近衛剛。調査報告を受けて読み通してみても、経歴は全て何ら不思議もないありきたりなものばかり。特筆するとしたら、彼のご両親が既に亡くなられていること。偶々始めたボクシングでそこそこの結果を残している位
余りにも平凡で、普通。そんな彼が、私ことリアス・グレモリー悪魔や三勢力に多大な影響を与えかねないだなんて思いもしなかった
『仮初めの赤龍帝』、彼は自分をそう名乗っていた
「リアス、お疲れ様」
「朱乃、ありがとう」
今私へお茶を置いてくれたのはオカ研副部長であり、私の『女王』、そして親友である姫島朱乃
「またタカシ君の事?」
「ええ…朱乃、正直に答えて。近衛剛をどう思う?」
「…はっきり言えば、野放しにすれば間違いなく多くの勢力から引き抜きが殺到するでしょう。けれどそれは、同時にタカシ君の身の危険にも繋がるわ」
今、オカ研の部室には私達二人だけ。朱乃は二人きりの時だけ、副部長ではなく親友である姫島朱乃として私に接してくれている
「それはどうして?」
「彼の行動原理は、他の勢力の行動と噛み合うだなんて思えないからよ。総意の上で戦おうだなんて考える連中と、わざわざあの子が手を組むはずがない…ならば残された手は殺すこと。引き込むつもりが敵として彼を殺すという流れが出来ても、なんらおかしくないわ」
「…そうね。確かに、あそこまで生きることに執着する彼が、殺し合いに加担するなんて有り得ないわね」
タカシは確かに容姿から何まで普通だけど、私達の世界では余りにも異質で、輝いている
誰が好んで、自分をことごとく傷付けた者を助けようと思うのか。堕天使四に対して一人で立ち合える人間が何処にいる
そして他人の神器が、持ち主と共に宿る人間など見たことがない
「彼は元の魔力の素質が非常に高い。見ただけでも朱乃以上私以下と言った所かしら?」
「そのようですわね…それが何か?」
「おかしくは思わない?"高がそれ程"の実力で、赤龍帝…ウェルシュドラゴンが自らと宿主、兵藤一誠君を彼の腕に宿らせるのかしら?」
ここが非常に気になっていた部分。祐斗と子猫の報告では、彼は右目に妙な紫の炎を灯していたと言うわ。明らかに、赤龍帝が取った行動に繋がる何かを連想させる出来事だと、私は睨んでいる。それに何故ウェルシュドラゴンは兵藤君までも腕に宿らせたのかしら…神器は本来、宿主が死ねば別の宿主に宿るだけのはずなのに…何故
「それについては、彼本人に聞かなければ分からないわ。多分、彼自身分かっていないだろうけど、ね?」
「ふむ…そこは時間に任せるべきかしら。だとしたら先ず私達が出来ることは、彼の保護からね」
「それが良いかと…このまま彼を放っておけば、確実に大きな組織に狙われてしまいますわ。少々強引でも、彼をうちの学園に招き入れる必要があるかと」
「そうさせてもらうわ。それにアーシアの住まいについても考えないとね?後、彼の家は学園から遠いし、空き物件でも探して引っ越してもらいましょうか。そのついでといっては何だけど、アーシアもそこに住んでもらいましょう…彼女もそれを望みそうだし?」
アーシアを見ていると、嫌でも彼女の本心が見て取れる。惚れた男と共にいたいというのは、女の本望よね……そう、自分と望んだ相手となら
「うふふ、リアスにも春が訪れたのかしら…」
「?どういう意味かしら朱乃?」
「いいえ、ただあなたが彼の身の安否だけで彼に関わっているようには見えませんでしたから」
「朱乃!?からかわないで頂戴!」
朱乃は何を言ってるのかしら!ただタカシは強くても、まだまだ子供みたいに自分を蔑んでいて危なっかしいから!……でも
『誰かに身を委ねるくれえなら自分で乗り越える』
『自分に見合うかどうかなんて自分にしか分かんねえっての!』
『自分が今後悔しないことをやる。泣いてる女を、男が黙って見過ごしちゃいけねえから!』
彼の生き方を見ていると、あの生き方が出来ればどれだけ好ましいかと…羨ましくもあり、同時に叶わぬ夢と知っているから、妬ましく思いもする
「…彼は真っ直ぐなのね。どこまでも自分が信じたものを貫く精神があるわ。彼の中にある力は、魔力や体術みたい目に見えたものだけではないのかもしれない」
「それもまた男の子なんだと、私は思うのだけど?」
「ふふ、そうなのかしらね?」
心身共に強く、未だ未知の何かを感じさせる人間。でも何処か子供っぽくて、私に敬語も使わず悪態ばかりつくけれど、それもまた可愛く思えてしまう不思議な子。命を何よりも尊ぶし、大事な家族を失った傷もまだ癒えていない彼…近衛剛。見た目も感性も普通なのに、彼に纏わりつくものは異常なものばかり…だからこそ、その力に押し潰されないように、私が守らないと!
「そういえばリアス。今回の件でもまた、例の『強化体』が現れたのよね?」
「ええ、堕天使レイナーレがその対象だったわ。その事についても彼女本人から聞いたのだけれど、どうも誰かに与えられた力のようね」
「誰か、とは?」
「本人も分からないそうよ。ただ声だけ、その声に応えた時に力を得たそうよ」
そう、ここ最近になって益々被害を出し始めた『強化体問題』。何かの前兆?だとしても
この街にも影響を及ぼすのなら、黙って見ていられない
「…強化体に唯一目覚ましい戦果を挙げているのが、三勢力のどれでもない人間となれば、この問題は更にややこしくなるわね」
「…もしかすれば、この問題解決の中心は、彼に掛かっているのかもしれない…そう言いたいのかしらリアス」
「ええ…いずれにせよ、タカシはもうこの世界から切って離れられない所まで踏み込んだ。私はただ、彼を支えることしか出来ないわ」
後はあなた次第よ、タカシ
原作キャラの心情は非常に書きにくい…こんな感じで良かったのか?
取り敢えずは次回からフェニックス編。さてどう暴れるか…
それでは!