思いつきアンソロジー   作:小森朔

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主人思いの無辜の怪物の話。大遅刻クリスマス。
「今年のネタは今年のうちに」と思っていましたが難しそうですね。SPI対策などしたくない。


ガラス・サンタの贈り物

 拝啓、エリザベートお嬢様。いかがお過ごしでしょうか。きっと、お嬢様は天の父のもとで心安らかにお過ごしでしょう。ああ、でも、カルデアという場所にもお嬢様がいらっしゃるのでしたね。ならば、いつの日にかお会いすることも叶うと思います。思って、いたのですが……

 

「なんですか、これは」

 

 ここは一体どこですか! 周りがジャングルなのに真っ白なのですが!

 

 

 

 

「おかしい。サンバなサンタ以外にもサンタの反応がある」

【先輩、いつからサンタの反応なんてわかるようになったんですか?】

「いや、なんとなく」

 立香の言葉に通信機越しに尋ねたマシュだったが、帰ってきたのは曖昧な返事のみ。人類最後のマスターこと今イベントのマネージャー兼トナカイは疲れていた。クリスマス周回はつらい。あまり礼装が十分でない中の渋めのドロップ品集め。

 気分を変えるために話をしていたが、ままならない。それに真のサンタを決定するためのプロレス大会にさらに追加されるサンタ。混乱の予感しかない。

「流石にこれ以上サンタが増えたらカルデアのサンタレベルが急上昇して飽和サンタ量を超えてしまう……探してくる!」

【あの、先輩?!】

 

 

 

 と、言って飛び出したとはいえ、立香にあてなどなかった。しかし、イベントはだいたい向こうからやってくる。それだけは身にしみて分かっていた。

 とりあえず、フラフラしながらめぼしいものを探した。マンジョッカフリッタの屋台で一つ買ってパクつきながら歩いていると、挙動不審な少年がいるのが見えて、(あ、たぶんあれだ)となんとなく察した。回れ右しようとするが、間に合わずにバッチリ目が合う。あ、だめだ、あれはたぶん大丈夫やつ。そう直感が訴えているが怪しいものは怪しい。少年は当然のように全速力で走ってきた。背中に担いだ袋がバインバイン揺れている。

「もし、そこの方。プレゼントを渡すお嬢様かご子息様がいらっしゃいますね?」

「うん?」

 声が発せられた方を見ると、一人の少年が立っていた。年は13、4歳ほどで暗めの金髪を一つ括りにして横に垂らしている。服装は、もこもこした綿の縁飾りのついた真っ赤なマントに、同じく綿の縁飾りの真っ赤な膝丈のズボン、そして白のポンポンつきの赤い三角帽子。……子供だが、紛れもなくサンタクロースだった。

「あ、これは! 人類最後のマスター様でしたか!」

「えっと、君は?」

「む、これは失礼いたしました。私めはバートリ家の召使い、ルカーチェと申します」

 擬音の付きそうな見事な礼に、帽子がずり落ちそうになる。慌てて治している姿は、やはりどこにでもいそうな子供だった。

 しかし、この少年はルカーチェと名乗ったか。この前エリちゃんと倒したのもルカーチェじゃなかったか。あのエグい異形と同じ名前とはどういうことだろう。あの見た目は流石に英霊には見えなかった、と立香はぼんやり考える。ちょっとガウェイン似というか、ガウェインを小さくしてもっと優しいというかポヤポヤさせたら多分こんな感じになると思うが、一体。

 

 大きなズダ袋を持っているが、やはり何かしら攻撃してくるかもしれないという懸念はあった。しかも、今は誰一人連れていない。立香の背にヒヤリとしたものが伝っているのを尻目に、少年はズダ袋に上半身を突っ込んで何かを探しているようだった。待て、さっきよりその袋大きくなっていないか、と突っ込みたい気持ちを抑えて、固唾を飲んで見守る。

 ルカーチェと名乗る少年がようやくズボッと体を引き抜いたときには、クリスマスカラーの包装の包を一つ、抱えていた。

「こちらをどうぞ! 実は、エリザベートお嬢様を探しておりましたが、どうしても見つからず……お会いすることが叶わなかったのです。ですので、貴方に!」

 渡されたのは、手のひらよりは大きいが、抱えるほどでもない大きさの箱が一つ。

 控えめに振ってみると、カタカタと音がする。特に嫌な感じはしない。

「んー、でも、オレもしばらくエリちゃんには会わないし、それにみんなサンタを決める大会をしてるんだよ?」

「左様でしたか……では、私も参加すべきでしょうね。非合法サンタとして活動することはお嬢様の名に傷が付くやもしれません」

 かがんで目線を合わせ、大会のことを伝えると神妙な顔をして頷いた。……かと思えば、決意を決めた目でそう言い放った。何なんだ、非合法サンタって。

「こうしてはいられません。ありがとうございます!

 行きましょう、主の平和のうちに!」

 ルカーチェはズタ袋から、一人用のガラス製らしい透明なソリを引っ張り出すと、そのまま飛び乗って颯爽と滑り出してしまった。滑っていくときに何か火花のようなものが散って見えたのは気のせいだと思いたい。

 

【先輩、何かそちらで不思議な反応がありましたが一体……】

 再びつながった通信に、なぜ先程まで途切れていたのかとふと思い返しながら答える。

 妙に人が少ない、というか人がいなかったので、たぶんそういう場所に足を踏み入れていたのだろう。相手は幽霊のような、そういうものだし。

「あー……、うん。凄く主人思いなサンタクロースにプレゼントを委託されたんだ」

 たぶんこれ、エリちゃんは凄く喜ぶだろうなぁ、と言うと、マシュは不思議そうにしていた。うん、でも、すぐカルデアに来ると思うし、多分すごく叱られると思うよ、彼。口には出さないが、立香はぬるい微笑みを浮かべながらそう考えていた。

 

 うん、たぶん。石が足りれば、きっとすぐに。




多分バトル曲はグローリアあたり
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