Plastic Memories [Everlasting miracle]   作:Iceblade

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遅くなって申し訳ございません。
ところどころ語彙力皆無の部分がありますが、そこら辺は温かい目で見てください。


Iceblade


Episode 1 「After a miracle」

願いは必ずしも叶うとは限らない。

 

例えそれがどんな願いだろうと。

 

でも、奇跡を信じ願い続ければ、その願いは叶うかもしれない。

 

だがそれは、奇跡にすぎない。

 

そして人類は、諦める。願いは願いでしかないと。

 

一人の少年が除いては。

 

 

 

 

最近ツカサの様子がおかしいと思わない?と隣で運転する金髪のギフティアーーザックに私は尋ねた。

「さぁ、どうだろうね」

と、すぐに返答が返ってきた。

「まあでも、前よりも少し暗くなったかな」

意外とザックはツカサを気にかけてはいたようだった。

「・・・それにしても、ミチルって本当に世話好きだよねぇ~」

そんなことを思っていると、ザックが下卑た笑みを浮かべていた。

「ち、違うから!い、一様まだ私は教育係なんだから、心配して当然でしょ!」

「ふーん」

と、私が必死に抗議していると、気のない返事が返ってきた。

最近のツカサは、どこか無理をしているように見えていた。笑顔も、寂しそうだった。

「・・・やっぱり、声かけた方がいいのかな」

「だからさぁ、何でミチルが口を出すの?あれはツカサ自身の問題だよ」

「わかってるわよ、そんなこと・・・。でも、やっぱりほっとけないわ!」

「・・・はぁ」

ザックのため息が聞こえた。完全に呆れられているようだが、そんなことは気にせず、早く仕事を終わらせて、ツカサと話をすると決めた。やっぱり私って世話好きなのかなあ・・・。なんてことを考えながら仕事先に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

仕事用の車に乗っていると、アイラと仕事に行った時のことを思い出す。

パートナーを組んだばかりの頃はあまり会話がなく、お互いずっと黙っていた時もあった。でも、少しずつ話ができるようになった。仕事のことや、プライベートのこと、そしてデートのことも。恥ずかしがりながらも、いろんな話をした。アイラと話すだけで幸せを感じられた。でも、彼女はもういない。――大切な人といつかまた巡り会えますように。彼女の言った言葉が、今でも聞こえてくる。

 

ふと車の窓を見ると自分の顔が映っている。その顔の頬には、一筋の涙が伝っていた。慌ててそれを拭い、再び冬の曇り空を眺めた。そんな時、一つ大切なことを聞いていないことを思い出した。

「・・・なぁコンスタンス、俺達の仕事って、何件あるんだ?」

コンスタンスは、苦笑を浮かべながら答えてくれた。

「あはは、本当に何も聞いてないんですね。今回の案件は1件、エリカですね」

「そうか、ありがとう」

案件の数が少ないのは、カズキさんが俺に気を使ってくれたのだろう。みんなのためにも早く立ち直らないと。

そんなことを考えているとコンスタンスは車を止め、到着です、と言った。

外に出て息を吐くと、息は白く、灰色の空に消えていった。

 

 

 

到着した場所は、街はずれにある小さなアパートだった。外見は質素でどこにでもありそうなアパートで、部屋数もそこまで多くなかった。

「では、行きましょう」

そう言うとコンスタンスはアパートの二階に上っていったので、後ろについていった。

彼はとある部屋の前に立つと、インターホンを押した。

はい、という返事のあとに扉が開き、中から20代くらいの男がでてきた。

「どちら様ですか?」

「私は、SAI社第一ターミナルサービスのコンスタンスと申します」

出てきた男の名前は藤井タクヤ、今回の回収対象――エリカの所有者だ。

ギフティアの回収は主にギフティアが“マークスマン”、人間が“スポッター”に分けられる。基本的な回収業務はほぼすべてマークスマンであるギフティアが行う。そのギフティアの仕事ぶりを監督し、状況に合わせて対応するのがスポッターである人間社員の役割だ。

「で、SAI社が俺に何のようです?」

「今日は、エリカさんの回収の件でおうかがいしました」

コンスタンスがそう告げたとき、タクヤさんは酷く動揺したようだった。

「エリカの・・・・回収・・・?」

「はい。今日は日時の確認と、あなたにサインを――」

コンスタンスの言葉を遮るようにタクヤさんは声を張り上げた。

「ふざけるな!彼女は俺の大切な人なんだ!別れなんて認めない、もう帰ってくれ!」

“大切な人”。その言葉を聞いた時、抑えこんできた感情が溢れ出しそうになった。それを必死に抑え込んでいると、コンスタンスがすかさず

「そうですか。では、また後日おうかがいします。行きましょう、ツカサ」

「う、うん」

と、一度退くように促してくれた。そして俺達は、タクヤさんに頭を下げたあとこのアパートをあとにした。

 

 

「なあ、コンスタンス」

「なんでしょう?」

車で移動中、ふと思い浮かんだ疑問を聞いてみた。

「ギフティアって、回収されるとき、どんなこと思うんだろう?」

コンスタンスは少し考えてから、口を開いた。

「私はまだ、回収されることを経験していないので憶測になりますが、多分、つらいけど、大切な人に見守られながら回収されるのは、少なからず幸せだと思います」

「そうか・・・」

そう言ったあと、しばらく車の中は気まずい空気になっていた。何か言おうと必死に考えるが何も思い浮かばない。するとコンスタンスが「・・・ところで今回の案件、厄介そうなのでカズキに伝えた方が良いでしょうか」と尋ねてきたので

「うん、伝えておいて」

と返しておいた。

コンスタンスの気遣いのおかげで気まずい空気ではなくなった。

ギフティアと所有者の関係はさまざま。家族、友人、そして恋人。でも、ギフティアとどんな関係を築いても、別れは辛い。それだけははっきりわかる。

「わかりました。では、帰りましょう」

そうして俺達は日が傾き始めた街中を車で走り出した。

 

 

 

 

 

私――桑ノ実カズキは、今でも後悔している。あの選択を。

3年前、私は私の相棒――アイラにパートナー解消を告げた。私がパートナー解消を切り出したのは、回収対象のギフティアがワンダラー化してしまい、私が足に大怪我を負ったからだ。その出来事がアイラに負担をかけていた。だから私は、パートナー解消を切り出した。アイラのためだと思って。だが、それは、単なる逃げでしかなかった。私はアイラを見捨てたのだ。この出来事がきっかけにアイラは笑顔も見せなくなり、心を閉ざしてしまう。

そして3年後、アイラは、第一ターミナルサービスのお茶組み係をしていた。そんな時、アイラを変えた人物――ツカサが第一ターミナルサービスに配属された。アイラはツカサとパートナーを組むことになり、再びアイラは現場行くことになった。ツカサと一緒に過ごして行く中で、アイラは徐々に心を開いていった。だが、アイラはツカサから離れようとした。これはツカサのためだと言って。私はそんな彼女に言った。本当にそれでいいのかと。そして彼女を説得し、告白を後押しした。

そして、ツカサとアイラは恋人になった。だが、その幸せな時間は長くなかった。2人が恋人になったのは、アイラの寿命があと一ヶ月の時だった。

そして別れを迎えた。アイラは穏やかな顔で回収されていった。私がもしあの時、パートナー解消を行っていなければ、こんな結末にならなかったのだろうか。今、そんなこと考えたって意味は無いのにーー。

 

 

 

「・・・ズキ・・・カズキ、こんなところで寝ていたら風邪ひきますよ」

「んん、コンスタンスか」

頭痛がする。酔っ払ったまま寝ていたらしい。私の周辺には酒の瓶が転がっていた。

「寝るならベットで寝た方がいいですよ」

「ああ、そうする」

起き上がるとそこは、リビングで、明かりが点いておらず、真っ暗だった。酔いのせいか、視界がはっきりせず、足元もおぼつかない。ふと時計を見ると12時を指していた。私だいぶ寝てしまったようだ。

「ところで、今日本社に呼ばれていましたが、どんな用件だったんですか?」

「ん?ああ今日のやつか。チッ、あの野郎・・・」

遡ること9時間前――

 

 

「で、何ですか、私に用って」

私は今日、本社にある伍堂部長のオフィスに呼び出された。

「今日は、君に伝えておかなければならないことがある。」

わざわざ呼び出すってことは、それなりの用件だと思い、身構えた。

「何ですか、伝えておかなければならないことって」

「実は君に、他のターミナルサービスに研修に行ってもらいたい」

「・・・は?」

部長の予想外の発言に、思わず拍子抜けした声が出てしまった。

「何でそんなことを、今更しないといけないんですか?」

少し癇に障ったので、強い口調で言ってしまった。

「君達第一ターミナルサービスはいつも経費がかかり過ぎている。だから、他のターミナルサービスのやり方を見て学んできてもらいたい」

確かに第一ターミナルサービスは、他のターミナルサービス課より経費が大幅かかっている。ギフティアの回収は、単純に寿命が来たギフティアを回収するだけだが、うちは、所有者の心のケアまでしているため、多くの時間、労力、経費を消費してしまう。しかし、それをしなければ、所有者が心に傷を持ったままになってしまう。現に私は、一人の心を傷付けてしまった。もうこれ以上、所有者を悲しませたくない。だから私は、このやり方を変えるつもりはない。

「でも何で私なんですか?他にも人がいるのに」

「君が言ったのだろう?“所有者の心のケアもするべきだ"と。その考えを持っている君から改心してもらわないといけないからな」

「でも、それじゃ――」

私の言葉は、部長に遮られた。

「ーー言ったはずだ。私は会社を優先すると」

確かにうちのやり方は効率が悪い。しかし、所有者のケアをしていてもしていなくても、アンドロイドロスは起こっている。どうすればいいのか、全くわからなくなった。

「期間は一ヶ月程度を予定している。用件は以上だ」

 

この出来事の後に私はやけ酒をし、今に至る。

 

「研修ですか・・・」

「クソッ、部長の野郎、このタイミングで入れてきやがって・・・」

「どうしましょうか?」

私が第一ターミナルサービスを離れてしまうと誰かがまとめないといけない。ツカサはまだ新人だし、ヤスタカは論外。となると残るはミチルしかいない。

「ミチルに任せるしかないか・・・」

「・・・そうですね」

不安が残るが、今はそうするしかない。明日のミーティングの時に、このことを皆に伝えることに決め、立ち上がった。

「じゃあ、そろそろ寝るわ」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ・・・」

そう言葉を交わした後、私はベットに潜り、深い眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

「ただいま」

真っ暗な部屋に、自分の声が響き渡る。部屋の明かりをつけるとそこには、自分一人しかいなかった。

「・・・夕食、作らないとな」

そんな独り言をつぶやきながら、台所に向かった。お湯を沸かし、ハーブの準備をしていた時、ふと目に止まったのは、小さなメモ用紙だった。

――ツカサへ

ハーブティーの入れ方、覚えてる?

多分覚えていると思うけど心配なので、書いておくね。

[用意するもの]

 

・ドライハーブ

・蓋がついているティーポット、急須など

・茶漉し (ティーポットに付属している場合は不要。できるだけ目が細かいものが良いかな)

・お湯

 

 

1 ポットをお湯で温める

 

まずはポットをお湯で温めておいて。 沸騰したお湯をポットに注いでしばらく放置し、室温程度にまで冷めたらポットの中 のお湯を捨てて。

 

 

2 ドライハーブを入れる

 

☆注意☆

ブレンドハーブをより美味しくいただくために

 

ステビアや甜茶など重いハーブは下に溜まりやすく、マローブルーなど軽いハーブは上に集まっちゃう。 だから、袋を上下にシェイクしてハーブが均一になるよう混ぜるのがおすすめ。

 

ティーカップ(約120ml程度)1杯に対してティースプーン1杯〜1.5杯を目安、マグカップ(約250ml)なら山盛り2杯程度を 目安にドライハーブをポットに入れてね。ハーブの分量は上を目安にお湯の量で微調整して。あと、味の好みで入れる量を増やしたり減らしたりしても大丈夫。

 

3 お湯を注ぎ蒸らす

 

その後、沸騰したお湯をティーポットに注いで。できるだけお湯の温度は高め(95 度くらい)がハーブの成分をたくさん抽出できまるよ。 でも、煮立たせるのはNG。香り成分が飛んでいっちゃうから。ヤカンやケトルなどで沸騰させたお湯を使うといいと思うよ。

 

4 ハーブティーを注ぐ

 

 

ティーポットのお湯を軽く揺らしてお茶の濃度を均一にしたら、茶漉しを使ってティーカップにハーブティーを注いで。ハーブは小さい茶葉も含まれるので目の細かい茶漉しを使うのがお勧め。

ハーブに含まれる揮発性成分(アロマ)が鼻から脳へと香りを届けてくれるので、体の内側からもリラックスすることができるよ。

まずは、その香りを楽しんでね。

ハイビスカスやローズヒップがブレンドされたハーブティーなどは酸味がきつく感じられることもあるから、甘いハーブティーが好きな人はハチミツや砂糖などでハーブティーに甘みを加えることでもより美味しく飲めるよ。

 

 

これをマスターして、第一ターミナルサービスのみんなにハーブティー、入れてあげてね。

――アイラより

 

「・・・・・」

このメモ用紙を読み終わった時、自分が泣いていることに気づいた。

「・・・俺は、アイラに何かしてあげられたのかな」

涙が溢れてくる。嗚咽が混ざり、呼吸がしづらくなる。

「ずっと一緒ににいると約束したのに、その約束すら守れてないじゃないか!」

キッチンに拳を叩きつけ、その場に崩れ落ちた。

「クソッ、クソッ、クソッ!」

何か救う方法はなかったのか、もっと早く行動していればもう少し長く一緒にいられたのではないか、と後悔と懺悔の念が徐々に湧き出てくる。

――そんな時、自分の端末が鳴っていることに気づいた。端末の画面には「ミチル」と映し出されていた。

急いで涙を拭き、通話ボタンを押すと、 画面に私服姿のミチルが映し出された。

「・・・ツカサ?ちょっと話があるんだけど」

「な、なに?」

『話』というものに若干恐怖を覚えながらも返答してみる。

「・・・あんた、もしかして泣いてた?」

「え!?いや、その、えーっと・・・」

ばれたことに驚いてしまい、返答がしどろもどろになってしまう。

「別に隠さなくてもいいから。ところで、あんた、最近無理してるでしょ」

「・・・」

何も言えなくなってしまった。確かに最近心から笑うことが出来なくなっていたのは事実だ。

「また、アイラのことを考えていたの?」

俺は無言で首を縦に振った。

「いい加減こだわるのやめたら?いい、もうアイラはいないの。なにをしても帰ってこないの!だから――」

「俺は約束したんだ、ずっと一緒にいるって。だから、叶えないといけないんだ。彼女の願いを――」

そう、俺は何をすればいいか、何をするべきか今、ようやく分かった。

「それって、まさか――」

俺は大きく息を吸い、思いを吐き出した。

「『大切な人といつかまた巡り会えますように』という願いを」

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

緊急ミーティングを開き、全員に事情を説明した。

「――というわけで、私は一ヶ月ここを留守にする。だからここの指揮を、ミチル、お前にしてもらう」

「え、わ、私ですか!?」

ミチルは驚愕の表情をしている。まあ、無理もないだろう。

「お前が適任だと思ってな」

「は、はあ・・・」

とりあえず事情は説明できたので、よしとすることにした。

「ミーティングは以上だ。解散」

これで私がいなくても大丈夫だろう。・・・たぶん。

「研修、か・・・。部長さんもやるねぇ」

「ヤスタカ、そこは感心するところではありません」

うんうんと頷くヤスタカにすかさずシェリーがツッコむ。シェリー、ナイスだ。

その後、しばらくデスクワークをし、時間を持て余していた。そんな時、

「ハーブティー入れましたげど、誰か飲みますか?」

と、ツカサが声をかけてきたので、いただくことにした。私のほかにも、ミチル、コンスタンス、山野辺課長、レンが手を挙げた。

しばらくして、ツカサがお盆にティーカップをのせてやってきた。目の前に置かれたティーカップには、赤みがかったハーブティーが入っており、そこからスパイシーな香りが漂っている。これはローズマリーティーか?、と尋ねると、

「はい。今回はハチミツを加えてみました」

「そうか・・・」

そう言いながらハーブティーに口をつけた。

「・・・美味い」

ダメな部分を指摘するつもりが、おいしさのあまりつい本音が出てしまった。さっぱりとした味わいにハチミツのほのかな甘みがあり、穏やかな気分になった。

「ほ、本当ですか!」

ツカサが目を輝かせながら詰め寄ってくる。これはまずい。

「で、でも、まだアイラには及ばんな」

「ですよね~」

なんとか誤魔化すことはできた。ツカサは他の人のところに行って感想を聞いたりしている。

ツカサがお盆を持って、給湯室向かう時に

「カズキさん、ちょっといいですか」

と言ってきた。その顔はとても真剣だったので無言で頷き、付いていくことにした。

 

ツカサは人目のないところ立ち止まり、こちらに向き返った。

「で、私に何のようだ?」

「これを見てもらえますか」

ツカサが出してきたのは、紙の束だった。

表紙には『活動レポート』と書かれており記載者は江藤ナオキとなっていた。どこ見てもただのレポートだった、ある部分を除いては。

「これはっ・・・!」

記載日が相当古い。少なくとも10以上前に書かれたことがわかる。

 

 

「そうです。これは18年前(・ ・ ・ ・)に書かれたものなんです。」

 

 

 

 

 




ターミナルサービスの仕事の概要については、プラメモの小説を参考にさせてもらいました。また、ハーブティーの入れ方は http://shop-dwts.com/smartphone/page10.htmlを引用させてもらいました。
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