Infinite GrandOrder ~異世界から帰還した魔術使い~(凍結) 作:ursus
活動報告にちょっとしたアンケートがあります。
大惨事に見舞われたIS学園。それを引き起こした黒幕はかつて一夏が戦った魔神の一柱だった。
一夏「お前等はてっきりあの時ゲーティアと一緒に滅んだと思ったよ」
目に浮かぶのは臆病で不器用だけど優しい王と最期に人間の精神性を理解し、獣ではなく、人として立ちはだかった魔術式。
魔神柱「確かにゲーティアは滅び、多くの魔神は燃え尽きた。しかし、我はこうして生き残った」
語られる言葉に一夏は自分の詰めの甘さに舌打ちがしたかった。
黒幕を倒せば全て片付いたと思っていた。まさか生き残りがいたとは思ってもみなかった。
一夏「それで、復讐するために俺の世界に来たのか?」
魔神「いや、貴様がいた世界に来たのは偶然だ。私に復讐と言う感情は無い」
復讐でもなければ何故襲撃して来たのか、シャルロットには分からない。一夏も同じなのか手には
魔神「この体に憑依して貴様の世界の事情を調べたが…実に歪んでいる。
そんなことはないと言いたいが一夏とシャルロットにはできない。
なにせ、自分達の世界は魔神の言うようにISとその製作者によって酷く歪んでしまったのだから。
一夏「…英霊の多くはその玩具の創造主の事を俗物とか大人になりきれない子供だとか散々な評価を下していたよ」
一夏の口から出た言葉は肯定だった。
そんな事は無いと言葉にするのは容易にできる。だが、人を見る目がある彼等の言葉には今まで積み重ねてきた経験と言う重みがあるので否定できない。
一夏「(かくいう俺も傍から見れば俗物と言われても可笑しくない考えを持っていたからな)」
カルデアに飛ばされていなかったらそうなっていたかもしれない自分に内心馬鹿馬鹿しいと嗤う。
自分の事は自分がよく知っていると言うわけではない。本人しか分からない部分もあるが本人だからこそ分からない部分が大多数を占めている。それは知りたくない事や認めたくない部分で心の奥底に封印している。
正面から客観的に見て公平かつ的確に言えるサーヴァントが多くいた。彼等の存在が一夏にとって不可逆の変化をもたらしていた。
魔神「どうやら、玩具の創造主は貴様とは違う種類の愚者のようだ。我が名は『グレモリー』、この人理史を焼却しようとした魔神の残滓なり」
高らかに宣言するグレモリーに呼応するように大地が揺れた。
一夏「地震…いや、何か細工したな」
グレモリー「左様、狼煙として地盤を砕いた。カルデアのマスター、そして新たなマスターよ、さらばだ」
人工島であるが故に地盤が崩落すればIS学園はその機能を完全に停止する。グレモリーが消えたと同時に各所で爆発で拳ぐらいの大きさの瓦礫が飛んできた。一夏は双剣で弾くが数が多い。
一夏「シャル、こっちに来てくれ。
シャルロット「わ、分かった」
ある物を投影するため、シャルロットにはもっと近く寄って貰う必要がある。
一夏「
かざした右手の正面には半透明な薄紅色の花弁が展開された。それはある戦争において大英雄の投擲さえも凌いだ堅牢な盾。
一夏「(流石に四枚しか展開できないか…)」
スパルタクスの戦闘が影響してか本来なら七枚の楯が四枚しかない。だが、瓦礫から身を守るには十分すぎる程の強度を持っている。それは彼が立っている地面が崩れなければの話だ。
現に彼が立っている場所はすでにボロボロでいつ崩れても可笑しくは無かった。
マシュ『先輩!』
一夏「グッドタイミングだ」
漸く安定したのかカルデアからの通信が繋がった。
一夏「詳しい事は言えないけど早急にレイシフトを頼む!こっちは結構ヤバい状況だ」
マシュ『わ、分かりました!』
切羽詰った様子で語る一夏にマシュは急いで準備に取り掛かった。
周囲の崩落が激しくなり、ついには二人のいる地面が崩れた。何とか体勢を立て直そうとしている一夏の目に映ったのは手を伸ばそうとしているシャルロットだった。
この後、IS学園が建てられた人工島は半分近くの面積が海に沈んだ。シェルターに避難していた一般生徒は無事であったが救助を行っていた教師や専用機持ちからは死傷者が多数存在した。腕が食い千切られていた者、頭を鈍器のような物体で吹っ飛ばされた者とISを操縦していたにもかかわらず、悲惨な状態であった。
そしてこの大惨事で二名の行方不明者が出た。一人目はISの生みの親の血縁者である篠ノ之箒。もう一人はフランスの代表候補生
******
シャルロットが目を覚ますとそこは見知らぬ天井だった。背中の感触からしてベットの上に寝かされているのが分かる。
シャルロット「(此処は……どこ?病院?)」
確かに崩れた地面に呑み込まれたはずなのにどうして助かったのか分からない。まだ覚醒していない頭で思考する。
???「フォ~ウ」
変わった鳴き声が聞こえたので振り向くとリスに似た謎の生物がこちらをじっと見つめていた。
可愛いが謎過ぎる。
一夏「フォウ、あまりシャルを驚かすなよ」
聞き覚えのある声にフォウと呼ばれた生物はその人物の元へ走って駆け寄った。
一夏「起きたのか、シャル」
シャルロット「う、うん」
何が何だか分からないシャルロットを見て一先ず落ち着かせることが先決だなと思い、一夏はコップに水を注いで彼女に渡した。
シャルロット「まさか本当に異世界に飛ばされるなんて思わなかった」
一夏「びっくりするのも無理ないさ。俺だって最初はそんな感じだったしそれ以上に驚く事があったりと目が回る事の連続だよ」
あたふたして漸く落ち着いた自分と違い、笑っている一夏にシャルロットは改めて彼を見ると臨海学校の時と雰囲気が全く違う事に気が付く。昔は勢いだけで軽そうな感じであったが今はどっしりと立っている。
シャルロット「一夏って何か変わったよね。大人になったと言うか見る視点が変わったと言うか…」
一夏「それは多分、価値観が変わったんだと思う」
シャルロット「価値観…」
一夏「よく価値観が違うからって他人との議論を打ち切っちまう奴がいるけどそれって自分の考えは聞きたくないって事だよな。それじゃ駄目だ、価値観ってのは自分の価値観と別の価値観を比べて初めて価値観と言えるんだ」
英霊達は生きていた国も時代も状況も全く違うのだからそれに伴う価値観もまた違ってくる。色んな個性や価値観に囲まれて自分の価値観が壊れては再生するを繰り返しの日々を送っていた。
一夏「それにアニメや漫画で善が人に良くて悪が人を駄目にするから悪いって切り離したりするがそれは物事を一面しか見ず、それだけが全部だと捉えて決めつけているだけだ。人間は良いも悪いも含めて人間だからどちらか一方を切り捨てる事なんて…誰も出来ない事だと思う」
寧ろ、それはそれで歪んでいると締めくくる。サーヴァント達と時に敵対し、時には共闘して人理を護るために戦い続けてきた。
その経験が彼を成長させたのだ。
シャルロット「(下手すれば学園の教師達より大人のような感じがするよ…)一夏はどうして戦えたの?誰かのために戦うのは一夏らしいと言えばらしいけど…」
一夏「そう大層な物でもないさ。最初は誰かのためにと思って戦ってきたけど、カルデアにいると自分が見ていた世界がどれだけ狭いか嫌ってほど分かった。そして、俺は自分が生きたいって思いながら我武者羅に戦ってきたんだって気付いたんだよ」
生存を願いながら死を恐れ、死を恐れながら戦い続けた理由を改めて考えるとゲーティアの言う通り、救いようのない愚かさであり、救う必要が無い頑なさだ。
だが、そんな救いようのない愚かさがあったからこそ戦えた。救う必要の無い頑なさがあったからこそ倒す事が出来た。
一夏「俺の体験談は後でやるとして…今は今後の話だ」
彼の纏う空気が刃のような鋭さと冷たさを帯び始めた。シャルロットは唯事じゃないと背筋に悪寒が走る。
一夏「お前が寝ている間にダ・ヴィンチちゃんのちょっとした検査を受けて貰った結果、シャルにはサーヴァントのマスターになれる素質と魔術師として必要な魔術回路があることが分かった」
その意味がどういう意味か分からない彼女でもない。
一夏が言った言葉の意味を理解した――――――否、理解できてしまったシャルロットは顔を青くした。
シャルロット「つまり…学園みたいなことが起こりうるって事?」
一夏「そうだ。お前は今回のような異変を解決するために駆り出されるかもしれない」
普通なら嘘だと笑って流してしまうが体験してしまったシャルロットはそれが嘘ではないと分かる。
一夏「これから待ち受けるのは今までの常識が通用しない一騎当千の猛者だ。学園で今まで習った事はほとんど役に立たないし、死んだ方がマシだと思ってしまうことだって起こる」
一夏の言葉にシャルロットは無意識の内に唾を飲み込んだ。
今回のように自分達の常識では考えられない事象や存在で多くの人が死んでしまう。その事態を終わらせるのは自分達だけなのでその重責を自分で背負わなければいけないのだ。
それらと戦い続けてきた一夏だからこそ言葉に重みが伝わってくる。
一夏「強制はしない。けど、自分でどうしたいのかもう一度考えて決断してほしい」
一夏は自分がやった事への後始末でグレモリーと戦うはずだ。
なら、自分はどうすべきかをシャルロットは考える。今回は運が良かっただけでまた、次回がそうなるとは限らない。それにパールヴァティーのマスターになったのも偶然でしかない。
シャルロット「……やるよ。どっちにしたってあのグレモリーって魔神を倒さない限り狙われるのは目に見えている」
グレモリーと名乗った魔神は箒に憑依したことで実体を得て世界を焼却させるために活動するだろう。そのためには邪魔な一夏を殺す必要がある。
彼を殺したら次に狙われるのは自分だ。
シャルロット「これは勘だけど僕自身がやらなきゃいけない事が多分あると思う。だから……戦うよ」
根拠はないが、戦わなければいけない気がした。
シャルロットの答えにもっと選択肢があっただろうにと呆れた様子で笑う一夏。この短時間で毒されたのかそれとも別の理由があるのか分からない。けど、彼女の表情を見てそれが本気なのだと見て取れる。
一夏「(もう……引き返す事なんてできないか)分かったよ。ようこそ――――――カルデアへ」
シャルロット「こちらこそ只の一般人だけどよろしくね」
自嘲な笑みを浮かべながら手を差し出す、
シャルロット「そういえば、さっきの言っていたダ・ヴィンチちゃんって誰?」
一夏「ダ・ヴィンチちゃんはカルデアで三番目に召喚されたサーヴァントでその真名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。容姿は女性だけど中身はおっさんだ」
シャルロット「えっ?」
一夏「ダ・ヴィンチちゃんに限らず、サーヴァントの中には性別が反転していたり、動物みたいな感じになったりとやたらと突っ込み所が満載なサーヴァントもいるから心して置けよ。その辺り関して考えるのはもう止めたけど」
シャルロット「う、うん…」
尤も、サーヴァントの存在に慣れるまでまだまだ時間が掛かりそうだ。
****
おまけ――――――――
アルトリア「さて…覚悟はいいですか、シロウ?」
イシュタル「また落としてきたのね、このドンファン」
カルデアに帰還したエミヤはアルトリア勢とイシュタルに捕まり、トレーニングルームにて正座させられている。
エミヤ「待て!?俺はそんなつもりはない!」
アルトリア「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流」
アルトリア(黒)「『
アルトリア(白)「選定の剣よ、力を!」
アルトリア(槍)「最果てより光を放て………其は空を裂き、地を繋ぐ!」
アルトリア(黒槍)「突き立て、喰らえ、十三の牙!」
謎のヒロインX「星光の剣よ。赤とか白とか黒とか消し去るべし!」
ヒロインXオルタ「オルトリアクター臨界突破。我が暗黒の光芒で素粒子に帰れ!」
イシュタル「ふふっ、光栄に思いなさい。これが私の全力全霊!」
エミヤは必死に弁明するも聞く耳を持たず、宝具を解放する。
アルトリア「受けるが良い!
アルトリア(黒)「光を呑め、
アルトリア(白)「邪悪を断て!
アルトリア(槍)「嵐の錨!
アルトリア(黒槍)「
謎のヒロインX「ミンナニハナイショダヨ?
ヒロインXオルタ「
イシュタル「打ち砕け!――――――
エミヤ「ナンデサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
エミヤの悲鳴は爆音によって掻き消され、衝撃波でカルデア全体が地震でも起きたように揺れた。
クー・フーリン「何だ―――――ってあ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
その余波が様子を見に来たクー・フーリンまでも呑み込んでしまった。