転生するらしいのでチートを頼んだら自分で手に入れろと言われた件。   作:ゆらぎみつめ
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プロローグ

 

 

 

 

 

 空から降り注ぐ二十一の光の滴。運ぶのは災厄の種か、それとも……。

 

 とまあ、そんな感じにジュエルシードが海鳴市に降っているのを傍観しているわけだが。

 

 個人的な事情だが、これ以上の原作崩壊は流石に反感を喰らうのでしばらくは自重するというのがうちはカエデのスタンスである。既に手遅れだがポーズだけでも必要だろうという考えだ。

 

 見えざる帝国のユーハバッハとして、ジュエルシードが海鳴市に落ちてきて原作が開始した事を転生者達に伝え、注意を呼び掛けた。これからどうなるかは転生者次第。転生者達は水を得た魚のように原作介入を狙うのだろうが、既に原作は崩壊している。どうなることやら。どちらにせよ。保険はかけてある。深刻な事態にはならないだろう。

 

 それよりも、この地球に黒いもやに包まれた影が近付いてきている事のほうが気になる。未来視が阻害されるせいで何が来るかは分からないが、十中八九転生者に関連する何かだろう事は分かっている。これはいよいよ俺も本気を出さねばならない事態になるかもしれない。……というか、本気を出したい。転生してからずっと鍛えてきたわけだが、本気を出す機会など一度もなかった。一年ほど前に外の世界からやってきた転生者がいい具合に熟成してて楽しめたが、本気にはほど遠かった。せめてあれぐらいには楽しめる奴がいるといいのだが。

 

 

 

 

 

 その戦いを私は忘れない。

 

 一年前の事だ。

 

 見えざる帝国にて、陛下に相談があって会いに行った時の話。

 

 いきなり城全域に警報が鳴り響き、避難誘導が行われる中、動揺して避難に遅れた私は見たのだ。

 

 まるで長年探し求めていた好敵手を、ようやく見つけることが出来たかのような笑みを浮かべた陛下を。

 

 それからすぐに轟音と共に玉座の間が破壊され、陛下の眼前に黒い影のようなもやを纏った男が降り立った。その男から感じる、恐ろしい、今すぐにでもひれ伏したくなるような威圧感。アレは存在してはいけない。アレは理解してはならない。そういう類いの化け物だと理解した。いくら陛下でも勝てる筈がないと、私はそう思ってしまった。

 

「よお、お前が陛下って呼ばれてる親玉かあ?」

 

「そうだ。私がこの城の主、ユーハバッハである」

 

「へえ。ならよう、てめぇを殺せば俺がここの頂点てわけだよなあ!」

 

 瞬間、男の姿が消え、轟音。陛下がいた場所が後ろの城ごと消し飛んだ。

 

「はっ!どうしたあ!俺はまだ一割しか力を解放してねえぜ!ああ!?もうおっ()んだかあ!!」

 

 城の外。外の天候を再現した見えざる帝国の空の下、平時なら地平線まで自然が広がり、自然公園となっている一角が、何か巨大なものでも通過したかのように抉れ、大地に大きな傷跡を残している。

 

 男は宙に立ち、傷跡の先を確認した後、耳障りな声でげらげらと嗤う。

 

 ああ。終わりだ。全て終わる。こんな男がこの星を統べるなんて。どうしたら……。

 

 

 

 

 

 カチリ。

 

 

 

 

 

「あ?」

 

「へ?」

 

 いきなりだった。いきなり、全ては元通りになっていた。男は玉座に座る陛下の前に立ち、陛下は愉快げに男を見ている。

 

「どうした。何を呆けている」

 

「て、てめぇ!何をしやがった!?」

 

 現実に頭がついていかない。確かに陛下はあの男に。ならこれは?一体何がどうなって?

 

「時間停止か!?いや、催眠!?てめぇは確かに俺が殺したはずだ!?」

 

「時間停止と催眠か。お前はそれらに対する耐性を持っているだろう」

 

「な、まさか心を」

 

「精神防壁もあるだろう。私はお前の心を読んでいない」

 

「な、ならなんなんだ!」

 

「……ふむ。そうだな。こういう時説明するのは負けフラグらしいが、それも一興か」

 

 陛下が玉座から立ち上がる。

 

 それだけで男は後ずさる。

 

 未だにあの男からは威圧的なものを感じるのに、陛下からは何も感じない。感じないわけがないのに(・・・・・・・・・・・・・)

 

 そんな男に構わず、陛下は懐から一本の刀を取り出した。

 

「とある世界で手に入れた刀でな。斬魄刀というものだ。聞いたことはないか?」

 

 その刀は本当になんの変哲もない刀で、私の細腕でもぎりぎり持てそうな、普通の刀に見えた。

 

 だが、男にはまた別のものに見えたのか、一気に顔から血の気が引いた。

 

「その顔を見るに何らかの特典で理解したようだな。なら答え合わせのつもりで聞いてもらおう」

 

 刀を地面に突き立て、その手を離す。

 

「この斬魄刀の名は結姫(ユイヒメ)。解号は繋げ。その能力は」

 

 そして世界は無数に広がった。

 

「並行世界及び次元世界の接続だ」

 

 陛下の背後に万華鏡の如く色彩の変わる穴が無数に現れる。それはとても幻想的で、だからこそその力は恐ろしかった。

 

「元は物質同士を繋げるだけでここまで出鱈目な力を持ってはいなかった。だが、偶然並行世界や異世界に繋がる力を手に入れて進化した。宝石剣ゼルレッチ、カレイドステッキが今更役に立つとはな。人生とは分からぬものだ」

 

「な、何を言ってやがる」

 

「ああ。すまない。話が脱線したな。続けよう。この力は繋げるだけだ。繋げる事しか出来ない。それ以外に何の力も持たない」

 

「な、ならどうやってこんな事が出来た!言えぇっ!!」

 

「単純な話だ。この刀は繋げる事しか出来ないが、繋げる事に関しては他の追随を許さない。だからこの結姫で繋ぎ、私が力を振るっただけに過ぎない。ああ。どうやったかだが、簡単だ。適当に並行世界から情報をコピーし、この世界にペーストしたに過ぎない。ああ。ついでに、お前がこの星に来てから殺して回った転生者達もすでに蘇生済みだ。その証拠に、お前がここに来たときに出来た大穴も綺麗なものだろう」

 

 確かに、城は綺麗なままだった。傷一つない。言葉が出ない。陛下の力は底なしか。私でも目の前に今も男がいなければ、まるで何もなかったと勘違いしそうなほどにあらゆる痕跡が消えていた。

 

「あ、ああ……」

 

「どうした。まだ一撃を放っただけだろう。未来視も未來改竄も、世界破壊も世界創造も使っていないぞ!」

 

「あああああああああああああああああああああ」

 

「さあ、私の本気を引き出して見せろ!転生者!」

 

「あああああああああああああああ!!!!」

 

 その先を語るつもりはない。

 

 思い上がった愚者が、太陽に焼かれて地に落ちた。それだけの話だ。

 

「陛下」

 

「ーーお前か。どうした」

 

「はい。転生者達の間で……」

 

 そして私も、陛下(タイヨウ)に焼かれた愚者である。

 

 ああ、陛下。私は、貴方に全てを捧げます。永久に。

 

 

 

 

 

 

 とあるビルの屋上。海鳴市を見下ろす影が三つ。

 

「海鳴市。数日前にロストロギアらしきものが落ちた町。ここにあの人が……」

 

「姉さん」

 

「うん。分かってる。私達があの人を探す目的は……」

 

「アリシア……」

 

「大丈夫。全てお姉ちゃんに任せて!そしたらまた皆で暮らせるんだから。家族皆でまた……」

 

 かくして運命は収束する。

 

 迎える先は破滅か。それとも希望か。

 

 転生者達が集う町。海鳴市。

 

 全てはここから始まる。

 

 

 

 

 








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