「やっと目的の島に到着だ!この島にあるじいちゃんの残した館で一からやり直してみせる!!」
巨大船の甲板で青年が叫んでいる。蒼い空には雲がなく太陽がまぶしいばかりだ。季節は夏である。高校三年生の彼は最後の夏休みに祖父の館に行くようだ。
「おっ!もうすぐだな……あと少しでこれから住む場所に着くのか、心配もあるけどなによりも早く館みてーな!」
甲板の上ではしゃいでいる少年は、行ったり来たりを繰り返しながらキョロキョロとあたりを見渡しながら時折叫んでいる。
水平線に映っていた点のような小さな島にゆっくりと近づいている。島の全体が見えるようになってくるころには少年も落ち着きを取り戻し日陰に腰をおろしていた。
降りる準備をしとくんじゃと船長の大音量の声が甲板まで響いて聞こえてくる。島はすぐ目の前にある。じゅんびをする者は少年だけだ、ほかにだれもいないからだ。
少年のほかに誰もいないのはこのしまをしっている人がいないからだろう。名も無き島の通り、地図にすら載っていないのだ
それに、特別な物があるわけではない、人が農業と漁業の両方をしながら自給自足で生きている人たちがいるだけだ。それは後々話そうとしよう
「到着……おじさん、降りていいか」
彼が、おじさんと呼ばれる船長に聞く。手に切符を持ち急いだように船長に近づく。
「もうちょっと待ってほしいんじゃ、船着き場にロープをかけるからの」
船長はそう言いながら、船内に戻って行った。
「家から持ってくる物は全部持ってきていると……確認よし!」
リュックの中身確認オーケーだな、あとは船長を待ってこの島に降りた後、館を見に行くか
あとは……今日何かすることは特にないか
「それにしてもおじさんがおせーな、何してるんだよ」
「後ろじゃ、後ろ、さっきからいたんじゃが荷物を確認してるのが見えてな、待っていたんじゃよ」
後ろからさっきのおじさんの声が聞こえる。少年は声のした方向に振り返る。
「早くしてくれんか、もうこの船も出航しなければいけんからの、ほれ」
船長は手を前にスッと出すと、切符を渡すんじゃと言う。
「これでいいだろ、じゃあもう行くんで…」
船長の手に切符を乗せ、少年は船を降りる。
「おーい、最後にこれをわたすのをわすれとったわ、ほれ」
船長がポケットに手を突っ込んだと思ったら、ぽいっと何かを投げた。
「っ!?あぶねぇだろ!急に投げんなよ……たくっ」
「中身を後でみておくんじゃぞ、ではな」
船長がそう言うと船ごと消えてしまった。
「なっ!?うそだろ……どうなってんだよ」
驚きを表しつつも少年は目的地に向けて歩き出す。
「ここであってるはずだよな、どう見ても洋館だし古ぼけたところもいかにもじいちゃんっぽいしな。とりあえず入ってみるか」
少年は大きな扉を押し開く。見た目はさながら幽霊が出そうな館だ。
扉のすぐ先にあるホールの中はレッドカーぺッドが敷かれている。天井にはシャンデリアがぶら下がっており壁には絵が描かれている。
「すげぇ、立派な館だな。じいちゃんどんだけ金持ちだったんだよ……おれこんなところにす
めるんだよな」
少年は口をあけながら茫然する。
「あそこだけおかしいな、ちょっと近づいてみるか」
階段?と疑問の声がでる。
ホールに入ってすぐ右端に正方形の穴があり、段差があるのがわかる。
「この館は地下室があるんだな、じいちゃんの記憶って曖昧な部分があるんだな」
コッコッコッと足音が響く。ゆっくりと段差を降りて行く。すると、五分ぐらいだろうか、開けた空間に出た。その周りには棚が並んで本が数え切れないほどある。
「ここ……は書物がたくさんある、ここはじいちゃんの本の保管庫みたいなところか
それにしても薄気味悪いな、暗すぎるぞ」
ブツブツ言いながらも適当に棚から本を手に取ってみる。本のタイトル名は魔性石の取り扱い方と書かれている。
「ばかみたいなタイトルだな、こんな石あるわけねぇのに。いたずらであるものなのか?これもこれもあれもそれもほとんどの本が何かの関連書籍だしな」
そう言いながらもとのばしょに戻す
「ん?何だこれは何にも書かれていない……本?」
棚の書物をいろいろと漁っていると見慣れない白紙のタイトルに中身のない本があった
「目次もなし、タイトルなし、内容も書いてないのか……ふしぎな本だよな」
本を手に持ったまま近くにある古い椅子に腰をかける。
「あの船長が渡してきたものがあったな、ちょっと見てみようかな」
リュックを机の上において、船長からもらった布袋を開けるとそこにはきらきらした石が一つに透明な丸い水晶が入っていた。他にも説明書らしき紙が入っている。少年は紙を読むようだ。