一同は超人の神ミスターノアの一言に驚いた。
完璧超人の一人ネプチューンキングが神だったという事実を誠に信じられないからだ。
中でもネプチューンマンが一番驚いている。
「ネプチューンキングが神だっただと!? そんなこと一度も聞いたことがないぜ!」
周りの反応に対し、超人の神ミスターノアの反応は淡々としている。
「だろうな、あいつは神に戻りたいという本心を隠しながら、完璧超人として活動をしていたらしいからな」
「神に戻りたい? 活動だと? 話が読めないぜ!」
「では丁寧に説明してやろう。あいつはその昔、海と地震を司る神ネプチューンであった。かつて、超人だけでなく、人間の世界まで荒廃し、神々は世界を一度滅ぼそうと考えた。まず、雷の神ゼウスが超人たちに救いの手を差し伸べようとした。ネプチューンマン、おまえもよく知っている男だ」
「雷……もしや、ザ・マンか?」
「そうだ。お前がその昔使っていたサンダーサーベルは元々はザ・マンの技の一つであった。雷の神であったあやつなら、雷の技などたやすき事だ。そして人間を救うために立ち上がったのは、私とネプチューンであった。やつもその昔は人格者であり話のわかるやつであった。私とネプチューンは善良なる人間や動物を救い出し、ノアの箱舟へと乗せた。ノアの箱舟の仕事が完了した後、ネプチューンは自らの力で地上に大洪水をもたらした。その後、地上にまた人間や動物達が平和に暮らす世界が作り出されたかのように見えた。しかし、いつの世も悪い人間が現れてくる。ネプチューンは性善説で人間を見ていたが、やはり人間は性悪説と考えを改め、悪しき人間を滅ぼすために、大洪水や地震といった天災をその都度起こした。とうとう私とネプチューンは対立し、戦うことになった。私は辛くもあいつに勝つことができ、とどめをさそうとしたのだ。そこへゼウスがやってきた」
(グロロロ、待ってはくれぬかミスターノアよ)
(ゼウス……しかし、こいつの魂は腐りきってしまった。いくら慈悲深いお前でも救えない……)
(私がネプチューンの力を封印しよう。また暴走しても容易に止められるようにな。こいつには私が近々構成する予定の完璧・無量大数群の長を務めさせよう。一からのやり直しをさせ、やつを改心させる。それでどうだ?)
(……分かった。では、我が盟友をよろしく頼んだ)
(うむ)
「こうして、ネプチューンは完璧超人へと生まれ変わったのだ。ゼウスやネプチューンの存在が完璧超人が神に近い存在だと言われている所以でもある」
ここまでの話をネプチューンマン、そして会場の皆も聞き入っていた。
「キングがかつてそこまで偉大なる方だったとは……」
「お前はネプチューンキングとはテームズ川の底で出会ったのだろう? 完璧超人といえども川の底でずっと生きていけるはずがない。やつが昔海を司る神であったからこそだ」
「い、言われてみればそうだ!」
「しかし、その頃には奴はとんでもない企みを持っていた。マグネットパワーを利用して神だった頃の力を取り戻そうとしたのだ!」
「マグネットパワーだと!?」
「マグネットパワーはお前も知っての通り、強力な力を持つ。強大な磁力を生み出し、時間すらも巻き戻し、かつて悪魔やオメガケンタウリの六槍客も狙っていたほどだ」
悪魔がその話を聞いてゲギョゲギョと笑っている。
「ネプチューンはそれを狙い、マグネットパワーを管理していたサイコマンに近づいた。しかし、ゼウスが育てた弟子だけあって、ネプチューンの企みにすぐに気づき、完璧超人からほぼ脱退の扱いを受けた。それでもやつはチャンスを待ち続けていた。ネプチューンマン、お前と会う日をな。そして、人間社会の滅亡とやり直しを野望に抱き、タッグトーナメントに参戦するも、やつはキン肉マンとテリーマンとの試合によって命を落としてしまった」
「……ネプチューンキング、最後にはすっかり落ちぶれちまったが、俺に完璧超人という生き方を教えてくれた恩人でもある。あまり俺も人のことをいえる立場でもないし、あの人を悪く思えねえぜ……」
「話はそこで終わりでない。ネプチューンキングやサイコマンがマグネットパワーを乱用したせいでマグネットパワーが暴走を始めたのだ!」
「マグネットパワーの暴走?」
「マグネットパワー自身の力は強い。ゆえに制御は難しく、容易く扱えるものではない。その暴走は大地震、大津波、火山噴火といった形で地球に現れた」
テリーマンがそのことばに反応した。
「つまり、テキサスで発生するツイスターや日本で最近起きた大震災も皆マグネットパワーのせいだというのか?」
「そのとおりだ。しかし、マグネットパワーは意思を持ち、このままではいけないとでも思ったのか、そんな自身を管理する存在をも生み出したのだ」
「管理する存在?」
「それを、今そこで戦っているバンデットマンに調べさせて、管理する存在が誰であるかを確信した」
その言葉にバンデットマンが反応した。
「いいのかい主さんよ、秘密はもうちょいとっておいてもいいんじゃないのか?」
「大丈夫だ。その管理する存在とは、超人の娘である」
ハラボテが勘付いたような反応を見せた。
「そうか、先の戦いでティアーマンが言った発言、もしや……」
「ハラボテ、お前の察しのとおり、過去の世界へと旅だった二階堂凛子、彼女こそがマグネットパワーを管理する超人だったのだ!!」
この会場に存在する者全員、そして遠くからこの試合観戦している皆に衝撃が走った!
「にわかには信じられんな。当の本人に聞こうにも過去の世界にいるしな。もしそれが本当だとしたら、二階堂凛子は巨大な力を操る存在、世界の自然現象をも操る事が出来て、人間の存在の滅亡も自分の意志次第ってことじゃねえか!!」
「さすがご察しがいいなネプチューンマン。私は世界を浄化するためにも、彼女の存在がとても必要なのだよ。仮に彼女を渡さないという気があるやつがいれば、私はそいつを殺してでも彼女を手に入れるつもりだ!」
「もうとんでも歴史話は終わったのかい、ミスターノアさんよ!!」
唐突に発された大声の主はブロッケンJr.であった。
「今は俺達が戦っているんだ! あんたが主役じゃねえんだよ!」
現在リングで戦っている各選手、言葉に出さずともその通りだという態度をとっていた。
さて、ボーン・コールドとバンデットマンが対するリングに注目が集まる。
「おめえさん、確か報酬で動く男だったな。どうだ? 俺を殺したら俺の宝を譲ってやってもいいぜ! 高価なものもじゃんじゃんあるぞ!」
「そいつはいいモチベーションアップにつながるぜ! でもな、俺がほしい報酬はな、お前が奪ったニルスの義手、そして、お前の命だ――――――っ!」
俺様の報酬は高いぜ!!