転生するらしいのでチートを頼んだら自分で手に入れろと言われた件。 作:ゆらぎみつめ
最後のループに入った。
最後の世界は鋼の錬金術師の世界。
最終目標は神を手に入れる事。
……うん。ふざけんな。
お父様とか国土錬成陣とか色々難易度が高いわアホウ。
まあ、いつもの事だが。
仕方ない。さっさとこのループも終わらせよう。それで全てが終わるのだから。
最初のループ。
アメストリスのなんの変哲もない一般家庭に生まれる。
本当に普通の一般人の家であり、原作に介入する以前に介入する糸口すらないほど。
なのでとりあえずは錬金術を学び、今回のループは諦めて次のループに期待する事にした。
次のループ。
前回のループにて、前世の知識と生涯をかけて錬金術を研鑽し続けた結果、一流と言えるレベルに至った。ドラゴンボール世界でのループで科学技術を手に入れていて本当によかった。更に寿命で死に至る前に人体錬成を行い、錬成陣なしでの錬成を可能にした。
真理の扉に全身対価にされたが無事ループ。二度と味わいたくはない。
さて、今回も前回と変わらず一般の家庭に生まれた。流石に同じ家ではないが、一般家庭という意味ではそう違いはない。
今回のループも研究にあてるつもりだが、今回はシンに向かい、錬丹術を学ぶことにした。
気を読む技術はこれまでの世界で既に修得しているので、純粋に錬丹術のみが目的である。
……まあ、その前に砂漠を越えなければならないけどな。
三ループ目。
無事砂漠を越えてシン国に辿り着いた俺は、早速錬丹術を学んだ。
そのループ全てを錬丹術の研究に費やせば、錬丹術をなんとかマスター。
錬丹術をベースにした錬成陣の構築に時間を費やしたりと、とても有意義なループになった。
そして三ループ目の今回。とりあえず錬金術も錬丹術もある程度学んだが、この後どうすればいいのか分からなくなった。
一旦整理するとしようか。
最終目標は神を手に入れること。
手に入れるためには国土錬成陣を使い、星の真理の扉を開かなければならない。
維持には数千万単位の大量の賢者の石が必要。
賢者の石の材料は人間の魂である。
お父様含むホムンクルス達を欺き、上を行かなければならない。
……ふむ。
ホムンクルス達を出し抜くのもそうだが、賢者の石を作り上げるのも難易度が高い。
独学で賢者の石を作るのはまず不可能。
エドワード・エルリッククラスの天才であれば可能だろうが、俺には無理だ。
数百ループあれば可能だろうが、確実に夥しい数の犠牲が必要になる。
しかし最後まで血生臭いのはちょっとなあ……。
ならばどうすればいいか。
考えろ。
考えなければならない。
原作主人公エドワード・エルリックは考えて答えを見つけ、あらゆる困難を乗り越えた。
そう、己を魂一個分の賢者の石として使うような事をしてまで。
何千ループも繰り返した俺が出来ないと泣き言を言うわけにはいかない。
……ん?
ーーそうか。その手があったか。
そうだ。俺は賢者の石を持っているじゃないか。正しくはその原材料だが、確かに持っている。
ならば、迷うことはない。
俺は俺自身を対価に神を手に入れよう。
それこそが俺が辿り着いた真理だ。
数百ループが過ぎた。
神を手に入れるために己自身の魂を賢者の石に精製する研究を続けてはや数百ループ。独学での賢者の石の研究は困難を極めたが、幾度もの失敗と死を繰り返してようやく完成した。
俺自身を賢者の石にするので一歩間違えれば死ぬため、必要な分だけを抽出して精製するのは至難であった。
だがしかし、俺にはループがある。
例え前のループで四肢を失っても次のループでは何事もなく五体満足で生まれるし、知識も引き継げる。気力が続く限り何度だってやり直せる。
そしてそれは魂も例外ではない。
完成した錬成陣で魂を半分賢者の石に精製しても、次のループにはすっかり元通り。
それを見てある事を閃いた。
俺はすぐさま精製した全ての賢者の石を取り込んだ。
元が自身の魂であるためか、特に拒絶反応は起きなかった。
そして今度は取り込んだ賢者の石を再び賢者の石として抽出し、魂も再び半分を残して賢者の石として精製して抽出した賢者の石と合わせてアイテムボックスに仕舞う。本当にアイテムボックスは便利である。ループを越えて生物以外ならなんでも持ち越せるのだから。それに盗まれる心配もない。本当に便利だ。
次のループ。俺の魂は一人分より僅かにだが、確かに大きくなっていた。
一度でも加算されたもの、鍛えたり手に入れたものなら、例え失ったとしても次のループにはその分を加算した状態でループする。
これまでのループで既に知っている仕組みである。
それに活路を見出だした俺はループのたびに、前のループで精製した賢者の石を一度全て取り込み、すぐに精製出来るだけの賢者の石を精製し、アイテムボックスに保管するのを繰り返した。何度も何度も。毎回感覚で一人分の魂を残して精製するのは神経がすり減るような作業だったが、それだけの価値はあった。
なんせ、増大する魂の総量を賢者の石に換算して簡単に計算したら恐ろしい数値を叩き出したのだから。
最初の俺の魂を1とし、その半分である0・5を賢者の石にし、アイテムボックスに入れて次のループで取り込む。すると次のループでは魂の総量が1・5人分となる。更に半分の魂0・75を石にして次のループで取り込み、2・25人分の魂となる。そしてここから安全をとって一人分の魂を残して1・25を精製し、次のループに取り込んだ。その作業をループにして百ループは繰り返す。
その結果、
198070406285661000000000000000人分の賢者の石を手に入れる事が出来た。
漢字にすると十九
五千万人の賢者の石ではしゃいでいたお父様が可愛く見える数字である。
正直やり過ぎたかもしれない。
だがまあ、これで賢者の石は十分な数を手に入れた。過剰かもしれないが、うん。いいとしておこう。
次からはようやくホムンクルス達の相手だ。
腕が鳴るな。
百ループ後。
お父様含めた全てのホムンクルスを倒した。
原作知識を頼りにホムンクルス達が単独になった時を狙い闇討ちし、各個撃破。
グリード、ラスト、グラトニー、エンヴィー、スロウス、ラース、プライドと原作のタイミングで次々に撃破していく。能力欲しさに七体全て取り込んでみたが、荒ぶる魂が気持ち悪くてすぐに吐き出した。魂の格が違いすぎて内在闘争に負ける気は全くしないが、狂乱する魂と同居するなんぞあまりいい気分ではない。原作のリン・ヤオとヴァン・ホーエンハイムを尊敬するよ。マジで。
最後に残ったお父様だが、国土錬成陣を使う前に賢者の石のごり押しでボコボコにしてから取り込み、賢者の石をその場で解放して消滅させ、フラスコの中の小人の状態にまで弱体化したのを外に解放して始末した。
これでホムンクルス達の力を全て手に入れる事が出来た。
次は神だが、さてどうするかな。
次のループ。
七体のホムンクルスの力を手に入れた。今までも賢者の石を使えば似たような事が出来たが、それよりもちゃんとした形の能力として手に入れたような感覚がする。
ついでにお父様の力も手に入れたため、国土錬成陣を逆に利用する事も可能になった。
そして、膨大な数の記憶も手に入れてしまった。
恐らく取り込んだクセルクセス人達の記憶だろう。
これはいらなかった。正直ループを繰返していなかったら精神崩壊していたかもしれないが、数多のループを越えてきた俺にはあまり意味がない雑音だ。危ないなホント。好奇心で賢者の石なんか取り込むんじゃなかったよ。お父様の知識はありがたいけどな。
さて、神を手に入れる方法だが、とりあえず原作でグリードがしようとした横取りを俺もする事にした。
神を手に入れたお父様を相手に戦うのは厳しいからな。
やり方は簡単。人柱やお父様達が集まる地下の空間に気配を消して侵入。お父様が国土錬成陣を発動し、中心に立つ瞬間を狙う。具体的にはグリードが失敗した直後、お父様が勝利を確信した瞬間、背後から最速のホムンクルスの力でぶっ飛ばして中心を奪う。
するとなんという事でしょう。
国土錬成陣が発動し、神を手に入れる事が出来ました。
当然アメストリス人の賢者の石は即座に解放し、神だけを内側に残す。
お父様とプライドをさくっと倒し、唖然とする原作キャラ達を前に、俺は堂々と宣言する。
「神はこのダンテがいただいたわ!」
尚、最後のループは女性として生まれたことをここに記す。
これにて無限ループは終わりを告げた。
永い永い時を生きた。
正直転生も憑依もお腹一杯だ。
だがこれで未だ特典を手に入れただけという。
うん。ふざけんな。
本当に神様の考えることは分からない。
だけどまあ、次で正真正銘の最後だ。
精々最後の生を楽しむとしようか。
「やあ、久しぶりだね」
「神か」
「おめでとう。これで君は転生特典を全て手に入れ、無事転生する事が出来る」
「正直もう転生はお腹一杯なんだが?」
「おいおい、まだ転生特典を手に入れたばかりじゃないか。まだまだ満足してもらっちゃ困るよ」
「と言われてもな」
「なに、これから転生する世界は君を退屈させはしないよ」
「どうだか。神の力を手に入れ、世界の創造も破壊も可能な俺を満足させられるものがあるのか?」
「あるさ。なんせ、君の同類がうじゃうじゃいる世界なんだから」
「転生者か!」
「いぐざくとりー。まあ、君みたいな方法で力を手に入れた奴はいないだろうけどね。しかし転生者の力は君を殺しうる可能性を秘めている。素晴らしいと思わないかい?」
「悪くはないな。ループしない、正真正銘最後の世界だ。それくらいが丁度いい」
「よし。じゃあ早速転生させるね!」
「ああ」
「ちなみに転生先の世界は魔法少女リリカルなのはだから」
「ああ。ん?魔法少女?」
「そ。魔法少女」
「魔法少女かー」
「うん。それと君にもう一つ転生特典をあげよう。というよりこれも君が手に入れた転生特典だから、返すというのが正しいかな」
「うん?」
「君が今までのループで築いてきた絆。それを特典としよう。君専用の英霊の座みたいなものだね」
「え?」
「つまり君が絆を結んだ相手をサーヴァントのように召喚したり会話出来るようにするわけだよ。良かったね。普通のサーヴァントと同じく再召喚も出来るから、永遠に一緒にいられるよ」
「な」
「いやあ、リアル修羅場なんて中々拝めないから今から楽しみで仕方ない」
「ま、待て!」
「それじゃ、またね。転生者君。次に会う時を楽しみに待っているよ」
「うわあああああああああ!」