ハイスクールd×d 仮初めと虚無   作:Third+s

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どうもお久しぶりです!少し間が差して別の小説書いてました…(投稿はしませんが)

特訓編も長いですが、どうぞお付き合い下さい


特訓

あれから俺は家に帰らなかった。出来るだけ知り合いから遠ざかる為、俺はあちこち走り回り、廃工場を見つけたのでそこを寝床にした。はぐれ悪魔がいたんだが、気の毒ではあるが憂さ晴らし要員としてぶっ飛ばして場所を奪い取ったんだがな

 

 

そして一人夜を明かし、目に眩しい朝日を受けて目を覚ましたんだが…

 

 

 

 

 

「おい、これはどういうこった」

 

 

「あら、おはようタカシ。昨日行方を眩ましたから心配してたわよ?特にアーシアなんて泣きながら探してたんだから」

 

 

「タカシさん!どうして勝手にいなくなられたんですか!今度からは絶対に離れないで下さい!」

 

 

 

蓑虫って知ってるか?木の枝みたいのを体中につけてぶら下がってる虫なんだが、正に俺はそれを身を持って体現しているんだ。あれ、昨日撒いたよね!?何で拉致されてんの!?てか猫娘の野郎体の四倍ありそうな荷物に俺をぶら下げて連行してるし!

 

 

 

「待てい!色々ツッコませろ!何故居所がバレた、何処へ拉致ってんだ!色々説明しやがれ!」

 

 

「ごめんねタカシ君。昨日の様子だと駄々をこねそうだったから、寝てる間に連れて行こうって手筈になったんだよ」

 

 

「木場、大事な所抜けてる!俺を連れて何しようってんだ!」

 

 

「特訓ですわ…うふふ」

 

 

 

すると蓑虫状態でブンブン暴れる俺を見て、頬を桃色に染めた朱乃さんが質問に答えてくれた。おい、この人何気にSイッチ(エスイッチ)入ってやがる!こんな姿の俺を見て何想像してやがる!

 

 

 

「先輩、暴れるなら引きずります」

 

 

「理不尽!圧倒的理不尽!この状況を飲み込めない人間に罰を与えるとか鬼畜だろっておぃぃ!塔城てめぇ縄に手をかけるな!いで!ででででで!やめ、ちょ、勘弁して」

 

 

「皆を困らせた罰です」

 

 

「そんな馬鹿なああああ!!」

 

 

 

こうして俺は、訳も分からず目的地まで引きずられる羽目になった

 

 

 

 

 

 

 

 

塔城に引きずられて約二時間、頭皮が削れ落ちるかと思う程の苦痛を味わった俺は、とある山奥の豪邸に辿り着いた。あれ、特訓だよね?何で居住区が豪邸?特訓舐めてんの?

 

 

 

「さて、タカシ。昨日の事は…聞きたいのは山々だけど、今は止めておくわ。あなたが話したくなった時、話して頂戴。特訓っていうのは、そのままの意味。ライザーに勝てる見込みは、今の所絶望的よ。私達では経験も実力も不足過ぎるわ…悔しいけどね」

 

 

「お気遣いどうも…だけど部長さんよ?いくら何でもこの仕打ちはあんまりだと思うんだが?てか学校どうしたよ、無断欠席?」

 

 

「公欠の処置は取ってありますわ。今は一刻も争う状況…致し方ありませんわ」

 

 

 

賽ですか。でもグレモリーや眷属達も、身の程は分かってるようだな。絶対的格差を理解した上で、"付け焼き刃"の対策を取ったか。ま、アマチュアがプロを相手するような勝負だ。結果が見える上で、本人を納得させる為にゲームを組む…貴族って薄汚ねえ

 

 

 

「それにあなただって危険なのよ?いくら努力していたって、人間の体では限界がある。タダでさえ人間には余る…それこそ器ギリギリの水を抱えたあなたがブーストし続けたなら、昨日みたいな反動が起きたって不思議じゃないわ。あなたの限界はブースト五回まで…つまりライザーと眷属達を相手どるには、持久力が全く足りていないの」

 

 

「…成る程ね、つまりこの時点でその話をするって事はだ。勝ち目は俺に掛かってると思って構わないのか?」

 

 

「理解が早くて助かるわ。そう…ライザーは不死鳥、聖獣と同じ名を冠する一族。その力も同じく、不死身…あれを打開するには、より強力な一撃か、精神を疲栄させる他無いの。そのどちらも可能に出来そうなのは…恐らくあなた」

 

 

 

人間である限り、チャラ男共全員をあしらう事は不可能。だが俺は悪魔になる気はさらさら無い。ならその範疇で出来る事は、短期集中かつ正確な一撃。唯一の切り札が俺ってのは理解出来た

 

 

 

「…所でいいのか?今の俺は、多分危険だぜ?」

 

 

 

だけどこれは言わせてほしい。間違い無く俺は、何かに蝕まれ始めている。この何かが下手をすれば…全員を、あの夢のように

 

 

 

「あなたを放っておけないだけ。あなたはオカルト研究部の部員であり、私達の仲間。悩んでいるなら、助けるのが当たり前じゃない」

 

 

「そうだよ、僕達にも分けてよ。君の辛さを」

 

 

「ここにいる皆が、何かを抱えているのです。支え合う位、訳ありませんわ」

 

 

「仲間、信じて」

 

 

「皆で強くなりましょう!タカシさん!」

 

 

 

だけど俺は忘れていた。この悪魔共は、超が付くほどお人好しだったってのをさ?

 

 

 

「……そっか、ならここで誓う」

 

 

 

いいぜ、だったら俺も覚悟決めてやるよ

 

 

 

「絶対にお前たちを守る。俺の拳に誓って」

 

 

「ええ、じゃあ早速始めましょう!」

 

 

 

こうして俺は、居場所を守る為…俺自身と向き合う為の特訓を始める

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑張ろう、タカシ君!」

 

 

「おうよ」

 

 

 

僕、木場祐斗を含めたグレモリー眷属は、十日後に備えて特訓を開始した。僕達男性陣は、服を着替える為にあてがわれた部屋にいる

 

 

 

「はぁぁ、金持ちって無駄にスペース作るよな。何に使うんだか」

 

 

「あはは…そこは気にしない方がいいよ」

 

 

「普通に生きてりゃまず味わわねえ体験だな。やっぱ平穏が一番だ」

 

 

 

平穏…彼が口々に言うその言葉。だけど僕から見れば、タカシ君のやっている事は、常にそれからかけ離れた行動にしか見えない

 

 

 

「…タカシ君、何故僕達に協力してくれるんだい?」

 

 

 

だから、僕は聞いてしまった。もしかすれば、その問いが彼の想いを揺らがせかねないものにも関わらず、だ

 

 

 

「何で、ねえ…さあ?」

 

 

「さあ、て…君は死ぬのが怖くないのかい?」

 

 

「怖えに決まってんだろ!さすがに死線駆け回って悦楽に浸る程気違いじゃねえよ!」

 

 

「じゃあどうして!」

 

 

 

思わず語気を強めてしまった。理解出来ない、彼の行動原理が

 

 

彼は、強い。恐らく今ここにいる誰よりも強い。だけど、彼は人間だ、ついこの前まで普通…に生きていた彼が、こんな命を張る程の危険なゲームに参加する理由が分からない

 

 

 

「ふ~む、強いて言えば…約束だな」

 

 

「約束?」

 

 

「部長に約束しちまったんだよ。"悩みに思い詰めちまったら助ける"、てさ?もうあいつのことも、お前ら眷属のことも他人事に出来ねえんだよ。俺の意地っ張りなだけだがよ?」

 

 

 

そう告げた彼の顔は、苦笑いだった

 

 

 

「だっけどさぁ!…俺の中にある何かが、下手すればお前らを傷つけるかもしれねえんだ」

 

 

「何か、それは一体…?」

 

 

「力、底も知れない不可解な…だ。だから俺はこの十日で、お前らを傷つける力を、守る力として制御しようと思ってる」

 

 

 

…彼は、どこまで凄いんだろう。たった一つの約束を守る為に、恐れているものへ正面から向き合おうとしている。それも、命懸けで

 

 

 

「…だったら僕も約束するよ。必ず君を守り、ゲームに勝つ!」

 

 

「守る相手間違ってんだよ。それに自分の身くらい守れないんじゃ全員を守れるはずねえっての」

 

 

「違いない」

 

 

 

二人して可笑しくて笑ってしまった。僕は今、彼がとても平凡な高校生に見えてしまった。彼は僕達のような世界より、普通に学校で過ごす世界で生きる方が良く似合っている

 

 

 

「じゃあ変えよう。生きて勝って、また学校で会おう!」

 

 

「了解。俺に出番取られんなよ、ナイトさん?」

 

 

 

もちろん、負けるつもりはない。僕も、いや眷属の皆も、部長の為に勝ちたいと、本気で思ってるんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライザーとの結婚を賭けた非公式のレーティングゲーム。端から勝ち目の無い戦いを強いられた私達だけど、グレモリーの名において、負けは許されない

 

 

 

「ちい!ぐっ!くそ!」

 

 

「隙が多いよ!」

 

 

 

今、タカシには祐斗と剣術で闘ってもらっている。実戦経験を積ませたい事と、タカシには少しでも武器を持った相手の思考を予測してもらいたいのが狙いで始めたんだけど

 

 

 

「こちとら得物は拳なんだよ!何で素人が手練れと同じ土俵でやらされてんだよぉぉ!?てめ木場ぁ!今の骨折もんだぞ!」

 

 

「その攻撃をさっきから反応していなしてるのは君だよ!」

 

 

 

まさか、剣の実力なら眷属一の祐斗の剣閃を、危なっかしくも紙一重に避け、更には木刀の腹を拳で叩き落として防ぐだなんて。彼の独特な物の見方は、戦闘の中で大いに貢献していることが分かる

 

 

 

「僕もそろそろ本気で行くよ!」

 

 

「嘘!?これより速いとか、って言ってる間に消えた!」

 

 

 

けど、人の動体視力の限界を超えた祐斗の動きにはさすがに目が追いつかず、タカシはあちこち見回して祐斗を探す。それが大きな隙よ

 

 

 

「隙有り!」

 

 

「っ!上!」

 

 

 

完全に出遅れた。勝負はこれで決まり

 

 

 

「こなくそ!」

 

 

「なっ!」

 

 

「っ、嘘!?」

 

 

 

そのはずだった。だけどタカシは更に予想外の動きを見せた。木刀を頭上で寝かせて、祐斗の木刀を右に逸らした!?完全にタイミングが遅れていたはずなのに

 

 

 

「ここだああ!」

 

 

「くっ!まだだ!」

 

 

「マジ!?切り返しが速えごぶっ!?」

 

 

 

タカシの不意をついたカウンターは見事だった。だけど祐斗の方が一枚上手だったわね。振り下ろしからの逆袈裟斬りを受け、タカシは木刀を手離して地面を転がった

 

 

 

「どはあぁ負けた!良い線いったんだけどなぁ!」

 

 

「今のはヒヤヒヤしたよ。まさかあの時点で刀をいなされるだなんて思いもよらなかったよ」

 

 

「剣の軌道は予想して避けたり、刀で反応出来ないなら拳で代用したりしていなしてたけど、最後のはほぼ本能だわ、勘が冴えたなホント」

 

 

 

 

タカシの強み…口々に言う勘で何かを成す才能。これは研ぎ澄まされた五感が、危機回避や違和感を敏感に感じ取ることに長けている証拠だ。彼の潜在的能力は、やはり人間の範疇ではその全てを出し切れていないという訳ね

 

 

 

「必要無さそうだけど、剣っていうのは視野を広げて、相手の動きを読まなければならないんだ。参考にするといいよ」

 

 

「かぁ~、勉強になりますよぉ師範殿」

 

 

 

憎まれ口を叩きつつ、タカシは祐斗が伸ばした手を握り、助け起こしてもらい、土をはらった

 

 

 

「んじゃ、第二ラウンドだ。師範殿の助言に因んで、やり方を変えてみるか」

 

 

「いいのかい?結構疲れてるんじゃない?」

 

 

「こちとら毎日走り回ってんだよ。まだ限界じゃねえ」

 

 

 

人間の身であのタフネス。彼が悪魔になれば、どれほど心強いか…

 

 

 

「じゃあ…行くよ!」

 

 

「っ!いきなし全力、か!」

 

 

「っ!?祐斗の全力を見切った…?」

 

 

 

有り得ない!さっきまで目で追うことすら出来なかったはずなのに!

 

 

 

「まさか…もうこのスピードに慣れた訳じゃないのよね?」

 

 

「いんや?消去法だよ。縦振りなら横に少し動きゃ避けれるんだ。剣術で追い込みたいなら、後ろに下げさせて、距離と有利な体勢を作らせたいだろうって"読んだ"だけだ!」

 

 

「っ!くっ!」

 

 

 

しかもタカシ、両手で支えて受けた木刀を、更に踏み込んで滑らせてる。彼の狙いは、祐斗の持ち手!

 

 

 

「甘い!」

 

 

 

でも今度は祐斗の番。狙われた左手を木刀から離し、半身の形でタカシを避けきった。つまり体勢は、祐斗の眼前に前のめりのタカシの体があるということ

 

 

祐斗はそのチャンスを逃さず、大きく縦に刀を振るう。でも何故…これで終わるとは思えない!

 

 

 

「まあそう来るよな?"お前から見た視点で動く"とするなら」

 

 

「っ!?しまった!」

 

 

 

やはり、このままじゃ終わらない。タカシは前のめった体を無理矢理回転させて、祐斗の剣を避ける。でもそれだけに飽きたらず、彼は祐斗が木刀を持った時に出来る両腕の空間に、自分の木刀を突き刺した

 

 

 

「さ、てめえは剣を手離す?それとも有利を手離す?」

 

 

 

次の瞬間、タカシは自分の木刀の刃の方を、祐斗の木刀目掛けて名一杯引き戻した

 

 

 

「くそ!」

 

 

 

そして祐斗は、木刀を片手に持ち替え、その場から後ろへ飛び退いた。あの祐斗が、遊ばれている?

 

 

 

「上等上等、なら食らえや!」

 

 

 

タカシの狙いは正にここだった。彼はあくまで刀を"引き戻した"に過ぎない。つまりタカシは、ここまでの流れを導き出したということなの!?

 

 

タカシはその瞬間、引き戻した刀を大きく一歩踏み出し、力の限り切っ先を祐斗へ向けて放つ。ボクシングの経験を活かした、必殺の一撃を孕んだ突き。それが空中で無防備な祐斗へ放たれた…完璧な読み勝ちだったわ

 

 

 

「やられて、たまるかああ!」

 

 

「っ!?げっ!」

 

 

「っ、止めた!」

 

 

 

だけど彼は、祐斗はそれすらも覆した。タカシの突きを、木刀を使って防ぎきった。更に突きの勢いを活かして大きく後ろへ下がり、見事に着地。反撃に出た。…剣士としてのプライドが、祐斗を突き動かしたと見ていいのかしら?

 

 

 

「もう好きにはやらせない!」

 

 

「こっちの台詞だ!」

 

 

 

全力で駆ける祐斗、それを迎え撃つタカシ。この勝負、見なくても結果が見える。悪魔の膂力に耐えられる程、人は頑丈ではないもの

 

 

 

「食らいやがれええ!!」

 

 

「遅い!」

 

 

 

そして迎え撃ったタカシは頭上から振り下ろす縦振りで、祐斗はそれを掬い上げるような軌道で木刀を振るった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんちて」

 

 

「「っ!!?」」

 

 

 

その動きすら、フェイクだった。祐斗が掬い上げた木刀は、大きく空振った。タカシが振り下ろしたのは、"左手のみ"

 

 

 

「俺の、勝ちだ!」

 

 

「…参ったよ」

 

 

 

タカシが片手で残していた木刀が、祐斗の首筋に当てられた事で、勝敗は決した

 

 

 

「…ぶはあ!危っぶねええ!」

 

 

 

だけどタカシは、勝負が終わったと思いきや汗だくになって尻餅をついてしまった

 

 

 

「恐ろしい程の判断力だね…まさかあそこまで翻弄されるとは」

 

 

「いや、ぜぇ…ぜぇ、お前が正面からの戦いに強いのは分かってたんだ。だからお前が一番嫌な戦い方をしてみた…はぁぁ、だからこれでお前を超えた訳じゃあない。てか剣術らしい事一つもやってなかったろ?」

 

 

 

それにしたって、タカシのあの動き…まるで祐斗の全てを見切ったように見えた。どんな紙一重の状況でも、冷静に対処するあの洞察力と思い切り。もしかしてタカシは…生まれながらの戦闘向きな子だったのかもしれない

 

 

 

「てか部長!この修行って俺にメリットあっても木場にメリットがねえぞ!」

 

 

「いいえ、大いにあったわ…それも私達が思いもしない程に」

 

 

「そうだよタカシ君。…さっきの戦いで、僕もまだまだってことが良く分かったよ。これから修行が終わっても手合わせ願えるかい?」

 

 

「嫌だ!誰がこんな命懸けの勝負するもんか!それにてめえとやり合ったらどうせ剣道場とかでやって変な注目浴びるんだ!俺の平穏ライフがまた遠ざかるじゃねえか!」

 

 

 

…彼はこの期に及んで、まだ平穏を求めている。とても今更なのに、何故かしら…そんな彼を見ていると応援したくなる

 

 

 

「…ふふふ」

 

 

「あ?何だよ部長、何笑ってんだよ」

 

 

「いえ…何だか子供みたいなあなたが面白くて」

 

 

「んだとぉ!そもそも誰のせいでこんな」

 

 

「先輩、今度は私の相手です」

 

 

「は?ちょっと待てや猫娘!襟首掴むな!わっわっ!少し休ませろやあああ!」

 

 

 

そしたら子猫がタカシを引っ張って連れて行ってしまった。子猫も随分、彼に影響を受けているのかもね

 

 

 

「はは、つれないなぁ彼も」

 

 

「お疲れ様祐斗。で、タカシはどうだったかしら?」

 

 

「…彼は天才です。それこそ戦いにおいて特化した…彼と対峙して分かりました。あのセンスに神器を加えてしまえば、今のままでもライザー眷属に多大なダメージを与えられると思います」

 

 

 

そこまで言わせるだなんて…ますますタカシの異様さが窺える。間違い無くタカシは、うちの切り札(ジョーカー)足りうる実力を持っている

 

 

 

「…これは悪魔側の話なのに、何故私達は…平穏を求めるタカシを頼っているのかしら」

 

 

 

そう…これは絶対に逸らしてはいけない事。タカシは、人間…普通なら関わるはずのない事なのだ。それを私は無理矢理連れてきて、関わらせている。自分でも酷い女だと思うわ…こんな、こんな命の危険のあるゲームに巻き込むだなんて!

 

 

 

「…部長、きっとタカシ君は断ってもここに来たと思います」

 

 

「…祐斗?」

 

 

「彼は、僕達に協力するのは、あなたとの約束の為と言いました。きっと、彼はあなたとの約束を、命以上と決めてここにいるんだと思います。だから彼は僕達の側にいて、命を賭して、戦いに臨むんだと考えています。…だから僕は、そんな彼の想いに応えたくて、彼だけに重荷を背負わせない為に、強くなろうと思っています」

 

 

 

……約束?約束ってまさか…あの時の、たった一回の口約束の為に、彼はここにいるというの?タカシは…それだけの為に、戦うというの?

 

 

 

「…頑張りましょう、ライザーに勝つため…タカシのために!」

 

 

「もちろんです、部長」

 

 

 

タカシ、ありがとう…だけど、あなただけが守りたいだなんて、思わないことよ?グレモリー公爵の名に懸けて、必ずあなたを守ってみせる!

 

 

 

 

 

 

 

本日二度目のすり下ろしを受け、俺こと近衛剛はチビッ娘の相手をしていた

 

 

 

「えい」

 

 

「ぬおお!!てめえ今本気で打ったろ!?」

 

 

「何か不穏な気配を感じたので」

 

 

 

こやつ読心術の使い手か!?余計な事は考えないよう注意しよう

 

 

今、俺は木場とのチャンバラ対決を終えてすぐに猫娘と組み手をやっているんだが、どうもこいつ、時折何か隠してるような…ていうより、"使えるのにセーブしてる"ような動作がちらついている。そうだな、試合で勝ち目無いからって手ぇ抜いてる阿呆と同じ雰囲気を感じるんだよなぁ。勘だからあんまし強く言う気も無いけどさ?

 

 

 

「タカシ先輩、拳が甘いです」

 

 

「あっ、やべっ!」

 

 

 

考えてたら隙が出来てた!マズい!猫娘は総合格闘技かなんかを覚えてるから

 

 

 

「えい」

 

 

「でででででで!?」

 

 

ものの見事に腕を取られて四の字固めを食らう俺、ドジった…

 

 

 

「…何を考えてたんですか?」

 

 

「痛ってぇ…何でもねえよ」

 

 

「えい」

 

 

「てめ!フェイクでもう一回とかだぁぁ!痛い痛い!」

 

 

 

畜生!準備してなかったからモロに入った!このままだと本気で腕が折れる!

 

 

 

「分かった分かったよ!話すから止めろ!」

 

 

「…はい」

 

 

「あ"ぁ痛えぇ…お前本気で戦ってねえんじゃないかなって考えてたんだよ」

 

 

「っ!?」

 

 

 

ありゃ珍しい。普段無表情のこいつが露骨に驚いてやがる

 

 

 

「ふむ、その様子だと~、触れて欲しくない話か?」

 

 

「……はい」

 

 

「そっか、なら触れねえ。折り合いが付いた後にでも話してくれや」

 

 

「…聞かないんですか?」

 

 

 

こいつ聞いて欲しいのか嫌なのかどっちだよ。心なしか暗い顔な気がするから余計判断がつかねえ…無表情だから勘だけども

 

 

 

「俺の事もあんだろ?黙ってくれてんだし、お互い様で。謂わば借りを返す意味合いが強いっつか?考えんのめんどくせぇや」

 

 

「…ありがとうございます」

 

 

「礼言われる筋合いもねえよ。さあ、て!続きやんぜ?今度は蹴り技重視で」

 

 

「?ボクシングではないのですか?」

 

 

「典型的な戦いは読まれやすいってな?臨機応変に対応するなら、使える手を幾つも隠しておかねえとな。元の低スペックな人間の知恵さ」

 

 

 

そう言いつつ、俺は今までとは全く違う型を取る。重心を後ろに、肘を少し開いた状態で顔へ拳を構える

 

 

 

「…ムエタイですか」

 

 

「ところがどっこい。構えだけだからムエタイじゃないぞ?正直粗だらけだから、絶対お前からは一本も取れないだけどさ?」

 

 

「どうしてそんな素人技を今修業するんですか?」

 

 

「"今必要になるからだよ"」

 

 

 

その言葉と同時に、俺は前へ飛び出した

 

 

 

「っ!えい」

 

 

 

塔城はすかさず反応した。迫る俺を紙一重で避けつつ、後ろ回し蹴りを俺の後頭部へ放つ

 

 

 

「こんの!」

 

 

「!!」

 

 

 

だけどその動きを読めない程俺も素人じゃない。俺は左足をブレーキと軸足に用いる事で、右手の裏拳を放った。狙いはもちろん、蹴りの相殺

 

 

 

「驚いてる場合、か!」

 

 

 

骨が悲鳴をあげてやがるが、無視だ!塔城の隙をつき、俺は両手で塔城の足をホールドした後、今度は逆にミドルキックを後頭部へ放った

 

 

 

「まだです」

 

 

「がっ!?」

 

 

 

だけど塔城は、俺がホールドした足を軸に、逆の足で俺の顎へ蹴りを打ち込んだ。クソ、脳が揺れる…けどまだだ!

 

 

 

「あ"あ"あぁ!」

 

 

「ぐっ!」

 

 

 

意識が遠のく中、俺が手を離す事で空中で無防備になった塔城へ、俺は今持てる全力でキックを放った。そして確かな感触が足に伝わり、俺は意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気絶して倒れたタカシ先輩。だけど私、塔城子猫からすれば、そんな彼の姿に敬意を表したい

 

 

 

彼の最後の一撃、普通なら脳震盪で何も出来ないはずの状況の中、気圧されそうな程の気合いで放っていた。…全くの予想外な攻撃で、今受けたわき腹の痛みが、自然と顔を歪ませる

 

 

 

只では倒されない、そんな気概を感じました。…ボクシングを嗜んでいただけの彼が、実戦慣れした悪魔の身体能力にタメを張っている。それがどれほど異常なことか、嫌でも分かる

 

 

 

思えば先輩はずっと私達を驚かさせっぱなしでした。異常な魔力、卓越した戦闘センス、そして『赤龍帝』でありながら、それは本来の力ではないと言い出した。なのに先輩は、何よりも普通を求めている

 

 

 

正直無理だと思う。先輩は平穏平穏と言ってるクセに、誰よりも厄介事に顔を突っ込んでいる。でも、先輩は絶対に負けず、皆を守っている。今回だって、本当は関わる必要は無いというのに、関わっている

 

 

 

しかし、そんなお馬鹿さんは嫌いじゃない。それに本人自体も、そう嫌いではない。デリカシーはありませんが、良い人です。そんな先輩が、部長や、私達の為に強くなろうとしている。人間でありながら、命懸けで悪魔を助けようとしている。変わっているのか、お人好しなのか…多分、後者でしょうが

 

 

 

「起きて下さい」

 

 

「はっ!」

 

 

 

気絶した先輩のほっぺたを叩いて起こす。こんな顔をする先輩は、面白い

 

 

 

「たったたた~!手加減なしかよ」

 

 

「加減出来る相手ではないので」

 

 

「良く言うぜ」

 

 

 

これは本音だ、先輩の動きはとても危険です。とっさに何をしてくるのか想像も出来ません

 

 

 

「こりゃ要練習だな」

 

 

「…先輩は何故頑張るんですか?」

 

 

「あ?何でって…それ木場にも言われたなあ。詳しくは木場に聞いてくれな?」

 

 

「ダメ、ですか?」

 

 

「うっ、そんなつぶらな目で見ても…あぁはいはい言いますよ!」

 

 

 

先輩はきっと、断れない男だと思う。優しさに漬け込んでる私も、魔性の猫…悪魔ですが

 

 

 

「敢えて言うなら、部長も、お前らもほっとけねえんだ。…そう言える位、俺にとってお前らは俺の"平穏"の一部なんだよ」

 

 

「っ!」

 

 

「お前らが傷つくのも、泣くのも見たくねえ。…俺が弱いから、何かを失うとか…二度とあって欲しくねえんだ。要は自己満足だ!これでいいか?」

 

 

 

平穏を守る為に戦う。先輩はそう言いました。あれだけ私達を避けていた、あのタカシ先輩が、私達を平穏の一つと言ってくれた

 

 

 

「…そうですか」

 

 

「あん?何笑ってんだよ」

 

 

 

嬉しいと、心から思いました。彼は確実に、私達の仲間として側にいてくれるんだと知ることが出来たんですから

 

 

 

「これからもよろしくお願いします」

 

 

「はあ?」

 

 

 

これは分からなくていいこと、私だけが知っていればいいこと。私は、先輩みたいな愉快な人も、嫌いじゃありません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲れが体を支配してるのに、今度は頭を使えときた。俺は今、アーシアと共に朱乃さんから魔力講座を受けている

 

 

 

「魔力とは全身のオーラを流れるように集めるのですよ。といっても、タカシ君は既に出来るのでしょうが」

 

 

「まあ、確かにそうですけど」

 

 

 

そう答えながら、俺は片手に魔弾を作り、フワフワと宙に浮かせた

 

 

 

「出来ました!」

 

 

「あらあら」

 

 

「こりゃぁ、中々凄いな」

 

 

 

するとアーシア、めちゃくちゃ簡単に魔力を作りやがった。…俺でもまともに出来たの5日かかったのに

 

 

 

「それなら、二人には次のステップをやってもらいましょう」

 

 

 

そう言うと朱乃さん、ペットボトルに魔力を注ぎ、中の水を氷に変えてペットボトルを破壊した。…これって、人体だったらスプラッタな事になるような

 

 

 

「慣れれば何も無い所から、火や雷を操る事も出来ます」

 

 

「へぇ、やったこと無いな」

 

 

「魔力のみの概念でここまで強いのなら、タカシ君のレベルアップも捗るかと」

 

 

「タカシさん!頑張りましょう!」

 

 

 

つまりこれからは魔法使いになれるのか。ちょっと楽しみだ

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度は魔力で料理?」

 

 

「ええ、調理器具以外は自由に使って構わないから、よろしくお願いね?」

 

 

 

そして晩飯は俺とアーシアが作る羽目に。絶対修行にかこつけて面倒くさがったな

 

 

 

「ま、こんなんいつもやってるけどさ?」

 

 

「そうですね!タカシさんは魔力の使い方がお上手ですから!」

 

 

 

俺より習得早い子に言われてもなぁ…結局、俺もアーシアも、魔力で火とかを起こせるようになった。これなら料理位わけないな

 

 

 

「さっさと作って飯にしようぜ、腹減ったよ!」

 

 

「はい!」

 

 

 

こうして俺達は難無く料理を作ることに成功。ちなみにカレーだ、味は普通だけどな?俺に上を望むのはお門違いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁ…」

 

 

 

そして夜、俺はようやく一人になったので、森の中で個人メニューをこなしていた

 

 

 

「起きろ」

 

 

『Boost!』

 

 

 

左手に篭手を装着、ブーストをかける。この10日の間、俺はグレモリー達との修行中はこいつの使用を禁じられている。だから俺個人でないと、"あの力"の制御を行えない

 

 

 

『Boost!Explosion!』

 

 

 

三回のブーストと共に、俺は力を解放する。一応、あいつらは全員風呂に入ってる。個人メニューのことは伝えてるし、魔力の増大については多めに見てくれるはずだ

 

 

 

「…さあ、出て来いよ。そろそろ向き合おうじゃねえか」

 

 

 

そしてこの瞬間から、絶対に気を抜いちゃいけない。さもなくば、俺が飲まれる!

 

 

膨大な魔力の奔流に、少しずつ混じる"異物"。完全に知覚した、間違いなく、いる

 

 

 

「っ、はっ!」

 

 

 

俺は即座に魔力を使用し、地面の水脈から水を引き出した。それを俺は薄い板状に整え、擬似的な鏡を作り、俺を見た

 

 

 

 

 

 

そこに映っていたのは、右目が炎の代わりに、瞳が紫に変わって、右腕から紫の炎を溢れさせた俺自身だった

 

 

 

「夢で散々唸らされてんだ。いい加減迷惑してんだよ」

 

 

 

するとどうだ…鏡に映る俺は、一人でに狂気じみた笑みを浮かべ、声も出さず俺を見た

 

 

 

「お前が何なのか知らねえ。どれほど危険かも知らねえ…だが先に言っておく。俺の居場所を奪うな!」

 

 

【図に乗るな小僧】

 

 

「っ!?」

 

 

 

鏡の俺は、声を発した。そしてそいつは、ゆっくりと俺に歩み寄り

 

 

"水の鏡からこちらへ姿を現した"

 

 

 

【お前は平穏を求めるんだろ?なら何であんな悪魔共に付き合う?】

 

 

「なっ…」

 

 

 

一体全体どうなってやがる…こいつは一体何だ!

 

 

 

【んぁ?何だよ何だよ、驚いたか?俺が現れたことに?】

 

 

 

確かにこいつの言うとおり驚きまくってるよ。だが問題はそこじゃない!何でこいつから"魔力を感じない!?"

 

 

 

【ホント!…お前は俺を何も知らない】

 

 

「俺と同じ顔した別人なんて知るかよ!」

 

 

【違う違う!俺は"お前"だよ近衛剛】

 

 

「は…?何を言って」

 

 

【お前の深層心理を糧にして、倍化された魔力をかっ食らって具現化したのが俺。つまり俺はお前の本音だよ】

 

 

 

本音、だと…?ふざけてんのかこの紛い物は!俺が戦う理由も全部建て前とでも言いたいのか!

 

 

 

「いい加減にしやがれ偽物が!俺は自分で望んであいつらを守るんだ!それを勝手なことベラベラベラベラと!」

 

 

【それなら何故、あの悪魔共の側にいながら違和感を感じている?】

 

 

「!!?」

 

 

【お前、日常は常に変わるもんだと思って、割り切ったつもりでいるだろ?】

 

 

「それ…は」

 

 

 

こいつの言葉は、俺の信じたものを崩れ落とさせるには十分過ぎる破壊力があった

 

 

こいつのい言うとおりだ…俺はあいつらといても"一度も満たされたことがない"

 

 

 

【くくくく…いいねぇその目、迷ってんだろ?なら教えてやる。お前の望む"平穏"を!そしてその真理を知る為ならば…俺の力をほんの少し借りればいい。何、お前のものだ。既に認識すればその力はお前を助けるさ】

 

 

「何なんだよ…俺の力ってのは何なんだよ!!」

 

 

【もう分かるはずだ…お前の望むものを、理想の平穏を叶えてくれる力さ!お前の望む理想…それは】

 

 

 

 

そして底意地の悪い笑みを浮かべた俺が放った次の言葉は

 

 

 

俺の今を完全に否定するものだった




剛の覚醒も近いです、はい

いかがでしたか?原作キャラ視点で主人公を描写してみましたが、やはり書き辛い!

次回はライザー戦直前を目指して執筆させてもらいます。また良ければ覗いてみて下さい

それでは!
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