再び夜は廻る   作:kurohane

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三日目(7)『鏡の間へ』

「……まさか、こんな小さな手鏡を使って、あんなにうじゃうじゃ影のお化けが出てきてたなんて……」

 

 

 サキは、先程手鏡を取るために滑り込んだ長机の下から出てくると、ぴったりと閉じられたその折り畳み式の手鏡を見ながらそう呟いた。

「この『鏡映しの図書館』に落ちてるってこと以外は、普通の手鏡だよね……? なんでその手鏡から、影のお化けが出てきたの……?」

 私は立ち上がってサキの元へ行き、その手鏡を見せてもらう。一見普通の手鏡にも見えたけれど、よくみたら手鏡のメーカー名のロゴが鏡映しになってる。だけど、それ以外はいたって普通の手鏡で、あの大きな鏡のような、怪しい雰囲気は感じなかった。

 

 

 そんな私達の疑問に……『もう一人のサキ』の声が、答えた。

 

 

『そう。それは【私の本体】と違って、普通の鏡。あの影達は、それを中継ぎの依り代にしてこの部屋に現れていたんだよ。私と違って、影達は鏡の近くでないと行動できないから』

 

 そう答えるのは、つい先程、扉の前の段ボール箱を退かし終えて、扉を開けてこの部屋に入ってきた……サキの姿をした鏡像のお化けだった。

「本当に助かったよ。もし貴女が助言をしてくれなかったら、この手鏡のことに気付かなかったと思うし、仮に気付けたとしても、扉の前の段ボール箱を動かせなくて途方に暮れてたと思う。……だけど、どうして私とハルを助けてくれたの? その様子だと、本気で私達を襲うつもりは無いみたいだけど……」

 サキは、鏡像のお化けにお礼を言いながらも、私もずっと疑問に思っていたことを尋ねる。鏡像のお化けはこれに頷く。

 

『貴女達二人が考えている通り、私も、あの影達も、【私の本体】を依り代に生まれた存在……。だけど、依り代が同じというだけで、生まれた経緯も、その行動目的も違う。だから私とあの影達が仲良しってわけじゃないんだ』

 そう鏡像のお化けが答える。確かに『あの夜』、影のお化け達には襲われたけれど……この鏡像のお化けは襲ってこなかった。

「成程……それじゃあ、なんでずっと本物の私のフリをしてハルと行動していたの?」

 少しサキが怒ったように鏡像のお化けに尋ねる。……や、やっぱり、まだ根に持ってるのかなぁ……?

 

『それは貴女も聞いた通り、以前、影のお化け達がその子を襲ったことがあるから……。だから同じ【鏡】から生まれた私が最初から素性を明かして接触したところで、混乱を招くか、まったく信用して貰えないだろうと思ったの。だから少しの間騙してしまうことになるけれど、貴女を見つけるまでは貴女のフリをして行動して、貴女を見つけたら事情を説明しようと思ってた。……まあ、その結果は知っての通りだけども』

 鏡像のお化けが少し苦笑いしながらそう答えた。サキが「成程ね……」と頷く。

 

 

『とにかく、あの影達に貴女達を好き勝手させるわけにはいかない。貴女達が事情を分かってくれたなら話は早い。この部屋には入れたってことは、鍵の束は持ってるよね?』

「うん、私が持ってる」

 鏡像のお化けの問いに、サキが『鏡映しの図書館の鍵の束』を見せる。それを見た鏡像のお化けが頷く。

『それなら【私の本体】のある部屋はすぐだよ。【私の本体】のある部屋に行けば、貴女達を元の世界に戻してあげることが出来る。影達が次の行動を起こす前に、急ごう』

「うん、分かった。行こう、サキ」

 そう私が言うと、サキは少し私の目をじっと見た後……すごく不機嫌そうな顔になる。

 

 

「………………。ハル、それどっちの『私』のこと?」

 

 

 不機嫌そうな目で私を見るサキ……。サキがどうして不機嫌になったのか、思い当たった私は、しまった、と慌てて訂正する。

「ご、ごめん! 今のは『本物のサキ』の方……」

「ああ、そうなんだ……。……ごめん『鏡像の私』、ちょっとハルに説教があるから先に行っててくれる?」

「え……ええっ!?」

『あはは……まあ、程々にしてあげてね』

 そう言うと、鏡像のお化けは苦笑いしながら扉の向こうへ行ってしまった……。

 

 

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

 

 

「お待たせ」

「お、お待たせ……」

 『お説教』の後、私とサキは廊下で待っていた鏡像のお化けと合流する。

 

『まあ、何があったかは聞かないでおくよ。その様子だと結構こっ酷く叱られたみたいだし』

「う、うん……」

 私に元気が無いのに気付いたのか、鏡像のお化けが私を気遣ってそう言ってくれた。サキは「……そんなに酷く怒ったつもりはないんだけどなぁ」と隣で呟く。鏡像のお化けは『そうは見えないんだけど……』と苦笑いした後、廊下の奥の扉を指差す。

 

 

『【私の本体】のある部屋には、あっちの【資料室】の扉から行く方が近いよ。あの扉、内鍵が壊れてて使えないから、こっちに来る時は開けられなかったけれど、こちら側からなら鍵で開くはずだよ』

「ってことは、【地階・資料室】って書いてある鍵だね。ちょっと待ってね」

 

 

 サキはそう言って、『図書館の鍵の束』を手に扉に近付くと、扉に掛かっている鍵を開けた。

 

 

「よし、開いたよ」

「………………」

『じゃあ行こう……って、ハル、どうしたの?』

 立ち止まったままの私を心配して、鏡像のお化けが声を掛ける。

「………………。……ご、ごめん怒り過ぎたかな……? ハル、もう私は気にしてないから、一緒に行こう?」

 サキがそんな私を心配して、私に慌てて駆け寄って私の手を握ると、「ほら、行こう?」と今しがたサキが『鍵の束』で開けた扉を指差す。

「う、うん……。……ごめんね、サキ」

「………………」

 私はサキに手を引かれながら、『大きな鏡のある部屋』を目指す……。

 

 

 

 

『よし、影達もいない……今がチャンスだね』

 

 

 そして、資料室を抜けた先の廊下。大きな引き戸を開けた鏡像のお化けは、その先の大きな部屋に置いてある、あの大きな鏡に駆け寄る。

 『あの夜』、鏡を覆っていた布を掛け直したはずだけど、その布は外されていて……怪しく輝くあの大きな鏡が、私とサキ、そして鏡像のお化けを映している。

 

 私とサキがその大広間に入ると、鏡像のお化けは私とサキを鏡の前で振り返る。

『ここまで来られれば安心だね。それじゃあ二人共、私が手伝うから、この鏡を……』

 

「………………」

「………………」 

 私も、サキも……それには応じなかった。

 

『ほら、早くっ!! 早くしないと影達に気付かれるっ!! 早くこの世界から元の世界に──』

 そんな私とサキを急かすように、鏡像のお化けが焦ったように手招きする。

 

 

 

 

「……悪いけど、貴女が私とハルを騙そうとしていることは、私もハルも……もう気付いてる。ハルにも、さっきこれで証拠を見せたところだよ」

 

 

 

 

 何も言わない私を、申し訳なさそうに見た後……サキが、手に持った『鍵の束』を鏡像のお化けに見せる。

 ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……『()()()()()()()()()()()()()

 

 

『え………………?』

 それを見た鏡像のお化けが……絶句する。

 

 

「私、多目的ホールでハルに説教なんてしてないよ? ただ……ハルが持っていた『元の世界の図書館の鍵の束』と、私の持っていた『鏡映しの図書館の鍵の束』をハルにお願いして交換したんだ。そして資料室の扉の鍵は、こっちの『元の世界の図書館の鍵の束』の鍵で開けた。……貴女がハルにした説明が正しければ、鍵穴の中も鏡映しになっているはずだから合わないはずの鍵でね」

『………………っ!?』

 そう言いながら、サキはポシェットに鍵の束を入れた。鏡像のお化けは、驚いた顔のまま、動かない。

 

「……じゃあ、約束通り、順番に説明するねハル。……ハルにとっては辛いかもしれないけど、ごめん、許してね……」

「……うん」

 私がそう言って頷いたのを確認すると、サキは「……ごめんね」ともう一度呟いた後、鏡像のお化けに顔を向ける。

 

 

「この『鏡映しの図書館』は、鏡の中の別世界でもなんでもなくて……貴女が私達に見せている幻覚だって、アヤメが教えてくれたんだ。最初は信じられなかったけれど……よくよく考えたら、私が図書館の外で見た、『ハルの姿をした貴女』が左右反転していなかったのが、なによりの証拠だったよ。ハルやアヤメ達が襲われたっていう、一階にいた図書館のお化け達もね。本当にここが別の世界なら……あれらのお化け達はいないはずだから」

『………………』

 

 

 サキは、あのアヤメというお化けの女の子から、事前にそう聞かされていたみたいだけど、サキはあのアヤメという子を良く思ってないみたいで、最初は全く信じていなかったみたい。

 それでも、どこかでその情報が正しいかどうかを調べられないかと思っていたところに、あの資料室の扉の鍵で、私に鏡像のお化けが私とサキを騙そうとしていることを伝えると同時に、情報が本当かどうかを確かめられると思いついたみたいだった。

 

 

「上手く『元の世界のモノ』と『鏡の世界のモノ』を分けて見せてたようだけど、実際はただの幻覚だから強引に元の世界の鍵を使おうとすれば使えてしまう。唯一の例外は……図書館の泥棒騒動の後、使用する鍵を変えていた『多目的ホール』。資料室はまあ、多目的ホールを経由しないと入れないからそのままの鍵だったんだろうね。その証拠に、鍵を交換したなら一緒に直ってるはずの内鍵が壊れたまま直ってない」

『………………』

 

「……私の持っていた鍵の束は、図書館の泥棒騒動の後に多目的ホールの鍵が付け替えられる前の鍵。だから、私の持っていた鍵の束の多目的ホールの鍵じゃ、あの鍵穴には合わなかったんだ。『鏡映しの図書館の鍵の束』であの扉の鍵を開けられたのは、本来スペアの鍵の束として保管されていた鍵の束に、新しい多目的ホールの鍵を付けてあったから。……事務室にスペアの鍵の束が残ってないのは、『鏡映しの図書館の鍵の束』自体が、あの日私が持ち出したまま返してなかった鍵の束の代わりに使われ始めた、スペアの鍵の束だったから」

 私がそう説明すると、サキが驚いた顔をした後、また申し訳なさそうな顔をして……再び鏡像のお化けに視線を送る。

 

「最初私のフリをしていたのは、ハルを混乱させないためも何も……最初から最後まで私のフリをして騙し通して、この部屋に連れてくるつもりだったから。なんなら私には逃げられても別に構わなかったんじゃないかな? ……貴女の願いは、ハルだけでも叶えることができたから」

 

 

 ……そこまでサキの説明を驚いた顔で聞いていた鏡像のお化けが……嗤い出した。

 

『まさか、気付いていたとはね……そう、私が……』

 

 

 

 

「……嘘が下手だね。……ついでに、悪役っぽい笑い方も」

 

 

『え…………?』

 ため息混じりに、サキがそう呟くと……鏡像のお化けが、また驚いた顔をする。

「貴女の目的が、私とハルを殺すことや、私やハルとすり替わることなら、貴女自身にもいくらでもチャンスがあったはずだよ? 逆に、私やハルを助けて、図書館から出すつもりなら、私とハルが合流した時点で幻覚を解いて、図書館から出して帰らせるだけでいい。……だけど、貴女はどちらもしなかった。それは貴女の願いが、私とハルに……その鏡を壊してもらうことだったからじゃないかな」

『────っ!!』

「ハルは以前、影のお化け達を室内灯の明かりを消すことで対処した。だけど、この明るい『鏡映しの図書館』では、明るさに関係なく影のお化け達が出てきてしまう……だから、貴女は私達に鏡を壊させることで元の世界に戻れると嘘を付いて、その鏡を壊させるつもりだったんだ……。そうするしか、『鏡映しの図書館』を抜け出す手段はないから、ってね……。……違う?」

 サキの問い掛けに、鏡像のお化けが、驚いたように目を見開き──

 

 ──……そして、溜め息を付いて、静かにその目を閉じた。

 

 

 『──……なんでバラしちゃうかな……何の遠慮も無く、【私】を壊してもらいたかったのに……』

 

 

 再び目を開いた鏡像のお化けが……悲しげな顔で、私とサキを見た。

 

「……どうして? 貴女にとってもその鏡は、とても大切なものなんでしょ……? どうしてそれを壊すなんて……」

 私がそう尋ねると、鏡像のお化けはその悲しげな視線を私に向ける。

 

 

 『……ずっと布を被せられて、ずっと暗闇の中に放置されて、何も映せない鏡なんて……死んでしまっているのと同じなんだよ、ハル』

「…………っ!?」

 鏡像のお化けの答えに、私ははっと息をのんだ。……サキは、静かに鏡像のお化けを見ている。

 

 

 『……この鏡が元々何だったのかは、私自身もよく分からないんだ。どこかの神社の御神体だったのかもしれないし、何かの呪術で使われていた物なのかもしれない……。……だけど、私が【生まれ】た時にはもうここにあって……ずっとずっと、何十年も……何も映さずに置き去りにされてたんだ』

 そう言って、鏡像のお化けは鏡を見る。鏡面は『あの夜』見た時のように怪しく輝いているけれど……そんなに長い間放置されていたとは思えない程、澄んだ……その大きな鏡を。

 

『……【私】はここに居るのに、誰にも必要とされない。受けるべき光も、映すべきモノも、無い……。どんなに一点の曇りもない、大きな鏡面を持っていても……布を被せられて、光も受けられない【私】は自分の役目を果たすことも出来ず……ただただ、そこに在るだけ』

 

 

「………………」

 鏡像のお化けの言葉に、私が『あの夜』したことを思い返して……私は言葉を失った。

 

 鏡は、光が無ければ鏡像を映さない。

 それは『あの夜』に偶然目を通した科学の本にも書いてあったこと。『あの夜』、襲ってきた影のお化け達から逃れるために、私が室内灯を消して、鏡に布を被せた理由。そうすることで、私はあの影のお化け達から逃れることが出来た。

 だけどそれは、鏡から光を奪ってしまうこと。

 鏡が、何も映せないように……真っ暗闇の中へ、もう一度閉じ込めてしまうこと。

 

 私には、鏡像のお化けに怒られる理由も、憎まれる理由もあるのに……なのに、鏡像のお化けは……。

 

 

「だから私達に壊してもらおうとしたの……? 私達が鏡を壊して……貴女が消えるために」

 何も言えない私の代わりに口を開いたサキの問い掛けに、鏡像のお化けは寂しげに笑う。

 

『私が消し去りたいのは、私自身もそうだけど……あの影達でもあるの。あの影達は、何十年も何も映せずに置き去りにされていた、【私】が唯一映し続けた【闇】……それが影として形を得た物。あの影達がいる以上、もう【私】は鏡としての役目を果たせない……。そのことは、あの日……貴女が教えてくれたことだよ、ハル。……あの影達に襲われて、あんなに怯えて……【私】を“閉じ”た、貴女が』

「わ、私……そんな……」

 大きく首を横に振って、そうじゃない、……と伝えようとした私を、鏡像のお化けが首を横に振って制した。

 

『やっぱり貴女は優しいね……ハル。あの影達の恐ろしさは、貴女が一番よく知っているはずなのに……まだ私のことを心配をしてくれてる……』

 

 鏡像のお化けはそう私に寂しげに微笑むと、私を諭すように話し出す。

 

『……だけどね、ハル。このまま【私】がここに在り続ければ、いずれ貴女のように、あの影達に襲われてしまう人間が現れるかもしれない。あの影達に、取り殺される人間が出てしまうかもしれない。【私】は遅かれ早かれ、人を殺してしまう……。そうなれば、【私】は呪われた鏡として、より厳重に布で縛られて、二度と何も映せなくなるか……粉々に砕かれてしまうかのどちらかになる』

「…………っ!!」

『だから……【私】が誰かを傷付けてしまう前に……【私】が誰かを殺してしまう前に、終わらせて欲しい。貴女達二人には【私】を壊すだけの理由もある。あの影達に襲われて……【私】の危険性を理解している、貴女達なら……』

 

 

 そういって、鏡の縁へと鏡像のお化けが手を触れた──

 

 

 

 

 ──その一瞬後、鏡から、色の無い腕が、一斉に伸びて……鏡像のお化けを捕らえる。

 

 

 

 

『っ!? な、なんでっ!? この鏡からは出て来られないようにしたはず──』

 鏡像のお化けは抵抗する暇も無く……あっという間に鏡の中へと引き摺り込まれてしまった。

 

 

 

 

 ……一瞬後、私は眩暈のような感覚に襲われて目を閉じて……再び目を開くと、そこは、『あの夜』にも見た……室内灯の明かりだけで照らされた、あの薄暗い部屋だった。

 

「──これはっ!? ……そうか、鏡像のお化けがあの鏡の中に連れていかれちゃったから……私とハルの幻覚が解けたんだ……っ!!」

「さ、サキっ!? あの子が……っ!?」

 私とサキは、突然の出来事に何もできず、ただ消していた懐中電灯を点け直して、身構えることしかできなかった。だけど、私とサキが混乱している暇も無く……──

 

 

 ずるっ……ずるっ……ずるっ……ずるっ……!!

 

『アハハッ!!』

『フフ……ッ!』

 

 

 鏡像のお化けが引き摺り込まれた鏡の中から……ずるりずるりと、多目的ホールで見た、私の影のお化けと……サキの影のお化けが、嗤いながら次々に出てくる……っ!!

 

 

 ずるっ……ずるっ……ずるっ……ずるっ……!!

 ずるっ……ずるっ……ずるっ……ずるっ……!!

 

『キヒヒッ!!』

『フフ……ッ!』

『アハハッ!!』

 

 

「……じゅう……じゅういち……じゅうに……嘘でしょ……まだ出てくる……っ!?」

 サキが鏡から出てくる影のお化け達を数えながら、慌ててポシェットからペンライトの束を取り出して、右手に握る。

「そ、そんな……っ!! あの時よりも……ううん、多目的ホールで出てきた時よりも、ずっと数が多い……っ!!」

 私も、ポシェットから取り出したペンライトを手に持って、鏡からぞろぞろと出てきた影のお化け達と対峙する。

 

 

『オイデ、オイデ、オイデ、オイデ……』

『アソボウ、アソボウ、アソボウ、アソボウ……』

 

 鏡から出てきた影のお化け達の一団から、一人ずつ前に歩み出た、私の影のお化けと、サキの影のお化けが……嗤いながら語り掛けてくる。

「……え? ……ねぇ、ハル……こいつら、喋らないんじゃなかったっけ……?」

「わ、私も……この影のお化け達が喋ったのは、初めて聞いたよ……」

 ……私もサキも、頭の中の整理が追い付いてないんだと思う……そんな、どこか場違いな会話をしてしまう。

 

 

『オイデヨ……サキ』

『アソボウヨ……ハル』

『ワタシタチト、』

『ワタシタチト、』

 

 二人の影のお化けは嗤いながら……まるで、親しい友達を遊びに誘うような口調で、私の影のお化けと、サキの影のお化けが、私とサキに語り掛けてくる。

 

 

 

『『ズット、ズット、ズット、ズット、ズット、イッショニ……!!』』

 

 

 私とサキに返答をする暇も与えずに……影のお化け達が一斉にこちらへと駆け出す……っ!!

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