それと材木座の事を忘れてました。
制服を着替え終え、リビングに向かうと小町がバターを塗った食パンを見ながらファッション雑誌を必死に読んでいた。
『ラブ活』『激モテ』といった非常にムカつく単語を並べた記事は実に頭が悪そうだ。
そんな小町は俺の考えに気づかず、なにやら感心していた。
小町が読んでいる『ヘブンティーン』という雑誌は、最近の女子中学生の間では一番熱い物だとか。
これを読んでいなかったら虐められるらしく、どうやら最近の女子中学生は俺が中学生の頃より更に怖くなっているらしい。
時間は既に7時半を回っており、雑誌に夢中になっている小町を肘で小突く。
「おい、時間」
「え、やっばぁ!」
寝起きのテンションとだいぶ違うこの子は食べかけのパンを頬張り、パジャマを俺の目の前で脱ぎ散らかしながら上着を俺の顔に投げつけ、その隙にリビングから出ていく。
「お兄ちゃん準備できた!」
小町がそう言うと玄関に向かい、俺も小町のあとを追う。
外に置いてある俺の自転車を跨がり、小町も荷台に乗り俺に抱き付く。
「レッツゴー!」
「このガキ…」
自転車の二人乗りは道路交通法によって禁止されている。
本来軍人である俺が違法行為をして良いかと言うとそうでもないが、こいつの思考は幼稚なのでそこは勘弁しては貰いたい。
自転車をを走らせると、後ろにいる小町が話しかけてくる。
「そう言えばお兄ちゃんさ、最近翔鶴さんとの関係はどうなの?」
「翔鶴との関係?ただの友人だろ」
俺は素っ気なく答える。
少なくとも俺は翔鶴を大切な友人だと思っている。翔鶴が俺に対する気持ちは分かる訳がない。
「はぁ、これだからごみぃちゃんは…」
小町はごみとお兄ちゃんを合体させた造語を呟く。
「いいお兄ちゃん!?翔鶴さんはね、小町にとってお義姉ちゃん最有力候補なの!翔鶴さんの気持ちをちゃんと考えてよね!」
「翔鶴の気持ち……ねぇ。翔鶴が俺のこと好きになるわけないだろ」
目が腐って捻くれた性格である俺の事を好きになる訳がない。
「もし翔鶴さんが他の男に取られたらどうするの?」
俺は小町の言葉を聞き、少し考える。
翔鶴が俺の知らない男と腕を組み幸せそうな顔をするのを思い浮かべる。
複雑だ、よく分からないが複雑な気持ちになるな。
「ちょっ、お兄ちゃん!行き過ぎ、行き過ぎ!」
どうやら中学校を通り過ぎていたようで、俺は自転車を止める。
小町が自転車から降り、鞄を片手に敬礼する。
「では、行ってくるであります!」
小町はそう言うと小走りで校門へ向かった。
翔鶴の事は考えないでおこう、もしかしたら俺が血迷って翔鶴に告白する蛮行起こすかもしれん。
それに、翔鶴にはあまり迷惑させたくないからな。
☆
「うし、じゃあお前ら打ってみろ。二人一組で端と端に散れ」
体育の教師である厚木がペアを組めと指示を出す。
俺の周りにいたいた奴等はそれぞれ仲が良い同士でペアを組む。そんな中俺は当然ペアを組む相手がいないので俺はこういう時の為に秘策を用意してある。
「あの。俺今、調子が悪いので壁打ちしていても良いですか?迷惑かけたくないので」
「お、おう」
厚木の許可を貰い、俺は壁際で壁打ちを始める。
完璧過ぎる、これぞ俺が編み出した究極のペア組め対策だ。
俺の他にある原因で友人ができない奴がいるが、そいつは今日サッカーの授業を受けている。その内あいつにも教えてやろう、あいつが泣いて喜ぶ姿が容易に思い浮かぶぞ。
ボールを壁に打ち、帰ってきたボールをまた壁に打ち出す。
「うらぁ!うぉ!?今の良くね?ヤバくね?」
偶々俺の近くでテニスをしていたリア充共が派手に打ち合い、まるで子供のように騒ぐ。
「今の球まじやベー!葉山君マジヤベーって。さっき曲がった?マジパネー!」
リア充共は本当に煩すぎる。特にあの金髪野郎、あいつベーベーしか言わないぞ。
「偶々打球がスライスしただけだよ。悪い、ミスした」
葉山は片手をあげ、金髪に謝り金髪はそれを遮るかのように騒ぎ出す。
「葉山君マジパネー!魔球っしょ!マジ葉山君尊敬するわー!」
金髪がそう言うと周りのモブが集まりだし、葉山にスライスのやり方を聞き出す。
モブが集まった結果、葉山王国へと変貌する。
葉山のグループは基本的に煩いが、葉山自信が積極的に声を出さない、むしろ声を出しているのは大臣役を買って出た金髪が煩い。
「スラーイスッ!」
金髪が葉山のスライスを真似ようとしたが、まったくスライスすることなく葉山達がいるコートから大きく外れ、俺にボールが落ちてくる。
一応想定していたので俺は難なくボールを葉山グループへ軽く打ち返す。
「えっと…。ひ、ヒキタニ君?ヒキタニ君ありがとう!」
俺はヒキタニという名前ではないのでお礼を言ったのは別の奴に言ったのだろう。
☆
午前中の授業が終わり、俺はいつ通りベストプレイスで購買で買ったパンとおにぎりを食らう。
テニスコートからポンポンとリズムよい音が俺の眠気を誘う。
俺がうとうととしていると、後ろの扉が開く音がした。
「あら、比企谷君でしたか」
よく聞き慣れた声が聞こえた。振り向くとそこには千葉鎮守府の艦娘であり、金剛型四姉妹の一人である榛名がいた。
「榛名か、どうした?」
榛名は俺の隣に座り、髪が風により飛ばされないように手で頭を押さえこちらを見る。
「食後のお散歩で偶々通っただけですよ」
榛名はそう言うと微笑む。
「ここ、良い場所ですね。とこで提督、風の噂で聞いたのですが焦げたクッキーを渡されたらしいですが本当でしょうか?」
榛名が心配した顔で俺を見つめる。
由比ヶ浜が作ったクッキーの事だろうな、後日由比ヶ浜が感想を聞いてきたが適当にはぐらかした。
「部活で受けた依頼のお礼だと。あいつ何一つ変わってなかったけどな」
「その子の事提督はどう思っているのでしょうか?」
榛名が真剣な表情でグイっと目とはなの先まで顔を近付ける。
ちょっ。近い、近い!ヤバい髪の毛が滅茶苦茶良い匂いなんですけど。って、今の俺相当キモいな。
「い、いや俺も会ったばかりだからよく分からないぞ?初対面の相手に対して暴言を言うのは止めて欲しいがな」
俺は少緊張して、榛名から視線をそらしながら答える。
すると榛名からの視線がいきなり冷たくなった。俺は何事かと思い、榛名を見る。
「提督?その子の名前を教えていただけないでしょうか?」
なにこの子、目のハイライト消えていて滅茶苦茶怖いんですけど!
それに榛名が深海棲艦と戦うときの顔をしているんだけど!
「ゆ、由比ヶ浜結衣っていう名前なんだけど…」
「提督、榛名はその由比ヶ浜さんと少々お話をしてきます」
「榛名少し落ち着け、別に俺は気にしていないからな?」
榛名が由比ヶ浜の元へ向かおうとするのを止める。
むしろ止めなくてはならない、艦娘が一般人に手を出したことが世論に知られたら不味いことになる。
「提督がそうおっしゃるのならば榛名は何もしませんよ」
榛名が元の表情に戻り、俺の隣に再度座る。
「榛名が俺の為に動いてくれるのは嬉しいのだが、一般人に危害を与える事は絶対にやらないでくれ。ま、いざとなったら俺が無理矢理命令したと言っておくが」
俺は内心、安堵しつつ榛名に注意する。
無理矢理命令したと言うのは最後の手段だ、これで鎮守府の評判が下がるまい。
「提督は冗談がお得意のですね」
榛名はそう言いながら少し微笑む。
それ本気で言っていいたんだけどなぁ。
榛名は俺の思いを知らずに、立ち上がり教室に戻る。
飲みかけだった飲み物を一気に飲みほし、教室に戻るべく立ち上がる。
「あれ?比企谷君ここでなにしているの?」
後ろを向くとそこにはテニスラケットを持ち、ジャージを着た女子がいた。
「誰?」
俺は思わず呟いてしまった。俺が飯を食べているときに昼練をしていた女子の事を思い出す。
彼女は俺の「誰?」発言により少し落ち込む。
「あ、あはは。やっぱり僕の名前覚えてないよね……。同じクラスの戸塚彩加です」
「名前覚えてなくてすまん。俺は特定の女子と話さなかったからな」
今までクラスメートの名前なんて覚えようともしなかったから、罪悪感が凄まじい…。
「僕、男なんだけどなぁ。そんなに弱そうに見えるのかなぁ…」
え…、戸塚って男なの?それって俗にいう男の娘だというのか?
艦娘との絡みが少ないと感じる今日この頃、自分にもう少し文才があれば艦娘との絡みがたくさんできるのですが…。
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