やる気多めのシンジ君、エヴァに乗る   作:九段下

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突如として人類を襲う新勢力、海神帝国!世界中の海から襲いかかる海神騎士ロボットに、不意を突かれた新造ギガント軍団は壊滅の危機に陥ってしまう。だが、ギガント軍団の必死の反撃に大きな被害を出した海神帝国は、両者の代表による決闘を打診してきた。
今動くことができるギガントシリーズは、我らが無敵のギガントパンチャーと、謎の少女、アスカに心を開いた新型ロボット、ギガントガンナーのみ。
まだ訓練中のアスカを守り、シンジとパンチャーは世界を救えるのか!


特別編
クリスマス特番。涙のメリークリスマス!シンジ、深海に墜つ!


〜Jingle, bells、Jingle, bells、Jingle all the way〜♪

 

雪の降る夜に、少女の歌声が響く。鈴のような愛らしい声が、ガランとした格納庫に響いた。

 

「天下の地球ロボット防衛軍も、ギガントガンナーとパンチャーを残して全機撃墜。修理は続いてるけど、当日動けるのは私たちだけ、か」

 

惣流・アスカ・ラングレーの呟きが暗闇に落ちる。アスカの視線の先、赤く塗装されたキガントガンナーが中空を見ていた。

 

「わかってるわ、ガンナー。私達はこの星の希望になった。人類を守るために、負けることは許されない。ホント、最悪のクリスマスね」

 

アスカの口から白い息が漏れた。明日の決戦に向けて、ファウスト委員会は最低限の人員を残して休息を取っている。何時もは誰かしらが騒いでいる格納庫も、今は誰もおらずに寒々としている。

 

その格納庫に、新しい声が響いた。

 

「でも、僕たちもいる。大丈夫。僕たちは負けないよ」

 

ギガントパンチャーのパイロット、碇シンジだった。彼は2人分の缶を持って、アスカに片方を渡した。

お疲れ抹殺ティーと書かれたラベルを見て、アスカは受け取る。基本的にジュースのセンスが悪いシンジにしては、マトモな選択だった。いつも自分が飲んでいるから憶えたのだろうか。

 

「ハン、流石に1人で人類を守ってきたセンパイは気合いが違うわね。自分がいれば人類は大丈夫だって?」

 

アスカは皮肉げに笑った。アスカがギガントガンナーに認められ、戦いに参加するまで、唯一稼働するオリジナルギガントシリーズで人類を守り続けた勇者。その彼からすれば、今回のようにごく少数で人類を背負うことも慣れたものなのだろう。

 

「海神帝国か。まさか宇宙からの脅威を気にしてたら、地球にもトンデモ勢力がいたなんてね」

 

まいったよね、とシンジは笑った。戦場にいるシンジはともかく、一度ロボットを降りた彼は一気に大人しい少年に戻る。

 

「僕さ、ここに来る前はちょっとした覚悟をして電車旅してたんだよね。10年も放っておかれた親に呼ばれて、怖かったけど行くことにした。今まで居たところでもいじめられててさ。そこから逃げ出したかったのもあった」

 

「それが突然こんな所に連れてこられて、しかも僕しか戦えないなんて無茶言われてさ。ふざけるな、っていうのが本音だった。だって突然来た僕みたいな中学生を戦わせようって言うんだよ、頭がおかしいんじゃないかって思った」

 

シンジは手元にある缶コーヒーを開けて飲んだ。鉄壁パンチコーヒーの香りが周囲に漂う。

 

「でも、ココのみんなはそうやって荒れる僕に寄り添ってくれた。戦場に立つのは僕だけだったけど、みんなが一緒にいてくれた。それに気付くまで結構かかったんだけど、本当にみんなが一緒に居たんだ」

 

アスカも気づいてるんじゃない?とシンジの問いかけにアスカも答えた。

 

「知らないわよそんなこと。私達しか戦えないから、そうやって都合よくおだててるだけでしょ」

 

「まぁそれもそうだけど」

 

シンジは短く肯定した。

 

「でも、それだけじゃない。僕は、アスカにそれを知って欲しいんだ。だからアスカ、君は僕とギガントパンチャーが必ず守る。

君が笑ってくれるまで、僕とパンチャーは絶対に倒れないで君を守るよ」

 

そう続けるシンジの顔をアスカが横目で見る。

 

(やっぱり勇者サマじゃない。何よ、アタシはそんなに信用ならないっての?)

 

シンジの言葉には力があった。シンジなら、本当に倒れずに守り続けてくれるだろうと、強制的に安心させるような言霊。

それがアスカは気に食わなかった。

 

「あーそーですか。じゃあ明日は頼むわよ。センパイが守ってくれるなら、私は確実にウルトラ粒子弾頭を当ててみせるわ。

もしかしたら、センパイが守るヒマもないかもね」

 

アスカはそれだけ言い捨て、格納庫を去る。これ以上シンジと会話するつもりはなかった。

 

海神帝国の再侵略まで、後8時間。

 

 

◆◆◆

 

 

「ハハハハハ!良く恐れずに来たな地上の勇者よ!それでこそ地上侵略をする意義もあると言うもの!この星の真なる勇者を決める戦いを始めようではないか!」

 

海神皇帝と、皇帝を守る3体の深海騎士ロボットとの戦闘は熾烈を極めた。

海の上に浮かぶ巨大要塞には、四方を海に囲まれた闘技場が用意されてギガントシリーズを待ち受けていた。

そこにいたのは皇帝を守る3体の海神騎士ロボット。

剣、三叉槍、網と射程の違う武器を持つ各騎士ロボットは、見事な連携を取りパンチャーを追い詰めた。

対するギガントロボットは、精彩を欠く連携で突破口を開くことができない。

パンチャーはひたすらに防御を構え、ガンナーの射撃に攻撃の全てを任せていた。

 

「他愛ないぞ地上の勇者よ!幾度となく地上を救ったと言うのは、もしやまぐれか!」

 

三騎士の嘲りに、アスカが激する。

 

「ウルサイ!アンタ達なんて、私1人で十分よこのザコども!」

 

冷静さを欠いたアスカの射撃がパンチャーごと三騎士を打ち据える。

これに憤ったのは、三騎士だった。

 

「まさか味方ごと撃つとは!貴様には誇りがないのか!」

 

網を持った騎士ロボットが目の前のパンチャーから視線を外し、ガンナーを狙う。

 

「させるかぁ!」

 

しかし、それをシンジは許さなかった。

先の一撃、実は三騎士の攻撃に耐えるために【鉄壁】を使っていたパンチャーにはほぼダメージがなかった。パンチャーの装甲についた傷は前面からの物のみ。ガンナーの攻撃は、初めからパンチャーの超防御力を計算に入れていた。

 

後方にいるガンナーを狙ったために三騎士の連携にズレが生じる。

シンジは、その一瞬を見逃さなかった。

亀のように防御を固めていたパンチャーが鋼鉄の腕を構える。左足を大きく踏み出し、両足を強く踏みしめたパンチャーが遂にその拳を振り上げた。

 

「貴様!この為に今まで、この一瞬の為に亀になっていたのか!」

 

「ガンナーがきっと突破口を開くと信じていた!そして、それに応えることができるから彼女も地上の勇者なのさ!」

 

騎士ロボットが自らの失策に気付いてパンチャーに向き直ろうとする。

だが、それも悪手。他の2騎の牽制を手掛けていたアスカの射撃が、網を装備した騎士ロボットの体勢を崩した。

そして、ギガントパンチャーの肘から爆炎が上がり、腕に搭載されたジェットエンジンが唸りを上げる。

 

「くらえ、人類を背負う巨人の鉄拳!

ギガント・パンチ──!!」

 

人型にしては大き過ぎる前腕部がジェットによって加速される。

腕を振る運動という意味を指す、パンチの概念を破壊するほどに高まったエネルギーが騎士ロボットの胸に炸裂する。

 

重く、腹に響く轟音が鳴った。超重量の兵器同士のみが鳴らす、勇気ある戦いを示す音が鳴る。

 

「打ち抜いてみせる!」

 

ギガントパンチャーの拳は、騎士ロボットの胸を打つだけでは止まらない。その胸の装甲を貫き、ギガントパンチャーの大きな腕が、肘まで騎士ロボットに埋まった。

 

騎士ロボットの一角が遂に崩れる。

しかし、騎士ロボット達は唯では終わらなかった。

ギガントパンチャーに胸を貫かれた騎士ロボットは、そのままギガントパンチャーの腕を掴んで叫ぶ。

 

「我が同胞よ!私がこの勇者を留めている間に、あの娘を!皇帝陛下のために勝利を!」

 

潰れたコクピットに胸を潰され、血を吐いてなお戦う騎士が、決死の表情で仲間に呼びかける。

 

「なんと、素晴らしき忠義!友よ、承知したぞ!」

 

騎士ロボットの一体にパンチャーが動きを封じられた隙を突き、剣の騎士と槍の騎士がガンナーを襲う。

 

「「友の命を無駄にせんが為に!娘、貴様を討ち取る!」」

 

しかし、ガンナーの前に立つ巨人は。

一度守ると決めたのならば、星すらも守る勇者は立ち止まらない。

 

「させないと言った───!!!」

 

右手を騎士ロボットに掴まれたパンチャーは、それでもガンナーの危機に駆けつける。重い足取りは力強く、不気味な稼動音を響かせて騎士ロボットへと足を向けた。

しかし、満身創痍のパンチャーに、アスカは叫ぶ。

 

「来るな!アンタはその死に損ないを仕留めてなさい!連携の切れたこいつらなんて怖くないわ!」

 

勿論、強がりだった。ガンナーはその運用上パンチャー程の装甲を持たず、一度接近戦に持ち込まれるだけでもピンチになる。

それでも、満身創痍のパンチャーにこれ以上無理をさせる訳にはいかなかった。

 

「僕は、君を守ると言ったんだ!」

 

シンジもそれは分かっているはずである。

海神皇帝を守るバリアを突破して、勝利を掴む為にはパンチャーとガンナーの連携が必須だと。

その為には、これ以上パンチャーにダメージを負わせる訳にはいかないと分かっているはずである。

 

しかし、シンジはそれでもアスカを守る事を選んだ。

 

「必殺・ギガントキック──!」

 

ギガントパンチャーの両足から紫電が走る。

元々、接近・徒手格闘用に建造されたギガントパンチャーの追加装備。ギガントパンチャーの足を覆うブースターが音を上げて稼働する。

シンジは、騎士ロボット分の追加重量を持って移動する為に、一歩ずつギガントキックを地面に向かって放つ事で移動エネルギーを賄った。

 

当然、本来の使用用途からかけ離れた運用を強いられたパンチャーの脚部がひび割れていく。

 

だが、その決死の突撃は実を結んだ。

ガンナーまであと一歩の所に来た騎士ロボット達の背後にギガントパンチャーが立つ。

 

「アスカ。すぐに戻って来るから、ちょっとだけ待っていてね」

 

シンジはそう言い残して操縦桿を握りしめる。

 

ギガントパンチャーが、そのまま騎士ロボット達に体当たりを仕掛け、自由な左腕を持って騎士ロボットに抱きつく。

そしてそこまで来た勢いを持って、闘技場の外へ三騎士ごと身を投げ出した。

 

「シンジ───!!!」

 

アスカの悲鳴が海に響く。思わず、といった具合に腕を伸ばしたガンナーの先で、パンチャーが海に落ちていく。

 

シンジは、昨日の宣言通り、アスカとギガントガンナーを守り通したのだ。

 

「シンジ───!!!」

 

ただ、その地上の勇者をしても、少女の心は守れずにいた。




海に沈んだギガントパンチャーとシンジ。
だが、アスカにそれを悲しむ暇は無かった。三騎士を倒された海神皇帝が、遂に戦場に立つ。海神皇帝の圧倒的な力の前に、なすすべもなく圧倒されるガンナー。だが、アスカの絶体絶命の危機に、立ち上がる勇者がいた!

次回。大復活、その名はグレートギガントパンチャー。
お楽しみに!

◆◆◆

はい。というわけで、短いのですがメリークリスマスということで過去編の一部ダイジェストをお送りさせてもらいました。
なんかクリスマス企画とかやりたかったので、番外編にかこつけてシンジとアスカの邂逅初期のお話です。時系列的には、第一次宇宙戦争を終わって、第2の敵が出て来るまでの繋ぎですかね。まだアスカとシンジが出会って間もない頃のお話です。

クリスマスらしいボーイミーツガール描きたかったのにどうしてこうなった!

感想、評価、そして時間を割いて読んでくださった読者さんには心からの感謝を。メリークリスマス!
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