やる気多めのシンジ君、エヴァに乗る   作:九段下

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戦友襲来/アスカストライク(後)

 船の通路は狭い。海に浮かび、戦闘能力を保持する戦闘船舶は尚のことだ。

 セカンドインパクトによって資源を失う前に建造された、オーパーツとも言えるオーバー・ザ・レインボーもその例にもれない。

 自然、戦闘の気配を感じてにわかに慌ただしくなった船内は体格の良い男達によってすぐさま混雑し始めた。

 それでも熟練の連携によって流れ続ける人の流れに乗って、シンジは男性としては小柄な体を走らせる。

 

(使徒が相手なら、ネルフは国家所属の全組織に優先して対処する特権を持っている。でも、太平洋艦隊程の大組織が相手だ。恐らく、ミサトさんはハードな交渉でかかりきりになる)

 

 今、この場にはミサトの右腕である日向がいない。エヴァンゲリオンの運用をするのに、パイロットをサポートできる手が足りていなかった。

 だからシンジは走る。大局的な視点をもって戦場を把握するミサトは、アスカの戦闘思考の速度についていけない。エヴァを知り、適切な指示が出せる存在はシンジしかいないのだ。一刻も早く、パイロットの意思と指揮官の意識を繋げなければと、シンジは飛び込むようにブリッジまで走った。

 

「ネルフです。水中の敵に対しての情報の開示をお願いします。ネルフ側からの情報はこちらに!」

「戦闘中だ!見学者の相手をしている場合では──」

 

 シンジの走る先では、もうミサトと艦長の話は始まっていた。帽子を目深に被った艦長が、書類を手にしたミサトと息を切らせて走って来たシンジを見る。

 本来守るべき子供の姿を目にした為か、ミサトに対して怒鳴った艦長が数秒間動きを止めた。その数秒で本来の冷静さと忍耐力を取り戻した艦長は安心させるようにシンジに微笑むと、ミサトへと向き直る。

 

「──いや、失礼した。情報が欲しい。君たちの入室を許可しよう」

 

 ありがとうございます、と声を張りミサトが入室する。幾多の戦いでシンジを支え続ける颯爽とした姿だった。

 その後ろ姿を見つつ、シンジも真似をして入室する。シンジの視界で手が振られた。後ろ手にVサインを出したミサトを見てシンジは安心する。どうやらこれで正解らしい。

 

「水中を動く敵性体は、我々を超える速度で動いている。まるで曲芸だ」

 

「現行の兵器ではあり得ませんね。ですが使徒であるなら納得できます」

 

 ミサトが、二度目に現れた使徒の写真を持ち出す。

 

「この使徒は、これだけの巨体で浮遊能力を持っています。使徒は個体の形態差が大きく、共通点はほぼありませんが、必ず何かしらの形で物理法則を超えます。水中での高機動もそれかと」

 

 ミサトの提言を聞き、艦長は顎に手をやり、考え込む。

 

「シンジ君?」

 

 はい、と答えるシンジを見ずにミサトが問う。

 

「アスカはどこに?」

「プラグスーツに着替えて待機しています。士気は十分です」

 

 アスカらしいわ、と苦笑する声が聞こえた。シンジも内心で頷く。いつ、どんな敵が来ても強気で動けるのがアスカの強みだ。意識で前に出て仲間を引っ張り、背中を守って安心を与える。アスカは、そんな勝利の女神だった。

 

「艦長殿。ネルフの権限によって、パイロットの二号機までの移動に協力を要請いたします。使徒を倒すには二号機を起動させる他ありません」

「やむをえんか。ヘリを出す。誰か彼女に連絡をつけろ!」

 

 ピピッ、とミサトの胸から電子音が鳴った。鳴り出した端末を耳に当て、ミサトは1つ頷く。

 

「ご心配なく。ウチの者から連絡がありました。あとは発進許可を頂ければ飛べます」

 

 シンジの目が甲板で動き出すヘリを捉えた。真っ赤な装いに身を包んだアスカを男性がエスコートしている。あれがアスカの言っていた加持さんかと、シンジは当たりをつけた。

 アスカがヘリに乗り込み、艦長の横にいる男性が親指を立てる。

 艦長の張りのあるGOサインと共にアスカを乗せたヘリが空に舞った。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 ネルフ本部・食堂。明るく照らされた室内の片隅で、銀髪の少女が食事をとっていた。

 その向かいに座った女性、伊吹マヤが眼前の少女を盗み見る。

 相変わらず無表情に野菜のサラダを食べ続けるレイは、人形じみた無機質さを持っていた。

 その硬質の雰囲気に当てられ、居心地の悪さを感じたマヤは、意を決してレイに話しかける。

 

「さっき、太平洋艦隊が使徒と接触したって報告が来たわ。零号機は待機命令が出てるから、レイはこのままでいて」

 

「わかりました」

 

 言葉少なくレイが答えた。最後の一欠片を口に運び、今までと変わらない調子で食事を終える。

 その落ち着いた様子を見ながら、マヤは不安を口にした。

 

「シンジ君、大丈夫かな」

 

「大丈夫です」

 

 口に出し、あ、と後悔した瞬間に返事が来た。マヤはあまりに早く返された返答と、それを成したのが目の前の少女であることに驚く。

 

「あちらには惣流さんがいます」

 

 惣流さん?とマヤは脳内で検索をかける。今日来日するはずの、エヴァ弐号機パイロットの少女がヒットした。そして同時に、マヤの中に新しい驚きが生まれる。

 初号機パイロットのシンジとは少し距離が縮まったと感じていたが、ドイツのパイロットとまで交友を広げていたとは思わなかった。

 

「仲、良いの?」

 

 幸い、この食堂はネルフの中心部に位置している為に発令所までも遠くない。非常呼集だけに気をつけてマヤはレイとの会話を続行した。

 司令以外には仲のいい所を見せなかったレイと話せるチャンスだ。マヤは、自分の好奇心に素直になることにした。

 

「ヤシマ作戦の時に通信で連絡を。その後、定期的に会話しています」

「そうなんだ!ねぇ、アスカちゃんって、どんな子なの?」

「戦っているときの碇くんと似ています。感情が大きくて、自信家です。でも、よく気にかけて来ます」

 

 いい子なんだね、とマヤは相槌を打った。どうやらパイロット同士は仲良くやれているらしい。感情が薄いと思って居たが、それは勘違いだったようだ。分かりづらいが、しっかりとレイがアスカに親しみを持っているのを感じる。きっと、レイの感情を引き出せるようないい子が友達になったんだな、とマヤは小さく感動した。

 

(青春だなぁ)

 

 視線が優しくなっていくのが自分でも分かった。ヤシマ作戦から一ヶ月。新しい友人を得た年頃の少女が変わるには、十分な時間だ。

 視線の先、感慨深げに見てしまったこちらを伺うようにレイが小首を傾げる。

 

「どうしましたか?」

「あ、気にしないで。なんでもないから」

 

 慌てて誤魔化したマヤは、そのまま最初の質問を、形を変えて問いかけた。まだ使徒と戦ったことがないアスカが心配ではないのかと。

 

「葛城一尉と碇君が行ってると聞きました。なら、大丈夫です」

 

 レイが小さく息を吸う。無機物めいた表情に、うっすらと感情が浮かんだ。

 

「碇君と惣流さんは良く似ています。葛城一尉と、惣流さんと碇君は何故か、倒れたところが想像出来ません」

 

 笑みと呼ぶには薄い表情だが無表情ではない。形容しがたいほど薄く笑みを浮かべて、レイは続けた。

 そのレイの言葉に、ふとマヤは思い出していた。それは戦闘記録を確認していた日向の言葉で、

 

「初号機は、敵を前に膝を屈したことが一度もないんだ。もちろん、彼の戦闘訓練でそんな内容は一つもありはしない。なのに彼が膝をつきもしないのは、プライドだけじゃない何かを感じるよ。彼は、他人の期待を一身に背負うことを理解してしまってる」

 

 シンジの孤独さを語るものだった。だからマヤは心の中で誰かに助けを求める。

 

(誰か、シンジ君を助けてあげてください)

 

 たった一人で人類を背負う少年と、一緒の場所に立って欲しいと。

 

 

 ◆◆◆

 

 

「システム、オールグリーン。シンクロ開始します!」

 

 狭いエントリープラグ内に、少女の溌剌とした声が響く。

 弐号機の体動をフィードバックし、小さく手応えを返してくるコントロールレバーを握りながらアスカは唇を舐めた。

 

(シンジの奴に遅れを取ったけど、これで実戦経験者って事で並べるか。さぁて、無様な姿は見せらんないわよアスカ。しっかりやんなさい)

 

『OTR(オーバー・ザ・レインボー)よりエヴァ弐号機へ。目標は水中を高速で移動中、こちらで測量したデータをリアルタイムで送ります。確認どうぞ』

 

 スピーカーからシンジの声が響く。

 

「サンキュー、碇クン。確認したわ。………グルグルと回って様子見かしらね」

 

『シンジで良いよ。指揮官の意見では弐号機を警戒してると。そろそろ仕掛けてくるから注意して。射撃の可能性もある』

 

 シンジの話を聞きながらアスカは弐号機を立ち上げた。エヴァのサイズからすると、空母のサイズでさえボートに等しい。ひっくり返らないように姿勢に気を使い、足元にATフィールドを展開して踏みしめる。海上で戦う為に考えて来た付け焼き刃程度の発想だが、やらないよりもマシだろう。

 

『目標が進路変更!OTRへ向かってくる!』

 

「行かせるかぁ!」

 

 アスカの咆哮をトリガーとして、弐号機が自身の発生させたフィールドを蹴りつけた。

 最新技術の粋を集めた、赤い巨人が空を切って飛び出す。

 

「エヴァ弐号機、発進!」

 

 雲一つ存在しない空を赤い巨人が飛ぶ。アスカのイメージを受け取った弍号機は、ヘリすら超える速度を纏ってオーバー・ザ・レインボーへ急いだ。

 

『OTRから弐号機へ!海中の使徒に対して機雷の敷設をしている。水面下に足を入れないように注意して!』

 

「了解!」

 

 弐号機の視界を得たアスカは、水中で連続する爆発を見た。水面が盛り上がり、大きく揺れる護衛艦隊を視界の端に確認し、飛び越えるようにアスカは走る。

 

「兵装準備はどうなってんの⁉︎」

 

『OTR甲板にあるだけ展開してる!バズーカには時間差で爆破出来る弾頭を詰めてあるから、上手く使ってくれ!』

 

「気が利くじゃない!じゃぁエヴァ弐号機、着艦します!」

 

 一瞬にして近づくオーバーザレインボーの甲板に、アスカは弐号機を滑り込ませた。足元のフィールドを緩衝材代わりに使い、甲板に広がった武器を海に落とさないように着艦する。

 

 少し距離をとった水中で、また爆発が起こった。間を空けずにシンジから報告が入る。

 

『使徒急接近。真正面からくるよ!』

 

「ちょっと待ちさないよ!」

 

 一瞬の余裕さえ与えずに接近してくる使徒へ悪態をつくアスカ。だが言葉とは裏腹に、彼女は冷静に装備を選択して銃口を使徒の潜む方角に向けた。

 右手にバズーカを、左手にライフルを構えた弐号機が片膝をついて静止する。

 

「ほら出て来なさいよ!たっぷりと叩き込んであげるわ!」

 

 自分と、通信で繋がる味方を鼓舞する様にアスカは猛り、そして通信に乗せないように小さく呟いた。

 

「さぁて、あんだけカッコつけてレイに教えたんだもの。失敗できないわよ、アスカ」

 

 

 ◆◆◆

 

 

 オーバー・ザ・レインボー船内は異様な緊張感に包まれていた。

 お互いに予想することが出来る人類同士の戦闘ではない為に、艦橋にいるスタッフは一瞬の時間でさえも気を緩めることができない。

 その中でも、唯一使徒に有効打を与えることが出来る戦力である弐号機のサポートを行なっているシンジ達のストレスは、艦長やミサトと同じく、想像を絶するものになっていた。

 

 現在シンジは、オーバー・ザ・レインボーの通信スタッフ数人の助けを借りてアスカへの情報支援を続けている。シンジ一人では専門的な装置を使いこなすことはできず、太平洋艦隊スタッフでは初めての対使徒戦闘ゆえに適切な判断を下せない。その為に組まれた即席のチームだが、その連携は悪い物では無かった。ミサトの権限によってシンジの戦歴を限定公開したためにシンジも戦士として認められた事。前回の光線使徒戦での戦自の戦闘技術を目の当たりにしたミサトが、旧来の戦闘組織への敬意を忘れない対応に徹した為に、艦内は厳しくも淀みのない空気が醸成されていた。

 

(これで最低限のサポート体制はできた。太平洋艦隊全てがアスカの支援に回れば、海上の不利だって覆せるはず…!)

 

 シンジの眼前、モニターには海中を移動する使徒が立てた巨大な波が映されていた。分割された画面のもう片方には使徒の予想進路が書き込まれている。

 シンジの右手に座り、キーボードを叩いていたスタッフが右手を握り、親指を立てる。画面内に[EVA02 LINK OK]の表記が踊った。

 

「OTRより弐号機へ!使徒予想進路を送った。接触カウントダウン、4、3、2、1!」

 

 ゼロ、とシンジが声を上げた瞬間、海面が大きく盛り上がった。

 白く、奇怪な魚類の姿が空中に踊る。だが、シンジがその姿を確認できたのはそこまでだった。

 

『ぶっとべえぇ!』

 

 アスカの咆哮と共に弐号機が射撃を開始した。的確に使徒先端を捉えた砲弾が連続して爆発する。白煙の中、使徒の発する不思議な怪音が木霊した。

 だが、そこで気を緩めるアスカではなかった。一瞬にして弾切れになった両手の装備を投げ捨て、肩にマウントされたプログレッシブ・ナイフを手に取る。

 

 シンジの目の前で赤い巨人が白煙の中に突っ込んだ。

 

「アスカ!無理な追撃はしないで!」

「いかん、全艦、砲撃中止!我らが太平洋艦隊が友軍誤射など、冗談ではない!」

 

 シンジの後ろでミサトが悲鳴の様な指令を送り、艦隊指令の慌てた命令が続いた。

 

『そこか───!!』

 

 白煙の中で大きく影が動いた。一つになっていた影はその動きによって二つに分かれ、片方は海へ逃れ、もう片方はオーバー・ザ・レインボーの甲板へとトンボを切って着艦する。

 片膝をつき、反対の片腕を使って衝撃を和らげながら着艦した弐号機は、緑に光る瞳で海を睨みつけていた。

 

「アスカ、状況を報告して。大丈夫なの⁉︎」

『大丈夫よミサト。それより、コアってやつを見つけたわよ!』

「…ホントに⁉︎大手柄よ、アスカ!」

 

 叱責する様なミサトの声色が、アスカの返答で一気に裏返った。

 

『切りかかった時にあのサカナ、こっちを食いちぎろうと口開いてね。一瞬だけど、大口あけた奥に赤くて丸いのが見えたわ。それって、コアの特徴でしょう?』

 

 同時に通信を聞いていたシンジは、驚きながらも納得するような、不思議な感覚を得る。

 

(さすがアスカ。やっぱり凄いや)

 

 エリートの呼び声に恥じぬ、アスカの隙のない戦いに安心したシンジ。アスカとミサトが情報を共有している間、アスカの戦いに奮起しなおしたシンジは、スタッフと共に海中の使徒を追いかける。

 

(わかっていたけど、動きが速い。国連軍の魚雷がまるで当たらないなんて)

 

 アスカと弐号機の鮮烈な動きに目を奪われがちだが、国連軍も対潜ミサイルや魚雷を駆使して使徒を追い立てていた。だが、国連軍の魚雷どころか対潜ミサイルすらも使徒に追随できずに推力を失ってゆく。

 だがそれは、無駄ではない。ダメージにはならないが、時間は稼げた。その時間を無駄にしないために、シンジは急いで口を開く。

 

「OTRより弐号機へ。次に使徒が来るまで、推測で30秒はある。リロードを提案するよ」

『弐号機了解。とりあえずもう一当てして、どう倒すか考えましょ」

 

 ガラス一枚を隔てた先で轟音を立てながら弐号機が装備を整える。その手つきは丁寧なものだったが、その大きすぎる体躯に合わせた装備が鳴らす金属音は、人の耳には大きすぎる。

 

 耳の痛みに顔をしかめたシンジの視線の先で、準備を整えた弍号機が立ち上った。

 

 

◆◆◆

 

 

 様々な音が乱雑に鳴るブリッジでも、よく通るように声を張ってミサトは口を開いた。

 

「ねえアスカ。あなた、射撃の腕はどれくらい自信ある?」

『…何言いたいのか知らないけど、少なくともネルフに、私より腕のいいやつは居ないわよ。ミサトも含めてね』

 

 流石の自信ね。と内心で苦笑してミサトはアスカに提案する。針の穴を通すような無茶な作戦だが、試す価値くらいは有るとミサトは自らの考えを披露する。

 

「じゃあ、バズーカの連射で使徒の口の下って狙えるかしら。使徒が最低限でも既存生物と構造を共通しているのなら、口を開くための筋肉が有るはずなの。そこに無理やり刺激が入れば」

『ヒザ叩いて跳ねるやつの真似?ミサトの考えることは相変わらず訳わかんないわね。それで、口を開かせてからはどうすんのよ。下から攻撃は出来るだろうけど、それで開かせても狙えないじゃない』

 

 アスカの疑問を受けて、ミサトはにこりと微笑んだ。最前線で戦っているというのに、アスカの頭の回転はまるで落ちて居ない。

 今も的確にアスカをサポートし続けるシンジといい、使徒と睨み合いながらも頭を回転させ続けるアスカといい、エヴァに関わる子供達は天才としか思えない程の才能で我々大人に応えてくれていた。

 

「大丈夫よ。アスカがフィールドを中和してくれれば、選択肢は山ほどある。ここには、弐号機以上の火力を持った心強い友軍がこんなに居るのよ?」

『使徒撃破の手柄をみすみす譲れって?』

 

 ミサトの言葉で、アスカは一瞬で作戦を理解した。元々それだけで通じると思ったから、ミサトもそう答えたのだが。レーダーの先で動き回る使徒を睨みながら、ミサトは少しだけ語気を強めて話す。

 

「それが一番確実だと思うから、提案してるわ」

 

 命令と言うこともできる。だがドイツが誇る天才少女には、命令するよりもいい提案の仕方があるのだ。

 モニターの先で、アスカが大きくため息を吐いた。

 

『嫌よ。…って言いたいけどね。それで被害が増えたら寝覚めが悪いし、乗ってあげるわよ。でも結局は私の手柄だからね!そこんとこ、しっかり報告しなさいよ!』

 

 なんともアスカらしい高飛車な了解を受けたミサトは、体ごと艦長に向き直る。

 

「と、提案させていただきたいのですがどうでしょうか?太平洋艦隊の砲撃手の方に、使徒の口腔内を狙い撃てる方はいらっしゃいますか?」

「そちらが使徒専門の特殊組織だということは理解しているが、我が艦隊の兵を見くびらないで欲しい。貴軍が成功したのならば、狙える位置にいる全ての艦が目標を吹き飛ばすだろう」

 

「では、よろしくお願いします」

「任せたまえ。しかし、随分と柔軟な判断をするのだな。まさか我々に華を持たせるとは思わなかったよ」

 

 目深に被った帽子の奥から、艦長の訝しげな視線が向けられる。

 疑われるのも無理はないな、と思うミサトの脳裏には、先の使徒戦で零号機を助けた神業のような砲撃がチラついていた。

 

「以前、共闘した組織に素晴らしい練度を見せつけられたもので。我々の使命は使徒殲滅で間違いありませんが、その目的はあくまでも人類存続です。ならば、目的のために手段を選ぶような真似をできようはずがありません」

 

 勿論、ネルフとしては単独で撃破したい。しかし、そのために各方面に軋轢を作って自分の首を締めていては本末転倒なのだ。

 ただでさえ秘密主義のために敵を作りやすい以上、不必要に恨みを買って自分に向く銃口を増やす事はない。

 

 こちらの真意を探るような艦隊司令の瞳は、数秒もしない内に柔らかい光へと変わった。

 

「貴軍の援護に感謝する。太平洋艦隊の誇りにかけ、必ずや君たちの期待に応えよう」

 

 司令の答えを受け、ミサトはマイクに息を吹き込んだ。

 

「では、作戦スタート!アスカ、思いっきりやりなさい!」

 

 前回の作戦に続いて二度目の共闘だが、今回は所属する国家まで違う。

 ネルフと太平洋艦隊。信条や守るべき隣人さえ違う二つの組織だが、同じ方向を向く事は出来る。

 子供達のために組織の面子まで曲げてくれた艦長を、ミサトはそう信じることができていた。

 

 




お久しぶりです。水中戦闘面白くできなかったよ…(敗北)
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