ハイスクールd×d 仮初めと虚無   作:Third+s

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お久しぶりです!ようやく聖剣編、スタート!


彼の者訪ねて徒歩何分?

【よぉ、派手にやったなぁ?】

 

 

 

俺の前に現れた人影、それは余りにも見慣れた姿。だけど違うとすれば、"白髪に紫眼"な所か

 

 

 

【これで後戻り出来ない…すぐにテメエを"呑み込んでやるよ"!全てを消し尽くし、真の『平穏』を手にする為になあ!】

 

 

 

まるで独裁者のごとく高らかと放つ言葉は、自然とある事柄を彷彿させ、そのまま口にした

 

 

 

「お前、"『虚無の篭手』に引っ込んでた奴"だろ?」

 

 

【正解だが外れだ…俺は確かに俺という自我があるが"お前自身でもある"。お前の『平穏』の定義と俺の『虚無』の定義は未だ共にある!だからこそ俺はここにいる、お前に"触れる"ことさえ出来る程に、な?】

 

 

「っ!?ぐぁ…!」

 

 

 

次の瞬間、俺を形作った何かが俺の首を片手で締め上げ、宙に持ち上げた!こいつ、人の膂力じゃねえ腕力してやがる!

 

 

 

【俺は世界を"憎み、絶望"する。真なる平穏、平和とは孤独であり、『無』でなければならない!】

 

 

 

目の前の何かは紫炎を全身から噴き出し、陽炎のごとく形を歪ませた

 

 

 

【さあ終わらせよう…醜く栄えた人の世を。そして安らかな安息を求めて】

 

 

 

そして変わる。その姿を…俺の"恐怖"そのものに

 

 

 

【平穏は、虚無の先に…】

 

 

 

灰色の龍は一息で握力を強め、俺の首を締め上げ…俺は意識をーーーー、

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ、」

 

 

 

閉め切ったカーテンの隙間から、上がったばかりの日の光が差し込む

 

 

 

「また夢…か」

 

 

 

あれほどドぎつい夢を見て、俺の心は穏やかだった。慣れって恐ろしいな

 

 

だが俺にも慣れない事がある、それは

 

 

 

 

 

 

「すー、すー…」

 

 

「……さて冷静に行こう」

 

 

 

隣に覚えのある"裸の女"が寝ていることだ

 

 

血のような紅髪に男を惑わす完璧なプロポーションと白い肌、女を嫉妬すら許さない程の美貌を兼ね備えた『じゃじゃ馬姉さん』

 

 

名をリアス・グレモリー…悪魔貴族のご令嬢で、つい先日体張って助けた女だ

 

 

 

「んん…あらタカシ、起きてたの?」

 

 

「…まず一言、テメェ何してんだコラ」

 

 

 

いやさ、有り得んだろこの状況。てかこいつ常識を弁えろって意味分かってねえぞおい!

 

 

 

「ふふ、照れちゃって可愛いわね。そんなに女の子の裸が刺激的なのかしら?」

 

 

「既に一つ屋根の下に女二人、男一人の時点で気が狂っちまうよ!」

 

 

 

そう、俺が今言ったように、リアス・グレモリーはライザーとの騒動の後、突然俺の家に住むとか抜かしやがった。友達ならもっと近くで知りたいとか何とか…はい建て前!嘘丸出しだっつの!てかこっちが返事する前に荷物玄関に積みやがって!そのせいで数時間荷物移動で時間食う羽目になったんだぞ!?

 

 

…まぁ、こいつの真意については見て見ぬフリをしておく。…はぁ、アーシアもおかげさまで不機嫌ですよ。自意識過剰では無いんだが、アピールが露骨過ぎて嫌でも分かるんだよ!甲斐性無しで凡人の私めにどうしろと!?

 

 

ちなみにライザーなんだが、あいつは打倒オレを掲げて、眷属引き連れて一から出直すそうだ。次会う時が怖い…

 

 

 

「タカシさ~ん!朝練の時間ですよ、起きて下さ~い!」

 

 

「げっ、いつの間にそんな時間に!」

 

 

 

そしたらドアの向こうに起こしに来たアーシアが!畜生、よりによって今日は向こうの方が早かったなんて!

 

 

 

「分かったわ、タカシと私も準備するから待ってて頂戴!」

 

 

「ちょい待てやこのド阿呆!この状況で出しゃばるとか何考えて、て確信犯かそんなんだろ!ニヤニヤ笑ってるヒマあんなら服着ろやああ!!」

 

 

 

とまあ朝っぱらからじゃじゃ馬に振り回されていると

 

 

 

「タカシさん…」

 

 

「OKアーシアとりあえず落ち着け。今すぐこの馬鹿を連れて馬鹿の部屋にぶち込んでくれ」

 

 

「部長さんだけズルいです!私も脱ぎますから仲間外れは嫌です!」

 

 

「お願いだから話を聞いて後グレモリー地味に体重乗っけて来んなアーシア服を脱ぐなあああああああ!!」

 

 

 

朝っぱらから気力を削られる始末…これが今の『平穏』、俺が望んだちっぽけな世界の一部分である

 

 

 

 

 

 

 

 

「ド畜生め…朝練前からドタバタするとか勘弁だわぁ」

 

 

「むぅ…」

 

 

 

正門をグレモリー、アーシアと共にくぐり、グレモリーと別れた俺は、授業前から重い溜め息を吐いた。おまけに隣のアーシアはグレモリーをライバル視してるから、今朝の俺との腕組みでどっちつかずになってた俺に対してご機嫌斜めの様子…誰か胃薬持ってない?

 

 

 

「なあアーシア?あの状況って俺のせいなの?」

 

 

「知りません!」

 

 

「はぁ…乙女心は複雑たぁ言ったもんだよ」

 

 

 

とりあえず、今のアーシアには取り付くシマも無い。時間に解決してもらおう

 

 

しかも今日は年一の旧校舎の大掃除らしく、俺んちで部活の定例会をやるそうだ…どうか何も無いように!

 

 

 

「おっとアーシア、少しここで待て」

 

 

「え?」

 

 

 

そして俺は教室の前に来ると、アーシアをドアの二歩後方に待機させ、集中力を高める

 

 

 

「…さ、てと」

 

 

 

準備万端の俺は、出来るだけ普通にドアを開ける…そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とお!」

 

 

「はい甘い」

 

 

 

俺目掛けて跳び蹴りをかまして来る猿(松田)の姿が。もちろん迎撃準備は万端だから、難なくお猿の突き出した足を片手でキャッチして

 

 

 

「おはよう愚か者」

 

 

「げぶっふ!?」

 

 

 

勢いを利用して顔面から地面に叩きつけた

 

 

 

「お前"ら"も元気だな~」

 

 

「い"っ!」

 

 

 

だがこれで終わらないのがこいつらだ。ドアの死角に隠れた眼鏡君(元浜)をノールックで捕獲し、右手でアイアンクローを執行した

 

 

 

「はぁ、学習しろよお前ら…ってもう聞こえてないか」

 

 

 

普段から鍛えた腕力のまんま頭握り締めてたから、元浜は呆気なく全身痙攣を起こしながら事切れていた

 

 

 

「アーシア~もういいぞ」

 

 

「タ、タカシさん!松田さんと元浜さんが可哀想ですよ!"いつもいつも"暴力で解決してはいけません!」

 

 

 

そう、さっきの馬鹿コンビ強襲は今回に限らず、ライザーの件が終わってから日に日に増えているのだ。どうもグレモリーとアーシアが腕の取り合いしてる姿を堂々と見られているせいで、男性陣の嫉妬の的にされているらしい。噂では社会的に俺を暗殺しようとしてる阿呆共もいるとか…見付けたら即壊滅させてやる

 

 

 

「アーシア、こいつらならヒョッコリ元気になってまた来るからいいんだよ。てかこれで間違って関係無い奴が怪我したら大変だぞ?アーシアだって、俺が気付いてなかったら危なかったし。これ以上事態を悪化させない為にも、ボコボコにしてやる気を削がない限り皆が危険だ。もしもの事があったらって思うと…」

 

 

 

ちなみにこれは本心だ。こいつらの俺抹殺運動は徐々に過激になっていて、下手すれば周りに被害が及ぶ。理由もしょうもないんだが、俺が毎度返り討ちにしているのが気に食わないんだとか…だからと言ってやられる気も無いが

 

 

 

「平気です、だって…タカシさんは何があっても助けてくれますから」

 

 

「っ、…おう、任せな」

 

 

 

純粋に信頼されるってのは、何ともむず痒いもんだ。ちなみにこの無駄な闘争は思わぬ風向きを見せた

 

 

 

「おはよう、近衛君にアーシアちゃん」

 

 

「近衛君も大変だねえ、他人事だけど、頑張って!」

 

 

「先生とかに頼ってもいいんじゃない?協力するよ?」

 

 

 

何と男子共には受けの悪い俺を、女性陣がフォローしてくれている。余計火種が大きくなりそうな話だが、どうも生徒会と連携して動いてくれてるらしく、以外にも火種は大きくなるより、寧ろ小さくなっている。これには感謝だよマジで、何でこんな好意的なのかはさておき

 

 

 

ーーちなみに近衛は知らない。男子の襲撃をことごとく撃破する姿に惹かれたり、見た目のギャップが密かに人気となっている事実にーー

 

 

 

「…ぷぅ」

 

 

「え?何故不機嫌なのアーシア?」

 

 

「タカシさんの馬鹿…」

 

 

 

可愛らしく頬を膨らませているが、コロコロ機嫌が変わる理由に心当たりが無いので、何とも言えない

 

 

 

「おはようアーシア、相変わらず彼氏とイチャついてんねえ」

 

 

 

するとこの場に現れたもう一人の影、茶髪に赤縁眼鏡が特徴の女。こいつはアーシアとかなり親しい奴で…色々と警戒しないといけない奴

 

 

名を桐生という

 

 

 

「か、かかかかか彼氏!?」

 

 

「待て桐生、そんな爆弾発言すると周りじゃなくて本人がショートするから。てかテメェの差し金だろ!アーシアが風呂場に突撃して"裸の付き合い"だとかどっかズレた知識覚えてきてんのは!」

 

 

「あら、良く分かったわね。ちなみにどうだった?」

 

 

「そりゃ嬉し恥ずかし、とでも言うと思ったかバカもん!アーシアは純粋過ぎて何でもやっちまうんだよ!お前気を付けないとその内取り返しつかなくなるんだよ!」

 

 

「知ってるけど?」

 

 

「確信犯かよ!大体予想付いてたけど!」

 

 

 

この野郎はかなりの"やり手"なタイプで非常に御しにくい相手なんだよ。のらりくらりとして知らぬ間に隙を突かれる…俺とどこか似たタイプ故に厄介過ぎる!

 

 

 

「な、何だと!貴様アーシアちゃんとお風呂に!?」

 

 

「ぁ、あぅぅ…タカシさんの体、すっごく鍛えられててカッコ良くて、て私は何を言ってるのでしょう…うぅ」

 

 

「ち、畜生!アーシアちゃんのあんな所やこんな所を余すとこなく見た上に、本人はまんざらでもないだとぉぉ!?理不尽だ、何かが狂っているんだああ!」

 

 

「この前のミルたんの件も去ることながら、最近ではリアスお姉様に猛烈アタックを受けているとは!許すまじ、断じて許すまじいい!」

 

 

「ほら、取り返しつかねえじゃねえか…」

 

 

「男の甲斐性見せなさいよ。あんた結構モテてんだし」

 

 

「俺を見て良くそんなこと言えんな。こんな一般市民がモテるとでも?」

 

 

「「テメェぶっ殺すぞ!!」」

 

 

 

馬鹿コンビの突っ込みはスルーして、桐生は何故か溜め息、アーシアはまた可愛らしく頬を膨らませる。何故?

 

 

 

「とりあえず俺としてはこの集まりを解散してほしいんだが、っ!?」

 

 

 

だけど、次の瞬間全身の痛みを覚え、僅かに顔をしかめてしまった

 

 

 

「?どうしたの?」

 

 

「お前顔色悪くねえか?」

 

 

「あぁぁ、ちと腹痛でさ?トイレ行って来るわ」

 

 

 

少し早足で教室を出て、俺は屋上へ向かった。アーシアが呼び止めていたが、今はそれどころじゃない

 

 

 

「タカシさん…?」

 

 

「どうしたんだ急に、あいつ時々何かあるよな」

 

 

「追わなくていいのアーシア?」

 

 

「え、あぁ大丈夫です!だってタカシさんはもういなくならないって"約束"しましたから!」

 

 

「そんなこと言って他に取られても知らないわよ?だってあなた近衛のこと」

 

 

「わあ!桐生さんんんん!」

 

 

「「畜生!何であいつだけ!」」

 

 

 

近衛が去った後でも、彼女らの談話は続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!ドライグ…譲渡を頼む」

 

 

『Boost!』

 

 

 

俺はまだ人気の無い屋上で座り込み、『赤龍帝の篭手』で魔力を倍化させていく。…この具合だと、二度か

 

 

 

『Boost!』

 

 

「カウントストップ」

 

 

 

そして俺は制服のシャツのボタンを片手で乱暴に取り、胸をはだける

 

 

そこから見える胸の中心には、脈打つ『紫の宝玉』が埋め込まれ、その宝玉が"黒く濁っていた"

 

 

 

『Transfer!』

 

 

「はぁ、はっ…くぅ」

 

 

 

篭手から流れる譲渡のエネルギーが、次第に俺の全身に走る痛みを和らげる。…一先ず山は越えたけど、まだ問題はある

 

 

 

『…宿主、それ以上俺に虚無を使うのは危険だぞ?』

 

 

「…ドライグ、これは俺の問題だ悪いが危険でも付き合ってくれや」

 

 

 

ドライグの声が、少し怯え、心配するものに聞こえる。それはそうだろうよ…何せ

 

 

 

『"虚無で強すぎる『龍の波動』を抑え込む"ことは、すなわち虚無がお前を乗っ取りやすくなる要因なのだぞ?それはお前も望まぬ結果であろう?』

 

 

「だけどこのままにすれば、俺が"無理やり偽装した"人の手が元に戻る。となれば余計面倒が増える…ジレンマ、てやつだな」

 

 

『他にやり方はあるはずだ。例えばあのグレモリーの者や『女王』に頼んでみてはどうだ?』

 

 

「グレモリーは却下だ、あいつは心配性だから今後の事に支障をきたしかねない。朱乃さんに頼んでも、恐らくは時間が掛かる」

 

 

 

それに…"あの夢"も気になる

 

 

 

『…宿主、何を"恐れている"?』

 

 

「っ、鋭いなお前…」

 

 

『仮とはいえお前と共にある身だ。それくらい分かる』

 

 

「…そうだな、お前の言うとおり俺は"怖い"よ。いつ体を乗っ取られて…いつかのあの夢の通り、皆を殺すことになるんだろうと思うだけで…心底怖い」

 

 

 

しかもそれは確実に近付いている。これは勘じゃない、『確信』だ

 

 

 

『…何なのだろうな、虚無とは』

 

 

「はっ、長生きな天龍が言っちゃオシマイだぜ?」

 

 

『抜かせ、世界は未知で溢れている。知らぬ事もあって当然だ』

 

 

 

互いは静かに笑う。先の絶望を知っているからこそ、先の幸福を願って、今は空の笑みでも表情に出しておきたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら、こんな所でお休みだったんですか?」

 

 

「『っ!?』」

 

 

 

だけどその時、思わず気配を探るのを抜かっていた隙に、とある奴に見つかってしまった

 

 

 

「…あ、朱乃さん」

 

 

「…その腕、龍の波動が色濃く滲み出ていますわ。それでは元の腕に偽装しても効果がありませんわ」

 

 

「もしかしてですけど…聞いちゃってました?」

 

 

 

引きつった顔の俺は、恐る恐る聞いてみた。頼む、余計な事聞いてませんよう…

 

 

 

「うふふ、勿論…"初めから"」

 

 

「ダメでしたあああ!」

 

 

『クックック!諦めろ宿主、今回はこの女の方が一枚上手だったようだ』

 

 

 

暢気だなこの蜥蜴!隠し事がバレたら余計面倒が増えるんだぞ!さっきから全力逃亡したくて仕方ねえんだよ!

 

 

 

「タカシ君は本当に嘘が下手くそですわね。あなたの事ですから、きっとまた無茶をしているだろうって、部長が懸念していたんですのよ?まあ、その予想は大当たりでしたが」

 

 

「…はあ、参ったな。全部バレてるとは」

 

 

「いいえ?あなたが説明した『兵藤君の件』、『赤龍帝の篭手の件』以外に私たちが知っていたのは、虚無の篭手が暴走の危険性があり、それを抑え込むのが今の赤龍帝の篭手だった事だけですわ。部長は…いえリアスはそれだけの情報で、"あなたが必死に暴走を抑え込んでいるだろう"と結論付けたのですわ」

 

 

「マジっすか…オカルト研究しないで探偵やった方がオススメしますよ」

 

 

 

正直本気で驚いてる。あのじゃじゃ馬姉さんは、しっかり俺を見てただなんて…

 

 

 

『…理由を知っていて良く言ったものだ』

 

 

 

うるさいぞドライグ!

 

 

 

「皆、あなたに救われました…だから今度は皆であなたを救いたい。そう考えるのは、普通とは思いません?」

 

 

「救うつもりが殺されるなんて事になっても?」

 

 

「っ!」

 

 

 

だけど、ここで甘えれば、ダメだ。俺の問題は、絆だけで何とかなる代物じゃない

 

 

俺は出来る限り鋭く、範囲は小さい殺気を朱乃さんへぶつけた。これほどにまで分かり易い…『拒絶』。これが俺の出来る、せめてもの"優しさ"だ

 

 

 

「…うふふ」

 

 

「え?…っ!?」

 

 

 

だけど俺の拒絶は、あっさりと破られた。朱乃さん自身の胸に俺の顔を抱き寄せて

 

 

 

「ぶっ!?~、!ぅえっ、?」

 

 

「タカシ君、あなたはライザーとの戦いから"嘘だらけ"ですわ。守る為に、自分を強く見せて、ボロボロなのに平気な顔をする。そんな哀しい姿…私も見たくありませんわ」

 

 

「……」

 

 

 

包み込むような暖かさを伝える朱乃さんの体は、震えていた

 

 

 

「呆れる程に無力でした…私たちはタカシ君に辛いものを全て押し付けたも同然です!最後まで立ち続け、誰よりも先に立ち上がったのは…全てあなた」

 

 

「…そうしたのは、あなたたちが俺を変えたからだ。何も俺一人で全部出来た訳じゃない」

 

 

「しかし!」

 

 

「くどいですよ朱乃さん?人間ってのは時に損得無しに無謀な事をする生き物…俺自身、後悔は無いっすよ?」

 

 

 

震える朱乃さんからそっと離れ、正面から向き合う。その顔は、とても悲しげで、泣き崩れそうな雰囲気だった

 

 

 

「俺は負けません。例えコイツに呑まれかけようと、俺にはまだ"守るべき俺の世界"がある」

 

 

「っ!」

 

 

 

右手を前に出し、不敵に笑う俺を見て、朱乃さんはハッとする。その後に見せた笑みは、少し頬を赤らめていた…て待てよ

 

 

 

「…やはり、適いませんわ。その真っ直ぐな瞳、甘えたくなる程の安心感…全てが私を打ち震えさせて止みませんわ」

 

 

「は?ちょい待ち朱乃さん!?」

 

 

 

あるぇ!?何この急展開!シリアスからいきなり桃色展開だと!?朱乃さんが俺の胸に顔をうずめて体を密着…だああ止めて!色んな柔らかいのが当たってヤバい!

 

 

 

「何度でも、例え死してもあのフェニックスに、それも強化体となった彼に立ち向かい、勝ってしまったあなたの姿。今でも脳裏に焼き付いて、思い出すだけでも感じてしまいますわぁ…これって恋かしら?」

 

 

「感じるって何!?まさかボロボロに叩きのめされた姿見てドS撫子が覚醒したとか!?勘弁してっていうかそんな熱い眼差しと吐息を向けないで!顔が近いっすマジで落ち着かせてええええ!!?」

 

 

 

む、無理だ!こんなアダルトボディなお姉さんに誘惑されてまともになれるかあ!つか恋!?勘弁してくれ!アーシアにグレモリーの対処で手一杯なのにこれ以上増えられても甲斐性見せれねえって!…ん?何か忘れてるような?

 

 

 

「そんな可愛い反応されては…苛めたくなっちゃう」

 

 

「ぎゃああ!状況悪化!?」

 

 

 

そしたら朱乃さんが唐突に俺の左手を取ると

 

 

 

「はぷっ」

 

 

「いぃっ!?」

 

 

 

人差し指をくわえただと!?ひゃっ、しかも舐めまわして…

 

 

 

「ぁっ、うぉ…」

 

 

「あむ、んん…ぴちゃ」

 

 

「ス、ストーーーーップ!!」

 

 

「あん!」

 

 

 

あっぶねええええ!!?もうちょっとで昇天するとこだったああ!いや、悪魔だから堕落か?

 

 

 

「もう、照れなくてもいいんですのよ?」

 

 

「問題の着目点が違う!何このAV並の卑猥な行為!?いくら何でも度が過ぎます!」

 

 

「そう言われましても、"ドラゴンの気を抜く"にはこれが一番ですのに」

 

 

「…え?ドラゴンの、てホントだ。波動が弱まってる」

 

 

 

あの卑猥な行為にも意味があったとは…ただ非常に精神衛生状悪いが

 

 

 

「これからは遠慮なく言って下さいまし。一人で抱え込まず、誰かを頼るのも人というものでしてよ?」

 

 

「…はぁ、分かりました。どの道、俺のこの状態は全員に回るんでしょう?」

 

 

「勿論ですわ。後、乙女の気持ちを知っていて何もしないのは感心しませんわ…わたくしも含めて」

 

 

 

そう言った後、朱乃さんは悠々と屋上から去った

 

 

 

「…はぁ、ちっくしょう!お見通しってか?」

 

 

『諦めろ、あの女は勘が良い…それも尋常じゃない程な』

 

 

「振り回されっぱなしだよ。俺の日常は…」

 

 

 

その言葉に合わせるように、朝のホームルームのチャイムが鳴る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、てと…ここか」

 

 

 

そして今は放課後、ホントは真っ直ぐ家に帰ってオカ研の定例会議を我が家でやるんだが、俺はどうしてもやっておきたい事があるので、グレモリー達と別行動である家の前にいた

 

 

 

「はい…あらタカシ君!いらっしゃい!」

 

 

「毎度すいません、『兵藤』さん」

 

 

 

そう、俺は今『イッセーの家』にいる。ライザー戦の後から、一度も目を覚ましていないイッセーだが、その間は夢という形で記憶を共有しているらしい。それを利用して、俺はイッセーに帰るべき場所…つまり実家の家族の顔を見せる事で、意識を呼び覚まそうと考えたんだ

 

 

最初なんか酷かった。俺がチャイムを押した瞬間、真っ先にドアを開けてイッセー!!と叫んでこちらを見た母親は、酷くやつれて隈が目立っていた。父親も表情が堅く、最初は俺に縋る思いでイッセーの事を聞いてきたが、取り敢えずはクラスメイト兼転校生で、顔も合わせた事のない彼に会う為に、協力を申し出たという体で話をつけた。……本当はここにいるのに、皮肉だよな

 

 

 

「あまり期待はしてないけど…どうかしら、家のバカ息子について何か…」

 

 

「…すいません、まだ何も」

 

 

「そう…」

 

 

 

家に上がり、お茶を頂きながら、俺は母親と話す。この人は俺がここに通い始めてから大分顔色が良くなった。俺をイッセーのつもりで出迎え、色んな話をしてくれる。父親も、今はそれでいいと言って俺に任せてくれている。…家族、こんなにも暖かいんだな

 

 

 

(イッセー、早く戻って来い。こんなにも待ってる家族の為にも!)

 

 

「…そうだ、兵藤さん。イッセーの部屋を見てもいいですか?」

 

 

「いいわよそんなの。いくらでも見て頂戴!あの子がいなくなってから何も変えずに掃除は…してる、から…ぅっ、うぅ!…ご、ごめんなさい」

 

 

 

その涙を見て、とても胸が痛かった。彼を閉じ込めているのは、俺だから

 

 

 

「俺、先行ってます」

 

 

「え、えぇ…」

 

 

 

今は泣かせてあげよう。俺はそっと二階へ上がり、イッセーの部屋に行く

 

 

 

「にしても見るからに飢えてたんだなぁ…女に」

 

 

 

俺が見渡す彼の部屋は、至って普通だが所々いかがわしいものが垣間見える。母親が恥ずかしげもなくエロ本の隠し場所を全て暴露するもんだから、思わずイッセーに同情したものだ

 

 

 

「タカシ君?ちょっといいかしら?」

 

 

「はい?」

 

 

 

すると泣きはらしたのか、イッセーの母親が部屋を覗き、あるものを俺に見せた

 

 

 

「これは…アルバム?」

 

 

「そう!これはちっちゃい時のイッセーで、まだ可愛げがあったのよぉ?なのにいつの間にかあんなエロの権化になり果てて」

 

 

「は、はは…お察しします」

 

 

 

何をとは言わない。イッセー、お前も不敏だな

 

 

 

「あ!私夕飯の用意するから下に降りるけど、食べて行く?」

 

 

「いえ、長居もしませんし、家に部活のメンバーが待ってるので、その人等と食べるので」

 

 

「そう、なら好きな時に帰っていいわよ?それじゃあね」

 

 

 

そう言って母親は下へ降りる。ホント、良い人だよ

 

 

 

『相棒の過去か、中々面白そうだな』

 

 

「なんだよドライグ、興味あるのか?」

 

 

『それはそうだろ。これから共に戦う者を知ろうとするのは当然だ』

 

 

「そんなもんかね?」

 

 

 

俺はそんな軽口をドライグとしながら、一つ一つページをめくる。良いねえこういうの。俺のちっちゃい時の写真あったかな?少なくとも家には無いが

 

 

 

「ん?」

 

 

『どうした宿主?』

 

 

 

すると俺はあるものに目が止まる。それは一枚の写真、イッセーがブロンドの髪をした少年と写っているものだ…いや、正確にはその背後に立て掛けられた"一本の剣"に、何故か強く意識を引き寄せられた

 

 

 

『それは…どうやら聖剣だな』

 

 

「聖、剣?っ!!?がっ!」

 

 

 

だが次の瞬間、俺の視界をどす黒い意思が覆い尽くす!

 

 

 

【忌々しい剣が!】

 

 

【"王"も大したことねえなぁ、"それ"が無けりゃただの老いぼれだ!】

 

 

【俺に傷を付けるたあ良い度胸だ!】

 

 

【壊す、壊す壊す壊す壊す!】

 

 

「ぐっ、ぉぉおお…っ!」

 

 

『宿主!しっかりしろ!気をしっかり保つんだ!タカシ!』

 

 

 

だけど次の瞬間、俺の意識はブラックアウトした




突然襲った異常事態、一体何を示し、今後に影響するのか…次回に続く!



…リアルが充実するって、いいな
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