旧ワルシャワ市街地から更に東、シェドルツェクレーター。緯度はカントーより高いとはいえ、真夏の快晴の熱暑は軽視できるものではなかった。世界のほとんどがそうであるように、ここも放射性物質は除去されているので、念のため持ってきたガイガーカウンター以外の放射性物質防護装備はトラックに積まれたままだ。クレーターの端には水爆の破壊を免れた廃墟や兵器の残骸が残存しているが、人は住んでいない。再建された他の都市圏から遠いため、強力なポケモンが多く生息し、また、何らかの事情で安全な都市圏に住むことのできない人間が徘徊している可能性があるからだ。しかも、再建された都市にはまだ人口受入余地が多量にある。世界人口が第三次世界大戦前まで戻らない限りは、ここは爆心地の姿のままだろう。あるいは、年に数回ポケモン生態調査隊や遺骨収集事業のために出入りする人間が炎ポケモンを使って草木を焼き払うことを止めれば、クレーターと廃墟を植物が覆い尽くし、営々と欧州人が行ってきた東部開拓の跡を留めなくなるかもしれない。
欧州人ではないあたしがここにいるのは、トレーナーとしての腕を買われて生態調査隊の護衛として雇われたからだ。戦史跡の見学は好きだし、核攻撃のクレーターは再建された都市部ではほぼ埋め立てられて見ることができないのだ。チャンピオンロード等の都市部辺縁よりもはるかに危険な地域のポケモンにも興味があったし、報酬も悪くはなかった。あたし以外に十五人のトレーナーが雇われており、あたしはクレーター東端で見張りと、敵対的なポケモンがやってきた際の対処を担当しており、ボールから出したカイリューとフーディン、ヘルガーには既に見張りを命令してある。空からの目と超能力の感知、嗅覚と三段構えでの見張りだ。少し東側にある、東を向いていることから恐らく撤退中に撃破されたのであろうT-62の残骸内部にも何もいないことは確認済である。人間の
ここから更に東、旧ロシア領内や南のバルカン半島の山岳地帯では、共産主義者と国家主義者の内戦が続いており、国軍崩れが独立宣言を発したり、匪賊化している等々の状況で調査隊は足を踏み入れることができない程の有様だが、この辺りは
調査隊の目的は放射性物質がポケモンに与えた影響や、ほぼ完全に人間の干渉を受けない廃墟に生息するポケモンの生態及び食性の変化、周辺の山林やクレーター群からのポケモンの移動状況等々多岐にわたり、特別な問題が発生しない限りは二週間の滞在が予定されている。あたしも含めた外周部の護衛トレーナーは別命がない限り現在位置に陣取ってテントを張り、食料や水は調査隊のトラックが巡回で毎日運んで来る手はずだ。護衛の任務さえこなしていれば寝ていようが本を読んでいようが構わない契約なので(酒と薬物は禁止された)あたしはクレーターを眺め飽きたら読書にいそしむつもりだった。
昼は静かだったクレーター周辺も、夜になると夜行性のポケモンの生活音のざわめきが遠くから聞こえてくる――ような気がする。耳が痛いほどの沈黙ということはない。人間はわずかに五十人に満たないが、調査隊は夜も活発に活動している。カロス地方からわざわざ不整地に強いトラックを何両も持ち出してやって来ているのだから当然だろうが、驚くほど遠くから話し声が聞こえる。夜に強い見張りポケモンに交代させてから、昼の間にポケモンに集めさせた小枝をたき火に投げ込む。たき火の前でないと凍えるというほどではないが、それでもかなり温度が下がっている。ぱちり、と枝が弾ける快音と、揺らめく炎越しにクレーターを眺める。かつては人の生活とそれに伴う明かりと喧噪があったであろうそこは、投光器と懐中電灯の明かりを除けば、まるで月面のようだった。第一次世界大戦でも、味方の塹壕と敵の塹壕の間は砲弾で掘り返され、砲弾跡と死体しかない死の世界が月面を思い起こさせる様だったそうだが、都市一つを丸々飲み込んだクレーターは、見上げた月のそれと比べても遜色がないとあたしは思った。
結局、二週間の間にあたしの担当した場所では遠巻きにあたし達を警戒するポケモンを見るだけで、調査隊全体としても大きな問題は何も起きなかった。。黄色や青色に発光するポケモンは、除染のお陰だろうが、幸か不幸か目撃報告はない。二週間読書に耽り、飲食料配給班に毎朝起こされ、快眠を享受する生活。旧日本でもこういった放棄された土地は多くあり、帰国してから護衛の仕事をするのも悪くないと思った。旧日本国内では、兵器群の残骸は鉄屑としてあらかた回収されてしまっているらしいが、シンオウ地方辺縁は元々の人口が少ないこともあって、旧ソ連軍と旧自衛隊兵器の残骸が散見されるという
誰かがあたしを揺さぶっている。パン、米、水の時間か。いや、ここはカロスの東ではない。悍ましい、地球でありながら月面のようなあの地ではない。
「……ちゃん!」
「お姉ちゃん!」
エーテルハウスの子供二人があたしを揺さぶっている。この子達はなぜ泣いているんだ。今は何時だ。少なくとも天井は寝る前に見た見知った天井だと思う。寝起きで喉に張り付いた舌を剥がして声を出した。
「どうした、ガキんちょ共」
「ヤンちゃんが!ヤンちゃんが!」
子供の話だからもちろん要領を得ない。泣いている子供達を慰めて握りしめていた紙屑のようなものを受け取り、話を要約すると、「ヤングースがさらわれて、このメモが残されていた」らしい。身代金の要求かね、これは――と思いながら開くと『ユウケ一人でポータウンに来い』という乱雑な文字。連絡先も書いていないし、向こうもあたしの連絡先を知らないだろう。営利誘拐としては下手糞としかいいようがないな。あたしは手早く身支度をしてホールに顔を出した。ハウ君とアセロラ、リーリエが何ともいえない顔をしている。
「話聞いた?ポータウンってどこ?」
深刻な顔を見合わせる三人。六つのオーブでも集めないといけないのだろうか。
「ポータウンは、ここからだと北西、海を渡らないといけないんだけど……」
「普通の人が住んでなくて、スカル団の町になってるんだよー」
地上げか何かにスカル団を使ったら、他の住人も出て行ってスラム化したとかそんなところだろうか。
「忍び込んだりはできそう?」
「高い塀で住宅街が囲まれてるから、ちょっと無理かな」
ゲーテッドコミュニティか。正面から力押ししかないということか。あたしは溜息をついた。
「お姉ちゃん、強いトレーナーなんだよね!ヤンちゃんを助けてくれない?!」
「お願い!」
何だってこんなことばかりに巻き込まれるのか。泊まったのが不味かったのか、情が移ったのが不味いのか。
「わかったわかった。お姉ちゃんに任せな」
「ユウケさん、大丈夫ですか?」
「あんまりありがたくはないけど、こういう殴り込みは慣れてるんでね」
あたしは一旦言葉を切った。
「ただし、あたしはヤバくなったら逃げるからね」
堂々と言い切る。犯罪組織を相手にやり合う時には、絶対に退路が必要だとあたしは確信しているのだ。警察が期待できない以上自衛のために戦う必要は認めるが、殺した人間はポケモンに食べさせたら証拠一つ残らないのだ。殺人のハードルは限りなく低いと言っていい。情けないと笑いたければ笑うがいい。
返ってきたのは嘲罵や軽蔑の眼差しではなく、心配と尊敬のそれで、あたしは内心溜息をついた。
ポータウンへ行くために浜辺に出たところで、ここでは珍しい着流しの人に出会った。一方的にだが、見知った顔だった。
「ギーマさん、ですよね……イッシュの元四天王の」
「ああ。だが、今はただのサメハダーとマンタインサーファーだよ」
四天王退職後の悠々自適の旅か何か、なのだろうか。
「今は、ライドギアにサメハダーを登録する仕事をしている。ただし、私に賭けに勝った人にだけだがね」
元四天王がライドギア登録係――要は島巡りサポーターだろう――なのか。
「賭け、ですか」
「心配しなくても、勝てるまで付き合ってあげるよ」
「それは、助かります」
「では、今からコインを投げるから、表か裏か、当ててみるといい」
コインを投げ、キャッチ。様になっている。
「では、裏で」
「……残念だね」
「……まあ、そうでしょうね。もう一度、お願いします」
十七回目、いや、十八回目だったか。ようやく当たった。
「驚異的な運の悪さだね。ライドギアを出すといい」
「運が悪いのはよく知ってます。お願いします」
ライドギアを差し出す。
「ところで、マンタインサーフは楽しんでいるかな?」
「……いえ、酔ってしまいまして……」
微妙に気まずい沈黙。マンタイン酔いするのはあたしくらいなのだろうか。
「……サメハダーは酔わないと思うから、楽しんで」
「あ、ありがとうございます……」
「ポータウンに行くのだろう?ラプラスでは浅瀬に引っかかってしまうから、サメハダーに乗っていくといい」
「重ね重ね、ありがとうございます」
あたしは頭を下げた。
ライドウェアの中でも、水上用のライドギアは特に露出が不必要に多い気がする。特にへそ出しなのが本当に似合っていないと思う。今度アウトドアショップでも見に行くとしよう。少なくとも、そんなことを考えられるくらいには、サメハダーの乗り心地は快適だった。
ポータウン、富裕層のためのゲーテッドコミュニティ、その夢の跡。今は犯罪組織が丸々占拠している。これも経緯をネットで調べたところ、スカル団を嫌った富裕層が出て行った結果無人化したのが正しいらしい。ポータウン前の交番は富裕層の自治体が招致したものだろう。
リザードンに乗って、上空から偵察を行い、地図に敵戦力と通行可能と思われるルートをざっと落とし込む。塀の中にはバリケードを使った防衛線らしきものがある。塀の外には門番と、更に外側にずさんな警戒線を作るようにスカル団員が配置されている。今までの経験から言うと、スカル団はそれほど経済力のある組織ではないから、大きな地下施設だのは多分ないだろう。ポケモンを使った経験則上、敵の人的資源が無制限でないなら横槍や後ろから刺されないよう下っ端は無力化する必要がある。弱い奴でも一瞬の時間稼ぎはできる以上、多人数での喧嘩の原則「弱い奴からやれ」は基本的に正しい。トレーナーを殺害できれば一番楽なのだが、あたしはまだ直接
あたしは小細工なしで門扉から一番遠い奴から片付けていくことに決めた。リザードンで偵察した以上、警戒態勢に移行される可能性もある。手早く徹底的に逆らう意思と能力を削がないといけない。情けや容赦をするとこちらが殺される。あたしは頬を叩いて気合いを入れ、鬱陶しい雨が降り始めた町に向かい合羽を羽織って歩き始めた。
門扉を開くのに警察官の協力を借りる羽目になった以外は概ね想定内に片付いている。ざっと三十人、連携という言葉を知らないらしい連中相手にあたしのポケモンは期待に応え、手傷こそ負ったものの一匹もやられることなくポータウン最奥部の屋敷にたどり着いていた。奥まっていて安全で、しかも大きく権勢を誇りやすい。リーダー格というのはこういう場所を好む。集団をまとめるのには一番手っ取り早いからだ。お陰で締め上げる人数も最小限で済む。
「お、お前、いや、あんた。何でこんな」
怯えた涙目でうずくまるスカル団員の女。少々やり過ぎたか。まあ、多分だがポケモンは死んでないはずだ。リーダー格に騒ぎが聞こえるであろう位置だったから、
「ポケモンに愛着があるなら、さっさとポケモンセンターに連れて行くんだね」
隣に呆然と突っ立っていた、屋内のセキュリティらしい男の胸倉を掴む。無様なほど狼狽し目が泳ぐスカル団員。
「おい。死にたくないなら黙ってあたしを通せ」
「え、いや、ここを通るには合い言葉がですね」
「口を閉じな。死にたいのか」
合い言葉のメモは拾っているがより怯えをばらまかねばならない。組織が生き物なら、構成員は臓器や神経だ。苦痛を与えて注意を逸らし、混乱させ、引き裂いて分断し、毒を注ぎ込み麻痺させ、壊死させて弱らせ、そして頭を潰す。あたしの横に忠実に控えているガオガエンにちらりと目をやると、ガオガエンはグオゥと吠え、炎を小さく撒いた。
ガオガエンの威嚇に怯えてようやく道を空けた男のモンスターボールをひったくって屋敷の外に放り投げる。このくらいの高さなら壊れはしない。小さく「あっ」と言葉を漏らした奴を睨みつけ、突き飛ばす。演出としてはまあ充分だろう。へたり込んだ男を無視してガオガエンをボールに戻す。あたしの偵察が正しければ、屋根の上に見張りがあと一人。リーダー格のいるであろう部屋まで後二人。
わざと乱暴にノックをして返事を待たずに扉を開く。扉の前に控えていた二人は戦意を完全に失っていたので、さっきと同じようにボールをひったくって外に投げた。逃げるか戦うか即決できない様を見て、あたしは内心ほくそ笑む。カマしてやった甲斐があろうというものだ。中には下っ端と目当ての大将格、グズマだ。下っ端は笑いそうなほど怯えてしまっている。
「テメェ、俺様の部下に何をした?」
「ポケモンっていう過ぎた玩具を没収しただけだよ。さて、置き手紙通り一人で遊びに来てやったんだから、ヤングースを返しな」
あたしは悠然と見えるように意識して振る舞い、笑みを浮かべた。挑発的に奴の目を覗き込む。相変わらずムカムカする面だが、少々暴れたお陰でこの間ほど腹立たしくはない。
「ッハハハ。テメェ、俺様が思ってた以上にイカれてるらしいな。ポケモン一匹のために本当に来やがるか、普通?」
「あたしとて修羅場はくぐっている」
向こうも組織の長としてそれなり以上に肝は据わっているのだろう。あるいは、単に追い詰めたからか。
「電化製品がイカれたらどうする?俺ならぶっ叩いて直すね。お前、直してやらあ!」
「やってみな」
それが戦闘開始の合図になった。ちらりと見えたボールは――三個。一匹増えている。
さほど広くない部屋で対峙する奴のグソクムシャとあたしのハガネールが対峙する。前回と違うのは、屋内でハガネールが自由に身動きがとれないことだが、正直なところ何の問題もない。天井につかえたハガネールに命令を下す。
「ハガネール、ステルスロック」
「シェルブレード!」
余裕で耐えきり、浮遊した岩をまき散らすハガネール。天井をこすっているが、これも無視。
「ハガネール、がんせきふうじ!」
グズマは命令せず、グソクムシャは水の刃を再び振るう。これも耐えたが、次が限界だな。岩塊を打ち付けられたグソクムシャは、またも勝手に戻っていく。特性『ききかいひ』の効果らしい。あたしも躊躇なくハガネールを引っ込める。
「よくやった、ハガネール、戻れ。行け、サニーゴ!」
グズマはカイロス。三匹目がこいつか。岩に傷を負った状態で、こちらは無傷。優位だ。
「カイロス、やまあらし!」
「サニーゴ、パワージェム」
抜群技だが不一致の一撃、急所に貰いながらもサニーゴは頑強な殻で耐え、光線を撃ち込んだ。一撃でくずおれるカイロス。
「畜生、行け、アメモース!」
同じことだ。傷だらけのアメモースもエアスラッシュを撃つが、さしたるダメージも与えられずにサニーゴのパワージェムで倒される。
弱ったグソクムシャは、ステルスロックに傷つき、出てきた途端に倒れた。グズマはこれで片付いた。部屋の隅で震える下っ端に視線をやると、そろそろと逃げ出そうとしている。使えない部下だな。
「何やってんだぁああ!グズマぁああ!」
ひとしきり喚いて椅子を殴りつけるグズマ。あたしはサニーゴを引っ込めない。とち狂って銃なんて出されたりしたらかなわないからだ。
「おい!攫ってきたポケモン、返してやれや!」
「は、はい!」
あたしは警戒したままヤングースを抱きしめ、撫で回す。爆弾の類が括り付けられていたら粉微塵になるからだ。ありふれた爆弾テロ報道の一つになるのは避けたい。
「ユウケ!てめえは俺がぶっ潰す!あいつらの力を借りてでもな。おい、行くぞ!」
去って行くグズマと転げるように走って行く下っ端。あたしは背中を警戒したまま、輝くZクリスタルに手を伸ばす。ムシZらしい。一つ、失敬することにした。グズマの座っていた椅子に座ってみたいという下らない欲求を抑えつける。まさかとは思うが、ブービートラップなんかがあったら笑いものだ。椅子の傷は、さっきのように殴りつけてついたものだろう。
「灯は陰り、王たちに玉座なし」
あたしは呟いた後、電気を消して、人気の失せた屋敷を後にした。
雨はまだ陰鬱に降り続いている。全くありがたくない天気だが、たむろしていたスカル団員がいないだけ景観的にはよくなっただろう。
「姉ちゃん、大したもんだな」
さっきの警官が声をかけてきた。あたしは小さくかぶりを振って応えた。
「ポケモンも姉ちゃんも怯えちゃってまあ。しかし、ずいぶん人がいなくなったな。ボスがやられたらそうもなるか」
「沈む船に乗っていたい奇特な人間はそうはいませんからね」
「ま、そうかもしれんな。それにしても、ボールの中のポケモンと、ポータウンの中のスカル団、どっちが幸せなんだろうな」
「時と場合によるでしょう。ボールの扱いがここより粗略なら」
遮るようにニヤリと笑う警官。
「お前さん、真面目なんだねぇ」
「どうでしょうか」
もう行ってもいいか、と視線で問うと頷かれ、あたしは警官の横をすり抜けるように歩き出す。
「また会おうや、姉ちゃん」
「……ええ、またいずれ」
あたしは振り返らなかった。
エーテルハウスに戻ったあたしを出迎えたのは、悲喜こもごもという表情のハウ君、アセロラ、そして子供二人だった。
「何だ、死んだかと思ってたかい?」
「ヤンちゃん!」
「お姉ちゃん、ありがとう!で、でも」
「でも?」
子供達の言葉をハウ君が遮る。血でも吐きそうな顔だ。この間の庭園で見た顔よりずいぶんと酷い。あたしは軽口で表情を和ませようと思ったが、そのタイミングは失われた。
「アセロラがいない時に、リーリエが、連れて行かれたんだ。スカル団にここが囲まれて。俺、トレーナーなのに……リーリエに守ってもらって……」
耳の奥の血管が、轟々と音を立てる。吐き気がする。理解が追いつかない。言っていることはわかるのに、脳が言葉を咀嚼してくれない。鈍った脳がようやく働きはじめた時に沸いてきたのは殺意だった。ポータウンで、殺しておくべきだった。自身が怯懦だと思ったものを殺意が上書きしていく。
「なあ、そいつらがどこに行ったかわかる?」
沈痛な顔で顔を横に振る二人。
「頭は誰だった?」
「プルメリ、って名前だったと思う」
それなりに顔は売れている相手だ。島キングをはじめとした連絡網に情報提供と捜索を頼むとしよう。大事なものが手の中からこぼれ落ちる恐怖と戦うためには、動くしかない。立ち止まっていては、多分強くないあたしは耐えられない。
「ユウケ、その、落ち着いて。ね。アセロラでできることなら手伝うから」
「お、俺も……逃げないよ。だから」
ハウ君を責めるつもりはない。友達だから、というのもあるが、集団とやり合うには場数を踏まないといけないことを、あたしは熟知しているからだ。アセロラとハウ君に何か返事をしようとした時、黒い誰かが駆け込んできた。
「くっ、遅かったか!まさか、コスモッグを匿っていたのがリーリエだったとは!」
グラジオだった。
「あんた、何か知ってるの?」
「ああ、あいつらがどこに行ったのかもわかる!だが、その前に、ユウケ!守れなかった不甲斐ない俺と戦ってくれ!」
一刻を争う状況ではない、ということだな。ならば。
「言葉は不要か」
お互い射殺すような視線とボールを同時に投げた。
グラジオのポケモンをあたしのハガネール一匹で蹂躙した。
「フッ……駄目だな。勝てないか」
「頭は冷えたかい?」
「お前こそ。今にも死にそうな顔をしていたぞ」
露骨に聞こえるように舌打ちして強引に話題を変える。
「で、リーリエとほしぐも……ちゃん、いや、コスモッグはどこにいるって?」
「エーテルパラダイスだ。連絡船があるからそれで向かうぞ。ライドポケモンは迎撃される」
「俺も、行くよ!」
ハウ君に頷いてから、あたしはアセロラに声をかけた。なぜそこなのかは、後で聞くとしよう。
「阿呆共がまた沸いてきたら困るから、アセロラは普段通りにしてて」
「で、でも」
「キャプテンなんだろう?ガキんちょ共のおもりと、村を守ってもらわないとね」
キャプテンと家長としての責がこの細くて小さい子の双肩にかかっているのだ。なおも躊躇いを瞳に浮かべる彼女に、あたしは言葉を継いだ。
「それとも、あたしの腕が信用できない?」
口をあんぐりと開けてから、大きく首を横に振る彼女。涙ぐんだ彼女にあえて背を向けて、手を軽く振る。
「また台所と風呂と、布団を貸してよ。ま、次はリーリエと風呂に入るけどね。この無愛想な奴の分は別になくてもいいけどさ」
無事に帰ってくるという意を込めて。
「今度はもっとすごいことするからね!」
「おっかないね。それじゃ、またね」
「うん、また」
今生の挨拶でないことを祈りながら。
ククイ博士に「エーテルパラダイスにリーリエが連れて行かれたと思われる。ハウ君と向かう」と連絡してから、あたしはグラジオとの待ち合わせ場所である埠頭に向かった。これであたし達が行方不明者になったとしても手がかりだけは残る。
スカル団の所有物であることを示すダサい髑髏のペイントをされた船が停泊しているので、多分あれが連絡船なのだろう。いや、こういう髑髏の柄のシャツ、好きな音楽のジャンル的によく着ている気がしたが、とりあえずそれは横に置いておこう。船の支度をしていたらしいグラジオが埠頭に立っている。このクソ暑い中、よく黒ずくめの服なんて着ていられるな、と呑気な感想を抱く。
「来たか。ハウは?」
「フレンドリィショップで準備してくるってさ」
「あいつは来るか?」
「来るさ」
「あー、お二人さん。いい雰囲気のところ申し訳ないんだが」
ぎょっとして振り返る。ポータウンで会った警官だった。
「クチナシさん……」
「ユウケ、だったよな。姉ちゃん。おじさん、島キングなんだよ。強くなるための試練ってやつを与えるから、おじさんとポケモン勝負しよう」
「大試練ですね。お願いします」
即答してボールに手をかけた。目の前の警官――クチナシさん、か。彼からだらけた雰囲気が霧散する。
ミミッキュとヘラクロスで、クチナシさんのポケモン三匹を圧倒し勝った。
「ふ、やっぱ強いな、姉ちゃん。スカル団のアジトに殴り込みかけるだけあるよ。じゃ、アクZのクリスタルな。ポーズはこう」
アクZのポーズを決めて、ニヤリと笑うクチナシさん。だらけた食えない人だという印象が戻ってきた。
「それじゃ、姉ちゃん。島巡り頑張ってな。
……それと、グラジオの兄ちゃん。強くなるためにスカル団なんぞ頼ってどうするよ?」
それだけ言い捨てて去って行くクチナシさん。ハウ君が来たのは、それから五分後だった。今はこのダサいペイントの船が頼りだ。
地球救済センターを建造していますか? はい→ メタルマックス
↓いいえ
コジマ関連技術が開発されていますか? はい→ アーマードコア
↓いいえ
ポケットモンスターが存在しますか? はい→ ポケットモンスター
↓いいえ
Fallout