思いつきアンソロジー   作:小森朔

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正真正銘の書き納めかもしれない。
おかんシリーズです。おかん結構好きなキャラなので地味に気に入ってる。たぶん、おかんの起源は養育。


固有結界・説教部屋

その時カルデアに激震が走った。

 

「つまり、ロマンは実質子供……?」

「おかん、おかん顔怖い!」

 

 単身カルデアに乗り込んできたゲーティアと、少しでも時間を稼ごうとゲーティアに対峙したロマンからもたらされた情報に、母は怒っていた。偶々その場に居合わせ臨戦態勢に入っていた頼光でさえ、怒れる母親のオーラに縮こまっている。怒りの対象に当てはまる原因二人こと、ロマンとゲーティアはカタカタと小さく震える始末。

 まさに固有結界・母の説教部屋が展開される真っ只中。

 

「ママ落ち着いて!」

「落ち着けるわけ無いでしょ!!一人の子供に世界背負わせてたと思ったら作戦の要の二人共が子供よ!!」

 ムニエルに羽交い締めにされても怒れる母ちゃんは屈しなかった。むしろ火に油である。

 だが、これはさすがの職員たちも止められない。それもそのはず、彼がひとりで背負い込もうとする癖に乗っかろうとした面々も居るうえ、彼の言葉に甘えて早めに仕事を切り上げるものも多かった。その仕事を処理していたのもやっぱりロマンなのである。自分たちが頼りっぱなしだったことに強い罪悪感を持って黙るしかなかったのである。

 

 畢竟(ひっきょう)、母ちゃんは暴れ、誰も止められない。なんとか動けるのは立香と、怒る母を抑えようとするムニエルくらいである。

「待ってくれ母御!」

「ゲーティア、人の心持った年数的に貴方の方がお兄ちゃんよ!何か思い当たる節は無かったの!」

「そ、それは……」

 さしものゲーティアも、固有結界のような異様な力の働く空間では母が吼えるのにたじろぐ。その力も母の威力である。一応人の子(の体)のゲーティアは逆らえなかったらしい。

 

 恨んでいた。憎んでいた。悲しいと思った。しかしそれは赤子同然に善悪、人の心のわからぬ王に対して尋ねるには酷なものだったのだ。"いや、まあ、別に?"と言うのは、心の分からない、そもそも持ち合わせることができなかった王には難しすぎる。幼子にもわかるだろう、という話でも、情緒発達のハの字もなかった人間には無理な話なのだ。

 

「何も感じやしないって時点で情緒の発達が……あーあの時代は研究進んでないわね」

 荒れに荒れ、そこまで言ってやっと苺の勢いは止まった。

 こめかみを押さえて深い深いため息を着いて、縮こまる二人を見る。ビクリと肩を震わせたのは見ないふりをして、次の行動を促すため、口を開いた。

「もういいわ、皆、おやつ休憩にするよ。ゲーティア、貴方もね」

「え、」

 怒られ疲れたらお腹空いたでしょう、と苺は二人の頭を少し乱暴に掻き回す。少し引っかかるけれど、痛くない程度の強さで。

 

 頭を撫でられるのは、一体いつぶりになるのかとロマンは考える。あまり思い出せないが、最後に撫でられた記憶は随分昔だったとはわかる。ゲーティアは、自分が生み出した魔術式であるからきっと初めてであるはずだと気がついて横を見ると、少し擽ったそうに、甘んじて受け入れていた。母の力というものがどれほど強いのか、身を以て体験した瞬間である。自分にもそんなに懐いてなかったのに!

 

「名前ちょっと噛みそうね。ティアくん、人間の負の感情は知ってるけど、甘いもの食べた幸せとか知らないでしょ。今日はレモンタルトね。どうせ人類滅亡させるなら、全部体験してみてからにしなさい」

 甘酸っぱくていいわよ、お菓子。

 

 そう笑って、手を引く母をゲーティアは呆れながらも振りほどけなかった。多分、その言葉も一理あると思ったのだ。母親とは人生の先達でもある。

 人類は滅ぼす、しかしそれを少し待つくらいは、してやってもいいかもしれない。まだ、特異点は幾らも残っており、計画はこの程度では揺らがないのだから。

 

 それに、少しだけ。ほんの少しだけ、彼女の言う幸せは気になるのだ。母親の用意する菓子の幸せというものを、人ならざる自分も知ることができるかもしれない。そう思うと、少しだけ待つのもやぶさかではないと思ってしまったのだ。

 

 

 そして、その日からカルデアでは不思議なおやつタイムが始まった。




皆様良いお年を!(二度目)
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