妖精転生オリ主がカルデアに合流する回その1。
書き始めたらまとまらなくなってきたので色々と長くなりそうです。
オベロンの実装いつ来るんでしょうね……。
グロスターへ行く一団の護衛なんてものを引き受けて、町へ入らずにとっとと引き返した帰り道。
なにやら騒がしい方に行けば、どうやら旅の一段が襲われているらしかった。助太刀している中に、妖精馬や不思議な機材を駆使する少女、杖持ちの少女なんかも見えて……あれ。
もしかして、カルデア?
ぱ、と思い付くと走り出していた。片刃剣を抜いて、跳躍してモースに斬りかかる。手が震えそうになるのは、力を入れすぎるせいだ。長く戦士は続けているのに、敵と向き合うことに慣れないせいだろう。
数が多いから速度と体重を思い切りかけて、一撃殲滅を最優先。倒す時間は多少かかれど、それでも一人でないだけマシだ。
一体、二体と落とすと、応戦していた集団も何体か片付けていた。やっぱり、戦えても一人よりは多数が良い。数こそ正義なんだな。
最後の一匹を斬り裂いてから周囲を確認する。……よし、残ったモースは居ない。一旦安心しても問題はないだろう。
振り抜いた剣を納めて、彼らと向き合う。
「無事かな、旅の方々」
「貴方は、一体……?」
呆然と、赤毛の女の子が呟いたので笑いかける。
なんだか物語の冒頭みたいだ。ちょっと、嬉しいような、楽しいような気分になる。
機能的な黒服の赤毛の女の子。
同じく赤毛で和服の青年。
煌びやかな装束の美しい少女。
素朴な衣装でも宝石よりもなお輝く緑の瞳の少女。
同族の妖精馬。
中々に濃い面子だ。
それから──
「ギャリー! ギャリーじゃないか!」
私が顔を合わせたくなくて逃げ回っていた妖精王も。
ちょっと微妙な表情になってしまうのは、仕方ないと思っても良いだろうか。だって、あまり関わって気分を損ねたくないから避けていたわけだし。今回ばかりは不可抗力みたいなものだ。
これは、どう捉えれば良いんだろう。喜ばれているのか、邪魔なのか、なにか他の感情か。
まあいいか。とりあえず、彼らはどこかへ行く途中だったようだから、戦力が増えて嬉しいというのはあるだろう。
あやふやな記憶を手繰り寄せなくても、この面子ならだいたい想像がつく。人間を助けに行くんだろう。それか、もう助けたかのどちらかだろうな。
それで彼らに近寄ろうとすると、それよりも早くオベロンがやってきて私の前に立った。
と思うと、ずい、と顔を思い切り近付けられた。目もなんとなく感情の燃えているような、そんな色だ。
……えっと、何?
「君、どうしてソールズベリーに居なかったんだ。君が立ち寄ると言っていたから、かなり探したんだよ」
「なんで?」
さらに詰め寄られて、いかにも怒ってます! という仕草に驚いて一歩引いてしまう。そもそも彼は私よりも少し背が高い。それだけに威圧感もあるから後ずさるのも仕方ないんだ。
わかりやすく憤慨してみせるオベロンに、ちょっとだけ疑問が湧く。なぜ私を探していたんだろう。
確かに、はぐれもので移動をするのには慣れていて、それなりの戦力にはなるかもしれない。でも言ってしまえばそこまでだ。別に手札の数にするほどでもないだろうに。
それにここは、どちらかといえばウェールズの彼の領地に近い。ソールズベリーから来たならば、また随分と妙な移動経路をしているものだ。
「どうして居なかったって言われてもね……私だって、用事があるんだ。それに、貴方が知ったことではないだろう、妖精王」
だいたい嘘です。
用事はあったけどもう終わってたし、ソールズベリーに長居しない方が彼に会わずに済むかもしれないからと思ったからというのが正直なところだ。
「いやいや、僕と君の仲だろう、薄情者!」
「会ったのだって高々二回だけどね……」
貴方と向き合うと醜い部分を見透かされている気がするから関わりたくない、必要以上に構って殊更嫌われたくない、なんて言えるわけがないだろう。
彼は、私が知るこの島で、一等複雑で美しい生き物なのだ。だからこそ、醜いものを抱えたまま接するのは、少し気後れする。
「……っ」
息を飲むような音がしたからそちらを見れば、金髪の少女の姿の妖精が固まってしまっている。複雑そうな表情をしているけど、なんなのだろう。
「アルトリア? どうかしたの」
「え、ううん、何でもない!」
──あ。そっか、彼女はわかるのか。
名前を聴いて、やっと思い出す。いけない、ほとんど劣化無しの引き継ぎを繰り返しているとはいえ、私も3代目だ。やっぱり色々と忘れているのだろう。
それなら、やっぱり情報を聴いたり、伝えなくちゃいけないだろうな。わからないままでいると危ないこともあるだろうし。
オベロンにこれ以上詰められるのも嫌だったので、彼を避けて半ば固まっている彼女の前に跪く。これなら、威圧感はあまりないだろうから怯えないでもらえると良いのだけど。
「ねぇ、宝石よりも綺麗な目の貴方。名前を尋ねてもいいかな?」
「わっ、私はアルトリア・キャスターです! 綺麗かぁ、そっかぁ……照れるなぁ……!」
薄く頬を染める彼女に、これなら大丈夫かなと立ち上がる。背後から刺さる視線は無視だ、無視。
それにしても。誉めて、それを受け入れられるのは嬉しいな。
それに、彼女は本当に綺麗な緑の目なのだ。人間ならば妖精を見ることができる特別な色。森よりも深く、若葉よりもなお瑞々しい色。
「良い名前だね。それに、貴方の目は本当に綺麗だよ。
……それで、オベロン殿。私を探してたのって、≪予言の子≫を守るためで合ってるかな」
「ああ、そうだとも。それで、≪予言の子≫は」
「アルトリアなんだね」
「え、知っていたのかい?」
「まさか。でも、見ればわかるでしょう」
私の言葉に、カルデア一行が目を剥いてこっちを凝視する。まあでも、ギョッとされるのも慣れっこだ。こちとら引き継ぎ含めた200年以上仲間内で妙なもの扱いされてきたし、更にはこの16年は変わり者ではぐれものだったからね。
しかしまあ、それを引いてもあっさりと信じる妖精は珍しい部類ではあるのか。
「見ればわかる、って……魔力の質や量もわかるのに?」
「わかるよ。でも、どう説明すれば良いかな、燃えるような目の貴方」
「……ああ、そうだった。まだ紹介してなかったね。彼らはカルデア。そして、彼女こそが彼らをまとめあげるマスターの藤丸立香。このブリテンの外から来た≪異邦の魔術師≫たちさ」
彼は背に隠すように、赤毛の彼女の前に立った。彼女の方は困惑しているようだけど、それも当然だろう。彼の敵意は、ブリテンの妖精が相手なら正当だと言いきれる。
それにしても、一団を「まとめあげる」とは。どちらかと言えば在り方は違うだろうに。……やっぱり、微妙に翻訳が必要な気がする。彼は難解だ。
それと、私が危険であるかのような振る舞いは少し心に来るけど、まあ、それは受け入れるべきだろうな。自然なことだ。
いくら戦力になるとは言え、私にしたって信用すべきかわからない。いくらか隠し事もあるし、あちらも伝えたくないことの一つや二つはあるだろう。
でも、その振る舞いがとても王子さまみたいだったから、やっぱり彼はそれで良いなと思ってしまった。彼は骨の髄から王族なのだろうと感じるからだ。
発生や統治がどのような成立であれ関係なく、秋の森の王として正しい振る舞いだった。
「外か……確認しないといけないことが多くなりそうだから、後で落ち着いたら詳しく説明して貰っても?」
「もちろんさ! 君が来てくれるなら予定よりは早くことが運ぶだろう。カルデアの諸君、頼れる味方の登場だ。同伴しても問題ないね?」
あっ、この御仁、勢いで流そうとしてる。そういうところだよオベロン。なんか時々大雑把だね、嫌いではないけど!
「ねぇオベロン、彼女は一体何者か、私たちは知らないんだけど?」
あれこれ言うのも面倒だし、流されても構わないかと思っていると、ちょっと微妙な笑顔を浮かべる綺麗な女の子が突っ込みをいれた。
鈴を転がすようなかわいらしい声だ。ちょっと見ないくらいの素敵なひと。必要なことは必要なだけ補ってくれるのがありがたい。私も楽な方に流れようとしてしまったし。
オベロンはといえば、悪戯っ子のような笑顔にウィンクひとつ。あっ、これは自分でちゃんと説明しないと伝わらないだろうな。
「ああ、そうだったね。紹介するよ、彼女はギャリー・トロット。僕にとって、誰よりも頼れる妖精の一人さ」
ああ、やっぱり。何一つ彼らが安心できる情報がない。でも、何をどこまで話せばいいだろう。
そんなことをぼんやりと考えて、とりあえずは怖がられないように笑う。
「そんな評価をされてるなんて知らなかったけど、まあいいか。私ははぐれもののギャリー・トロット。色々あって流れの用心棒なんかもしてる牙の氏族だ。よろしくね、アルトリア、カルデアの皆さん」
結局、夜までに秋の森まで辿り着くのは難しかった。モースが出るわ、アルトリアが妖精を助けに行くわで寄り道が多かったと言うのもあるし、全員の体力を考えると無理はできないということもあった。
そういう見極めが上手いメンバーがいるのはいいことだ。飛ばしすぎは後に響く。確実に。
だから進むところまで進んで、その近くで場所を確保して野営することに。領地に辿り着く前に情報がもらえるのは、こちらとしては都合はよかった。
あの森では話し合うよりも、虫たちとの触れ合いの時間の方が必要だろう。秋の森はいいところだ。あの土地は他の妖精たちが考えるよりもずっとずっと価値があるところ。特に、カルデアの面々がゆっくりと魔力補給もできるから重要だといえる。
「それで、アルトリアの正体に気づいた理由、だったね。アルトリアは妖精紋様が弱いから術の行使のために杖を持ってる。ということは、だいたいのことに魔術、それにその杖を使ってると思ったんだ。生活は面倒だからね。
でも、モルガンの娘はよほどのことがなければ狩られて来た。それでも生き延びていたのは村ぐるみで秘匿されていたからじゃないかな」
モルガンの娘が早々に複数出てくるとは思えない。女王陛下が娘としているのは彼女がそう定めて手解きをしているから。でも、それ以外で魔術を使う者は極めて少ないし、女王派の連中はそういう妖精を見れば狩ろうとするからすぐ死ぬ。それでなお生きているんだから、予言の子だったら納得できる。
……というのは、もちろん建前だ。これは一種のズルだから、なんとも言えない。
「でも、それだけじゃそうとは限らないだろう? ほら、紋様も弱々しいし、それっぽく見えないし」
「オベロン!」
アルトリアが顔を真っ赤にしてふるふる震えている。……ああ、確かにこれはかわいい。彼女をからかいたくなるの、わかるなぁ。
だからそれを素直に口にしようとして──口を開く前にやめた。
これを、何て言えば受け入れられるんだろう? ずるい、羨ましい。私も仲間になったから、そんな風にやりとりができるくらい気軽に接してほしい。親しくなりたい。全部、私が気軽にそう思ってしまうだけのこと。相手からすれば、一時の寄り合いだ。必要はないだろうし、言って受け入れられなかったとき、ショックだから言うのはやめておこう。
……親しくなって、そのうえで傷つけてしまうかもしれない。それはいやだ。彼らは善良なのだから、大切にされないと。
彼らは良い生き物なのだから、妖精に振り回されるようなことがあってはならない。もちろん、私も含めて。
「ああ、確かに、オベロン殿の言う通りだよ。でも、要素は他にもあるんじゃないかな」
「要素、というと?」
今度はダ・ヴィンチが尋ねてくる。肌はきめ細やかで羨ましい。均衡が取れている四肢も、髪も綺麗だ。いいなぁ、こんな風になれたらいいのにな。
「そもそも予言があるくらいなんだ。必ず敵が出てくるなら先にいた妖精からは目をつけられるだろう? それでも排除されないためには、≪予言の子≫だとわからないようにするはずじゃないか」
適当な棒を拾って、それらしい形を書く。
うーん、我ながら下手くそ。しかも、妖精をそれらしく描くの難しいな。
「例えば、鐘が重要だというなら、その巡礼の過程で彼女に力を与えるだとか。それか、鐘を鳴らすまでは目をつけられにくい弱い存在のままで、さしたる成長もしない、とかね。
仮に私が女王陛下なら、そういう存在を訝って、探して殺す」
そう思ったことを伝えてから、ふと、顔を上げる。
アルトリアが、顔を真っ青にして震えているのが見えて、ああ、やってしまったんだな、とそこでようやく気がついた。
気になってオベロンを盗み見れば、どこかイラついたような雰囲気だ。刺々しい、までは行かなくても、非常に面白くないと言いたげだ。カルデアの人々は、気づいていないらしいけれど。
本当に、彼らは誤魔化したり演技したりが上手い。気付かれないようにすることも。
「(……どうせ、どれだけ努力しても私は野蛮な牙の氏族だ。改めたところで、変わらず怖がられるのが関の山だろう。知っているよ)」
当たり前だけどアルトリアには怖く見えただろう。だって、そういうことを考えていたらわかるものだ。きっと顔にも出てただろうし。
それに、私は血の匂いだってさせている。昨日も今日もモースやら強盗やらを幾らか返り討ちにした。生まれ持った性質のせいで、余分に叩きのめしさえした。
できる限りの善行だって、どうせ最後には本能に食い潰される。
「まあ、私がこういう性格だから納得したとだけ理解してもらえれば良いかな。危害を加える理由なんて無いし、むしろ女王打倒は私も支持するよ」
怖がらないで、なんて言ったところで意味ないと、理解している。
それでも、私が曖昧にしたくて笑えばアルトリアもぎこちなくだけど笑ってくれた。なら、これでとりあえずは良いということにしたい。
「どうして反女王派なの? ギャリーくらい強ければ、キャメロットの兵士にもなれると思うんだけど」
意識が引き戻される。立香の疑問は、まあ確かにその通りであろうものだ。一定以上の力量で戦えるやつは、だいたい女王軍として生き延びようとする。
けど、それをする気にはなれないし、だからこそのはぐれもの。それに。
「女王の兵隊は私がなれるほど甘くないんだよ、立香」
「そうか? 儂から見てもお前さんの太刀筋は悪くなかったがな」
「ありがとう村正。でも、私程度じゃだめなのは事実なんだ。牙の氏族の上位妖精は早々に殺せないし、死なないからね。それに、私の戦い方は牙の名折れになりかねない我流だというのも理由になるかな」
そう、牙の氏族の多くはその肉体の優位性を発揮して戦う。武器よりは己の肉体、のスタイルだ。モースの毒から身を庇うことさえできればいい。
それに対して私は剣術だ。しかも我流、見様見真似の紛い物。怪我をしながらなんとか対応しようとして出来上がった不細工な太刀筋だ。お世辞にもこれで戦うなんて無謀でしかない。相手は本職なんだから。
「でも、さっきのモースは無傷で倒してたよね」
「あれは鉄の武器のお陰だし、単に慣れでしかないよ。私が百年も生きてないのが何よりの証拠だ」
「ギャリーは鉄の武器を使えるの?」
「一応ね。でも、素手で触れたら爛れるからグローブが必要なんだ」
「そっか……でも、これまでに見たどの牙の氏族の妖精よりも強かったと思うんだけど」
本気でそう思ってくれての言葉なんだろう。それだけで、少し舞い上がりそう。──でも、思い当たる変化はある。目的が強化されたおかげで前よりは強くなれたんだろうか。
「嬉しい言葉だけどね、それは買いかぶりだよ。私も何度かモースになりかけたり、やられそうになったりしたし」
わりとしょっちゅうアイデンティティの危機に瀕してモースになりかけたからなぁ、最初の頃は。
あれは底無し沼だ。思考の檻から出られなくなる。抜け出せたのだって、私の目的がなんとか引きずり出してくれたからに過ぎないし。
「モースに、なりかけ……?!」
「ん?」
「ちょっと待って、なりかけたってどういうこと?!」
ダ・ヴィンチまで目を白黒させているから、恐らくどこかで妖精からモースになったやつを見たな。それと、彼らは死んだ妖精の末路をたぶん知らないだろう。
妖精の終わりはモースだけでないと知っているのは、もともと活動していたオベロンとアルトリア、レッドラくらいか。
「いや、妖精は目的や自我を喪失したらモースになるでしょう? 私も目的は何度か見失いかけたんだよ。危ういところで持ち直したからこうして生きてるけどね」
「それ、僕も初耳なんだけどな!」
今度はオベロンまで絶叫した。コミカルだけど、これは本心からの叫び、か…………?
実際、「人間だったころの記憶」という危険な混ぜ物が多いせいか、記憶だけでなくて諸々の感情まで見事に引き継いでしまっている。そのせいで本能に慣れない最初の頃や、生まれ直した直後だったりには自殺衝動や自己嫌悪や後悔が酷かったのだ。
2代目からは頻度がかなり減ったけど、今でもどうか静まってくれと祈るなりなんなりして誤魔化してないと時々危ないこともある。
けど、それを言ったところでなんになるだろう。ヒントになるかも知れなくても、ここにいる面々にとってはその知識は必要ない。
特に、彼には余計に要らないことだ。うっかり口滑らせたのは失敗だったな。
「オベロン殿には関係ないことでしょう。というより、何度も言うが私たちは高々二度しか会っていないんだ。経歴を知る必要だってないのに、時々死にかけてますなんて言う必要はもっとないと思うよ」
「……それを言われてしまうと僕も言い返せないんだけどさ! やっぱり薄情だよ君!」
その言葉がおかしくて、つい笑ってしまう。オベロンからすれば冗談じゃないだろうけど。
私はただ苦しんでいた頃に立ち会っただけ。それだけの縁の、「厄災」に呑まれるだけの弱い妖精だ。情もなにもあったものじゃない。
さすがは妖精王、心にもないことを言うのも、周りを気分よく動かすのもお上手なことで。……いや、彼は本当に大事なことだけはきちんと抱えているひとだ。冗談にして良いと思ったからそう言うのだと、きちんと知っている。なら、私は私なりに信じるだけだ。
「そういえば、あなた方がこれからどうする予定なのか訊いても?」
「一旦オベロンの領地で機を窺う予定でした。失礼ながら、ギャリー殿はどうする予定でいらしたので?」
「私はこのままソールズベリーに戻って暫く様子見をしようと思っていたところだよ、レッドラ。まあ、タイミングがずれていたら長くすれ違っていただろうね」
それを考えると、かなりタイミングは良かった。
ただ、この先がどうなるかは全くわからない。私は、彼らの助けになれるんだろうか。
「そういえば、気になってたんだけど」
思考が引き込まれそうになったとき、ダ・ヴィンチが唐突に切り出した。なにか気になるところでもあったんだろうか。
「なんでオベロンだけ殿付けなんだい?」
「ん? ああ……」
尋ねられると思っていなかったことに、一瞬だけ言葉が詰まる。
そういえば、他のひとにはつけなかったな。……どうしてだろう。でも、そう呼ぼうと思っていたのは確かだ。理由はわからないけど。
「だって、王様だろう? 特別だと思ったから、ふさわしい呼び方をしたほうがいいかなって」
「君さぁ……好意とは理解してても、疎外感はあるんだぞ」
「それは……ごめんなさい、オベロン。もっと気にするべきだった」
「まぁ、いいよ。言っても仕方ないことだし、君はそういう性質なんだろう」
拗ねるような言い方に、全員が笑う。
そうやって、夜が過ぎる。空の色が少しずつ黄昏に戻ろうと足を早めていく。
そうか、はぐれものを続けていたけど、こういうのは楽しい。楽しんでもいいんだ。もう我慢もしなくていい。傷つけさえしなければ、それでいいんだ。
心が少し軽くなる。終わりは少しずつ近付いてくる。待ち望んだ妖精國の黄昏が来る。
……ああ、楽しい、なぁ。