Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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第二十七話~夢幻事変

 

 夢幻事変。

 一夏が体験した特異点のことなのだが、魔術の知識のないIS委員会はワイバーンやオートマタといった現実では考えられない存在の襲撃をそう呼称した。

 IS委員会日本支部の大会議室では各国の代表候補生が集められていた。理由は夢幻事変を解決した国籍も正体も不明のIS操縦者を捕まえる人員を確保するためだ。そのISに搭載されている謎の技術があれば、ISの優位性を認めてくれると思ったからだ。

 誰もが真面目に聞いている中、鈴は馬鹿馬鹿しい話だと思って聞いていた。

 

鈴「(あぁ…いい加減此処を抜け出したい)」

 

 今更ながら代表候補生になるんじゃなかったと辟易していた。

 口を開けばやれIS操縦者の誇りとかISは至高の存在とか言われてもこちらのやる気が萎えるだけだ。これなら器の底に申し訳ない程度に麺が入っているラーメンと言う名の麻婆豆腐が出される閑古鳥が鳴いているラーメン屋でランチしていた方がまだ有意義だ。

 漸く演説が終わって各自指定された捜索域に移動することになった。

 

???「鈴、全然やる気無いみたいじゃない」

 

鈴「()、あんたも来ていたのね…」

 

 自分と同じ声、容姿で髪の毛をサイドテールにしている少女が話しかけてきた。彼女は鈴の従妹で台湾の代表候補生の凰乱音(ふぁんらんいん)という。

 

乱音「どうしたのよ?」

 

鈴「あんな馬鹿さらけ出して平然としている態度に呆れていたのよ。普通は敵の戦力を調べてから作戦を立ててればいいのにね」

 

乱音「作戦もなにも相手は一人でしょ?」

 

 好き勝手に言う従妹に怒りが込み上げてくるが、自分の理性がここで騒ぐなと言ってそれに従う。

 この事件は一夏の力がなければ解決しない。だが、女性権利団体に彼の存在を話せばこちらが不利になる。自分の保身の事しか考えていない連中に話せばどうなるか、結果が目に見えている。

 そう思うと急に頭が冷えた。

 

鈴「アンタもそのうち分かるわよ、あたし達が如何に弱いかを…」

 

 これから戦う相手はISなんて死ぬような目に遭ったからこそ、ISが無敵でも最強でもないただの身を守るためだけの道具として見ていた。

 だからこそ、血縁関係の乱音には死んでほしくなかった。

 

乱音「(何言っているの?)」

 

 だが、悲しいかな。鈴の想いは乱音には伝わらなかった。

今まで安全圏にいた乱音にはサーヴァントの脅威が如何に強大なのか分かっていないのだ。

 鈴ももちろん、それは分かっている。口で説明してやってもいいがそれを信じるか信じないかと問われれば当然信じないと答えるのが大半のため敢えて強くは言わなかった。

 

鈴「まぁ、お互い死なない程度に頑張りましょう」

 

 そう言って自分の捜索予定の場所に向かった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 一方のカルデアでは今回の特異点を踏まえて検証を行っていた。

 

ダ・ヴィンチちゃん「さて、シャルロット君。始めてのレイシフトはどうだったかな?」

 

シャルロット「はい、初めに感じたのは恐怖でした。いつもはISで戦って絶対防御で怪我を負っても死ぬことはありませんでした。けど、今の戦いはそれがない。本当に死と隣り合わせの世界だったのを改めて感じました」

 

ダ・ヴィンチちゃん「うん、それは至極当然な感想だね」

 

 死という感情は誰しも持っているものだが、時代が進むについれて薄れていく。それを急激に加速していったのはISだ。

 絶対防御のせいで操縦者は死に鈍感になってしまったのだ。

 

ダ・ヴィンチちゃん「一夏君はどう見えたかな?」

 

一夏「俺が今まで巡ってきた特異点はこれまでの歴史を壊すように動いていた。けど、今回は英霊達が今を叩き壊そうとしている感じだ」

 

 今が過去の積み重ねで出来るのなら過去を変えて今を破壊するのは分かる。

 しかし、今度の特異点は過去の英霊を使って今を壊し、未来をなかったことにしようとしている。

 

シャルロット「まるで箒の恨みを体現したような感じだよね」

 

ダ・ヴィンチちゃん「箒……君の幼馴染で魔神柱の依り代になった娘だね」

 

一夏「箒か。つまり、力は魔神柱で行使するのはあくまで箒自身……いや、この場合は心理か」

 

 そう考えると辻褄が合わないわけではない。自分が消えてISを憎む気持ちがさらに増し、魔神柱の器にされてもなおその憎しみで魔神柱の力を使って全てを壊そうとしている。

 

一夏「俺の周りってどうしてこうもラスボスじみた人間がいるのかね。まぁ、やってやるさ」

 

 自分に拒否権なんてない。あるのは押し付けられた望んでもない使命だけ。

 しかし、やるしか生き残る道がない。なら、やるしかないのだ。

 

シャルロット「僕も足を引っ張らないように頑張らなきゃね」

 

 一夏がやったような世界を救うなんて大それた事はしないし、言わない。というかできない。

 けど、隣にいる人と歩きたい、守りたい。そのために戦うと覚悟を決めたのだ。

 

ダ・ヴィンチちゃん「あっ、シャルロット君の専用機の改修。もう終わっているよ」

 

シャルロット「本当ですか!?」

 

ダ・ヴィンチちゃん「いやぁ~リクエストされた武装を作るとなって久々に燃えたよ」

 

一夏「なんかとんでも使用の武装になっている気がするな」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの他にも直流馬鹿(エジソン)交流馬鹿(テスラ)が関わったとなると並の技術者では対抗できない武装になっているだろう。

 普通に戦闘を行えば勝つ自信はあるがISとなるとシャルロットが上だ。

 

一夏「(今度の特異点も日本だろうな…)」

 

 ISの関係している度合いからすれば各国のISが集まるIS学園で、次は生まれた日本だ。IS学園の事件はすでに完遂しているのでカウントしないが日本が狙われる確率が高い。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

某所

 

クロエ「体の具合はどうですか?」

 

束「なんとかね…」

 

 現在の束は失った手足を義手で補ってなんとか立っている状態となり、以前のように好き勝手できることはできなくなった。

 

束「世界の様子はどう?」

 

クロエ「はい。イギリスやドイツはISの価値を低く見始め、ISの研究から手を引く企業が出始めています」

 

束「本当に人ってバカだよね。すぐに掌返すんだから…」

 

 

 

 現実を受け止められず自分の地位に縋り付いている者、現実を受け止めて進む道を模索する者、既に自分の道を見つけて進んでいる者。

 各々の思惑が入り乱れ、次の戦いの幕が上がろうしている。

 

 

 

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