ハイスクールd×d 仮初めと虚無   作:Third+s

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これにてライザー編完結!次は二巻かあ…


全てを守った代償、その見返り

「がっ…ぁぁあああ"あ"!!?」

 

 

 

ライザーを空に打ち上げた後、俺の体が突如、言語変換出来ない痛みを走らせた。…火傷と切り傷とその他色々が今更ツケで返ってきやがった!

 

 

 

「ちく、しょ…クッソ痛てぇ」

 

 

「がはっ!」

 

 

 

すると俺の背後から重いものが地面に落ちる音と、息を吐き漏らした声が聞こえ、そちらを振り向く。そこには予想通り、吹っ飛んで帰って来たライザーが仰向けに、煙を上げて倒れていた

 

 

 

「…強化が解けたのか」

 

 

「ぐっ、まだ…ごふっ!」

 

 

 

どう見たって限界だ、見ただけでライザーの再生は進んでいないし、魔力も雀の涙程度。これじゃ喋るのも苦痛だろう

 

 

 

「お兄様!」

 

 

 

すると突然、転移でもしてきたのか、ライザー妹が炎で出来た不定形の翼を広げながら現れ、ライザーに寄り添った

 

 

 

「っ!レイヴェル…何故来た!」

 

 

「っ!?それ、は…」

 

 

「俺は、まだ!戦える!!」

 

 

 

だがライザーはその優しさを跳ね除ける…まるで今はそれが煩わしいとでも言うように

 

 

 

「…驚いた、まさかそこまで熱血派だったなんてよ」

 

 

「くっ…はぁ、初めて…"目指すもの"を見つけたのだ。初めて心から勝ちたいと願ったのだ!!だから俺はこんな所で倒れたくはないんだよ!!」

 

 

 

回復に回す筈の魔力を右手にかき集めたライザーだが、その火も先程までの勢いは…ない

 

 

 

「『目標』、か…それが今お前が立つ理由、でいいんだな?」

 

 

「ああ」

 

 

「ちょ!お兄様!あなたも!これ以上やれば命が」

 

 

「「すっこんでろ!!」」

 

 

「っ!!?」

 

 

 

思わず口調が強くなってしまった。だけどそれはライザーも同じらしく、お互い間抜けな顔を見て苦笑いしてしまった

 

 

 

「すまない、レイヴェル。だがこれは、フェニックス家のライザーではなく、"ただのライザー"として、ケジメをつけたいんだよ」

 

 

「除きな妹、こいつは最後の手向けってやつだ…こいつ自身が俺を"糧"に先を進む為の、な」

 

 

「……もう!知りませんわ!」

 

 

 

知らないと言いつつも、あの顔だと意図を汲んでるようだな。ライザー妹がまた消え、再び戦場に二人が相対する

 

 

 

「…聞かせろ、近衛剛。何故戦う?」

 

 

「あん?」

 

 

「俺には理解出来ん。人間のお前が、人間を糧にする悪魔に味方し、殺されようと再び殺した相手に臆することなく拳を握れる理由を…それほどまでに、リアスを愛しているのか?」

 

 

「いや無い無い」

 

 

 

急に何言ってんだこの焼き鳥

 

 

 

「はっ!?じゃあ何でお前は俺と」

 

 

「だから言ってんだろ?あいつが理不尽な理由で、"夢を諦める"のが癪だったんだよ。自己満足も甚だしい…けど、俺自身がもう一つ、"守りたい"と思ったんだ。『俺の居場所』を守りたいってよ?」

 

 

 

あいつが引き寄せ、俺にくれたあの居場所。オカ研に、あいつの眷属等に、学園の連中…いつの間にかあそこは、俺の『平穏』になっていた

 

 

 

「俺は無力のまま"二度と俺の世界を壊させない"、俺が一度諦め、挫折した理想をくれたリアス・グレモリーを…あいつが守ってきた物全てを守る!それは自然と…俺の居場所を守る事だから!」

 

 

 

だから奪わせない、諦めない。"死んだ位"で諦められる程、この世界に絶望しちゃいないから!

 

 

 

「…くっ、はっはっははは!そうか、それがお前なんだな。何と偽善的で打算だらけな"人間"なんだろか!…それが最早美しくも感じてしまう程、お前が眩しいよ。近衛剛」

 

 

「人間捨てたもんじゃねえだろ?悪足掻きと無視してたら足元掬われんぜ?今みたいによ」

 

 

「その通りだ…新たな力と目標、それだけではお前の『傲慢』には届かなかったのか。過信が、一族の才能を過信した俺の弱さが、この結果を生み出した…きっとこれも、兄貴や父上たちは懸念していたのだろうな」

 

 

 

暗い顔を見せ、何かに憂うライザーを見ると、最初の印象が大きく変わった気がする。成長…とも言うのか

 

 

 

「だったらここでケリをつけるぞ。ここでテメェの残り少ないプライド、消し飛ばしてやる!」

 

 

「っ!いいだろう、このフェニックス家三男、ライザー・フェニックス!残りの灯火、全てを勝利に捧げよう!」

 

 

 

もう、雑談は終わりだ。ここで全てを…断つ!

 

 

 

『Zero!』

 

 

「「おおおおおおおお!!!」」

 

 

 

右の拳に灯る、赤と紫。今までとは最も見劣りする炎だが、俺達が込める想いは、ここ一番に大きい!

 

 

そして拳は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごほっ!?」

 

 

「…俺の、勝ちだ!」

 

 

 

ライザーの腹に突き刺さり、奴の拳は空を切った

 

 

 

「は…はは、思ったより…悔しい、もん、だ…」

 

 

 

俺の足元に崩れ、ライザーは静かに意識を沈めた。さっきまでとは大違いな程静かな舞台で、俺は数歩前に出て、大きく息を吸う

 

 

 

 

 

「俺の勝ちだ!!文句があんなら前に出ろ!!俺の世界に土足で踏み込んだ事後悔させてやらあ!!!」

 

 

 

天へ、これを見る全ての連中に喧嘩を売る。これぐらい見栄を切れば、向こうもたじろぐだろう

 

 

 

「お兄様…」

 

 

 

すると後ろで聞こえる聞き慣れた声に振り向くと、ライザー妹が崩れ落ちたライザーを涙ぐんで傍らで見ていた

 

 

 

「…ライザーにも伝えとけ、元気があんならいつでも向かって来いってよ。俺は常に…お前の前に立っといてやるからさ?」

 

 

「っ!?…あの、え…わ、分かりましたわ」

 

 

 

あら?急に声掛けられてどもっちまったし。ちょいとやり過ぎてビビっちまったかな?

 

 

 

『勝負ありだね』

 

 

「あん?って、え?ちょっ!?」

 

 

 

と思ったら魔王の野郎、満身創痍の人間置いたまんまフィールド崩壊させやがった!

 

 

そしてその先に見えたのは…

 

 

 

 

 

「何故に大空ぁぁぁぁぁああああ"あ"あ"!!?」

 

 

 

夜空の上から真っ逆様☆じゃねええええ!!何あの野郎人間空に放り投げてんの!?馬鹿だろ!あいつ馬鹿だろ!?てかライザー妹!ライザーだけ連れてどっか消えてんじゃねえ!

 

 

 

「…ふ、ここまでか」

 

 

「それには及びません」

 

 

「え?ぬお!?」

 

 

 

すると突然落下を受け止める何かが現れ、奇しくもお姫様抱っこされてしまった。ていうか、思いっきり猫娘だが

 

 

 

「やったねタカシ君!」

 

 

「お疲れ様タカシ君…うふふ」

 

 

「タガジざぁぁん!ホンドに良かっだでずぅぅぅ!

 

 

 

何だか空中で大団円し出したグレモリー眷属の面々、てか朱乃さんに抱えられて号泣してるアーシアがシュール過ぎんぞ!?鼻水吹きなさい全く!

 

 

 

「…行きます」

 

 

「ん?どこへ?」

 

 

 

ところがどっこい、猫娘が妙な事を口走ったんだが…って何故俺を持ち上げた?待て待て待て!この体勢は非常にまず…

 

 

 

「えい」

 

 

「ブレねえなこのクソ猫おおおおおおお!!」

 

 

 

何という事でしょう!?上げて落とすたぁこの事か!再び空へレッツダイブとかシャレになんねえだろおお!?

 

 

 

「タカシ!」

 

 

「ぬおおおおお!?って、え?」

 

 

 

だが次の瞬間、そんな俺をまたもナイスキャッチしてくれた人が…だけど!

 

 

 

「痛ってええええ!?ちょ、部長!怪我!火傷が染みる!」

 

 

「タカシ…ありがとう、私の…タカシ!」

 

 

 

グレモリーィィィ!感動してるとこ悪いけど火傷が痛い!傷口に直で涙擦り付けられたらああああ!!

 

 

 

「畜生!結局俺に感動は無いのかあああああ!!」

 

 

 

何故だろう、ホントは感動的なシーンってのは、現実だと随分変わるもんなんだな…

 

 

 

 

 

 

 

「っつう訳だ、魔王さん、部長のご両親。リアス・グレモリーは今後しばらくは自由にしてやって下さい」

 

 

 

全身の傷をアーシアに癒やしてもらい、木場から羽織るものだけ貰って会場に戻った俺は、当事者たちの前で別れの挨拶程度に用を済ませに掛かった

 

 

 

「見事だったよ、リアスは連れて帰りなさい」

 

 

「そりゃどうも。約束はきっちり守ってくれたな」

 

 

「勿論さ、悪魔の約束は絶対だからね」

 

 

 

読み辛い笑い方しやがって。どうもこの魔王、この結果を待ち望んでた節があんだよな

 

 

 

「ああ!…帰り方どうしよ」

 

 

「タカシ、そんな事も考えずに冥界に来たの?」

 

 

「いやだってあん時は必死だったし、後先考えてもしなかったわ」

 

 

 

行きと同じで次元の狭間から行くか?いや今度こそ迷う自信しか無いな…なら予定通りどこぞの悪魔シバき倒して帰り道聞くべきか?

 

 

 

『…何と下衆な』

 

 

 

心を読むな阿呆!

 

 

 

「ならばこちらが手配しよう。グレイフィア」

 

 

「はい。タカシ様、これを」

 

 

 

すると魔王、グレイフィアに指示を出して、俺に一枚の紙を渡す。そこには複雑な魔法陣が描かれている

 

 

 

「使うといい。帰りはそれが導いてくれる」

 

 

「へぇ、じゃあ遠慮無く」

 

 

 

俺が魔法陣を前に突き出すと、紙が光り出し、目の前にある生き物が召喚された

 

 

 

「これって…グリフォン、だっけ?」

 

 

「わざわざ用意してくれたのね…」

 

 

「キィィ!」

 

 

 

上半身が鷲、下半身が獅子の魔獣は、グレモリーに撫でられると心地良さそうに目を細める。その間に、俺は先程の紙の裏に別の魔法陣があることに気付く

 

 

 

「…なあ魔王さんよ、これ何の魔法なんだい?」

 

 

「それはもう"必要無い"ものさ。無視してくれて構わない」

 

 

 

必要無い、ねぇ…それって逆に言えば"必要な場面"を想定してたって事だろ?

 

 

 

「はっ、やっぱ"食えないねぇ"魔王さん?」

 

 

「…ふ、何のことやら」

 

 

 

一瞬驚く顔をするも、俺の腹の内を読んだらしく、飄々と返す。だけど顔が意味深だから効果ゼロだけど

 

 

 

「ま、いいや!取り敢えず"家族思い"な方は置いといて…帰るか!」

 

 

「はい!」

 

 

「そうだね」

 

 

「あらあら」

 

 

「…帰りましょう」

 

 

「ええ、そうね」

 

 

 

そして俺達はグレモリー家と魔王に背を向け、グリフォンに近付く

 

 

 

「そうだ!タカシ君、僕達は別で帰るから、部長を部室まで送ってくれるかい?」

 

 

「は!?何でそうなる!」

 

 

「…鈍感」

 

 

「何故貶された!…ああ分かったよ!送るよ!」

 

 

 

ちょっと皆の視線に耐えられなかった訳では決して無い!…と思いたい

 

 

 

「はあ…という訳だ。エスコートしてよろしいですか、お姫様?」

 

 

「っ!…ふふ、お願い出来るかしら王子様?」

 

 

「王子って柄じゃねえよ。平民の小間使いが丁度良い」

 

 

「もう、どの顔してそんなこと言うのかしらこの子は…」

 

 

 

たわいの無い言い合いに心地よさを感じながら、俺はグレモリーと共にグリフォンに跨がり、空を舞う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな光景を遠くで静観していた二つの影があった

 

 

 

「フェニックス郷、この様な事になって申し訳ない。無礼を承知で悪いのだが今回の件は」

 

 

「いいさグレモリー郷…寧ろ感謝せねば。この縁談の破綻にはお釣りが来る程の収穫があった」

 

 

「…ライザー君、ですかな?」

 

 

 

今回の婚約に関わった両家の当主は、空に舞うグリフォンを眺める

 

 

 

「息子があれほど強く何かを求めるようになるとは思わなんだ。これからあいつは強くなるだろう、敗北を…それこそあの少年の言葉通り、"あの少年を糧にして"な?」

 

 

「…人の可能性、神器とは人の可能性を体現するようだ。忌々しき赤い龍、それすらも従え、己の神器を持つ人間を見ると、それをより感じさせられる」

 

 

「今はまだこちらに味方しているが、恐らく他の勢力も黙ってはいないだろう…荒れるなぁ、世の中も」

 

 

「そして赤の目覚めは、必然と『白』の目覚めを意味する。さて、あの人間はどう白い龍を…『ヴァニシング・ドラゴン』を変えるのか…」

 

 

 

戦火の火種は未だくすぶる。それがいつ燃え上がるのか、それは時を待つ他無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿ね…ドラゴンに腕を、心臓を差し出すだなんて」

 

 

 

俺がグリフォンを操る中、突然グレモリーが俯きがちに俺の左手に手を置いた

 

 

 

「…別に、あのままだったら死んでたんだ。義手とでも思えば気楽なもんさ」

 

 

「それでも…これであなたは普通の人間には戻れなくなった。それに今回は上手く行ったかもしれないけど、これから先こんな事が何度だってある!そうすればあなたは確実に死ぬ…いえ、最悪"人で無くなるわ"…!」

 

 

 

涙を滲ませ、自責と労りの念を送るグレモリー…何故かね、それを見るのが癪だった

 

 

 

「上等だ…」

 

 

「え?」

 

 

「例え体が人で無くなろうと、それで俺が求めた"平穏"が潰えようとも…お前が、"皆がくれた平穏"を守れるなら、それでいい。腕が駄目なら足をくれてやる。誰かが消える位なら目だって惜しくねえ。…ここ(魂)だけは人であり続けるんなら、俺はまだ…人間だ」

 

 

 

真っ直ぐと、グレモリーの目を見つめる。そこに迷いは無いと、伝える為に

 

 

 

「胸を張れよリアス・グレモリー!俺の中の『兵士』に笑われんぞ?また抱え込んじまったら、助けてやる!お前の隣から、前から、お前の道が外れないようにな?」

 

 

「……」

 

 

「それに守りたい奴の為に化物になっても、親父たちだって許し…」

 

 

 

だけど俺はそれ以上、言葉を紡げなかった

 

 

 

 

 

 

"唇に伝わる暖かい何か"によって

 

 

 

「……へ?」

 

 

「…日本では、ファーストキスには特別な意味があるんでしょ?」

 

 

 

ちょっと待て、こいつ今っ!?

 

 

 

「お、おおおお前え!俺のファーストキス!?」

 

 

「あら、あなたも初めて?それならお互い初めて同士ね!」

 

 

「いや嬉しいけど!ハズいけど!色々手順すっ飛ばしてするもんか!?」

 

 

「いいじゃない…"あなたがくれた自由"だもの。"私の勝手"でしょ?」

 

 

 

こ、こんの野郎…どこまでも我が儘な奴

 

 

 

「…はあ、分かった分かりました!…あんがとよ」

 

 

「ふふ、素直じゃないのね」

 

 

 

空を駆ける俺達を、月はどこまでも見守る。俺達が進む帰路を…どこまでも優しく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドックン!

 

 

 

そして同時に、俺の中の『黒』も、ゆっくりと俺を蝕んでいく

 

 

 

 

【ふっふはは!…『平穏は、虚無の先に』】




色々伏線入れたかったんですが、これ以上はだらけるので、これで切りました

次回からは聖剣、木場のターン!タカシに迫る虚無の浸食とは…

お楽しみに!そしてここまで読んで頂いたこと、心より感謝致します!
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