調が器だと気づいたif話   作:蓮它

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導入
自己満足のためにTwitterの投票使ったら、さも書くんだよな?ってなったから書かざるを得なかった。


【1】

「……え?」

 

それは不注意が招いた事故であり、何も起こらなければ階段から転げ落ちたことによる重傷とはいかないまでもある程度の負傷を負ったはずだった。そう、何も起こらなければ。だが、実際にはその何かが起きたがために、月読調は無傷で不注意のツケを払わずに済んだ。その何かは、月読調を中心として発現している、一般的にはバリアと呼称されるものであろうか。それにより衝撃は全てバリアが肩代わりして月読調はバランスを崩したような体勢で着地した。

 

「……ッ!痛くない?これは……何?」

 

いつまでも痛みが来ないことに月読調は不信感を抱き、恐怖から閉じていた目を開いた。そして、自身の周囲に展開するバリアに気付くも、これまで見たこと無いものであったために咄嗟に何かはわからなかった。しかし、それが自身の危機に反応して発現したものであろうことは明白であるために、唐突に現れたバリアに恐れを抱くことはなかった。

 

「私を守ってくれたのは確か。けど、こんなの初めて見た。あっ、フィー……ネ?でもフィーネの器はマリアだってマムが言っていたから違うと思う。でも、もしこれが本当にフィーネの力だとしたらマム達が嘘をついていることに。」

 

それが発現した理由を考えるうちにそれまで信頼してきたマムやマリアへの疑念が募っていった。湧き出た疑念を一旦抑え込んだ。

 

 

しばらくして月読調が自室で一人になれた時に、一旦考えるのをやめていた先ほどの事象へと思いを巡らし始めた。だが、思考が堂々巡りを繰り返し全く先へ進まなかったのか行動に移し始めた。

 

「いくら考えても何にも分からない。多分さっきのは私の危機に現れた。なら私が怪我をするときにも表れるのかもしれない。」

 

そうして先ほどのバリアが発動するのか確かめるため、月読調は机に手を置き、もう一方の手で机の上のボールペンを握りしめて振り下ろす自傷行為に臨んだ。

 

「はぁ……はぁ……、怪我しても治療すればすぐ治る。だから今は試さないと。」

 

躊躇したが、覚悟が決まったのか勢いよく振り下ろした。すると、予想したとおりに今度はボールペンを突き刺そうとした手の周囲に同じようにバリアが現れて、ボールペンが手に突き刺さるのを防いだ。そうして勢いを失ったところでバリアは痕跡を残さずに消失した。

 

「やっぱり出てきた。ということは、これは私を守るために出てきている。でもこれまではそんなことはなかったし、私の意思で出てくるものでもない。ならこれはやっぱりフィーネの力で、私はフィーネの器なの?」

 

再び思考の海に沈んでいき、そのまま月読調は夢の世界に落ちていった。

 

 

夢の中で月読調は自身が寝ている最中だと自覚し、明晰夢を見ていると理解できた。夢の中だと分かったとしても何らかのきっかけがなければ起きることはできないために、寝る前に考えていたことを思い出そうとした。その時唐突に背中に氷が入れられたような感覚が走った後に、右腕がいきなり動かなくなり、なにかに呑まれていくような感覚に囚われた。そうして呑みこまれていくような感覚はだんだんと全身に侵食していき、自分の意思で動かなくなる感覚も同時に広がっていった。

 

「嫌ッ!やめてッ!私の身体取らないでッ!返してッ!」

 

初めは困惑していたが、身体の半分以上が動かせなくなる感覚に囚われたところで、月読調は恐慌状態に陥り夢から覚めようと暴れた。だが、侵食は止まらず頭以外全て侵食され尽くしたところで身体の自由は利かないが、温かいものに包まれているかのようなことに気付いた。

 

「暖かい?何がどうなっているの?」

 

恐慌状態は覚め少し落ち着いたが、落ち着いたがために頭は回り自身の状況を確認しようとした。だが、身体はいまだに動かせず、ただ温かいものに包まれているといったことしかわからず、この状況に対しての諦観と温かいものに包まれているといった安心感から更に深い眠りに落ちていった。

 

 

月読調は起きてから、自身の身体が自分の意思で動くことを確認した。しかし、呑みこまれていくような夢のことをはっきりと覚えており、寝る前に考えた自身がフィーネの器かもしれないという考えと合わさり、月読調という器がフィーネによって浸食されているのではないかという考えに至った。一度そうであると考えてしまうと否定材料が思い浮かばずに、自身はフィーネの器であるという考えに囚われた。

 

「私がフィーネの器……。ならば私という人格はいつか消える。でもそれはすぐに起きるわけではないと思う。ならこのことはみんなに心配かけないように秘密にしないと。だから私がフィーネとして覚醒するまでみんなにばれないようにいつも通りの日常を過ごさないと。」

 

いつかフィーネに上書きされるだろうということは自分の中に秘め、他人に心配をかけまいとこれまで通りの日常を過ごすことを決意した。

 

 

 

そう決意してから数日たったが、頻繁に心ここにあらずといった様子になっていた。こうした月読調の様子に、最初はやけに考え事をしていると捉えていた暁切歌であったが、数日それが続くことに焦れたのだろうか直球に聞きに向かった。

 

「……らべ。調ッ!どうしたのデスか?最近ずっと悩んでいるように見えるデスよ。」

 

「……あっ、きりちゃん。大したことじゃないから大丈夫だよ。」

 

フィーネが覚醒するまで誤魔化すと決意したために、気が置けない仲である暁切歌にすら大したことではないと偽った。だが、暁切歌が悩み事をしていると表したように月読調の異変には気がついていた。

 

「きりちゃん、お買い物済ませちゃおう。」

 

下手に追求されると隠し通すと決めた決意が揺らいでしまうためか、話をずらし誤魔化した。誤魔化しきれずとも先延ばしにして心の準備を整えるために日用品の買い出しを提案した。

 

 

暁切歌の調を気遣った様々な呼びかけは、どのように煙に巻くかを考える月読調の気もそぞろな返しをされていた。そうした買い物が終わり、帰り道で月読調の悩み事が大したことではないと確信した暁切歌に再度問われた。

 

「調、本当に何があったのデスか?私には大したことではなかったこととは思えないデスよ。それとも私だと頼りないのデスか?」

 

「そんなことない!!……ッ、これは私の問題だから放っておいて。」

 

暁切歌に自身は役に立たないのかといったように問われ食い込み気味に返したが、反射的に返したために考えていた弁明は消えた。その上、声を荒げてしまったことへの申し訳なさが相まって、助けの手を振り払うようなことしかできなかった。

 

「そんな思い詰めたような顔の調を放っておくことなんてできるはずがないデスよッ!こうなったら教えてくれるまで諦めないデスッ!」

 

隠し事がばれてごまかしきれないと判断したのか、それとも追求のあまりのしつこさに根負けしたのか定かではないが、月読調は自身がフィーネの器であり既に侵食されつつあるといったことを明かした。

 

「落ち着いて聞いてね、切ちゃん。私、フィーネの器になったみたい。私たちそのために集められていたし、外れクジを引いちゃったみたい」

 

「……え?待って欲しいデスッ!フィーネの器はマリアだってマムが……。いえ、調を疑うわけではないのですがいったいどういうことなのデス?」

 

突然明かされた事でこれまで信じていたことをひっくり返したためか事態を把握できず、更なる詳細を求めるしかできなかった。

 

「多分ね、マリアがフィーネの器だっていうのは、これからのためのマムの作戦だと思う。私がフィーネの器になったっていうのは、見てて」

 

そう言うと、月読調はいきなり自身の目に親指を刺そうとした。

 

「何してるデスかッ!危ないデス……よ……?」

 

咄嗟に動きを止めようと腕を押さえたが、その時既に月読調の目と指の間にはバリアが発現し目に指が刺さることは無かった。だが、暁切歌はバリアを見て言葉を失った。

 

「それが調がフィーネの器だと言う根拠デスか……。」

 

「そう、だからいつか来るフィーネが覚醒して私という人格が塗りつぶされる時を心配させないように隠し通すと決意したんだけど、ごめんね。」

 

当初の予定では最後まで明かさず、いざその時が来るまでは気負わせないように秘めるつもりであったことをも明かした。そうして、今にも消えそうな儚げな笑みで、隠し通そうとしてきたことや、これから心配させてしまうことへの謝罪を述べた。

 

「そんなの嫌デスッ!調をフィーネなんかに渡すものデスかッ!調がいなくなるなんて嫌デスよぉ」

 

いつか調が消えてしまうという事で頭が一杯になり、泣きながらもいなくなってほしくないということを訴えかけた。




この後きりちゃんの行動次第で受け攻め変わるんだけど、投票ではネタにしてた「なぜか唐突に総受けのクリスパイセンが現れる」が半数占めてたから、この後の展開は皆さんのご想像にお任せします


ってことで……
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