火事のあと無事に調査に出た二人が戻ってきたはいいものの、カルデアまた別口で問題が発生していた。
自分がおかん属性であったことを感謝するぐらいには衝撃的なものが出てきてしまったのである。
「ロマン、ちょっとそこに正座」
「え、」
「正座」
「アッ、ハイ……」
机の上には押収したお薬。私が見つけたのは医務室においてあった分だけ。プライベートルームは猫耳っぽい飾りをつけたアサシンちゃんに頼んで取ってきてもらった。
嫌な予感はしてた。したけどまさか本当に持っているとは思わなかったんだ。
「これは?」
「き、気つけ薬で……」
「薬事法では?」
「違反薬物ですごめんなさい」
この男、仮にも医療セクションのトップである。にも関わらず、このヤバいブツを使ったのだ。しかも結構な量が出てきてるから継続して使うつもりだったんだろう。
「アーキマン」
「え、何でファミリーネーム……」
「栄養ドリンクを使うのは一日一本ならまだいい。カフェインの致死量超えるから複数はダメだ」
「はい」
「マギ☆マリのホームページを毎晩見るのもいい。というかストレス発散になるから見る時間増やしても構わないと思う」
「なんで知ってるの?!」
うっかり後ろから見えたことがあるからです。あとサイト見たときにロマンが好きそうだなあと思った。
「でもな、これは脳も身体も壊れるやつだ。これだけは本当に駄目。絶対に使っちゃいけない」
「うっ……」
気まずげに目をそらすあたり、その危険を承知でやってはいるけど楽観していたと見た。自分は大丈夫、とか覚醒剤系でもよく言われるやつだろう。
頑張り屋、というか死に物狂いが本当に死に直結しかねないんだから救いようがない。止めなきゃ多分ポックリ逝くぞ、この人。
「そうだな、立香ちゃんたちの通信は機器の使い方を教えてもらえれば手伝えると思う。少しぐらい睡眠時間を確保する努力をしなさい」
「……わかったよ」
「じゃあこれは要らないね?」
「え?」
反省していても現物が残っていれば使うかもしれないからね、纏めて始末しよう。
「そぉい!」
「ええっ!?」
纏めてゴミ箱につっこみ、一杯になったゴミ袋はとっとと括って処理機械へ。
反応からして、また使おうと思っていたんじゃないか。振りだけすればいいってものじゃない。
「ロマン、適切な睡眠を取って」
「でも、」
さっきまでの反省はどこへやら、食い下がるのが気に食わない。というか悲しい。責任は発生してるから仕方ないんだけど、それでもだ。体を壊してしまっては方法があってもどうにもできない。
「お荷物で居るのも居心地が悪いから今貴方がしてる仕事の六割を私がやる。ダ・ヴィンチちゃんから及第点貰ったし、許可もぎ取ったからいける」
「いつの間に?!」
おかんを甘く見るな。仮想とは言え子にブラック労働をさせるつもりはない。というか周りから言われ過ぎてもう仲のいいスタッフ全員我が子みたいに思い始めてるから手に負えない。
「ついさっき。特に権限がなきゃ始末できないやつを中心にしなさい。じゃなきゃ、屋台骨もろともこの砦が崩れるぞ」
「う……」
はよ寝やれ、と部屋から押し出すと、困ったように笑った。うん、まだ笑えるなら大丈夫かな。ちゃんと元気になってなきゃだめだよ、ロマン。
「ママお腹空いた」
「立香ちゃん、ママ呼びは止めなさい」
「だってムニエルさんとか"ママーッ"て叫んでたし」
「ムニエル氏は知らないうちにああなってたんだよ……」
かなりディープなオタク入ってる一部職員からロリベヨ姐とかママとか言われるのはもう気にしないことにした。
立香ちゃんもサブカルはいける口だったからこんな感じなんであって、最初は結構礼儀正しく固かったのに。
「
「今日はクレームカラメル。硬めのプリンって言ったほうがわかりやすいかな。頑張ったみんなにご褒美」
「やったー!」
小躍りしそうな感じに喜ばれると大したことしてないのに照れる。でも、バットにプリン液を流し込んで焼いただけの簡単おやつ。本当なら初めの戦勝ってことで、もっと凝ったものを用意したいところなんだけどな。果物いっぱいのケーキとか。
「これから立香ちゃんたちには重荷を負わせちゃうから、頑張った分だけデザートを豪華にしよう。一度飛ぶだけでもものすごく偉いからケーキ焼いちゃう」
「今日はプリンなのに?」
来ると思っていた返答に、そっと寝かせていた肉の塊を見せる。時間的にはもう少しでいい感じかな。
「夕飯はローストビーフだけど、減らす?」
「全然オッケー!」
もので脅すの良くないけど、ちょびっと我慢してね。あと、ケーキって言ってもパウンドケーキになりそうだから、どっこいどっこいだと思う。
材料は節約しなきゃいけないけど、年頃の女の子だし、騙し騙しでもご褒美がなきゃやる気もなかなか出ないと思うんだ。偏見かもしれないけど、無いよりはいい。それに、スタッフのみんなだって手軽なカロリー摂取ができるからいいのだ。
とんでもないことに巻き込まれたけど、とりあえずはおかしくない程度に裏方であくせく働いてやろうと思う。
おかんはマシュくらい(ちょっと小さい)の大きさでベヨ姐声です。