獲ですが…正直に言うと気が乗りません」

 

 げんなりした様子を見るにセシリアも乗る気ではないようだ。自分もそれらについての資料を読んだ。

 鷹に似せた兜を装着したISの操縦者。その正体が自分の幼馴染であることはまだ話していない。話せば事態がややこしくなるのが目に見えているからだ。彼自身もなるべく正体を隠しておきたいから正体不明のIS操縦者として振舞っている。

 頭が痛くなりそうな話から話題を変えようとしたとき、セシリアの後ろにいる女性に目がいった。

 

鈴「ところで…後ろにいる人はあんたの知り合い?」

 

セシリア「はい。元は軍人で今は私の護衛を務めているドレイクさんですわ」

 

 笑顔で話すセシリアだったが鈴にはそれが嘘だと分かった。

 何故ならドレイクが発している空気は一般人でも軍人が纏っているそれでもなく、呂布に近い。

 おそらく、普段から嵌めていない手袋も自分も持っている痣(インフェルノこと、巴御前曰く『令呪』と呼ばれる契約の証)を隠すために嵌めているのだろう。

 自分も包帯で隠している。

 

鈴「(ここで騒がれても面倒になるだけだから敢えて無視ね)」

 

 もし、呂布と同じなら戦闘になったら拙い。前の戦闘で呂布達の戦闘能力はかの世界最強(ブリュンヒルデ)よりも遥かに凌駕している。その二人が本気で戦わせたらどうなるか?

 もちろん、死ぬ。自分達もそうだが、周囲の人間も戦闘に巻き込まれて死亡する。一回死への恐怖を味わったのだから使いどころは弁えている。

 

鈴「(今のところは隔意とか敵意がないなら無暗に襲わないでね)」

 

 内心でそう呟くと呂布から承諾の意味の唸り声が頭に響いた。梟雄と名高い呂布だが狂戦士として呼ばれたのか決して恭順と言うわけではないがある程度の言う事を聞いてくれるのは正直に言って助かっていた。

 戦闘を回避したいのは鈴だけでなくセシリアも同じだった。その理由は鈴とは別件の事件(・・)に巻き込まれたからだ。

 

ドレイク[セシリア。あの娘、サーヴァントを侍らせている]

 

セシリア[鈴さんも契約していたのですか?]

 

ドレイク[あぁ、尤も奴さんは魔術師じゃないし今のところは戦闘する様子はないけど…こっちから打って出るかい?]

 

セシリア[いえ、ここだと無関係な人が多いのでこちらからも攻撃はしません]

 

ドレイク[あいよ]

 

 お喋りはこのくらいにして二人と二騎は元IS学園へと向かう。

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 一方の一夏はシミュレーターでエネミーと戦っていた。干将と莫邪で敵を切り裂き、遠い敵は赤原猟犬(フルンディング)偽螺旋剣(カラドボルグ・Ⅱ)で撃ち落とす。最後の敵を切り倒し、敵がいないのを確認して投影を解除する。

 

一夏「こんなもんか」

 

 いつもなら多少は手古摺るのに今日は調子がいいのかスムーズに倒せることができた。

否、良すぎている感じがした。固有結界を使ったせいか、前より魔術回路の回転が速くなっている。

 まだサーヴァントの領域ではないがそこいらの魔術師よりも速くなった。

 

一夏「はぁ…なんかスッとしないな」

 

 戦闘訓練ではあるが気分転換も兼ねていた。最近、胸の中に言い表せない感情が淀みのように日に日に溜まっていくのを感じている。

 体を動かせば多少は紛れると踏んでいたがどうやら失敗だったようだ。

 

???「お困りのようですね」

 

一夏「なんか胸の中がモヤモヤす―――――――ってうおっ!?」

 

 誰もいないはずなのについ答えてしまった。後ろを振り返ると角の生えた女性サーヴァントがいた。

 このサーヴァントの真名は清姫。可憐な姿をしているが――――――――――クラスは狂戦士(バーサーカー)である。

 

一夏「清姫……バーサーカーだよね?何でアサシンクラス並みの気配遮断を身に着けているの?」

 

清姫「ますたぁ(旦那様)の傍にいられるなら私はバーサーカーにもアサシンにもなりますよ」

 

 微笑ましく笑う清姫であったが執念だけで火を吐く大蛇――――竜となった逸話がある彼女なら本当にやりかねないので遠慮したい一夏であった。

 

清姫「最近、浮かない顔をすることが多いですよ」

 

一夏「やっぱり、気付いていたのか」

 

清姫「はい。私だけでなく頼光さんも静謐さんも恐らく気付いています」

 

 頼光と静謐のハサンもシャルロットの事をマスターと認めている。ハサンの場合はシャルロットが自分に触れられることができるからで頼光は息子として見えているが、息子と言われてシャルロットが目に見えて落ち込んでしまったため一夏が上手くフォローしてそれ以来娘として可愛がっている。

 一夏はどう答えればいいのか悩む。清姫は生前のせいで嘘を嫌う。もし、嘘をついたら問答無用で焼かれることになる。

 

一夏「あんまり言いたくはないけど……シャルのことで悩んでいたんだ」

 

 シャルロットと一夏の関係はIS学園での学友の一言に尽きる。

 尤もそれは一夏だけであり、シャルロットは一夏の事が大好きで告白しようと色々と考えている。

 因みに同じくらいの鈍感が英霊に一人いるのは割愛させてもらう。

 

一夏「今まではただの友人として接してきた。ぶっちゃけ、恋とかよく分からなかったしされているとは思っていなかった」

 

 親のいない一夏は愛情や恋情の違いがよく分かっていない。その辺はアルトリアも似たようなものだが彼女の場合は王と言う名の機構として私情を押し殺し続けた結果だ。

 しかし、一夏は無知と言っていいくらい分かってないのだ。

 

一夏「けど…最近、あいつの事を見ると動悸が収まらないんだ」

 

 この一言で清姫は察した。

 一夏がシャルロットに恋をしていると―――――

 

一夏「どうすればこの感情を処理する事ができるのか、俺には分からない」

 

清姫「抱えたままでいいと思います。私達もますたぁ(旦那様)と同じように生前を過ごしていましたから」

 

 自分の感情に折り合いをつけなければいけない事がたくさんある。しかし、捨ててはいけない物だってたくさんある。

 彼は自分の気持ちに正直だ。魔術を扱う者として多少なりとも合理的に動きこともできるが基本的なところは変わっていない。

 清姫の言葉に一夏はあることを思い出した。召喚されたサーヴァントは生前に残してしまった怨恨や後悔、夢がある。

 

一夏「そっか。結論を出すのは長くなりそうだな…ありがとう」

 

清姫「いえいえ、ますたぁ(旦那様)のためですもの」

 

 未だに淀みは溜まっている。

 それでいい。向き合えって少しずつでもいいから応えていこう。そう考えると幾らかマシになった。

 

清姫「そういえば、マスターは千冬様とは血が繋がっていないと聞きましたが……まさか」

 

一夏「ない、流石にそれはない。例え血が繋がっていなくても倫理的にも社会的にも即効アウトだから」

 

 近親相姦なんて自分も姉も趣味ではない。

 口に出した事もそうだが幼馴染たちが暴れ狂う危険性が孕んでいる。今だからこそ恋愛感情と言う物を理解できるので爆発したらたまったもんじゃない。さらに清姫を筆頭としたサーヴァントが加わると火事から絶体絶命〇市並の大災害レベルにまで発展する。

 

一夏「答えるにしても目の前の問題をどうにしかしないとな…」

 

清姫「そうですね。ますたぁ(旦那様)、覚えておりますが……私、とても執念深い女性ですので気をつけてくださいましね」

 

一夏「ウン、知ッテル」

 

 サーヴァント達の逸話や伝承は頭に嫌と言うほど叩き込まれている。清姫の他にも愛が重いサーヴァントがいるので扱いには注意を払っている。間違えた時を想像ことなんて怖くてできない。

 背中から冷たい物を感じたがそこはあえて無視する一夏であった。

 

 

 

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