Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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一か月ぶり投稿です。

※今回は本編ではなく閑話です。


閑話~本日のエミヤ食堂②~

 拝啓、IS学園の皆様。

 魔神柱による襲撃で世の情勢が大混乱になっていますが病気や怪我なく無事に過ごしているでしょうか。僕は体の方は至って健康ですが少々困っています。

 

エミヤ「ふっ、イナダ十六匹目フィッシュ。やはり、君と私とではリール釣りの経験が違う」

 

一夏「お前こそ侮るなよ、俺は高校に入るまで食費を安く済ませるために毎朝の釣りで主菜となるおかずの材料を確保してきた。そこらの釣り人より腕はある」

 

 何故なら僕は今、釣り勝負の調停者(ルーラー)として勝負の行く末を見守る羽目になっています。なんでも素材集めのついでに今晩の食材の確保でオケアノスと言う場所にレイシフトしてエミヤさんと一夏が釣りを始めた所、同じ数のイナダやアジを釣りあげてしまった結果、勝負と言う流れになってしまったのです。

 因みにですが二人が使っている釣具は本来なら十万以上する代物ですが全て投影によるバッタ物です。

 正直、魔術をそんな風に使っていいのかどうか迷っています。

 

エミヤ&一夏「フィィィィィィィィッシュ!」

 

 僕の心境を知らずに時々ヒャッホー!と叫びながらノリノリで魚を釣り上げる二人。そのうちあの二人はアングラーとか呼ばれるんじゃないかなとどうでもいい考えが浮かんでしまいます。

 また、僕以外にも被害者がいるようで…

 

シャルロット「あの…釣れていますか?」

 

クー・フーリン「……頼む…俺の楽しみを返してくれ…」

 

 巻き込まれる形で参加したクー・フーリン《ランサー》はこの世の終わりみたいな顔をしています。口には出しませんが、ドンマイです。

 

シャルロット「もう…どうにでもなれ」

 

 そしてこの場所には平穏と言う言葉はなかった。今の僕にできることは早くこの勝負が終わって欲しいと願う事です。結果として第三者の勝利という形で終わりました。

 その第三者と言うのは…

 

スカサハ「まだまだ甘いな、小童共」

 

 水着姿のスカサハさんだった。どうやら潜って獲りに行っていたらしく手には網を持っていた。おかげで鰺やイナダ、烏賊の他にカレイや蛸が大量に獲れました。

 今日のご飯が楽しみです。

 

 

 

 

************

 

 

 

 

 カルデアに戻った一行は釣った魚をどう調理するか話し合っていた。最終的な決定権はエミヤに委ねてはいるが具体的な案が見つからない。

 

エミヤ「ふむ、アジは些か釣り過ぎたか」

 

一夏「うちは健啖家が多いから多少余っても問題はないだろう。にしても鰺か…フライかなめろうにしたら美味いだろうな」

 

シャルロット「一夏、なめろうって何?」

 

 日本料理の一種なのだろうがどういった代物なのか想像がつかない。一方の一夏は実姉に作らされたことがあるのでどんなものか知っている。

 

一夏「鰺を刻んで葱や味噌なんかを混ぜ合わせた奴。そのまま食べてもご飯の上に乗せて食べても美味い」

 

シャルロット「へぇ…食べてみたいな」

 

???「そうですね。私もなめろうとやらを食べてみたいです」

 

 金髪に翡翠と思わせるを瞳を持った青いドレスのサーヴァントがカウンター席に座っていた。

 

一夏「あ、アルトリア?いつからそこに?」

 

アルトリア「つい先ほど。ランサーから新鮮な魚を仕入れたと聞いたのでやってきました」

 

一夏「(それですぐに喰いついてくるあたり流石、腹ペコ王と言うべきか…)」

 

 彼女は聖杯戦争と呼ばれる魔術師達の殺し合いに参加していた。そのマスターが未熟で魔力供給が満足に行えないため食事による魔力供給を行う事となった。現代の料理があまりにも美味しかったため生前の食事が如何に雑な物だと思い知らされたそうだ。

 それ以来、彼の料理が大変お気に入りになったそうだ。

 

一夏「(そのマスターが今じゃカルデアで総料理長やっているんだよな…マーリンからあっちの方でも魔力供給したって聞いたな…)」

 

 口に出した瞬間、剣だらけの空間に閉じ込められ、聖剣で斬られるはめになるので言わなかった。一方のシャルロットはこのサーヴァントは誰なのか内心首を傾げていた。

 

一夏「あぁ、シャルはあんまり話した事が無いんだっけ?彼女は…」

 

アルトリア「イチカ。自己紹介くらい自分でできます。私はアルトリア・ペンドラゴン。ブリテンの地を治めた騎士王と呼ばれた騎士です」

 

一夏「アーサー王と言った方が分かりやすいかな」

 

 アルトリアの自己紹介と一夏の簡単な説明にシャルロットは大きな衝撃を受けた。まさかアーサー王が女性とは誰も思わないだろう。

 

一夏「最初に言ったと思うけど、一部のサーヴァントは性別が逆転しているって。彼女はその一例だよ」

 

シャルロット「けど、実際に見るとそりゃ驚くよ…」

 

 いまだに信じられない光景を見ているかのように目を丸くしているシャルロットに一夏はイギリス出身の友人が見たらどんな反応を起こすのだろうかと考えが一瞬だけ頭に過ったが、今は献立を考える方が先決だ。

 

一夏「とりあえず、一品目はなめろうに決定だな」

 

エミヤ「なめろうの他に刺身に開き、フライにしよう。他の食材はマスター、君が担当してくれ。キャットはオフシフトだからな」

 

一夏「分かった。それじゃ、他の健啖家サーヴァントがやってくる前に調理を始めますか」

 

 エミヤと一夏は手ごろな魚を掴むと一気に捌き始めた。

 最初に鱗とゼイゴを取り、頭と内臓を切り離して三枚に卸す。次々と魚が精密かつ迅速に捌かれていく。

 

シャルロット「(エミヤさんもそうだけど、一夏も綺麗な包丁さばきだ)」

 

 久々に恋した人の手料理を食べられると少し舞い上がっていて気付かなかったが彼が上達したのは戦闘技術だけでなく料理の腕も上達していたようだ。

 手持無沙汰のシャルロットはカウンター席で待っているアルトリアと談笑することにした。

 

シャルロット「エミヤさんの料理はどれも美味しいからどんなのが出てくるか楽しみだな」

 

アルトリア「ええ、シロ…アーチャーの食事はいつも美味しいです。それにこの食堂の雰囲気は私には好ましい」

 

シャルロット「(何で途中で言い換えたんだろう?)そうなんですか?」

 

アルトリア「はい。私が生きていた時代にはあまり縁がないものだったので」

 

 孤高の王であり続けたアルトリアにとって和気藹々な雰囲気で食事を摂るのが何よりも好ましいのだ。

 

一夏「エミヤ。この蛸、身が締まっているみたいだから塩で揉むのもいいが大根で叩きたいんだけど大根あるか?」

 

エミヤ「あるぞ。ついでに味噌と生姜、みょうがを取ってもらえると嬉しい」

 

一夏「分かった」

 

 業務用の冷蔵庫から大根を取り出すと上半分を切って皮を取り、それで〆た蛸を叩き始めた。

 

シャルロット「どうして大根で叩いているの?」

 

一夏「本当なら塩揉みだけでいいんだけど大根で叩くと大根の成分で蛸がぐっと柔らかくなる」

 

 蛸を叩いていると次第にぬめりが出てきた。それを水で洗い流し、鍋の中に入れてゆで始めた。

 

一夏「刺身に唐揚げ、たこわさなんかもいいな。っと、次は烏賊を捌かないと。こういうのは鮮度が命だからな」

 

 色々と献立を考えながら食材の下処理を進めていく。

 一方のエミヤは下処理を終えた鰺の皮をむき、中骨を取り除く。次に長葱、みょうがをみじん切りにして生姜をすりおろす。

 鰺を切り刻み、粘り気が出てきたら先程切った長葱にみょうが、生姜、味噌、風味付けの醤油を加えて混ぜる様に叩く。

 

エミヤ「できたぞ、鰺のなめろうだ」

 

 綺麗に盛られたなめろうに二人は涎が垂れそうになるのを必死になって耐える。

 

シャルロット「これがなめろうって言う料理なんだ」

 

アルトリア「とても美味しそうですね」

 

エミヤ「皿まで舐めたくなると言うのが名前の由来だ。まぁ、西洋人には抵抗感は強いがね」

 

 エミヤの説明にシャルロットはどことなく納得してしまった。日本と違ってヨーロッパでは魚介を生で食べる風習はない。

 

一夏「こっちもできたぞ」

 

 遅れて一夏も狐色に揚がった揚げ物が皿に盛られていた。油の香りが胃袋に暴力的な誘惑を仕掛けてくる。

 

一夏「蛸の唐揚げにイカリングフライだ」

 

シャルロット「美味しそう…」

 

アルトリア「おぉ、これも素晴らしい。しかし…蛸はちょっと…」

 

一夏「そういえば、アルトリアは蛸が苦手なんだっけ?」

 

アルトリア「はい…」 

 

エミヤ「心配ない。彼女のためにもう一品用意してある」

 

 顔を曇らせているアルトリアに出したのは照り焼きにした魚と細く切られた烏賊だ。

 

一夏「これってイナダの照り焼きとイカそうめんか」

 

エミヤ「流石はマスター、よく知っている」

 

シャルロット「どれも美味しそうだね…」

 

 色取り取りの料理にシャルロットは目を光らせている。この芳しい香りで食欲が増幅され、例え大食いじゃなくても食べたくなる。

 

シャルロット「食べてもいいですか?」

 

エミヤ「無論だ。食べてみてくれ」

 

 まずはなめろうから頂こう。

 一口食べると生臭さはなく鰺の旨味が口一杯に溢れてくる。

 

シャルロット「美味しい。なめろうの所以が分かった気がするよ」

 

一夏「因みになめろうをご飯の上に盛ってもみ海苔と白胡麻を振りかけて出汁茶漬けにして食べるとさらに美味いぞ」

 

アルトリア「そうなのですか?では早速…」

 

 一夏の助言通り、アルトリアはなめろうをご飯の上に乗っけ、出汁をかけて口に運んだ。出汁の美味さとなめろうの美味さがお互いを引き立て合って何とも言えない旨味が口に広がり、気がづくと茶碗の中のご飯が無くなっていた。

 

アルトリア「まさか一匹の魚で美味な料理が色々とできるとは思いませんでした。アーチャー、おかわりです」

 

エミヤ「喜んで貰えてなによりだ」

 

 高揚しているアルトリアを見てエミヤは微笑みながら作る手を休めず料理を作り続けた。

 この展開はもうじき彼女達(・・・)がやってくることの前兆なのだ。

 

???1「良い匂いがするな」

 

???2「匂いからして今日は魚料理ですね」

 

???3「ジャンクな食べ物はあるか」

 

???4「それは分かりませんが…美味な料理なのは間違いないでしょう」

 

???5「アルトリア顔がこんなに…しかし、腹が減っては戦はできません」

 

???6「和菓子とかあるかな?」

 

 食堂に黒いドレスや白いドレス、豊満な胸の女性達が入ってきた。しかし、彼女達には共通点があり、全員アルトリアと同じ顔(・・・)をしているのだ。

 

シャルロット「アルトリアさんの顔がいっぱい…」

 

一夏「言い忘れていたけが、彼女達はそこにいるアルトリアと同じ起源だけど別側面やら別世界やらで様々な違いが生じたことで生まれたから完全に別個体だ」

 

 それを先に言ってほしいとシャルロットはツッコミたかったが本人がいるので飲み込むことにした。

 

エミヤ「彼女達はかなり大食いだ。食材を回せ、マスター。彼女達を満腹にしてもかまわんのだろう?」

 

一夏「もちろんだ。オルタ達には揚物の他にアヒージョでも作った方が良いな。ジャンク好きだし」

 

 何せアルトリアを含め、カルデア屈指の健啖家達なのだ。釣り過ぎたので余ってしまうかと思われたが彼女達が来ては足りるかどうか不安になってきた。

 そんな中、シャルロットはアルトリア達が飯を食いに来ただけではないと直感し魚を捌いている一夏に問うた。

 

シャルロット「一夏、どうしてアルトリアさん達はエミヤさんの事が好きなの?」

 

一夏「オリジナルの方は過去に何かあったみたいだけど、他のアルトリア達は全員エミヤに胃袋を掴まれてああなった」

 

 料理上手は男女問わず、大人気の様だ。

 

シャルロット「(僕もエミヤさんに料理を習った方が良いかな?)」

 

 時間がある時でいいから教えを貰おうと心の片隅に誓うシャルロットであった。

 

 

 

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