Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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今年最後の投稿です。


第三話~弓と槍~

 シャルロットは目の前のいる女性―――――パールヴァティーに目を奪われていた。いきなり現れて敵を蹴散らしてくれた事はもちろん、この世の物とは思えない美しさも要因となっている。

 

パールヴァティー「御怪我はありませんか、マスター?」

 

シャルロット「マスターって僕?」

 

パールヴァティー「はい。貴方が私のマスターである事は間違いありません。その証拠に令呪があります」

 

シャルロット「令呪って……」

 

 そんなもの何処にあるのかと思ったが、右手の甲に不思議な形をした刺青があるのに気付いた。国の宗教の関係で刺青をする生徒は複数存在するが自分は刺青をした覚えはない。

 

パールヴァティー「それは私と貴方を結ぶ大切な物です。くれぐれも乱用は控えてください。それから私の事をランサーと呼んでください」

 

 意味が分からないがこの刺青はパールヴァティーにとってはかなり重要な物らしい。もう一つ分かったのが彼女は自分達の敵でない事が分かった。

 

シャルロット「そうだ、あの二人を此処に置いておくのは危険だよ」

 

パールヴァティー「ならば、急ぎましょう。敵がまた狙ってくるでしょう」

 

 敵。その言葉を聞いたシャルロットは酷い寒気を覚えた。

 またあんなのが出てきたら自分達にはもう勝ち目なんてない。

 

パールヴァティー「心配しないでください。戦闘は不慣れですが精一杯お守りします」

 

シャルロット「あ、ありがとうございます」

 

 裸一貫の状態でパールヴァティーの助けは本当にありがたい。急いでこの場から離れるために立ち上がろうとした時、シャルロットとパールヴァティーの間に一本の矢が突き刺さった。

 

シャルロット「そ、狙撃!?」

 

パールヴァティー「どうやら、敵はアーチャークラスのサーヴァントようです」

 

 射手(アーチャー)と言うだけあってこちらが常人では見えない距離から正確な攻撃を仕掛けてくる。急いでマスターであるシャルロットを抱えようとしたが赤いフードを被って髑髏の仮面をつけた少年が自分の前に立っている。

 

???「彼女達に手を出すのは止めて貰おうか?」

 

シャルロット「一夏!?」

 

 髑髏の仮面をつけているが声だけでも特定できる。自分の目の前で短い柄と細長い両刃の刃が特徴の剣を指の間に三本挟んで構え、パールヴァティーを睨みつける一夏とシャルロットは再び会合した。

 

 

 

*****

 

 

 

 時間を少し遡り、一夏と霊体化したエミヤは安全な場所で情報のやりとりをしていた。今にも崩れそうな建物に入るのはそのような人物はいないので休憩の場所としては十分だ。

 

エミヤ[つまり、君はこの事態の原因が聖杯によるものと踏んだ訳だな]

 

一夏「あぁ、一瞬だけど聖杯と同じ魔力を感じたんだ。もしかしてこの世界に聖杯があって誰かが異変を起こしているんじゃないかって思ったんだ」

 

 聖杯の特性を理解している一夏の推測は可能性としてあり得る話の為エミヤは口を挟まなかった。しかし、一つだけ物申したい事がある。

 

エミヤ[全く…アサシンクラスだったから良かったものの他のサーヴァントだったらどうする?]

 

一夏「うん、撒ける自信が無かったし確実に死んでいた。緊急事態とはいえ反省すべき点だよな」

 

 生身の人間がサーヴァントに挑むのは無謀以前に蛮勇だとちゃんと理解している。今回は仕方がない所はあるが今後やりかねない可能性が捨てきれないので釘を刺すエミヤに一夏は素直に謝る。

 

エミヤ[(まぁ、サーヴァントとの戦闘に付いてこれるだけでも異常なのだが問題はそこではない。)魔術を使ったが大丈夫なのか?]

 

一夏「周囲を解析したけど電気系統が全滅しているから防犯カメラやセンサー類は死んでいるから心配ない…けど、礼装が壊れちまったからな」

 

 殆どの建物は瓦礫の山と化しているので防犯のためのカメラやセンサーは使い物にならない。しかし、存在を隠蔽する礼装が先程の戦闘で破損してしまったため効果は無くなっている。できる事といえば、素顔を隠すしか機能していない。

 

一夏「方針としては生徒や教師達に見つからないように身を隠しながら調べると言う感じでどうかな?」

 

エミヤ[妥当だな。だがもし、姿を見られた場合はどうする?]

 

一夏「いざとなれば暗示で記憶を消すようにする」

 

 まだ日が浅いが一夏は伊達に魔術を行使しているわけではない。余計な混乱を起こさないためにどうすればいいのか分かっている。最悪殺さなければならないがなるべくそうならないように注意を払っている。

 

???『――――い、―――――――――か?』

 

 聞き覚えのある声に一夏は周囲を探っていると目の前の空間にホログラム映像が出現した。

 

???『先輩、聞こえますか!?』

 

一夏「マシュ!?」

 

 カルデアにいるマシュの声が聞こえたのでどうしたかと思えば無意識の内にサークルを設置していたのを忘れていた。

 

マシュ『良かった、漸く繋がりました。ご無事ですか?』

 

一夏「俺は無事だよ。そっちで何か異変とかあった?元の世界に帰ったと思ったらいきなり竜牙兵やらワイバーンやらが出てきて無茶苦茶になっていたんだけど…」

 

マシュ『先輩が帰った数分後に特異点の反応がありました。類似した特異点の波長が特異点Fと同じ波長が検出され、その結果が…』

 

一夏「俺のいるIS学園と言うわけか…。俺はエミヤと一緒に原因を調査するから何か分かったら連絡する。それと…もしもの時はレイシフトの用意してくれるよう、ダ・ヴィンチちゃんに言ってくれる?」

 

マシュ『分かりました。先輩も気を付けてください。近くにサーヴァントがいます』

 

 サーヴァントの出現を聞いた一夏は少し見晴らしの良い場所に出て目を凝らすと槍を持っている女性とブロンドの髪を三つ編みにしている少女を見つけた。女性の方はランサークラスかライダークラスサーヴァントだろう。

 しかし、問題は少女の方だ。

 

一夏「シャル…」

 

エミヤ[知り合いか?]

 

一夏「友達…みたいなものかな?エミヤ、注意を引き連れてくれるか?その間にあの三人を比較的安全な場所まで移動させる」

 

エミヤ[大丈夫か?]

 

一夏「日々鍛えているおかげで筋力と俊敏と耐久には自信がある」

 

 とある英雄が施しているブートキャンプをしたり、ある特異点では女神を担いでギリシャ神話の大英雄と命がけの鬼ごっこをしたりして身体能力は一般男性よりも遥かに高い。

 

エミヤ[分かった]

 

一夏「ありがとう」

 

 そう言って一夏は建物から飛び出していき、アーチャー(エミヤ)は黒い洋弓を構え、()を番える。

 

 

 

****

 

 

 

そして現在、一夏はパールヴァティーと対峙していた。

 

シャルロット「(ど、ど、ど、ど、どうしよう…完璧に険悪なムードになっているよ!?)」

 

 どうやら一夏はパールヴァティーを敵だと認識している。一夏はパールヴァティーを油断なく観察し、隙を伺う。パールヴァティーも一夏を見て顔を強張らせている。

 一発触発の雰囲気にシャルロットは頭を抱えてしまった。

 

シャルロット「ちょっとストップ!ストップ!!」

 

 半ば自棄になって一夏を止める。

止められた一夏は驚きはしたもののすぐに目を鋭くさせた。

 

シャルロット「この人は敵じゃないよ」

 

一夏「シャル…お前の言いたいことは分かる。けど、味方なのは今だけであってすぐ敵になるかもしれないだろう?」

 

シャルロット「だって…」

 

 行方不明になっている間に随分と性格が変わっている事にシャルロットは言葉を詰めらせた。未だに懐疑的な視線を送る一夏とシャルロットの会話を聞きながらパールヴァティーは首を傾げる。

 

パールヴァティー「あの…貴方はマスターの知り合いですか?」

 

 パールヴァティーの口から出た言葉が一夏の懐疑心に亀裂を入れた。

 

一夏「マスター?シャルが?」

 

シャルロット「う、うん。どうして分からないけど僕はパールヴァ…ランサーのマスターになっちゃったんだ」

 

 その証である令呪を一夏に見せると鳩が豆鉄砲喰らった顔をした後、大きな溜息を吐いた。

 

一夏「マジかよ…(エミヤ、ランサーはどうやら敵じゃない…けど、面倒な問題が出てきたから来てくれ)」

 

 自分のサーヴァントに攻撃を中止し、こっちに来るように指示を出した。この程度の距離ならサーヴァントの身体能力ならものの一分で到着する。

 仮面を外そうとした時には既にエミヤは姿を現した。シャルロットはエミヤに脅えそうになったが一夏に安心していいと言われて落ち着いた。

 

エミヤ「どうし…た?」

 

 アーチャー(エミヤ)ランサー(パールヴァティー)を視界にとらえると思わず瞠目してしまった。摩耗してしまった生前の記憶からある人物と重なり・・・

 

エミヤ「(今度は桜か!?)」

 

 心の中で叫んだ。

第五次聖杯戦争のサーヴァントの面々は仕方がない。しかし、養父の衛宮切嗣にその妻であるアイリスフィール、二人の娘であり自分の義妹(義姉?)のイリヤスフィールは他人とは思えない。さらには同じアーチャークラスで疑似サーヴァントのイシュタルは元マスターである遠坂凛と何故か自分に縁のある者が多い。一夏(マスター)の友人であるシャルと呼ばれた少女が召喚したのは後輩の間桐(まとう)桜にそっくりである。

私の安寧は一体何処にあるのかと抑止力に問い質したいくらい頭を抱える。

 

一夏「アーチャー?」

 

エミヤ「問題ない、少々戸惑っただけだ」

 

一夏「(これは…キリツグやイシュタルの時と同じか)」

 

 現マスターである一夏はエミヤの心情を察したが口には出さなかった。状況を整理しなければいけないし、何より口に出せばエミヤの精神が確実に死ぬ。

 悟られないようにパールヴァティーを見るとエミヤを見て頬を染めていた。

 

パールヴァティー「あの…アーチャーさん?」

 

エミヤ「何かね?」

 

パールヴァティー「一緒にいる時だけ“先輩”と呼んでもいいですか?」

 

エミヤ「なんでさ!?」

 

 パールヴァティーから先輩と呼ばれて思わず素が出てしまったエミヤであった。

 

 

.




パールヴァティーの口調って難しいな…(^_^;)
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