転生するらしいのでチートを頼んだら自分で手に入れろと言われた件。   作:ゆらぎみつめ

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それぞれのプロローグ

 

 

 

 

 

 

 因果応報とはこういう事を言うのだろうか。

 

 俺は神様から貰った特典である英霊の座に入った。

 

 と、思ったら鎖に絡め捕られて椅子に座らされ拘束。

 

 目の前には久しぶりに再会した、もう会うことはないと思っていた愛しい相手。

 

 ×三桁。

 

 あ。死んだ。

 

 これからどうなるのかと戦々恐々としていたら、何やら内輪揉めというか戦争が勃発。

 

 第一次正妻戦争開始!みたいな状況に。

 

 戦える力を持つものは力で戦い、持たぬものは舌戦を繰り広げ、特に拘るつもりのない者は俺の側でヤジを飛ばして観戦したりと、正直どんなカオスと言いたい。だが言えない。言ったら刺されそう。

 

 

 

 

 

「ということがあったんだ」

 

「……まあ、自業自得だな。というか何故オレのところに来た、カエデ」

 

「いや、うん。お前ならという安心感があってな」

 

 第一次正妻戦争から少し経ち、別の座にて。

 

 この英霊の座は個室みたいな個人の領域と、大広間みたいな座にいる者達で交流出来る場所に分かれている。

 

 ここはその個人の領域であり、主に合わせてか庭付きの木造の屋敷が存在するだけの世界。

 

「なあ、扉間」

 

「相変わらずだな。お前は」

 

 千手扉間。それが主の名である。

 

 ちなみに今の俺の姿はとあるループにて、政略結婚で千手扉間に嫁いだうちはマダラの妹。うちはカエデその姿である。容姿は白髪に赤い瞳とアレだが、顔はいいから美人の範疇には入るだろう。うむ。

 

「神とやらからある程度の説明と、他のループでの記録も一部貰っているから、浮気とも少し違うのは分かる。別ループ。いわば来世まで縛るつもりもないからな。まあ、女共は知らんが」

 

「あはは」

 

「お前は女なら一途なのに、何故男になったらなったでだらしないんだ。……気持ちは分からんでもないが」

 

「だよね!」

 

「嬉しそうにするなこの阿呆が!」

 

「ひゃー」

 

 

 

 

 

 座にいる彼ら彼女らの記憶は、他のループの記憶もあったりそのループの記憶しかなく、記録でしか分からなかったりとバラバラである。恐らくは一線を越えたループの記憶だけがあり、それ以外の記憶は記録という形でアニメや漫画みたいに閲覧出来る情報でしかないのだろう。

 

 ちなみに第一次正妻戦争の結果だが、結局独占は駄目という結論が出され、ぶっちゃけ影分身やら何やらで全員を一度に相手出来る(意味深)という事から一応は収まった。が、一部が外に出たがったので問題がなければ召喚して見えざる帝国に、海鳴市には影分身同伴ならと条件をつけて。うん。疲れたよ。

 

 

 

 

 

 私はその日、運命に出会った。

 

 私が気味の悪い三人の男の子達に囲まれて困っていた時、助けてくれた猫。もとい男の娘に出会ったのが始まりだった。

 

 その男の子は魔法が使えたり猫に変身したり魔法少女に勧誘したりと訳が分からないし、家が無いから居候させてと言ってきたり、とにかく意味不明だった。

 

 けれど、私はそれ以来一人ぼっちじゃなくなった。

 

 親を早くに失って、父の友人が後見人になってくれたけれど遠くにいて一度も会ったこともなく、付き合いのある大人といったら病院の担当医である石田先生ぐらい。足のせいで学校にも行けず、一人で過ごす日々。

 

 そんな日々も彼が来てからは変わった。

 

 というか変わり果てた。

 

 気が付いたら庭に妙にふてぶてしい黒猫がいたり、屋根裏からおかっぱ頭の忍者みたいなお姉さんが現れたり、白い仮面を被った黒いのがいたり、クローゼットの中から出所不明の大金が雪崩れてきたり。

 

 ……うん。

 

 極めつけに、私の足は家に前からあった本の呪いだとかで魔法であっさり治してしまい、四年経った今では足のリハビリもとっくに終わり、復学して普通に学校に通い、今では皆勤賞更新中である。

 

 なんだろう。なんか違う。なんかこう、な?例えるなら魔法少女の第二期の薄幸のヒロイン枠でその健気さでファンのハートをがっちりキャッチする感じだったのに台無しにされた感じがするんよ。

 

 なんやろな、これ。

 

 まあええわ。とりあえずそろそろ学校だからあの子呼びに行こか。

 

 庭にある物置小屋があの子の工房。魔術師的にはかなり重要な場所らしいけど、あの子にとっては鍛練に使えればどこでもいいらしく、選んだ理由も適当だった。

 

 物置小屋の扉を開け、中を覗くとそこには美少女に見えるが実際は男の子な私の同居人にして命の恩人。そして……。

 

「カエデ」

 

「ん。もう時間か」

 

「いつも熱心に鍛練して偉いなー」

 

「必要な事だからね。欠かせないよ」

 

 薄手のシャツが汗で肌に張りついて色っぽいというか、……エロいなあ。これほんまに私と同い年の小学生なんやろか。

 

 うちはカエデ。

 

 不思議な居候。そして私の大切な家族。

 

「シャワー浴びてくるから待ってて」

 

「うん。待っとくなー」

 

 今日も私の一日は始まる。

 

 願わくば、こんな日々がずっと続きますように。

 

 

 

 

 

 あの日以来、何もかもが上手くいかない。

 

 あの男。ユーハバッハと名乗る転生者に出会ってからだ。

 

 一度目は初めてあの男と邂逅した時。

 

 神から与えられた力、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を全力で振るい、戦った。

 

 だが届かなかった。

 

 無造作に振るわれた腕に全ての財を弾かれ、反応すら出来ずに地に沈められた。

 

 二度目はこの力のオリジナルである男、英雄王ギルガメッシュと戦った時。

 

 啖呵を切り、力を振るって襲いかかったが、気が付いたら無数の財と共に地面にひれ伏していた。

 

「その力は誰のものか、よもや忘れたとはいうまい。貴様は強くなったのではない。力に溺れ、己を見失っただけの雑種に過ぎん」

 

 俺はその言葉に何も返すことが出来なかった。

 

 強くなったのではない。そうだ。俺は王の財宝を手に入れた。魔力もSSSランク。デバイスだって。

 

 だがそれは後付けの力だ。それを取ったら俺には何が残る。

 

 同じ王の財宝を持つ英雄王には手も足もでず、魔力SSSランクなんて転生者にはざらにいる。デバイスも同じだ。ならばそれ以外に、他よりも秀でたところがあるかと聞かれて俺は、答える事が出来るのか。

 

「己の欲するものすら忘れたか。哀れなものよ。目障りだ。疾く去れ」

 

 俺は……。

 

 

 

 

 

 魔法少女リリカルなのはの世界に転生して早八年。

 

 色々あったが今日まで無事に過ごすことが出来た。

 

 原作がもうすぐ始まるが、どうやらこの世界は既に原作崩壊しているようだ。

 

 俺も原作キャラ達と同じ私立聖祥大附属小学校に通っているからよく分かる。

 

 高町なのはは原作では運動神経が切れているとすら言われていたのに、この世界の高町なのはは違う。月村すずかとドッヂボールでキリングゾーンを作り出し、かけっこでは常に一位。何より暴漢すら一瞬で制圧出来る。戦闘民族高町家として覚醒していてもう笑うしかない。OHANASHIすれば分かってくれるって、ええ?

 

 更に八神はやてが普通に二本の足で通学しており、原作キャラ達と普通に友達グループを形成している。まさかの二期終了である。恐らく原因は八神はやての横にいる白髪赤目の美少女……みたいな男子。うちはカエデ。名前的にどう考えても転生者であり、八神はやてが今現在元気に学校に通えるのはこいつのお陰だろう。いくら原作介入は自己責任とはいえ、思いきった事をする。そして八神はやてと同棲してる確率が非常に高い。というかほぼ確定だろう人物。当然、そんな存在を目障りに思う転生者は大勢いるが、直接的に危害を加えるのは決まりに抵触しかねないから出来ず、話し合いにしても、それではいそうですかと頷く相手ではない。決闘と称して見えざる帝国の修練場でちゃんとしたルールを決めて正面から立ち向かった奴もいたが、開幕表蓮華で犬神家状態になってやられていた。ヤムチャしやがって。

 

 とまあ、既に原作崩壊済みで先が見えなくなってしまったが、人生そんなもんだ。とりあえず原作の時にフェイト・テスタロッサがトラウマを作らないよう祈っておくとしよう。

 

 

 

 

 

 転生して早四年。

 

 今までのループで手に入れてきた力は、大分今生の体に馴染んできた。

 

 転生当初はまだ制御の甘いところがあったが、今ではほぼ完全に制御出来る。転生者達から奪った特典も、使えるものは取り込み、己の血肉に還元してきた。今なら片手間で世界創造出来るやも知れん。やる意味ないからやらないけど。

 

 転生者といえば八神はやての事だ。普通に闇の書を夜天の書に修復してしまい、完全に原作が壊れてしまった。居候しておきながら見て見ぬふりは出来ず、ちょちょいと次の日には修復しちゃったわけで。色々あったが、原作介入を禁止しているわけではなく、責任を取るつもりがあるならよほどモラルに抵触しない限りは黙認。というのが見えざる帝国に住まうユーハバッハの判決である。酷い自作自演を見た。それに居候の身でありながら見逃すというのはモラルに反しないかとも訴えたからだろうがな。しかしそれでも納得しない奴はいるわけで、脅されたり決闘を申し込まれたり、色々面倒だった。

 

 面倒といえば八神はやての後見人であるギル・グレアムだ。正確にはその使い魔であるリーゼロッテとリーゼアリアだが。はやての家に居候を始めて少し経った頃、一人で外出した際に警告と襲撃を同時にかましてくれた猫共である。力を使うまでもなく、あっさりと撃退したが、その後もしつこかった。仕方なく闇の書は修復した事を伝えるも、一切信じず。まあ、当然か。はやての足が治り、普通に学校に通うようになっても、何故か俺ばかりを狙ってきた。あまりにしつこいのでシュールストレミングを顔面に叩き込んだら、ぴったりと襲撃は止んだ。……代わりに遠くから光のない目で見つめてくるようになったが。

 

 そういえば、地球の転生者達はとりあえず管理下に置いたが、他次元の世界にはまた別の管理組織が存在するみたいで手を伸ばしきれていない。規模も地球のより大きく、転生者の数も倍以上存在しているみたいだが、ミッドチルダにある時空管理局と裏で繋がっているらしい。……原作の管理局の暗部を知る限り、ろくな事にはなっていないだろうが。

 

 何らかの特典か、ミッドチルダ方面の未来を見通せないのも余計に不安を煽る。だがまあ、来るなら丁重に迎えるだけだ。転生者か原作キャラ。どちらに転ぶにせよ。

 

 

 

 

 

 


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