Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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第二十八話~役目~

シャルロット「海だね」

 

一夏「コンテナだらけの場所を見るに貿易港だな」

 

 何故二人がこのような場所にいるか。それは一時間以上前に遡る。

 一夏とシャルロットはいつものように魔術の訓練をしていると新たな特異点が現れた。

 発見された場所はまたまた日本であったためすぐさまレイシフトしてやってきたのだ。その場所とは今いるコンテナが積まれているこの港である。

 人の声と動く船が見えるあたりまだ機能をしているようだ。積まれたコンテナが死角になっており、誰も自分達を見ていない。

 

一夏「とりあえず、この港から出よう」

 

 死角になっている所を通り、見つかりそうになれば魔術で隠しながら港を後にする。

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 その頃、千冬は資料室でこれまでの異変を調べ、自分なりに対抗策を練っていた。今の自分は戦場に立って味方を鼓舞できる存在にはなれなくなったが作戦を考え、発案することはできる。

 調べているとIS学園での戦闘が脳裏に浮かんだ。

 

千冬「(体が鈍ってしまったのが原因か?……いや、体だけではなく精神も鈍っていたのかもしれないな)」

 

 第一回モンドグロッソで優勝を飾り、現役を引退した後にIS学園では教鞭を振るっている時間が多かったからなのか剣を振るう機会が少なくなった。

しかし、それだけではないと千冬は自覚していた。これまで自分と対等、またはそれ以上の相手とあまり巡り合わなかったため相手との力量の差を測る能力が低下してしまった。それ故にスパルタクス(未知の相手)に自分が負けるはずはないと無意識のうちに驕ってしまって、その結果が今の戦えない体となってしまった。

 自分の不甲斐なさに嫌気がさしていると不意に一夏の事を思い出してしまった。

 

千冬「(それに対して一夏は強くなった。世界最強(ブリュンヒルデ)ともてはやされていたあの頃の私よりも)」

 

 剣を交えてないため正確な強さはまだ分かっていない。だが、彼が纏う雰囲気で強くなったと感じた。そして自分の出所の真実を知ってもその心は折れる事もなく受け入れて前に進もうとする姿に、彼の強さが全盛期の自分より強いと確信した。

 

千冬「もう、守られるだけの存在ではないのだな」

 

 何時の間にか成長していた弟に嬉しく思う反面、一抹の寂しさが込み上げてくる。行方不明になっている間に何があったのか、何を見てきたのか、訊きたい事は山のようにある。だが、それは後回しだ。

 今やるべきことはこの事件を早急に終わらせることなのだから。

 

千冬「(このまま行くと多くの犠牲が出る。一夏の力なしで解決するのは不可能だ)」

 

 突如として襲ってきたと言うワイバーンやオートマタと言った架空の存在。名実共に最強の兵器であるISの攻撃はほぼ無力化されてしまい、蹂躙された。有り得ないと喚く者も少なくない。千冬とてその気持ちも分からないわけではないが紛れもない事実として受け止めるしかなかった。

 最強と無敵は似ているが違う。その意味を理解していない者は未だにISを絶対的な存在であると誇張する。

 

千冬「(現時点で奴らと対抗できるのは鈴と更識妹に追従しているあの二人だけか)」

 

 中華風の鎧を着た大男と戦巫女という言葉が似合う女性。彼らから発している空気は自分が戦った男と酷似していた。

 対抗できるだろうが手札が足りない。

 

千冬「(本当なら一夏とデュノアがこちら側について欲しいのだが無理だな。一夏の口ぶりからして何処かの組織に属している)」

 

 せめて一夏と連絡できれば共闘の案を持ちかけることも彼の邪魔にならない様にできたかもしれない。

 しかし、今更現状を嘆いていても変わらない。できないならできないで別の方法を考えるしかない。

 千冬は気持ちを入れ替えて作戦を練り続ける。犠牲をこれ以上増やさないために。

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 同時刻。ビルの屋上で一夏とシャルロットは街の様子を調べている。シャルロットが簡易的な結界で人払いをし、一夏が投影した単眼鏡と双眼鏡を使って変わった点がないかを見ている。

 

一夏「今のところ問題らしい問題は起こってないけど、こりゃ酷いな。完全に男を食い物にしているな」

 

 単眼鏡で覗いている視線の先には誰の目から見ても冤罪だと分かるのに捕まえられる男性と愉悦な笑みを浮かべる女性がいた。

 他の女性も口々に男性がしたと主張しているのを見て改めて自分たちの世界の問題に悩む羽目になった。

 

シャルロット「IS学園があった頃、上級生が憂さ晴らしに男を冤罪にしてやったと自慢していたよ。」

 

 救いと言えば一年や一部の上級生が女尊男卑の風潮に染まっていないとシャルロットは述べるが、一夏は頭が痛いと言わんばかりに溜息を吐いた。

 

一夏「(この光景をロマニが見たら幻滅するだろうな…)」

 

 ISは科学技術の進歩以上に人の欲や悪意を増長させる劇薬か何かの類だと一夏は考えている。

 千冬や副担任の山田真耶のように危険性や価値を十二分に理解できた人ならば、こうはならなかっただろうとも考える。

 

???「まだなの、マスター(おかあさん)?」

 

シャルロット「まだだね。今はじっとしていなきゃダメだよ、ジャック(・・・・)

 

ジャック「は~い」

 

 ジャックと呼ばれた小柄な体躯の白髪の少女だが、腰には歳不相応の刃の数々が収められている。

 彼女はシャルロットが契約しているサーヴァントであり、かつてロンドンを恐怖で震え上がらせた連続殺人犯の『ジャック・ザ・リッパー』である。今召喚されているジャックは生まれてくることができなかった子供、所謂水子霊の集合体と言える存在である。故にマスターであるシャルロットを『マスター』ではなく、『おかあさん』と呼んでいる。

 

シャルロット「視認できた何人かは代表候補生だよ。顔を合わせることがあったから覚えている」

 

一夏「全員ではないだろうが女性権利主義という前提で動いた方がいいかな。目をつけられると厄介だし」

 

シャルロット「確かに魔術的な意味もそうだけど、一夏の場合は体の隅々まで調べられて、最悪殺されるかもしれない」

 

一夏「言うなよ。俺だってそうなるだろうなって思っていたんだから」

 

 捕まえる気なんて毛頭ないがあり得ないことではないのでうっすらと寒気が一夏を襲う。

 

???「そんな及び腰では失敗するぞ」

 

一夏「師匠。そうは言いますけど、俺はクー・フーリンみたいに戦闘続行スキルなんてありませんからね?」

 

 一夏の傍にいるのは影の国の女王であるランサークラスのサーヴァント、スカサハ。

 今は一夏のサーヴァントである。

 

一夏「俺たちは目立ちすぎると目的が達成できなくなるので今回はなるべく慎重に動くつもりです。緊急時は仕方ありませんが」

 

スカサハ「あい分かった。しかし、話を聞く限りではISの操縦者とやらは戦士としての心構えがなっておらんな。会ったら教育してやるか」

 

 戦う気満々だな、この人と内心顔を引きつらせながら作戦の指示を出す。

 

一夏「とりあえず、集合場所をこのビルにして二手に分かれて行動しよう。何かあったらISで連絡しよう」

 

シャルロット「そういえば、改修する際に待機状態でも通信できるようにしてあったんだっけ?」

 

一夏「ダ・ヴィンチちゃんやエジソン達のおかげでな。ついでにコアの分析も終わって量産可能になっている」

 

シャルロット「本当に英霊ってすごいよね」

 

 他愛のない話をしながらゆっくりと非常階段から降りる二人と現代の服装に着替えて追従するサーヴァントが二騎。

 

一夏「(肩身が狭いな…)」

 

 女性三人に対して男は自分一人。

 IS学園に在学中の時を思い出したのか今の状況に対して微妙な表情を浮かべる一夏であった。

 

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