Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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第三十三話~元素の魔術師~

 上下水道の中をシャルロットが前に立ってロゼンダを誘導し、一夏が気絶したアルベールを米俵のように担いで後ろを歩いている。ジャックとスカサハは霊体化して一夏とシャルロットの隣についている。これは不測の事態になった時、戦えないロゼンダを守るためでもあった。

 しばらく歩いていると一つのマンホールの下に辿り着いた。シャルロットがはしごに上って外を覗き見ると人気が全くなく、監視カメラもない細い道に出た。上り切ったシャルロットがロゼンダに手を伸ばして彼女を引っ張り上げる。最後に一夏はアルベールを背負って上り切ったが気絶した男性を背負って数メートルのはしごを上るのはヘラクレスと鬼ごっこするより簡単なので問題はなかった。

 周囲を確認すると誰もこちらに気付いていない。

 

一夏「それでは俺達はこの辺で失礼します」

 

シャルロット「お世話になりました」

 

 気絶したアルベールをロゼンダに渡すとシャルロットと一緒にマンホールの中に入ろうとする。

 

ロゼンダ「もういいの?」

 

一夏「俺らは立場的にお尋ね者なので一緒にいると色々と厄介な事になるので」

 

 例として挙げるのならISの生みの親である天災兎や自分の権威に縋り付きたい女性利権団体のメンバーだろう。

 前者は何をしでかすか分からない爆弾みたいな存在で後者は甘い蜜を啜っていた生活を守ろうと躍起になっている。尤も、女性権利団体の力が地に堕ちようが一夏の知ったことではない。

 

シャルロット「ロゼンダさん……お父さんを頼みます」

 

ロゼンダ「えぇ……分かったわ」

 

 もしかしたらこれで最後の会話になるかもしれない。だが、短い間でも親子としての情はちゃんとあった事にロゼンダは安堵していた。

 

シャルロット「さようなら」

 

 そう言ってシャルロットはマンホールの蓋を閉めた。ロゼンダはこのまま二人が無事に逃げられることを祈った。

 しかし、そうは問屋が卸さないのが現実である。

 逃げた先に偶々巡回していた女性権利団体のIS操縦者の一団と出くわしてしまったのだ。

 自分たちの迂闊さを呪う二人であったが唯一幸運だったのは正体を隠すために一夏は仮面を被り、シャルロットはフードを被っていたため正体がバレていないことだ。

 

一夏「おいおい、随分と大所帯で来たな」

 

女性「貴様が件の男だな。大人しく投降しろ」

 

一夏「阿呆、そんなので従う俺達に見えるか?」

 

 何を馬鹿な事を言っているんだと言いたげな様子で呟く。一夏にとって国際IS委員会や女性権利団体のメンバーは邪魔な存在でしかないのだ。

 一夏の態度が余程気に入らなかったのか女性は蟀谷に血管を浮かせてISを展開した。他のメンバーもISを展開する。

 一夏も答えるようにホワイト・リンカーネイションを展開し、シャルロットもISを起動させる。

 

シャルロット「来て、元素の魔術師(エレメント・メイガス)

 

 そう言ってシャルロットはオレンジと黒をベースにした機体を纏う。顔を隠すように装甲が集まっていき、魔術師を彷彿とさせる姿となった。

 シャルロットは新たな(IS)を手に入れて宙を舞う。

 

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

 

 控えめに言っても最悪だ。

 今の状況を見て凰鈴音が最初に思った感想だった。これなら千冬の地獄の訓練をしていた方がまだ良かったかもしれない。

 

鈴「(よりにもよって一夏が相手なんて最悪にも程があるでしょ!?)」

 

 IS操縦なら負けない自信はあるが戦闘能力に関しては今の一夏の方が上だ。彼の戦闘を見た時間は短いが手足にように双剣を操る姿は今も脳裏に焼き付いている。代表候補生はおろか、代表でも今の一夏に勝てる可能性は限りなく低いと直感した。実際に簪からロシア代表であった姉の楯無が簡単に倒されたと聞いているので間違いない。

 

鈴「(今回はシャルロットも自分のISを改造しているから下手な行動はできないわ)」

 

 数ならこちらが有利なのだが正直に言うと期待はしていない。数の暴力は単純な脅威ではあるが戦意が下がればたちまち総崩れになる。

 それに加えて一夏が纏っているISにはコアを強制的に外へ出す機能がある。もし、彼の攻撃が当たればコアを強制的に排出されて行動不能になる。最悪の場合、コアを破壊される恐れだってある。

 シャルロットの駆るISも同じ機能を搭載されても可笑しくないしお互いをよく知っているため連携させたら拙い。

 

鈴「(此処はシャルロットと一夏を分断するのがベストね。二人同時に相手するよりこっちのリスクを抑えられる)」

 

 考えながら行動するのは苦手分野だが、思考を止めて勝てるほど相手は甘くはないと体が警告している。

IS学園の襲撃から始まり、呂布(バーサーカー)と言う相方が傍にいて、今まで不可解な敵と対峙した結果、自然と力量の差を測れるようになった。

 

鈴「此処は分断して―――――」

 

隊長「二機だけなら我々だけで事足りる。」

 

 しかし、鈴の話を聞かずに隊長の女性が一斉攻撃を命じる。数では有利ではあるがために楽観視する面々に苛立ちが募る。

 

鈴「(真に恐れるべきは有能な敵より無能な味方であるって言うけど、本当に洒落にならないわね!?)」

 

 心の中で舌打ちして鈴も攻撃態勢に移る。

 鈴以外のメンバーが攻撃している間に一夏とシャルロットは避けている。

 

シャルロット「そんな攻撃は当たらないよ!」

 

 英霊達の攻撃に比べれば苛烈でもなければ正確性もない。ただ好き勝手に撃っているだけの攻撃であったため避けるのは簡単だ。

 一夏はそれを双剣で弾き、かわしながら接近すると敵の一人に狙いを定めて双剣を振り下ろした。

 刃は肉体を傷つけずコアを破壊した。

 

操縦者A「まさか直接コアを…」

 

一夏「(流石はダ・ヴィンチちゃん達だ、いい仕事をしているよ)」

 

 命だけは無事だろうと落下していく操縦者を一瞥し、そう判断した一夏は双剣を巧みに操って次の敵を斬り、コアを破壊する。

 ホワイト・リンカーネイションは電磁波無しでもISのコアを破壊できるように改良されている。

 接近戦では不利と悟ったIS操縦者達は銃火器を呼び出して一斉に仕留めようと動くが一夏から見れば甘い考えだ。

 

シャルロット「僕を忘れちゃいけないよ」

 

 シャルロットがマシンガンを二挺取り出すと敵が集中している方へ発砲する。バラバラに逃げた三機のうちの一機が弾丸が直撃した瞬間、一気に地上へと落下した。

 

操縦者B「なっ!?コアを破壊できるのはあの白いISだけではなかったの!!?」

 

 ヒステリックに叫ぶ操縦者を無視してシャルロットは引き金を引く。一機、また一機と落ちていく。

 

シャルロット「(明らかに動揺している……)」

 

 コアを直接破壊できるIS。一機だけでも十分脅威なのにそれが二機存在するとは思ってもみなかったのだろう。その証拠に目に見えて動揺していた。

 一夏はそんな彼女達を斬り伏せながら隊長格の女性に双剣を振るおうとしたが重厚な刃がそれを阻んだ。一夏の攻撃を防いだのは鈴だった。

 

鈴「そう簡単にはやらせないわよ」

 

一夏「ほう、お前みたいな冷静な奴がいるとは思わなかった」

 

 知っているくせにと鈴は内心で舌打ちをする。

 一夏は自分がいることもそして自分が必ず前に出てくる事も気付いている。知らない間に性格が少しひねくれているようだ。

 鈴は衝撃砲を至近距離で撃つが、読まれていたようでそれを一夏は避ける。衝撃砲では意味がないと判断した鈴は双天牙月で再び接近戦をしかける。

 

鈴「(やっぱり強い!)今度は何をしに私達の前に現れたわけ?」

 

一夏「この事件の収拾だ。事態は既にISが使えるからと言ってふんぞり返るお前たちの手には負えない物になっている」

 

 簡単に言えば、お前らには無理だからさっさと手を引けと言っているがそれはできない。

 

鈴「生憎、できない相談ね」

 

一夏「だろうな。だが、お前達では何人かを除いて奴らに勝てる見込みはない」

 

 勝てないことくらい鈴だって分かっている。サーヴァントに勝てるのサーヴァントだけなのだから。

 彼らを使役できるのは自分と一夏とシャルロット、簪、そしてセシリア。鈴が把握しているだけでも片手で数えるくらいの人数しかいない。

 

鈴「上等よ。こちとら色んなもん背負って生きているのよ」

 

一夏「なら、試してやろうか?お前達がこの災厄を退ける力があるのかを」

 

 珍しく挑発する一夏に鈴は敢えて乗った。久々に彼と戦う事に喜んでいる自分がいることに気付いている。

 お互い一旦距離を取って出方を伺う。

 

 

 

「きゃぁぁぁぁ!」

 

 

 同時に動こうとした矢先に一人の悲鳴によって待ったをかけられた。

 

 

 

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