うっかり女王召喚した元宦官と挟み撃ちする王様たち。やっぱり短い。捕捉される話。
「セラヤさん、おいでなさいな」
「おいで、セラヤ」
「イヤです〜!!ゲーティア、ゲーティアどこ!?」
召喚した元片思い相手と元主君に挟まれるとかどんな地獄よ。女王様、本当に素敵な方だけど近付きすぎるとこう、動悸が激しくて倒れそうでして……
まぁ、私が呼び出しちゃったんだけども。何なんだろうね、私の執念。思ってたより根深かったみたいだ。あと生身で行き来したせいで強く縁が結ばれちゃってたのか。人理は修復されたし、あとは火消しをするだけなので所長もカルデアも落ち着いていたんだけども。
あ、ゲーティアはあの夜、ちゃんと私の話を聞いてくれてたみたいです。人類最後のマスター・立香ちゃんに人間の眩しさを見出したらしく、最近ずっと一緒に居る。世界を滅ぼそうとしたけど、全部くべるのは惜しくなったとか。ほとんど本気でやっていないで試練の感覚だったらしく、本来よりは被害もかなり少ない。
まあでも、被害が出ていることには変わりなく、そして一年間は実際に空白で過ぎてしまった。後始末は残った全員で死ぬ気でやった。あとは、一つ一つの特異点がめちゃめちゃ攻略に時間のかかるものにされてたせいで、立香ちゃんのメンタルは鋼になった。
今は立香ちゃんがしっかり首輪つけて飼ってる状態。ファミリアといえばいいんだろうか、彼女が死ねばゲーティアも死ぬから下手なことはしない。
原作崩壊は割と早い段階で彼女がゲーティアを殴り飛ばしたのがきっかけだったんだ。立香ちゃん、空手と柔道習ってるとかで物凄く強い。生身のゲーティアに難波走りの俊足で近寄ってそのまま殴り飛ばして物理的に倒しちゃった。何なんだろう、あれ。原作とは何だったのか。
シバの女王様が来たのは、ついこの前の全部終わったあと。概念礼装が足りないから回すぞ!と召喚機を起動して呼び出したら、まさかの召喚。今まで全く呼び出すことができなかったというのにどういうことなのか。
「オルガマリーの容態も見なきゃですし、私がここにいる必要はないでしょう御二方!」
王二人のオーラに圧倒されて流されかけつつも、本来の用事を思い出して思わず叫んだ。
そう、私はとりあえず生き残ったオルガマリーの看病という仕事がある。医療チームだろうか任せるものか!
なぜ生き残ってるかといえば、単純に私が薬を盛ったからです。下衆と言われても気にしない。睡眠導入剤でちょうど講義後に眠るようにコーヒーを細工したのだ。ダ・ヴィンチちゃんにはバレてたけど、敢えて理由は聞かずに居てくれて助かった。医務室は爆破された区画からかなり離れてるから、無事に生き残ったのだ。
……とはいえ、いろいろな事情から病人として休んでもらってるし、実際、途中で落ちてきた物が足に直撃して骨折してしまったので怪我人ではある。
「いいえ、私達のためにいてくれないと困りますわぁ。ねぇ、陛下?」
「うん。それにセラヤは最近働きすぎだから、少し休んでいきなさい。ああ、医療チームの顧問としての命令ね」
「うっ……」
やめてください死んでしまいます。
今のところロマンの意見は絶対なのだ。みんな過労気味だから逆らえません。ドクターが寝ろと言ったら寝なきゃだめです。
なんかゲーティアを連れ帰った後に閉じていた魔術回路とかいろいろなものが復活していたようで。「普通の人間になること」というのはソロモン王の肉体は放置で肉体を得ることだった。でも、その魂とかに合わせた状態で受肉しているから、本来なら魔術回路だってある。本体(の死体の変質したもの)がやってきてしまったのがトリガーなのか、持っていた魔術回路が一気に開いたらしい。活きたというべきか。まあ、あくまで一般の範疇を得ないらしく20本くらいだったかな。
同時に王の頃のカリスマだとかも緊急事態で発揮されてたりとかして、そのせいでだんだん逆らえなくなってきた。
仕事やめて祖国に帰っていいですか。
大人しく示された席……二人に対面する席で紅茶を頂く。この休憩嬉しくない。SAN値が死ぬ。直葬される。
「貴女が私を恋い慕っていたのは知っていましたわよぉ?だからこそ言わなきゃいけないことがあります〜」
「シバ、」
咎めるようなロマンの声にも、彼女は言葉を紡ぐことをやめなかった。獣の耳と羊の角の女王様は、私にとっては残酷なことを言うんだろう。
「あなたの想いには応えられませんわ。だから、次の誰かと幸せにお成りなさい」
間延びした語調は、はっきりとした語尾になって。私の思いは断ち切られた。
だから、むしろスカッとした。目は痛いくらい熱いし、涙は止められないし、鼻水は出るし、嗚咽は漏れるしで大惨事だけど。
「ご、めんなさ……」
「いいえ、いいんですよぉ。私はもう死んでいますし〜、貴女もしっかり生きて幸せになりなさいねぇ?」
ちょいちょい、と来るように手招きされて寄ると、引き寄せられて抱き締められ、ポンポンと頭を撫でられる。衣から柔らかい、麝香と乳香の匂いがする。懐かしい、あの頃と変わらない彼女の匂いだった。
早く泣き止まないと。このうつくしい人の服を汚してしまってはいけない。なのに、どうしても離れがたい。
「セラヤを愛している人はいますからぁ、幸せにならないとだめよぉ?」
「っ、はい……」
すぐには思いを捨てられないだろうと思う。でも、それでも、この人はちゃんと振ってくれたから。手づからとどめを刺してくれたから。ちゃんと、生きていかなきゃいけない。今度こそ本当にこの時代を生きていかなきゃいけない。
……ん?
「あ、あの。それはどういう……」
「ほらぁ、目の前にいるじゃないですかぁ。怪物になっちゃってますけどぉ」
なんか、妙な空気というか威圧感というかを感じて目をそちらへ少しだけ向ける。いや、まさか。
「あ、」
「うん?」
ドクターが怖い。目が笑ってない。あの頃の我が王そのままで、これ、王が機嫌が悪かったときの反応……
「すみません帰らせてください!」
「逃さないよ」
すっ、と自然な動きで女王から引き離され、手首が掴まれる。静かで、いつものゆるふわ具合が完全に霧散してる。
これ、完璧にあかんやつ。
「やだー!!」
こっちはまだ肚括ってないんですー!
なんで私がターゲットなんですか!
というか、我が王は王の頃感情なかったし、そういう感情抱くなら関わりが深かったオルガマリーでしょ!?もうヤダ本当にお家帰りたいぃぃい!
どうして召喚できたかというと、あれです。それまで一人も引けなかったから鯖が来るやつ。召喚の運命。それも、触媒はなくても本人が触媒になっちゃった大事故。