ミスターノアとジェロニモの試合が始まった。先にジェロニモが仕掛けていった。
「ウララ―――ッ! トマホークチョップ!」
『ジェロニモ! 右の手刀でミスターノアを攻撃だ!』
バシィン
ミスターノアは手刀を左胸板付近で受け止めた。ミスターノアの表情は一切変わっていない。
「なるほど、お前の手刀の威力・スピード。申し分のないものだ。だがな」
バシィィィィン
『ミスターノアもジェロニモに手刀を返した!』
「ぐわぁっ!」
『すごい! ミスターノアの手刀により、ジェロニモの体がリングロープまで吹っ飛んだ!!』
「お前と私の手刀とでは比べものにならない」
ジェロニモの胸板に、手刀の痕がついている。
「なんのこれしき! オラの気合いが足りなかったからだ!」
ジェロニモの両手が真っ赤になり、熱気が上がる。
「ほう、手に気を集めているか。なかなか器用な真似をするな」
「歳をとったとはいえ、万が一のために鍛錬は重ねてきた。若返ってあなたと闘う事になるまでは予想できなかったですがね!!」
『ジェロニモ! またも手刀で攻撃をしかける!』
「ウッドハンドカッター!!」
バシィィン バシィィン バシィィン バシィィン
『ジェロニモ! すさまじい手刀の連打です。先程まで涼しい表情をしていたミスターノアも流石に苦痛の表情を浮かべる!!』
「先程よりもいい手刀だ。このまま受け続けるのは危ういな」
『ミスターノアも手刀を繰り出し、ジェロニモの手刀と相打ちになるように合わせた!!』
ガキィィィィン
『両者の右手刀がぶつかり、すさまじい衝撃音が鳴った!! あ――――――っ! 両者の手刀が合わさった部分から大量の出血が見られるぞ!』
「うぐぅ~~~っ」
『出血主の正体はジェロニモだった! ジェロニモが左手で右手を抑えて、苦痛に顔をしかめる! ミスターノア! ジェロニモを左手でネックハンキングにとらえた!』
「ぐえぇ!」
「もうお前の実力は分かった。ここらでフィニッシュと行こう」
『ジェロニモ! 脱出しようと怪我をしていない左手でネックハンキングを解こうとしますが、びくともしない!』
「私を手刀で苦しめただけでも大した物だ。どうだ、改めて仲間になる気はないか? できれば私もお前を殺すような事はしたくない」
「へへ」
ジェロニモが笑い、左の手刀で自らの頭の中心部を叩いた。
『どういうことだジェロニモ! ピンチの状態なのに、自ら更に危ない状態に持って行くぞ!』
「敵に許しを請うくらいなら、自害した方が良いと考えたのか?」
やがて、ジェロニモの頭部が割れ、大量の血がミスターノアの顔面にかかった。
「うっ」
ミスターノアのネックハンキングのかかりが甘くなり、ジェロニモは脱出に成功した。テリーマンがその脱出方法に反応した。
『ジェロニモ! 思わぬ奇策でネックハンキングから脱出した! しかしジェロニモのダメージも深そうです!』
「ジェロニモのやつ! かつて改良アシュラバスターを受けたときの古傷を自ら開いたか! なんてことをしたんだ!」
キン肉マンも喋った。
「私も、ジェロニモと同じ状況だったら同様の方法をとっただろう」
キン肉マンはアトランティスと闘った時、セントへレンズ大噴火を頭の傷を利用して脱出した事を思い出していた。
ジェロニモの出血は激しいが、目はまだ死んでいない。
「オラの実力が誰よりも劣っているのは分かっている。戦績も良くなかったし、あなたにも申し訳ないと思っていた。でも、根性だけはアイドル超人トップだと思っているずら!」
「ジェロニモよ、お前の人並み外れた根性があったからこそ、人間でありながら悪魔騎士の一人サンシャインを倒せた。だがな、限界以上の事はせぬことだ」
「いいや! 限界なんてつくらねえ! 可能性が無限にある事を、この試合を見ているやつらどもに見せてやる! ようくみておけよ! これがジェロニモが見せる最初で最後の究極の技だ!」
ボアァ
ジェロニモの体が金色に光った。
「ほう、まだ闘う力があるか。ますますお前を倒す事を惜しく感じるぞ」
ミスターノアがジェロニモに感心した。
「アパッチキャノン!」
ウラララララ
『なんと! ジェロニモの口から渦状の音波が発生した! 音波の向かう先はミスターノアだ!』
アパッチキャノンはミスターノアを直撃し、強烈な衝撃を与えた。
「グボァ!」
『あ――――――っ! ミスターノアが血反吐を吐いた! ジェロニモがこの試合初めて有効打を与えた!!』
キン肉マンが驚きの表情を見せた。
「すごいじゃないかジェロニモ! アパッチの雄叫びの何倍もの威力になっておる!」
ロビンマスクが解説をはじめた。
「そうか、ジェロニモのやつ、集中的な音波を作りあげることによって、威力を増していたのか!」
テリーマンがロビンマスクに疑問をぶつけた。
「それはどういうことだロビン?」
「そもそもアパッチの雄叫びとは、やつの声帯から出される桁外れのボイスにより、空気にすさまじい振動エネルギーが与えられ、それが敵にも伝わりダメージとなる。アパッチの雄叫びは広い範囲に攻撃できるが、その分威力は物足りないものとなっていた。やつはアパッチの雄叫びで振動させる空気の範囲を絞る事によって、エネルギーの密度を増し威力を倍増させる事に成功させたのだ」
「ロビ~ン、私にも分かるように簡単に説明しとくれ~」
「つまり、やつのアパッチキャノンはアパッチの雄叫びよりの何倍もの威力なんだ。しかし、心配な事もある」
「うぐぅ!」
ボキィ グキィ メキィ
リング上のジェロニモが体から異音を出し、苦しみ始めた。
「お前のアパッチキャノン。すさまじい威力だ。私といえども何発も食らっては倒れてしまいそうなくらいだ。だが、お前にも負担がでかすぎるようだな。今すぐ試合放棄しなければ、死ぬぞ!」
「オ……オラはこの闘い、生きて勝つなんて最初から考えてない……。みそっかすのオラを超人にしてくれたあなたを……オラがあこがれたあなたを……取り戻したいから!!」
「私があの頃の私でないというのか? だったら大きな勘違いだ。私はあの時のままだ! 生きる気がないのなら、望み通り死なせてやろう!」
『ミスターノア! ぼろぼろの状態のジェロニモに襲いかかってきた!!』
ジェロニモは何かを覚悟したかのような表情になった。
「ようくみておけよ、
「シュター!!」
バシィィン!
『ミスターノア! ジェロニモの首に強烈な右手刀!」
「グハァ!」
「見せてやろう、これが神であった男の究極の技!!」
『ミスターノア! ジェロニモの首に右手刀をひっかけたまま、空中へ上昇! 最高点まで達したところで、そのままジェロニモの首を狩るように、右手刀を落とし、リングへ勢いよく落下していくぞ!!』
「
ズガァァァン
ジェロニモが手刀によって、勢いよくリングに叩きつけられた。ジェロニモはぴくりとも動かずに、誰が見ても完全に事切れた様子であった。
カン カン カン カン
『強い! 強いぞ! ミスターノア! この男に勝てる超人がいるのか!』
「さぁて、次は誰が相手をするんだ? このまますぐに闘っても良い。それが神だった男のせめてものハンデだ」
「わすがいくだ!」
「待て農村マン! ここは私が行く!」
農村マンを止めるようにウォッシュアスも行く。
「雑魚はひっこんでな。手負いの俺にすら勝てなさそうな奴らが行っても命を無駄にするだけだぜ」
ネプチューンマンが新世代超人を制止した。
「おい、ミスターノアよ」
その言葉を発したのはサタンであった。
「下らんは前座はこの辺にしとこうじゃないか」
「ほう、とっておきの相手を用意してくれるのか?」
「そうだ、今からこの俺様がお前の対戦相手になってやろうじゃないか!!」
サタン様 宣戦布告!!