Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結)   作:ursus

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第六話~元凶は・・・~

 一夏は上空から飛んでくるランスをかわし、その次にやってきた刃と化した水の射程外に移動する。

 攻撃をしかけてきた水色の髪が外側にはねた少女を見ると憤りを宿した瞳で睨んでくる。別に自分は何も悪い事はしていないが向こうはそう思っていない。

 

一夏「最悪だ」

 

???「それはこっちの台詞よ!」

 

 なるべく悟られないように移動していたつもりであったがどうやら向こうの方が上手だった。

 本当に世の中は思い通りにはいかないものだと仮面の下で溜息を吐いた。

 

 

 

*****

 

 

 

 それは一時間前に遡る。

 外に出る前に一夏はシャルロットにある質問をした。

 

一夏「シャル。専用機を持っている生徒の中でこの人とは戦いたくない、面倒だって人はいるか?」

 

 最強なのは実姉の千冬で間違いない。

 しかし、このIS学園全体での話であって緊急時に指揮する立場である以上、おいそれと戦場に出てくる事は少ない。

 教師陣はもちろん、専用機持ちで注意しておかなければならないがその中で最も警戒しておかなければいけない人物がいる。

 

シャルロット「専用機持ちとなると楯無生徒会長かな」

 

一夏「生徒会長?」

 

 首を傾げる一夏にシャルロットはあっと思い出した。何せ、彼はIS学園で過ごした時間は半年と一か月のため生徒会長がどんな人なのか知らないのも無理はない。

 なるべく分かりやすいようにシャルロットは説明し出した。

 

シャルロット「水色の髪が外側にはねていて猫と思わせるような人懐こい人で悪戯好き。だけど、ロシアの代表を務めているから腕は確かだよ」

 

 与えられた情報を元に一夏は逡巡する。性格は敵を油断させるための演技か仮面だろう。

 重要なのは現役のロシア代表であること。代表候補生より格上でその実力は生徒内での実力はトップと見て間違いない。

 また、代表と言う事は専用機を持っている。直接ISとやり合ったわけでもないが空中を飛び、第三世代特有の思念制御兵装を積んでいるので後手に回りかねない。

 

一夏「それは会いたくない人物だな」

 

 それが現実となる事をこのときはまだ思ってもみなかった。

 

 

 

****

 

 

 

 現在、一夏は楯無と交戦している。交戦と言っても一方的に楯無が攻撃をしかけ、一夏がそれを避けているだけだ。

剣士(セイバー)クラスや槍兵(ランサー)クラスのサーヴァントの攻撃に比べれば遅いのでかわすのは容易である。しかし、流動体である水がこちらを捕えようとしているのでそれをどのように攻略するか模索している。

 

楯無「(私が考えていることの先を読んで対処している。徒者じゃないのは分かっていたけど予想以上だわ…)」

 

一夏「(槍や蛇腹剣の動きは見切れるけどあの水をどうにかしないとジリ貧だな…)何処かで武器をかっぱらってくれば良かった)」

 

楯無「何か言ったかしら?」

 

一夏「何も?」

 

 ただの水でなく、エネルギーを伝達するナノマシンである事は解析して分かった。それなら宝具を投影して切り抜ける事が可能だ。しかし、魔術を知らない一般人である以上魔術の使用を極力避けているので投影宝具は使えない。IS専用のナイフでも盗んでくれば良かったと後悔している。

 

楯無「この学園でお姉さんに教えて貰える?」

 

一夏「簡単に言うと思うか?尤も、言ったところでアンタじゃ理解できないだろうよ」

 

 科学が発展している時代に神秘的な事を言われても信じちゃくれないだろう。自分でも同じ立場ならそう思う。

 攻めあぐねる楯無と場を切り抜ける策を考えながら避け続ける一夏。

 

???「見つけたぞ、圧制者よ!」

 

 そんな時に狂戦士が雄叫びを上げてこっちに接近してきた。

 一夏はまた面倒な事をと言わんばかりに仮面の下で渋面を作った。別に学園側の人間とはぐれサーヴァントの三つ巴になる事は考えていないわけではない。けれど、サーヴァントのクラスが問題だった。

 

一夏「(よりによってバーサーカーかよ…)どこかの槍兵二人で同じ幸運Eなんて俺嫌なんだが?」

 

 今頃カルデアにいるクランの猛犬とフィオナ騎士団の一番槍がくしゃみしていそうな愚痴を小さく零した。

 

エミヤ[それはカルデアに身内が来ている私への揶揄か?]

 

一夏「いや、お前じゃないよ」

 

 ここに一人、同じ幸運Eのサーヴァントがいた。

 サーヴァントの真名(・・)を知っている一夏はこれほどこの世界に相性の悪そうなサーヴァントはいないだろうなと意味もないことを考えていた。

 

楯無「援軍!?」

 

一夏「援軍…だったら嬉しいんだけどね。(スパルタクス(・・・・・)の奴、完全に俺等を圧制者と捉えているな…)」

 

 あちらは既に自分達を敵だと認識している。狂化しているバーサーカー程厄介な物は無い。ましてやランクがEXのスパルタクスなんて爆弾に等しい。

 最初に動いたのはスパルタクス。手に持った剣で一夏を砕こうと振るってきた。

 

一夏「危っねぇ…」

 

 サーヴァントの戦闘を間近で見てきた経験と直感が上手く働いたおかげで直撃を避けることができた。楯無はこの行動でスパルタクスは一夏の味方ではないと分かったし自分の味方でもない事も分かった。

 

一夏「(此処に来るまでに攻撃を受け続けてきやがったな)」

 

 彼の宝具の特性を知っている一夏は最初の攻撃で能力がどれだけ上がっているのかを把握できた。

 

一夏「(迂闊に攻撃したらスパルタクスが強くなるだけだ。それに長引いて不利になるのが俺だ。なら…)投影開始(トレース・オン)

 

 あまり気乗りしないが仕方がないと溜息を吐き、コートから取り出すように干将(かんしょう)莫耶(ばくや)を投影する。スパルタクスは笑顔のまま一夏に攻撃をしかけ、一夏は双剣でそれを防ぐ。

 

一夏「(予想していた以上に重いな)」

 

 真面に受けたら確実に腕を持って行かれる。スパルタクスの攻撃を時にはかわし、双剣を使っていなす。幾ら速く、強くても動きが単調なので対処できる。

 

楯無「私の存在を忘れないでね」

 

 楯無(イレギュラー)の存在を忘れはいない。ガトリングから無差別にばら撒かれる弾丸を一夏は避けるがスパルタクスは狂った笑みを浮かべて鎧のような筋肉で受け止める。

 

一夏「(面倒だな…)」

 

 二人同時に相手をしなければいけないうえに傷つけば傷つくほどスパルタクスの能力は上がっていく。けれど、サーヴァントを呼び出したりするのは得策とは言えない。

 ならば、自分で打開策を探さなければならない。一夏は両者から飛んでくる攻撃を捌きつつ、思考を巡らせる。

そして最善策が思い浮かんだ。

 

一夏「悪く思うなよ」

 

 楯無に向かって双剣を投げた。その隙に襲ってくるスパルタクスを踏み台にして楯無と同じ高さまで跳んだ。踏み台があったとはいえ、同じ高さまで跳躍したことに驚いたが楯無はすぐに冷静になる。武器が使えない間合にはいられ、彼が殴るのが速いが空中では身動きが取れないため水で拘束することができる。楯無はそう思って水を操作したが失敗に終わった。

 投げたはずの双剣が二基のアクア・クリスタルに突き刺さり、爆発したのだ。楯無の専用機は防御も攻撃もアクア・クリスタルで作られた水によって行っているのでそれがなくなれば機体の性能は著しく弱体化する。現に制御を失った水は雨となって地面を濡らす。それでも、捕まえるだけならISの力でねじ伏せられる。そう、その考えは相手が普通の人間ならできた。

 

一夏「強化開始(トレース・オン)

 

楯無「あっ……がっ…」

 

一夏は誰にも聞こえないように唱え、魔力でブーストさせた拳で彼女の顔面を殴った。

 確かに一夏はサーヴァントと違って絶対防御を無視して殺せる事は出来ない。しかし、高を括っていた楯無()を無力化させるには十分な威力を持っていた。絶対防御を貫通してきた衝撃が脳を揺さぶり、楯無の意識は闇の底へと落ちていく。

結局、楯無の敗因は一夏(魔術師)と言う未知の存在を自分のものさしで過小評価していた事だ。

 ISが消えて楯無が落下する前に彼女を受け止めて着地する一夏は複雑そうな顔をしていた。罪悪感はあるが目の前にいる障害を排除することが最優先である。

 今まで静観していたパールヴァティー(ランサー)が出てきて数的にはこちらが有利。しかし、相手は一騎当千の英霊だ。この程度の数の差なんてないような物。気を抜けば全滅さえあり得る。

 

エミヤ[さて…策はあるか?]

 

一夏「あいつの動きを封じてからランサーと協力して波状攻撃ってのが最適解だな」

 

エミヤ[了解した]

 

 一般人もいないので姿を現しても問題ないので霊体化を解いたエミヤ(アーチャー)は白と黒の双剣を投影して構えた。

 

エミヤ「全く…狂化しているからバーサーカーだが、ここまで狂気に染まっている英霊はそうそういないだろう」

 

スパルタクス「その傲慢。なかなかだ。さあ、来い。嬲ってみろ」

 

 エミヤ(アーチャー)はスパルタクスの攻撃をまるで舞うようにしていなしていく。彼を捕まえようとするスパルタクスの懐目掛けて一夏が攻撃を仕掛けてきた。手に握られているのは金色に光る馬上槍(ランス)の穂先を向ける。

 

一夏「触れれば転倒(トラップ・オブ・アルガリア)!」

 

 真名を解放した宝具の一撃をスパルタクスは体で受け止める。鋼のような肉体を持つ、スパルタクスには効果が無い。しかし、この宝具の真価は殺傷能力(・・・・)ではない。

 懐に入っている一夏を殺そうと掴みかかるが体が大きく傾いて転倒してしまった。よく見てみると両足が消えていた。

 触れれば転倒(トラップ・オブ・アルガリア)!は触れた敵を転倒させること目的とした宝具でサーヴァントに用いられた際には下半身への魔力供給を一時的に断ち、強制的に霊体化させる効果を持つ。

 戦場において機動力を奪われると言う事は死を意味する。

 

一夏「令呪を以って我がサーヴァントに命ずる。バーサーカーを討て、アーチャー!」

 

 刺青の一つが霧散するとエミヤ(アーチャー)に溢れんばかりの魔力が注がれる。そして一夏も次の攻撃を行うために魔術回路を巡らせる。

 

一夏&エミヤ「投影、開始(トレース・オン)

 

 せっかく作った機会を無駄にはしないと言わんばかりに一夏とエミヤ(アーチャー)は宝具の投影を開始する。

 

一夏&エミヤ「―――――工程完了(ロールアウト)全投影、待機(バレットクリア)

 

 無数の剣がスパルタクスの視界を埋め尽くすように展開する。

 

一夏&エミヤ「停止解凍(フリーズアウト)――――――――全投影連続層写(ソードバレル・フルオープン)!!」

 

 投影宝具がスパルタクスめがけて一斉に射出した。無数の刀剣がまるで雨のように降り注ぐ。

 

一夏「やったか…」

 

 上がってくる土煙を睨みながら一夏は戦闘態勢を解かない。彼の執念がここで終わるようなら彼は英霊になっていない。その読みは的中していた。

 刺さった剣を抜かずにスパルタクスは立ち上がった。足の強制的な霊体化はすでに解かれている。今度こそ、圧制者に死を与えようと剣を振り下ろそうとするスパルタクス。

 そんなスパルタクスの前に立ったパールヴァティー(ランサー)は携えていた音叉のような三叉戟を天に掲げた。

 

パールヴァティー「感じてください。これが私の、天まで届く恋の波動!」

 

 此処でシャルロットのサーヴァントであるパールヴァティーについて説明しよう。パールヴァティーとはインド神話に登場する破壊と創造を司る最高神シヴァの妻に当たる女神である。戦神の逸話は残っていないが、『ドゥルガー』や『カーリー』と同一神として考えられている。

 そんな彼女の宝具は夫シヴァが所持していた三叉戟『トリシューラ』の限定解放である。

 

パールヴァティー「恋見てせざるは愛無きなり(トリシューラ・シャクティ)!」

 

 三人に分身したパールヴァティーはスパルタクスを包囲するとトリシューラから発せられた音波で彼を拘束した。そしてトリシューラ本来の力である極太の雷がスパルタクスに打ち据えた。

 目を開けられぬ閃光が周辺を包む。それが晴れると今度こそスパルタクスは粒子となって消えた。

 

一夏「これ…最初からランサーに任せれば良かったかもな?」

 

 パールヴァティー(ランサー)の宝具の威力を見て辟易した様子で呟いた。何はともあれ、サーヴァントを一騎倒したのは間違いない。次に周囲を見ると倒したはずの楯無の姿が見当たらない。引きずった痕跡からシャルロットが動かしたのだろう。漸く一夏は安堵の息を吐けた。

 

シャルロット「これが魔術師の……一夏が体験した戦い」

 

 魔術師たちの戦闘は生死をかけた戦闘であると一夏から前もって知らされていた。だが、聞くのと見るとでは全く持って違う。自分達の常識では考えられない光景がこれから先も続いていく事に恐怖を覚えないわけが無かった。

 だが、彼女は自分で自分の頬を叩いて気合を入れ直す。

 

シャルロット「(ここで怖気付いちゃ駄目だ。ちゃんと向き合わないと…)」

 

 正直に言えば怖い。

 けれど、進むと決めたからにはその恐怖と正面から向き合わなければ一夏の足手纏いになる。それだけは絶対になりたくない。

 

 

???「ほう…バーサーカーを倒すとは大したものだ。流石は人類最後のマスターと言っておこう」

 

 決意を固めたシャルロットの出鼻を挫くような声が聞こえた。スパルタクスが消えた場所から一人の少女が降り立った。

 

シャルロット「箒?」

 

一夏「いや…なりは箒だが中身が全然違う」

 

 ボサボサではあるがポニーテールがトレードマークである篠ノ之箒が立っていた。しかし、一夏はそれを否定した。

 

一夏「俺の事を『人類最後のマスター』だなんて言う奴はこの世界にはいねぇよ」

 

箒?「くくくくっ……はははははははははっ!いやはや、それは失念していた」

 

 普段の彼女なら絶対しない高笑いにシャルロットは恐怖を覚える。やはり、彼女は自分が知っている『篠ノ之箒』ではないと確信できた。

 

箒?「本当にこの世界に来て良かったよ。だって…貴様をこの手で殺せるのだからな」

 

 一端閉じて開いた瞬間、十六の少女が出すには不釣り合いの殺気を感じた。それだけではなく、黒かった瞳の部分が赤く染まり、瞳孔が十字になっていた。

 

一夏「この騒ぎを引き起こしたのはお前だったのか…」

 

 箒と思わしき人物の目に一夏は覚えがあった。それは人理焼却の元凶であり、幾度となく戦ってきた敵。

 

一夏「魔神柱……」

 

 ISの世界に魔神柱が顕現した。

 

 

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