もしものネギ先生   作:...

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続きをという声があったので、一話だけ書いてみました。


ネギ先生

 ネギが教師となってから数日が過ぎた。

彼の苦難は、早速始まっていた。

 

(綾瀬夕映さん、神楽坂明日菜さん、古菲さん、佐々木まき絵さん、長瀬楓さん……通称バカレンジャーか)

 

 嫌な通称を付けられたものだと苦笑する。

だが先日行った小テストの結果を見れば笑いなんて引っ込んでしまう。

 

(本当に酷い点……授業を聞いてないだけなら、軽く教えればわかるかもしれないけど)

 

 正直に言って教えるのはネギにとって苦ではない。

中学の勉強は、どんなに酷くても頑張れば出来ることだとネギは考えている。

素養で決まってしまう魔法とは違い、勉強や研究といった知識、頭脳を用いるのはある程度どうにか出来るものだ。

一定を超えると才能だとか素養というモノは確かに必要な場面もあるが、それはそれこれはこれ。

 

「基礎が分かってない場合は、少し前の勉強から教えていかないとなぁ」

 

 どちらかというと問題は時間である。

前の授業を聴いていないと、次に繋がっている授業が分からないのは当たり前。それを追っていくのはそれなりの時間を要する。

 

(特に神楽坂さんは朝早くからバイトをしてるって話だし、長時間拘束するわけにはいかないか……宿題も加減するつもりはないけど、あまり量を出すのは良い手段とは言えないな)

 

 んーっと、考えだした結論は一つ。

 

「やっぱり補習授業かなぁ」

 

 補習というのは高校から行われるのが通例であり、中学までは成績がどの程度でもあまりそう言うのは行われない。

ただ、麻帆良は大学までエスカレーター式であり、そのためか中学から補習授業の行使がゆるされているのだ。

 

「根気強く頑張んないと」

 

 本来の2-A教師は高畑・T・タカミチだが、彼は大抵留守にしている。

凄腕の使い手として世界中に引っ張りだこな彼は、きっと今も誰かを救うために頑張っているだろう。

そしてネギは高畑と同じ英語教師。彼が留守にしている分、自分が補わなければ。

 

 

*

 

 

「と、いうことで。小テストの結果が悪かった5名は補習を受けてもらいます」

「え!?そんなぁ」

「ハッハッハ………マジアルカ?」

「仕方ないでござるな」

「……」

「うそぉ、私放課後部活ぅ」

 

 補習と言われてやる気は出ないだろう。まぁ予想通りの反応だった。

 

「部活の先生には話を通してありますし、補習の後の小テストで6点以上取れれば、補習の時間も週一にしますから」

「え、本当!?」

「はい」

「ちなみに取れない場合はどうなるのです?」

「そうですね……週四日、最低一時間は補習を受けてもらいます。こちらも小テストで……7点取れれば週一にしましょう。満点か9点取った場合は即補習終了ということでどうでしょう?」

「9点以上で終了の補習でござるか」

 

 今回の補習の目的は勉強のレベルアップもそうだが、出来るだけ全員に勉強する機会を増やすためでもある。出来れば、宿題くらいは自分で時間を作ってやってもらいたい。

 

(何人か見せてもらって提出してるのは分かってるんですからねー。まぁ出さないよりかは、問題に目を通してる分マシなのかもしれませんが)

 

 そうして始まった補習授業だが、意外や意外全員の飲み込みが悪いというわけでもなかった。

それどころか、綾瀬夕映に至っては初日で9点を取り、一発終了をかましてくれたほどだ。

 

(古菲さんや長瀬さんも8点……もう明日か明後日にはこの二人も終わるかな?)

 

 古菲はそもそも外国から来ていることもあり、日本語を学んだ経験と要領を聞き、その応用で英語も教えれば意外とスムーズにこなしてくれた。

というか、この二人は日夜行っている修行の分勉強していないだけだろう。

 

(あー、そう言えば修行場所、どうしよう……)

 

 麻帆良は広く場所には困らないのだが、人払いをして魔法を使える空間はさほど多くはない。

森林地帯は長瀬楓が修行をしているし、広い場所は大抵運動部が使っている。

 

(もう放課後は諦めて、深夜遅くか朝早い時間にするかな)

 

 人のいない時間に場所を探し、侵入阻害と人払いの結界を掛ければ大丈夫だろう。

放課後やることをやって、一眠りした後に特訓するのが一番だと考える。

 

(さて、現実逃避もこれくらいにして、今の問題は……)

 

 チラッと教卓から今問題の生徒を見る。

 

「うぅぅ」

「うーん……?」

 

 神楽坂明日菜に、佐々木まき絵である。

 

(佐々木さんは多分そろそろ合格ラインに到達しそうだけど、神楽坂さんは……)

 

 何度かテストを持って来て貰ったが、結果は4点にも満たないモノばかりだった。

 

(理解できてないわけじゃなくて、多分覚えきれてないんだろうな……ゆっくり教えるのが一番いいタイプだ)

 

 彼女には悪いが、こればかりは頑張ってもらうしかないだろう。

パンっと掌をたたいて音を出し、二人の意識をこちらへ向けた。

 

「今日はこのくらいにしましょう。行き成り根を詰めてもいけませんからね」

「ふあー」

「たすかった~」

「ちなみに宿題も用意してあるんですが……」

「「え?!」」

「……今日は集中して頑張ってくれたので、無しにしましょう。お疲れ様です、二人とも」

「「よ、よかったぁー」」

 

 心底安心する二人を見て、少し微笑んでしまうネギ。

こう言っては悪いが、何だか小さな子供を相手にしているようだ。

 

(なぁんて、年下なのは僕の方なのにね)

 

 この大人びた思考は暗示のおかげだし、この短い間に教師としてプログラムを立てるように出来たのも、他の先生の行動を観察し、生徒の反応も見て学んだことを頭の中で創り上げたからだ。

そして学んだことを暗示に織り交ぜ、年上の余裕を持ったまま、生徒に反感が少ない教師の行動がとれるように更新し続けている。

 

(他の人も成績が落ち始めるような人が居たら補習を受けて貰わないとな……とはいえ、それは期末まで一ヵ月きってからにしよう)

 

 余り急に大人数相手にするのはネギにとってもキツイモノがある。

今まで基本単独行動ばかりだった彼にとって、一クラス……それも本来は年上の人相手に教えるというのは、かなりのプレッシャーでもあった。

 

「……」

 

 だが、そのプレッシャーはネギ・スプリングフィールドにとって動きを阻害するコトにはならない。

幼い頃からトラウマを抱え、憧れに託され、追いかけ続ける彼にとってある意味刺激となっていた。

 

 

*

 

 

 そうして少しずつ2-Aの成績は上がっていき、万年最下位だったA組は3位まで上がることになる。

ちなみに最終課題が最下位脱出と言われたネギは大して慌てる様子もなく、結果にしても頑張ってたからなぁと頷いていた。

A組は対照的にどんちゃん騒ぎとなり、パーティーまで開くほどになった。気付けば他クラスまで巻き込み、先生達が止めようと奮闘することになるのだが、何気にネギはクラス側につくという茶目っ気を見せ、どんどんクラスや麻帆良に馴染んて行った。

 

 そして、3年生に進級しネギも正式な教師として扱われることとなって数日後……おかしな噂が流れることとなる。

 

 

 ――桜通りの吸血鬼

 

 

 その噂による原因は夜の桜通りで急に倒れる人がおり、その人の首元に噛み痕があったという話からだ。

 

(吸血鬼、か)

 

 魔法使いの間では吸血鬼というのは事実存在する怪物として伝えられている。

それが現れたというのなら、それが生徒を襲うというのなら対処するのが教師であり魔法使いだ。

 

「………さて、どうするかな」

 

 まずは、夜の警戒から始めた。

そしてそこで出会ったのは………。

 

 

初めまして(・・・・・)、ネギ・スプリングフィールド?」

「貴女は………」

 

 

 金の長髪を靡かせる黒コートに身を包んだ少女がいた。

彼女は、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

3-Aの所属生徒であり、彼女は―。

 

 

「私は、悪の魔法使いさ」

 

 

 生徒に害する吸血鬼ならば、護るために滅ぼそう。変質者なら麻帆良から追放しよう。そう考えていたネギの前に現れた吸血鬼(生徒)は、愉し気に微笑んでいた。

 




保護対象であり討伐対象として現れたエヴァンジェリンにたいし、ネギの選んだ行動とは……?

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