キン肉マンⅡ世~転生超人襲来編~   作:やきたまご

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前代未聞!?
盗賊(バンデット)VS老人介護員(ヘルパー)!!


老人介護員の覚醒!!の巻

カーン

 

  高々にゴングが鳴らされ、二人は対面するようにリング中央に向かう。

 バンデットマンが黒装束を脱ぐと、盗賊を彷彿させる格好の男が現れた。

 見た目は中年の無精ひげの男、眼光はするどく、バンダナをつけている。

 服装は身軽そうなTシャツとズボンである。

 突然、黒装束をニルスにかぶせるように投げた。

 

「うっ!」

 

 唐突に黒装束で視界をふさがれたニルスは、咄嗟に両腕を顔面の前に上げて、ガードの体制をとった。

 

「仕事があるんだ! さっさとけりをつけるぜ!」

 

 バンデットマンはダッシュで勢いをつけながら、後ろ回し蹴りを放った。

 

グニュウ

 

「ガァ!」

 

 バンデットマンの後ろ回し蹴りがニルスの股間にヒットした。

 体重の乗った一撃にニルスは苦悶の表情を浮かべた。

 

「なんと! バンデットマン! 体重の載ったバックスピンキックをニルスの股間にヒットさせた! ルールで認められているとはいえ、これは苦しい一撃です!」

 

「そうらもういっちょ!」

 

 間髪入れずに、バンデットマンの左の拳がニルスの右頬をとらえた。

 

「バンデットマン! すかさず左フック! ニルス早くもダウンだ!」

 

 倒れたニルスはすぐ立ち上がろうとするが、ダメージの影響で四つん這い状態から起き上がることができない。

 

「おのれ! なんと卑劣な行為を! これまで戦ってきた貴様の仲間はこんな卑怯なことはしてなかったぞ!」

 

 身体のダメージとは裏腹に、ニルスはバンデットマンに激高し、戦う意思をが弱ってはいない事を示す。

 

「卑怯? 俺は目的のために手段を選ばんタイプでな、だから盗賊なんだよ!」

 

 バンデットマンは四つん這い状態のニルスの顔面にローキックを当てる。

 

「バンデットマン! 容赦無用の攻撃を加えています! ニルス! 早くもKO負けか!?」

 

「バリはん、いやニルスはん……」

 

 ET顔のお婆さんが心配そうに見ている。

 他の観客のお爺さん、お婆さんも同じ反応だ。

 

「いけない、これ以上ご老人方を心配させるわけには!」

 

 ニルスはバンデットマンのキックのタイミングに合わせ、両手で足を捕まえる。

 

「ニルス! 負けじと反撃のドラゴンスクリューだーーーーっ!」

 

 前に倒れこんだバンデットマンの左腕を、ニルスはすかさず両腕でとらえた。

 

「ニルス! 流れるようにバンデットマンを脇固めでとらえたーーーっ!」

 

「なんの!」

 

 バンデットマンは右手で少し体を浮かせてから前転し、脇固めを脱出した。

 ニルスは素早く反応し、前転後のバンデットマンの首を両腕で締め上げる。

 

「バンデットマン! 上手く技を脱出しましたが、すぐにニルスの技にとらえられたーーーっ! それにしてもニルスの動きには驚きました! まるでジージョマンが乗り移ったかのように寝技、関節技を繰り出していきます!」

 

「これは予想外だったぜ、未熟なお前さんがベテラン顔負けの動きを見せるじゃねえか」

 

 技を決められながらもバンデットマンは余裕の笑みを見せる。

 

「先の悪魔種子との戦いの後、ジージョマンと話したんだ。もしもまた二人が別れることになったらと想定し、私はジージョマンに技術を授かってきたんだ! 幸運なことに、今までジージョマンと同じ体を共有していたおかげで、ジージョマンの技術を短期間でマスターすることができたんだーーーっ!」

 

「なんと! ニルスはジージョマンから技術を伝授されたようです! これはまさかの番狂わせが起きるか!?」

 

「なぁるほど、ならば、ちいとばかし本気を出させてもらうか!」

 

 バンデットマンは技をかけているニルスごと持ち上げるように立ち上がった。

 

脱出(エスケープ)スクリュー!」

 

「バンデットマン! チョークスリーパーをかけられた状態で素早く回転する!」

 

 バンデットマンの回転による遠心力でニルスの体は浮き上がり、両腕にかかる遠心力に耐えられず、技を解いてしまった。

 

「あーーっと! すさまじい遠心力でニルスの体がリングロープまで吹っ飛んだ! バンデットマン! なんとも奇抜な方法で技から脱出!」

 

「盗賊ってのは逃げるのも仕事の内だ! これぐらいの技簡単に逃げられなくちゃ、盗賊の名が廃るってもんだ!」

 

「く、くそう!」

 

「では、盗賊七つ道具をご覧にいれてみせるぜ」

 

 バンデットマンは頭のバンダナから何かを取り出すような動作をする。

 

「食らえ! バンデットナイフ!」

 

 バンダナから取り出したナイフを、間髪入れずにニルスの心臓に向かって投げた。

 

「あーーっと! ニルスの心臓に向かってナイフが一直線! これはニルス避けられない!」

 

ピタ

 

「なに!?」

 

「すごい! ニルス! なんとナイフをいとも簡単に、人差し指と中指で挟んで受け止めた!」

 

「お前さん、鈍そうに見えて案外反射神経がいいじゃねえか。矢でも受け止める練習をしていたのか?」

 

「その通りだ、かつて試合中に矢を首に受けてしまったことがあってな、戦えなくなりジージョマンの足を引っ張ってしまった。もしまた同じような敵に遭遇しても大丈夫なように、矢を受ける特訓をしてきたのだ!」

 

「きぇきぇきぇ! 思ったよりも楽しませてくれるようだな! じゃあこれならどうだ!」

 

 バンデットマンは左ジャブをニルスに繰り出していく。

 ニルスは顔面のガードをするも、拳がガードの間を抜けて、ニルスの顎にヒットする。

 

「うっ!」

 

「そうらまだまだ!」

 

 バンデットマンはニルスのがら空きの脇腹を狙って右ボディブローを放った。

 

「ぼぉ!」

 

 股間へのダメージが抜けていない分、より激しい苦痛がニルスの腹部を襲う。

 

「バンデットマン! ニルスにジャブ、ボディーブローとパンチを的確にヒットさせていく!」

 

「やはりな! さすがに打撃センスまで鍛えられる時間はなかったみたいだな!」

 

 ニルスの両腕のガードが緩んだ。

 バンデットマンはそれを見逃さず、左ストレートをニルスの顔面に当てに行く。

 

「なにくそ!」

 

 バンデットマンの左ストレートにニルスは頭を当てにいった。

 

「ぐがぁ!」

 

「ニルス! 負けじと頭突きで、バンデットマンの左拳を破壊しに行った!」

 

 ニルスは頭突きの影響でややぐらつき、さらに額が流血している。

 

「良い子ちゃんのお前にしては珍しいラフファイトだな。そんなに俺に勝ちたいのか?」

 

「そうだ! 未熟な私がここまでお前とやり合えるのも、偉大なるご老人の力があってこそ。恩返しとして勝利をささげたい! だが、それ以上に私のプライドが理由でもある!」

 

「プライドだと?」

 

「誇れることではないが、私はこれまでジージョマンに頼りっぱなしで、自分の力で勝ったことが一度もない! せいぜい私にできたのはジージョマンの体力回復のための時間稼ぎだった。この試合を見ている誰しもが私を未熟な弱小超人と思っているだろう! そのイメージを払拭してやりたい! 私はこの試合で、正義超人ニルスとしての存在を世に示すのだーーーーーーっ!」




若人(ニルス)よ! 今こそ成長を見せよ!

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